信用保証協会に代位弁済するメリット・デメリットとは

2024年3月6日

本記事では、保証協会の保証付き融資が代位弁済するメリット・デメリットをまとめました。
代位弁済すると借入金の金利や保証料を支払わなくて済むので、保証付き融資の返済を止めて代位弁済にもちこむのも資金繰り改善における選択肢の一つです。
とはいえ、当然デメリットもありますので、「代位弁済しなければよかった」と後になって後悔しないよう、デメリットをきちんと把握しておきましょう。
それでは最初に、保証協会に代位弁済するメリットから解説していきます。

保証協会に代位弁済するメリット2つ

保証協会に代位弁済するメリットは下記2つです。
●信用保証料を支払わなくて済む
●借入金の金利を支払わなくて済む
上記のとおり。

信用保証料を支払わなくて済む

保証付き融資を受けると、毎年、融資残高に対して一定の信用保証料が発生しますが、代位弁済すると信用保証料を支払う必要がなくなります。
以上が保証協会に代位弁済するメリットです。続いて、デメリットを解説していきます。

借入金の金利を支払わなくて済む

銀行から保証付き融資を受けたら毎月約定通り金利を支払う必要がありますが、保証協会に代位弁済すると金利を支払わなくて済みます。
例えば、年利2.5%で保証付き融資の残高が1億円ある場合。
下記のように、毎月20万8千円の利息支払い負担が発生します。
【保証付き融資の残高が1億円ある場合】
●借入額:1億円
●年利:2.5%
●年間支払利息:250万円
●月々の利息支払い:20万8千円
しかし、代位弁済すると銀行に金利を支払う必要がなくなるため、毎月20万8千円の支払い負担が無くなります。

保証協会に代位弁済するデメリット6つ

保証協会に代位弁済するデメリットは下記6つです。
●遅延損害金が発生する
●銀行や政府系金融機関からの借入が絶望的になる
●保証付き融資を受けている銀行口座が凍結する
●不動産を担保に入れていれば換価処分される
●個人信用情報機関に異動情報が登録される
●連帯保証人への督促
上記のとおり。

遅延損害金が発生する

代位弁済すると元本を返済するまで、年率14.6%の遅延損害金が延々と発生することになります。

銀行や政府系金融機関からの借入が絶望的になる

代位弁済すると、基本的に銀行や政府系金融機関からの借入は絶望的となります。
一応、代位弁済された求償債務の返済を続けると「求償権消滅保証」という、代位弁済した企業に新たな保証を付ける救済措置はありますが、ハードルは非常に高いです。

救済措置を受けるには求償債務の返済を続ける必要がある

求償権消滅保証を受けるには、ある程度継続して求償債務を返済していく必要があります。
求償債務以外の負債があれば(買掛金、税金、社会保険料など)求償債務の返済と同時にきちんと履行しない限り、保証を受けることはできません。

保証付き融資を受けている銀行口座が凍結する

保証協会に代位弁済すると保証付き融資を受けている銀行口座は一時的に凍結(ロック)します。凍結中は入出金できなくなります。
代位弁済の手続きが完了するまでロックは解除されません。

銀行口座が凍結して起こること

銀行口座が凍結して起こることは下記3つです。
●銀行口座の入出金停止
●残高があれば借入金と相殺(残高よりも負債が多ければ口座残高はゼロになります)
●凍結中に入金があれば借入金と相殺
代位弁済の手続きが完了すると凍結は解除され、口座は使えるようになります。

保証割合で状況が異なるのでご注意ください

普通保証(保証割合80%)で保証付き融資を受けている場合、代位弁済しても負債残高の20%が銀行に残ります。
例えば、普通保証の保証付き融資の残高が5,000万円の場合。
代位弁済すると下記のように銀行に1,000万円の負債が残ります。
保証協会 → 4,000万円(80%)
銀行 → 1,000万円(20%)
銀行に負債が残っている状態で入金があると即時相殺されます。負債がなくなるまで相殺され続けるのでご注意ください。

不動産を担保に入れていれば換価処分される

不動産を担保に入れて保証付き融資を受けている場合、代位弁済すると競売による換価処分をされます。
とはいえ、すぐに競売に掛けられてしまう訳ではなく、代位弁済の手続き後に保証協会審査部から「今現在、営業で土地・建物を使用していますか?」ということを聞かれます。
この時の返答によっては以下のようになります。
●営業で使用している場合 → 営業で使用しているのであれば、3か月待ちますので買受先を探してください。
●営業で使用していない場合 → このまま競売の手続きに入ると言われる。
土地・建物を営業で使用しているのであれば、任意売却で保全を図ることができます。ただし、時間が限られているで、早急に動いて買受先を探すようにしましょう。
任意売却で保全を図るには、まずは不動産の市場価格(流通相場)を把握する必要があります。
以下の記事で不動産一括査定サービスを紹介していますので、市場価格を調べる時の参考にして下さい。

個人信用情報機関に異動情報が登録される

代位弁済すると金融事故扱いとなり、個人信用情報機関に異動情報(いわゆる「ブラック」)が登録されます。
個人信用情報機関に異動情報が登録されると、以下の状況が起こります。
×手形が使えなくなる(手形帳の新規発行停止とあわせて、返却依頼がある)
×銀行系のクレジットカードは使用停止となる(銘柄によっては使えるクレジットカードあり)
×新たなクレジットカードが作りにくくなる(5年以上経てば作れる可能性あり)
×銀行系のリースは絶望的(ノンバンクであれば可能性あり)
×住宅ローンが組めなくなる
リースなどはリース会社によっては利用できることもありますが、基本的に数年間、無担保・無保証での借入は難しくなります(不動産担保ローンであれば資金調達できる可能性はあります)。

連帯保証人への督促

保証付き融資を借入した時に連帯保証人を入れていれば、連帯保証人に督促が行きます。
代位弁済すると、主債務者、連帯保証人あわせて督促状が郵送されます。
●主債務者である法人
●法人代表者
●第三者の連帯保証人
したがって、第三者の連帯保証人を入れていれば、第三者の連帯保証人も当然請求されます。

第三者の連帯保証人は保証解除の可能性あり

保証付き融資を受ける際、第三者の連帯保証人を入れて融資を受けた場合、保証契約を解除できる可能性があります。
もちろん、簡単な話ではありませんが、筆者が実際に関与した事例でも保証契約を解除できた方もいますので、全く不可能な話ではありません。

まとめ

以上、保証協会に代位弁済するメリット・デメリットを解説しました。
代位弁済すると返済負担が激減するのが大きなメリットではありますが、一方で、新規融資が絶望的、クレジットカードが使えない、担保物件が競売の危機にさらされるなどのデメリットがあります。
メリット・デメリットを把握したうえで、代位弁済するのかしないのかを判断してください。