事業計画書とは? 作成の目的書き方と書き方、メリットも解説!

2023年4月27日

経営者にとって事業計画書は、起業時の最大の課題のひとつと言えるでしょう。なぜなら、事業計画書の仕上がり次第で金融機関の融資や補助金の採択が左右されてしまう可能性があるからです。

何よりも、自らの事業計画が事業計画書にしっかりと盛り込まれていまいと、資金調達以前に事業そのものの実現可能性にネガティブな影響を与えかねません。

この記事で事業計画書の書き方のポイントを学び、実現可能性が高い事業計画をまとめ、同時に起業に必要な資金の調達を成功させましょう。

事業計画書とは

事業計画書とは、収益見込みであったり、今後どのように事業を運営していくのかという事業内容や企業の戦略を内外に説明するための書類です。

さらに分かりやすく言えば、「誰に何をどのように提供するか?」「それができる根拠や強みは何か?」「その事業によってどれくらいの利益が見込めるか?」「事業を始めるにあたりどれくらいの資金が必要か?」といったことを誰が読んでも分かる形にまとめたものです。

事業計画書の目的

事業計画書の目的は「自らの事業の全体像を明らかにし」「その実現のための具体的な計画を示す」ことです。また、事業立ち上げに必要な資金を調達したり、資金的な支援を獲得するためのツールとすることです。

ただし、事業計画書を作成すること自体を目的化してしまい、実際の事業そのものの妥当性や実現可能性がおざなりになってしまっては本末転倒です。事業計画書に盛り込む事業そのものの優位性や独自性をしっかりと検証し、それを具体的にドキュメントに落とし込むというプロセスを経るのが理想的です。

事業計画書を作成するメリット

まず、創業者自身が事業計画書を書くことで、事業プランの全体像を明確にできます。事業計画書は、自らのビジネスアイデアやプランを、現実のものとするための設計図のようなものです。

事業計画書を作成せずに事業を立ち上げることは、設計図なしで家を建てるようなものです。事業計画書を作成することで、事業の実現可能性を飛躍的に高めることが可能になります。さらには、事業立ち上げに必要な資金調達が容易になります。

事業計画書とビジネスプランは同義?

事業計画書とビジネスプランはほぼ同義だと解釈することも可能です。

しかしあえて言うと、事業計画書とはビジネスプランをドキュメントに落とし込んだものであり、ビジネスプランとは文字通りビジネスプランです。

つまり、厳密にはビジネスプランとはイメージとしてのアイデアを具体化したものであり、そうしたアイデア、イメージ、プランをドキュメントにしたものが事業計画書であると言っていいでしょう。

事業計画書の書き方・記載事項

それでは事業計画書の各項目の書き方のポイントを解説していきます。計画書作成で忘れてはならないのは、ただ創業者の想いをぶつけるのではなく、あくまでも読者目線に立つことです。説得力のある文章を心掛けましょう。

1.創業動機・目的

意外なことかもしれませんが、金融機関の融資担当者は創業動機・目的をあまり見ていないそうです。仮に社会的に意義のある事業であることを強調しても、担当者は関心を示しません。担当者が注目しているのは創業者の経験が事業と結びついているかどうかです。

例えば、飲食店での勤務経験が全くない人が、いきなり「ラーメン屋を始める」と言っても首を傾げることでしょう。しかし、勤務経験がなくても「ラーメンの食べ歩きで全国の店1,000店制覇」といったSNSの記録などを提示すれば説得力が増します。

そのため、審査判断に関係のある事業に関連のある内容を書きましょう。創業者が経験を活かせるビジネスであることを強調し、新規性や独自性を提示します。さらに、すでに顧客を確保していたり、起業前の準備で取り組んだりした事実を書けば信頼性が増します。

2.職歴・事業実績

記入できる枠に限りがあるので、事業に関連する経歴を強調して書きましょう。会社勤めの中でチームリーダーとして仕事をしていた場合は、そのときの肩書や実績、獲得したスキルを書けば、経営者としての資質があると評価されます。

最近の収入状況は融資担当者が自己資金との関連性を見る材料にもなるので必ず記入します。学歴はできるだけ記入してください。とくに始める事業に関連する経験や知識を学んだ学校や留学先があるなら強みになるでしょう。

飲食店や美容室なら、勤めていた店の名前を記入すると、実力がアピールできます。IT関連のスキルや経験の場合、独学で学んだ場合も多いでしょう。しかし、担当者はITに関して詳しくないので、具体的にどんな経験をしてどんなスキルを獲得したのかを記入する必要があります。

3.取扱商品・サービス

ビジネスの肝ともいうべき「取扱商品・サービス」の項目ですが、これも記入スペースはごくわずかです。短い言葉で明確に商品・サービスの魅力を伝えることがポイントです。キャッチコピーのようなふんわりと抽象的な言葉では伝わりません。客観的で具体的な内容を伝えると、商品・サービスの特徴が際立ちます。

「取扱商品・サービス」の欄は、「誰に何をどのように提供するのか?」「料金・単価を記入する」「商品・サービスの特色を出す」「誰もが分かる言葉を使う」「経営者の略歴と関連付ける」ということが重要になります。

専門用語を避けて、誰もが分かるような言葉に変換して分かりやすい言葉を心掛けてください。セールスポイントとしては、「多くのお客様候補がいること」「会社勤務時に高い営業成績を上げたこと」「独自の販売チャネルがある」などでしょう。

また、市場調査を行った結果を記載するといったことも大事です。集客がすでにできており、創業後すぐに軌道に乗ることがアピールできます。

4.取引先・取引関係

実際に事業を開始して「こんなはずじゃなかった!」と気付きがちなのが取引先とのやりとりです。事業を始めてから分かることも多いものですが、起業したばかりだと信用がなく、現金仕入も多くなります。

一方、取引先と不利な条件で契約せざるを得ない場合も多くなります。商品・サービスを安く買い叩かれる、支払いサイトが長くなるなどです。

お金は出ていく一方、しかし入金はないという状態が続くとたちまち資金はショートします。担当者はこういう部分をよく見ています。

ですから、起業前から信頼できる取引先の確保は必須で、取引先は固有名詞で書きましょう。小さい会社ほどお金の流れがスムーズなビジネスモデルを組む必要があります。

5.従業員

創業時はできるだけ最少人数で立ち上げることが必須になります。

例えば、仲間と事業を始めても、1人前の給料を支払うのは大変です。創業者は利益が出るまで無給で働いたとしても、勤める側はそうはいきません。

仮にビジネスが順調にスタートしても人件費が過剰だと資金繰りが大変になります。目立ちませんが、実は重要な収支のポイントになります。無理のない人員計画であれば、担当者の審査も通りやすくなります。

6.借入の状況

資金調達したいがために、借入があるのにないように偽るのは絶対にいけません。正直に記入するのが鉄則です。

借入がないのに越したことはありませんが、もしある場合は、返済額も稼がないといけないので、より大きく利益が上がるビジネスプランを立てる必要があります。

なお、消費者ローンやカードローンなどの金利が高い借金をしている場合は審査上のマイナスになるので早めに返済しておきましょう。

7.必要な資金と調達方法

「必要な資金・調達方法」は、「なぜこの金融機関からこの金額の融資を受ける必要があるのか?」という根拠を示す項目なので、審査を受ける際の最重要項目となります。

必要な資金には「設備資金」と「運転資金」があります。
「設備資金」は事業を始めるときに必要不可欠な投資である裏づけが必要です。改装費ならば業者からの見積書、賃貸ならば賃貸条件が分かる資料などを提出します。

担当者は投資金額が妥当なものかを検証するので、投資に見合った設備投資になるように検討してください。また、融資を受けた後に、申請したものを買わないで、安いものを買って現金を別の用途に使うのは厳禁です。

「運転資金」には「8.事業の見通し」に記入する「売上原価」と「経費」に記載している内容と、必要な運転資金に整合性があるように記載しなければいけません。運転資金の目安は通常3ヵ月~4ヵ月分ほどの原価や経費の金額までです。運転資金の欄はそのうえで自己資金相当を上乗せして計上します。自己資金半分、融資半分位の目安が無理のないバランスになります。

広告宣伝費、法人の場合の役員報酬、経営者の自己啓発の費用は必要な経費とは認められず、減額対象になります。

「調達方法」での自己資金の目安は3分の1だと言われています。

8.事業の見通し

現実的に、創業してすぐに黒字経営になるのは難しいものです。
しかし、融資を獲得するためには起業して半年や1年以内に軌道に乗った後に黒字になる形が理想です。

したがって、早期黒字化の見込みがある計画にする必要があります。もちろん実現可能である根拠を示さなければいけません。

創業前に売上高はなかなか計算できませんが、「客単価×客数」が一番シンプルな方法です。

そして、経費は多めに計上しましょう。
事業見通しの最後の「利益①-②-③」に税金を考慮した「①-②-③」×0.6で算出した金額が、経営者本人と借入金の返済元金以上の額が理想です。

事業計画書を作成する際の注意点

まず、事業計画書を書くうえで絶対にやってはいけないのは、ほかの事業計画書のコピペです。書籍やインターネット上にたくさんの記入事例が出回っていますが、自分の言葉で書かれていない計画書には、微妙なズレがあって担当者に簡単に見抜かれてしまいます。オリジナリティーや強みに欠け、創業する熱意が感じられないと融資が通らない場合もあります。つたなくても自分の力で書き上げてください。

そのうえで、担当者が審査する3つのチェックポイントである「経営者としての資質」「財政状態」「収支の見通し」が整合するように書いていきます。

【経営者としての資質】

・どんな経験を積んできたか?
・営業や接客はできるか?
・論理的思考はできるか?
・事業経営への熱意と覚悟はあるか?
・金融機関に対して正直に情報開示しているか?
・お金や数字に関する適切な考え方はあるか?
・経営者に向いている性格か?

 

【財政状態】

・資産はどれくらいあるか?
・負債はどれくらい抱えているか?
・諸支払い振りはどうか?

 

【収支見通し】

・投資内容と資金調達方法が妥当か?
・予想収益の実現可能性はどうか?
・資金繰りの見通しはどうか?
・収益が予想よりも少ない場合の補てん方法はあるか?

 

などがチェックされます。

起業家はビジネスプランのマーケティングや営業戦略のほうに注意が行きがちですが、融資担当者は「事業計画に無理がないか」「返済可能か」「もし事業が失敗したときでも返済できるあてがあるか」などを見ています。つまり、融資担当者は起業家が注力しがちな1から3の創業動機・職歴・商品の項目よりも、それ以降の4から8の実際の資産状況やお金の動きのほうに注目しているのです。

ビジネスアイデアの面白さを強調するよりも、堅実性をアピールしたほうが融資をスムーズに受けられます。

起業する際は、事業計画書を正しく作成しましょう!

以上、資金調達しやすいポイントに絞って事業計画書の書き方を解説しました。融資を受けるためだけの事業計画書なら、意外と簡単に作成できるのがお分かりいただけたでしょうか?正しい事業計画書を作って、順調な起業に備えてください。