企業買収の手法とは?代表的なM&Aスキームの種類と特徴を解説
2026年7月11日
企業の成長戦略や事業承継の手段として、企業買収は広く活用されています。新規事業への参入や市場シェアの拡大、人材や技術の獲得などを目的として、多くの企業がM&Aを実施しています。
しかし、一口に企業買収といっても、その手法はさまざまです。買収する目的や対象企業の状況によって最適なスキームは異なり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。
企業買収を成功させるためには、各手法の特徴を理解し、自社に適した方法を選択することが重要です。
この記事では、企業買収で利用される代表的な手法や特徴、選び方のポイントについて詳しく解説します。
企業買収とは
企業買収とは、他の企業の経営権や事業を取得することを指します。
一般的にはM&A(Mergers and Acquisitions)の一種として位置付けられ、買収側企業は対象企業の株式や事業を取得することで経営権を獲得します。
企業買収の目的はさまざまで、市場シェア拡大や新規事業への参入、技術力の獲得、人材確保、競争力強化などが挙げられます。
近年では後継者不足による事業承継問題の解決策としても企業買収が活用されています。
企業買収の主な手法
企業買収には複数の手法があり、それぞれ取得対象や手続きが異なります。
株式譲渡
株式譲渡は日本で最も多く利用されている企業買収手法です。
買収企業が対象会社の株主から株式を取得し、経営権を引き継ぎます。対象会社そのものが存続するため、取引先との契約や従業員の雇用契約などを維持しやすい点が特徴です。
手続きが比較的シンプルであることから、中小企業のM&Aでも広く利用されています。
一方で、買収後は対象企業が抱える負債や法的リスクも引き継ぐことになるため、事前の調査が重要になります。
事業譲渡
事業譲渡は会社全体ではなく、特定の事業のみを売買する手法です。
買収側は必要な事業だけを取得できるため、不採算部門や不要な資産を引き継ぐ必要がありません。
また、買収後の経営統合が進めやすいというメリットもあります。
ただし、契約や許認可、従業員の雇用契約などを個別に引き継ぐ必要があり、手続きが複雑になる場合があります。
株式交換
株式交換とは、買収企業の株式を対価として対象企業の株式を取得する手法です。
現金を用意する必要がないため、大規模なM&Aで利用されることがあります。
買収企業は対象会社を完全子会社化できる一方で、既存株主の持株比率が希薄化する可能性があります。
そのため、資本政策への影響も考慮する必要があります。
株式移転
株式移転は複数の企業が共同で新会社を設立し、その新会社の傘下に入る手法です。
主に持株会社体制を構築する際に利用されます。
企業同士が対等な立場で経営統合を行いやすい点が特徴ですが、手続きが複雑で実施までに時間を要する場合があります。
企業買収で活用される資金調達手法
企業買収には多額の資金が必要になるため、資金調達方法も重要なポイントとなります。
自己資金による買収
企業が保有する現預金を活用して買収を行う方法です。
借入負担が発生しないため財務リスクを抑えられますが、大規模な買収では資金不足となる場合があります。
銀行融資による買収
金融機関から融資を受けて買収資金を確保する方法です。
近年ではM&A向け融資商品も増えており、中小企業でも利用しやすくなっています。
ただし、返済計画や買収後の収益性が厳しく審査されます。
LBO(レバレッジド・バイアウト)
LBOは買収対象企業の資産や将来キャッシュフローを担保として資金を調達する手法です。
少ない自己資金で大規模な買収を実現できる可能性があります。
一方で借入額が大きくなるため、買収後の経営が不安定になるリスクもあります。
友好的買収と敵対的買収の違い
企業買収は対象企業の同意の有無によっても分類されます。
友好的買収
友好的買収は、対象企業の経営陣や株主の同意を得たうえで進める買収です。
日本では大半のM&Aがこの形式で行われています。
買収後の統合も進めやすく、従業員や取引先への影響を抑えやすい特徴があります。
敵対的買収
敵対的買収は、対象企業の経営陣の同意を得ずに株式取得を進める手法です。
公開買付け(TOB)などを活用して経営権の取得を目指します。
短期間で経営権を取得できる可能性がある一方で、経営陣や従業員から反発を受けるリスクがあります。
企業買収手法を選ぶ際のポイント
企業買収の手法を選択する際には、買収目的を明確にすることが重要です。
会社全体を取得したい場合は株式譲渡が適している場合が多く、特定事業だけを取得したい場合は事業譲渡が有力な選択肢となります。
また、買収後の統合コストや税務上の影響も考慮する必要があります。
さらに、対象企業が抱える負債や訴訟リスクなどを事前に把握するため、デューデリジェンスを徹底することが欠かせません。
中小企業で増えている企業買収
近年、中小企業においても企業買収は珍しいものではなくなっています。
特に後継者不足による事業承継問題が深刻化しており、第三者への事業承継手段としてM&Aが活用されています。
また、新規顧客の獲得や地域拡大を目的として同業他社を買収するケースも増加しています。
以前は大企業中心だった企業買収ですが、現在では中小企業にとっても重要な成長戦略のひとつとなっています。
企業買収を成功させるために重要なこと
企業買収は契約締結がゴールではありません。
買収後の経営統合が成功しなければ、期待した成果を得られない可能性があります。
そのため、買収前の段階から統合計画を策定し、組織文化や業務プロセスの統一を進めることが重要です。
また、従業員や取引先への丁寧な説明を行い、不安を解消することも成功のポイントとなります。
まとめ
企業買収には株式譲渡や事業譲渡、株式交換、株式移転などさまざまな手法があります。それぞれ取得対象や手続き、メリット・デメリットが異なるため、買収目的に応じて適切な方法を選択することが重要です。
また、企業買収には多額の資金が必要になるため、自己資金だけでなく銀行融資やLBOなどの資金調達手法も検討する必要があります。
企業買収は事業拡大や事業承継を実現する有効な手段ですが、成功のためには十分な事前調査と買収後の統合計画が欠かせません。各手法の特徴を理解し、自社の成長戦略に合ったM&Aを進めることが重要です。
