企業が資金調達を検討する際、一般的には銀行などからの「融資」が思い浮かびますが、近年では「ファクタリング」も注目されています。中でも「発注書ファクタリング」は、売掛金が発生する前の段階で資金を調達できる新しい手法として注目されています。

発注書ファクタリングとは？

発注書ファクタリングとは、企業が取引先から受け取った正式な発注書を根拠に、将来的に発生する予定の売掛債権を見越して資金を調達する方法です。これは、従来のファクタリングとは異なり、まだ納品や請求が行われていない段階でも資金化が可能になるという点で、非常に柔軟性の高い資金調達手段といえます。

通常のファクタリングは、すでに商品やサービスの提供が完了し、売掛金が発生している状態でのみ利用できます。つまり、債権が確定していることが前提となるため、納品前や請求前の段階では利用できません。一方、発注書ファクタリングでは、取引先からの発注が確定していることを証明する発注書があれば、将来的に売掛金が発生することを前提に資金調達が可能となります。

この仕組みは、特に受注生産型の業種やプロジェクト型のビジネスにおいて非常に有効です。たとえば、製造業では、受注を受けてから原材料を仕入れ、製品を生産する必要がありますが、その間に資金が不足することもあります。発注書ファクタリングを活用すれば、納品前に資金を確保できるため、スムーズな生産体制を維持することができます。

また、建設業やイベント業など、プロジェクト単位で動く業種でも、発注書に基づいて資金を調達することで、初期費用や人件費の支払いに充てることが可能になります。これにより、キャッシュフローの改善や資金繰りの安定化が図れるため、企業の成長を支える重要な手段として注目されています。

融資との違い

融資とは、銀行や信用金庫などの金融機関が企業に対して一定の金額を貸し出すことで、企業が必要な資金を調達する仕組みです。融資を受けた企業は、契約に基づいて元本と利息を一定期間内に返済する義務があります。融資の審査では、企業の財務状況や過去の取引履歴、信用スコア、事業計画などが細かくチェックされ、返済能力があるかどうかが厳しく判断されます。そのため、赤字決算が続いている企業や創業間もない企業などは、融資の審査に通らないケースも少なくありません。また、融資の申請から実行までには時間がかかることが多く、急な資金ニーズに対応しづらいという課題もあります。

一方で、発注書ファクタリングは、企業が取引先から受け取った発注書をもとに、将来的に発生する売掛債権を見越して資金を調達する方法です。この仕組みでは、企業自身の財務状況よりも、売掛先の信用力や契約内容が重視されるため、企業の経営が多少不安定であっても、取引先が信頼できる企業であれば資金調達が可能になるケースがあります。特に、発注元が大手企業や官公庁などの場合は、支払いの確実性が高いため、ファクタリング会社も安心して資金を提供しやすくなります。

さらに、融資とファクタリングの大きな違いのひとつが「返済義務の有無」です。融資は借入であるため、契約に基づいて返済しなければなりませんが、ファクタリングは債権の売却による資金調達であるため、原則として返済義務は発生しません。つまり、企業は将来的に入金される予定の債権を譲渡することで、資金を得ることができるため、バランスシート上の負債を増やすことなく資金繰りを改善することが可能です。

このように、融資と発注書ファクタリングは、資金調達の仕組みや審査基準、返済義務の有無など、さまざまな点で大きく異なります。企業の状況や目的に応じて、どちらが適しているかを見極めることが重要です。

どちらを選ぶべき？

資金調達のスピードや審査の柔軟性を重視する企業にとって、発注書ファクタリングは非常に魅力的な選択肢となります。特に、急な受注が入った際や、納品前に原材料の仕入れや人件費の支払いが必要な場合など、即座に資金が必要となるシーンでは、発注書ファクタリングの迅速な対応力が大きな強みとなります。通常の融資では、申請から審査、契約、資金の振込までに数週間以上かかることもありますが、発注書ファクタリングであれば、発注書の内容や取引先の信用力をもとに、短期間で資金調達が可能になるケースが多くあります。

また、発注書ファクタリングは、企業の財務状況が多少不安定であっても、取引先が信頼できる企業であれば審査に通る可能性が高いため、創業間もない企業や赤字決算の企業でも利用できる柔軟性があります。これにより、資金繰りに悩む企業でも、事業のチャンスを逃さずに対応できるようになります。

一方で、長期的な資金計画を立てたい場合や、設備投資などで大口の資金が必要な場合には、融資の方が適していることもあります。融資は返済期間や金利、返済方法などを柔軟に設定できるため、長期的な資金管理がしやすく、安定した資金供給を受けることが可能です。また、融資には補助金や助成金と組み合わせて活用できる制度もあるため、戦略的な資金調達を行いたい企業にとっては有力な選択肢となります。

このように、発注書ファクタリングと融資は、それぞれに異なるメリットと特徴を持っています。企業の現在の状況や資金の用途、調達のタイミングなどを総合的に判断し、最適な方法を選ぶことが、健全な経営と成長につながる重要なポイントです。