役員報酬とは?決め方や税制上のメリット、従業員の給与との違いを解説
2023年8月3日
株式会社の役員が会社から受け取るお金が、役員報酬です。自分で会社を設立した場合は役員報酬も自分で決めることができますが、報酬額の設定などには従業員の給与とは違ったルールがあります。
ここでは、役員報酬を設定するときに知っておきたい基礎知識や決め方の手順の他、注意点などを解説します。
役員報酬とは?
役員報酬とは、会社の役員に対して支給される報酬のことです。会社法第329条によれば、株式会社の役員は「取締役」「会計参与」「監査役」と定義されています。
従業員の給与と役員報酬の違い
役員報酬は、わかりやすくいえば役員の給与のようなものです。しかし、従業員の給与と役員報酬では、税法上の扱いや決め方のルールが異なります。
役員報酬は原則として年度を通じて一定であり、増額または減額は株主総会で決める必要があります。また、従業員の給与は、原則として全額を損金として計上できますが、役員報酬を損金計上するためには一定のルールを守る必要があります。
損金とは、経費のように会社の利益から差し引けるお金のことで、役員報酬を損金計上できれば、その分法人税を少なくできます。ただし、法人税を減らそうとして役員報酬を増やすと、役員個人の所得税が増加し、トータルでの納税額はかえって増えてしまうケースがあります。そのため、役員報酬は、税理士など専門家と相談したうえで適正金額を決めた方がいいでしょう。
また、会社の資産や生命保険料といった「役員個人の利益になるもの」を非金銭報酬といい、こちらも役員報酬とみなされる場合があります。
その他、役員報酬と従業員の給与には、下記のような違いがあります。
役員報酬 | 従業員給与 | |
---|---|---|
支払いに必要な条件 | 特になし(自由に決定) | 勤務実績による |
割増賃金(残業代) | 適用なし | 適用あり |
健康保険・厚生年金保険 | 適用あり(※1) | 適用あり(※2) |
雇用保険・労災保険 | 適用なし | 適用あり |
最低賃金 | 適用なし | 適用あり |
日割り計算 | できない | できる |
- ※1 非常勤役員は加入義務なし。
- ※2 パートタイマー・アルバイトは、1日または1週間の労働時間が、通常の労働者の4分の3以上あれば加入義務あり。
役員報酬の決め方
役員報酬は、社長が好き勝手に金額を決めていいものではありません。決め方や手順には、守らなければいけないルールがあります。ここでは、役員報酬のルールを見ていきましょう。
定款または株主総会の決議によって定める
会社法では、役員報酬は「定款または株主総会の決議によって定める」となっています。ただ、中小企業や小規模法人では役員報酬について定款に定めていないことが多く、定款に記載があっても「株主総会の決議で決める」としていることがほとんどです。そのため一般的には、役員報酬は株主総会で決議することになります。
株主総会で各自の金額を決める方法の他、まず株主総会で役員報酬の総額を決め、取締役会(取締役会がなければ取締役の決定)で役員ごとの内訳を決めます。この際、役員報酬を損金に計上するための根拠資料として、それぞれ議事録を作成して残しておかなければなりません。議事録は、税務調査などで確認される場合がありますので、忘れないようにしましょう。
役員報酬の金額を決める時期
役員報酬の金額は、起業1年目の場合、会社設立日から3か月以内に決めなければなりません。3か月以内に決定しないと、役員報酬を損金に計上できなくなります。また、役員報酬は事業年度ごとに決めることができますが、報酬額を変更できるのは事業年度開始(期首)から3か月以内の時期だけです。一度決めた役員報酬の金額は、基本的には1年間(少なくとも期末まで)は固定となります。
税務上、損金として認められる役員報酬の支払い方
税法上、損金として認められる役員報酬は、「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」の3種類があります。それぞれどのようなものなのかを見ていきましょう。
定期同額給与
定期同額給与とは、毎月同額で支払われる役員報酬のことで、税務署への届出は不要です。いわば役員の月収といえるものですが、従業員の残業代や出張手当などのような加算はなく、月々の支給額が変動することはありません。報酬額を変更できるのは、原則として年に1度、事業年度開始(期首)から3か月以内の時期だけです。
例外として、会社の経営状況が著しく悪化した際には、定められた金額より減少させることができます。そうしたケースでなければ、変更した差額は損金として認められません。例えば、毎月100万円の支給だった報酬額を70万円に減らすと、30万円は損金計上できず、その分法人税が高くなります。
事前確定届出給与
事前確定届出給与とは、指定した日にまとめて支払われる報酬のことで、役員の賞与(ボーナス)に当たるものです。役員に支給される賞与は原則的に損金計上できませんが、あらかじめ税務署に届け出ることによって、損金として認められるようになります。
事前確定届出給与を損金とするには、所轄の税務署に「事前確定届出給与に関する届出書」を提出し、届出どおりの支給日に記載した金額を支払う必要があります。税務署への届出期限は、「株主総会などの決議をした日から1か月以内」か「会計期間開始の日(事業年度開始の日)から4か月以内」のいずれか早い方と定められています。
なお、会社を設立したばかりの新規法人の場合は、設立日から2か月以内が提出期限となります。
業績連動給与
業績連動給与とは、会社の利益に応じて支払われる役員報酬のことです。2017年度の税制改正により「利益連動給与」から名称が変更されました。定期同額給与や事前確定届出給与とは異なり、あらかじめ金額は確定していません。業績連動給与を損金計上するには、「報酬の算出方法が所定の指標を基礎とした客観的なものである」「有価証券報告書に記載・開示している」「通常の同族会社以外である」という3つの条件を満たす必要があります。
業績連動給与を利用するには、所定の指標をもとに報酬額を算定し、有価証券報告書に記載する必要があるため、株式を公開していない非上場の会社は適用できません。
役員報酬を変更できるケースとは?
役員報酬をいつでも自由に変更できると、会社側が期末に役員報酬額を変更し、納税額を調整することが可能になってしまいます。そのため、役員報酬は、事業年度開始(期首)から3か月以内の期間を除いては、原則変更できません。
ただし、次のような場合は、例外として事業年度の途中でも役員報酬額の変更が認められます。なお、増額・減額いずれの場合も、株主総会または取締役会にて議事録の作成が必要です。
経営状況が悪化した場合
会社の経営状態が著しく悪化した場合は、役員報酬を減額することが可能です。業績がどの程度悪化すれば役員報酬を減額できるのかといった決まりはありません。業績悪化に伴う株主や取引先、従業員などへの影響を考慮し、役員報酬を減額せざるをえない事情が客観的に認められる必要があります。
具体的には、次のような場合は減額改定ができるとされています。
役員の地位や職務内容を変更した場合
役員の地位や職務内容が変わり、責任が重くなったり仕事量が増えたりした場合は、役員報酬の増額ができます。例えば、役員が社長に昇格した、退任した役員の職務を兼任したといったケースがこれにあたります。
ただし、名義だけが変わって実態が伴っていない場合は、税務署に不正と判断される可能性があるため注意しましょう。
役員報酬が減額できるケース
- 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるをえない場合
- 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるをえない場合
- 業績や財務状況または資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合
上記3点に加え、新型コロナウイルス感染症による影響も、役員報酬減額の事由に含まれます。
役員報酬を決める際の注意点
役員報酬の金額を決める際には、次のようなポイントに注意しましょう。
月々の粗利や固定費などを予測したうえで報酬額を決める
役員報酬の金額を変更できるのは、事業年度開始(期首)から3か月以内です。一度決めた役員報酬は、基本的には1年間変更できません。そのため、1年間の売上金額や、売上から仕入金額を差し引いた粗利の他、家賃や従業員給与などの固定費などを予測したうえで、役員報酬額をいくらにするのかを決める必要があります。役員報酬(定期同額給与)は毎月固定の支払いになるため、無理な設定にすると会社の資金繰りが苦しくなってしまいますので、注意が必要です。
会社と個人が負担する税金のバランスを考慮する
会社には、法人税や地方法人税、法人住民税、法人事業税など、さまざまな税金がかかります。納税額は会社の利益に応じて決まるため、損金算入する役員報酬が多ければ、その分、法人税などは少なくなります。
反対の見方をすれば、役員報酬が多いと役員の所得が増え、個人の所得税や住民税、社会保険料が増えるということです。役員報酬を決めるときには、法人と個人の納税額のバランスを考えることも大切なポイントになります。
- ※ 所得とは合計所得金額のことを指します。
認識違いやミスで損金不算入とならないようにする
役員報酬を損金とするには、守るべきルールがあります。ルールの認識違いやミスによって損金不算入となると、法人税などに大きな影響を及ぼします。特に、前述の事前確定届出給与は、あらかじめ定められた期限内に税務署に届出をしないと損金として認められないため、注意が必要です。
同業他社などと比較して不相当に高額にしない
役員報酬が同業・同規模他社と比べて極端に高いと、不相当と見なされて損金計上が認められないことがあります。また、業務をほとんど行っていない役員の役員報酬がある場合、世間相場などから高額と判断されるケースも少なくありませんので注意しましょう。
役員報酬のお悩みや事業計画は専門家に相談しよう
役員報酬は、会社の人件費の中でも大きな割合を占めます。しかし、役員報酬を損金(経費)にするにはさまざまなルールがあり、税金の知識がないと手続きに漏れやミスが起こりがちです。年間の事業計画から役員報酬額を設定したり、役員報酬と個人の納税額のバランスを考えたりするのはなかなか難しいため、税理士など専門家への相談が望ましいでしょう。
役員報酬を決める際には、専門家への相談が安心
役員報酬は、法人税や役員個人の納税額などにも関わるため、金額の設定が不適当だったり損金不算入になったりすると、会社の資金繰りにも影響を及ぼしかねません。役員報酬を損金とするためには複雑なルールがあるため、自社に合った最適な事業計画を作るためにも税理士に相談するのが安心です。