ベンチャー企業における資金調達の選択肢とは?メリット・デメリットを徹底解説

2023年4月27日

ベンチャー企業とは、革新的な技術や創造的なアイデアをもとに、新しいサービスやビジネスを展開する企業を指します。新たな道を切り拓くベンチャー企業にとって、資金面での悩みはついてまわるもの。会社や事業を拡大していくための資金調達は、成長の命運、また会社の存続をも左右する重要な問題です。特に事業が軌道に乗るまでは、資金調達の方法は限られてくるでしょう。

本記事では、ベンチャー企業における資金調達の概要や選択肢、メリット・デメリットなどを具体的に解説していきます。

ベンチャー企業における資金調達の重要性

ベンチャー企業では、基本的に中核ビジネスを成長させることに全てのリソースを注いでいる状態です。創業から間もなく、会社の規模が小さく、経営基盤もまだ確立されていない、自己資本で運営している企業であることが多いでしょう。そのため、事業を拡大すべく人材の獲得や広告宣伝費を確保したいと思ってもその段階では財務的に厳しく、資金の問題からビジネスの拡大が進まなくなってしまう場面があります。

近年は、投資機関からの出資を受けて、このような資金調達を成功させ事業を拡大するベンチャー企業が増えています。

資金調達の具体的手法

昨今のベンチャー投資の盛り上がりを受け、企業の規模や条件に合わせて、多くの資金調達方法を選択できるようになりました。資金調達はそれぞれ企業の成長度合いに応じての相性もあるため、自社にとって最良の資金調達方法を選択することが重要です。ここでは、ベンチャー企業が検討すべき資金調達の方法を具体的に紹介していきます。

出資

「出資」とは、事業の成功や企業の成長を期待して投資家が企業の株式を引き受け、対価として資金を提供することを指します。

ベンチャー企業の資金調達の手段として出資は相性が良く、資金調達に悩むベンチャー企業にとって、多くのケースで有用な手段であるといえます。出資金は原則として返済の必要はなく、利息もかかりません。

出資の場合、投資家は対象企業の将来的な成長を期待し、IPOやM&Aによるイグジットにおいて受け取るリターン=株式の値上がり益を目的としています。企業の成長が株価の上昇に直結するため、投資家は企業を大きくするための業務提携の支援や人材紹介など、様々なサポートを行うケースもあります。一方で、自社の株式を譲渡することで、投資家に株主として一定の議決権を与えることになる点も、十分に理解しておきましょう。

出資の引き受け手はさまざま考えられますが、ここでは創業間もないベンチャー企業が検討すべき主な候補先を紹介します。

◆候補先① ベンチャーキャピタル(VC)

ベンチャーキャピタル(以下、VC)とは、ベンチャー企業を専門とした投資ファンドです。

VCは原則として高い成長が予想される未上場企業に対して出資を行います。ベンチャー企業の株式などを未上場時に引き受けることによって投資を行い、投資した企業が上場し株式を公開した後に、保有している株式を売却することによって、キャピタルゲイン*1を得ることを目的としています。近年では上場ではなく、M&Aでの株式売却をゴールにする戦略も多く見受けられます。

日本のVCの多くは、銀行や証券会社、保険会社などの金融機関などから組成されています。また近年では、事業会社が本業との相乗効果を狙い投資を行う、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の立ち上げも盛んに行われ、ベンチャー企業への投資は活性化されています。VCから出資を受けることで財務状況が改善し、金融機関からの融資も受けやすくなります。事業をさらに拡大したいベンチャー企業にとって、追加融資を受け入れやすくなることは大変有利といえるでしょう。

また、出資を受けたVCが持つネットワークを活用し事業提携を行ったり、経営に関する助言を受けたりするなど、将来的に事業をより大きく成長させたい、上場したいと考えているベンチャー企業の経営者にとって、VCは強い味方になるといえます。しかし、具体的な事業計画を持たないベンチャー企業であると投資を仰ぐのは当然難しく、綿密な事業計画を策定し、将来性をアピールすることが必要となります。

*1 キャピタルゲイン:当初の投資額と株式公開後の売却額との差額

◆候補先② エンジェル投資家

エンジェル投資家とは、創業したばかりで資金調達を行うことが難しいベンチャー企業を援助する個人投資家を指します。役割や目的からVCと似ている部分もありますが、VCは投資ファンドであるのに対して、エンジェル投資家は個人が直接自己資金を投資します。

エンジェル投資家は、起業を経験していたり経営者として事業を営んでいる人であることが多いです。そのため、経営者の熱意や革新的なアイデア、ビジネスプランを汲んで事業の将来性や有望性を判断して投資を行います。また、企業に必要な資金だけでなく、自身の経営知識を活かしたアドバイスや人脈を生かしたビジネス面でのサポートを行うなど、次世代起業家を応援するような新しい投資の形です。

最近では、エンジェル投資家向けにエンジェル税制*2が実施されており、ベンチャー企業への投資が促進されています。

*2 エンジェル税制:ベンチャー企業への投資を促進するために、ベンチャー企業へ投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度

融資

出資は投資家から資金を調達する手法であるのに対して、融資は銀行や信用金庫などの金融機関から資金を借り受けて調達することを指します。

しかし、創業したばかりのベンチャー企業はまだ事業の実績がないため、金融機関から直接融資をしてもらうことが難しい場合があります。そのため、自社の事業や特色に合わせて検討しやすい資金調達の手法手段を考える必要があります。また、融資を受ける場合には返済の義務があり、返済の際には利子を上乗せして支払わなければなりません。

ここでは、ベンチャー企業が融資を受けやすい手法をご紹介します。

◆候補先① 信用保証協会の融資支援制度

信用保証協会とは、中小企業などが資金調達をしやすいよう、「信用保証」を行う公的な機関で、信用保証協会法を基に設立されています。基本的には、各都道府県ごとに1ヵ所設置されています。

信用保証とは、自力で融資を受けられない企業が信用保証協会に保証料を払って保証してもらい、融資を受ける方式です。この制度は、企業が金融機関から融資を受けた後、返済が滞った際に信用保証協会が返済を肩代わりする役割を果たします。基本的な限度額は無担保保証の場合で8,000万円ですが、創業融資*3の場合の限度額は通常、上限が低く設定されています。

*3 創業融資:これから創業、起業、独立、開業する際に、自己資金のみで事業資金を調達することができない場合、他者からお金を借りて創業、起業、独立、開業すること

◆候補先② 日本政策金融公庫の新創業融資

ベンチャー企業が利用しやすい融資の手法の一つに、政府の金融機関である日本政策金融公庫の「新創業融資」があります。新創業融資は、事業を始めたばかりの経営者向けの融資であり、必要な資金を最大3,000万円まで融資を受けることができ、無担保・無保証で利用可能で信用保証もかからない制度です。また、審査が順調に進めば申し込みから最短で2週間から融資を受けることもできます。

その他の資金調達法

資金調達の方法は先述した出資や融資だけではありません。ここではそれ以外の資金調達方法として、公的機関が資金を提供する「助成金・補助金」と、近年新たな資金調達方法として活用されている「クラウドファンディング」をご紹介します。

◆候補先① 助成金・補助金

政府や自治体、商工会議所などが提供している助成金や補助金を利用して資金調達を実践する方法です。融資と違い、返済の必要がないためベンチャー企業でも利用しやすいといえます。

しかし、助成金や補助金は申請するための書類の用意に時間を要し、またそれぞれ特徴も異なります。一般的に助成金は申請する種類によりますが、申請から受給までに半年から1年半ほどかかり、社会保険の加入や雇用保険の加入などの条件を満たしている必要があります。補助金に関しては、一般的に申請から受給までにおよそ1年ほどかかるといわれています。また、申請できる期間は限られており、申請後に審査を通過する必要があるため、事前に申請要項を確認しておくことをおすすめします。

◆候補先② クラウドファンディング

クラウドファンディングは、インターネットを通じて、事業に共感した人から資金調達を行う手法です。最近では様々な事業を実施するために積極的にクラウドファンディングを行う事例は多く、クラウドファンディングで資金調達に成功し、事業の創業が実現したケースも少なくありません。

商品の販売を行う企業にとっては、事前販売のような形で市場の反応をダイレクトに得ることができるというメリットもあります。

SNSなどインターネットメディアの活用は前述したエンジェル投資家との出会いにも繋がるうえに、世間に企業を認知してもらうきっかけにもなるため、クラウドファンディングの活用はベンチャー企業の資金調達における新たな選択肢として有効といえるでしょう。

しかしながら、基本的には一般の人から広く資金を募るため、顧客や消費者など数多くの人からの共感が得られるアイデアやビジネスモデルが必要となります。また、金額として数千万円という規模で調達に成功した事例は多くはなく、今後の市場拡大が期待されます。

資金調達のメリット・デメリット

資金調達の手法を紹介しましたが、それぞれのメリットとデメリットをまとめると以下のようになります。

 

VC


●メリット

・資金の返済義務がない
・VCのネットワークに入ることができる
・知識や経験、ノウハウを得ることができる
・事業成長のための支援が得られる

●デメリット

・出資比率によっては経営権を握られる可能性がある
・事業を成長させる明確な経営計画が必要
・株式買取請求を迫られる可能性がある
・VCとのコミュニケーションが求められる

 

エンジェル投資家


●メリット

・資金の返済義務がない
・事業成長のための支援が得られる

●デメリット

・出資比率によっては経営に参画される
・投資家との相性が悪いこともある
・詐欺などの危険性がある

 

信用保証協会の融資支援制度


●メリット

・無担保・無保証で借り入れられる
・金融機関からの融資の審査が通りやすくなる
・万が一返済ができなくても、信用保証協会が返済を肩代わりしてくれる

●デメリット

・比較的審査期間が長い
・信用保証料がかかる

 

日本政策金融公庫の新創業融資


●メリット

・創業前でも申し込みができる
・無担保・無保証で借り入れられる
・申請から融資決定までの期間が短い
・他の金融機関と比べて低金利

●デメリット

・利用するにあたっての制限がある
・自己資金がある適度必要
・創業計画書を綿密に作りこむ必要がある

 

クラウドファンディング


●メリット

・市場の需要がわかる
・素早い資金調達ができる
・想定を超える金額を調達できる場合がある

●デメリット

・必ず資金調達できるとは限らない
・手数料がかかる
・支援者との細かなやり取りが必要

 

助成金・補助金


●メリット

・資金の返済義務がない
・経営権や株式を維持できる

●デメリット

・申請から受け取りまでに工数がかかる
・多くの場合、申請できる時期が決まっている

 

資金調達においての注意点

資金調達においての注意点は以下になります。

融資を受ける場合、返済の義務がある

先述の通り、融資による資金調達を行った際には返済の義務があり、利子を上乗せして返金をする必要があります。そのため、金融機関から多額の資金調達に成功したが、その後の返済ができないという事態を避けるために、事前に綿密な返済計画を立てる必要があります。

出資者による経営介入

投資家からの出資による資金調達を行う際は、株式の移動が伴うため、出資者が経営に介入したり、出資者の意向に沿って経営を行わなければならない場合があります。その結果、出資者と経営者の意見が対立し経営の分離が起こる可能性もあり得ます。そのため、出資は企業の経営方針を変えざるを得なくなる場合があることを理解しておく必要があります。

資金調達を受けるまでに時間がかかる場合もある

創業期や中小企業向けの融資制度や助成金、補助金は数多く存在しますが、それらを受けるために、書類作成や面談の出席などに時間がかかります。また、資金調達の手法によって申請日から受け取りまでの期間は異なります。すぐに資金調達したい場合は、事前にHPなどで確認しておく必要があるでしょう。

<まとめ

新しい事業に挑戦するベンチャー企業にとって、資金調達は事業を拡大するうえで会社の命運を左右する重要な課題です。会社の必要とする金額や時期を選定することで、利用するべき資金調達の手法が明確となります。企業にとって最良の選択をし、自社の成長に合わせて適切な資金調達の手法を検討していくことで、さらなる成長に繋がります。