売掛保証とは?ファクタリングと何が違うの?メリット・デメリットを解説!

2023年7月21日

企業間の取引においては商品・サービスの納品の後に支払いが行われる「掛取引」が一般的ですが、納品(売上の確定)から売掛金の入金までにはタイムラグがあります。

この売掛金の入金を保証してもらうサービスが、「売掛保証」です。

そこで今回は、売掛保証の特徴や「ファクタリング」との違い、利用するメリット・デメリット、サービス選びのポイントまで詳しくご紹介します。

売掛保証とは

売掛保証とは、回収が難しくなった売掛金を保証してくれるサービスです。

企業間の掛取引においては、売上の確定から売掛金の入金までにタイムラグがあり、この間は現金を入手できません。

無事に売掛先の企業から入金があれば良いですが、万が一、倒産するなどして資金が回収できない可能性も考えられます。

その場合、売掛金全額がそのまま損失となってしまい、自社の経営にも大きな痛手となります。

そうなる前に売掛保証のサービスを利用しておくと、売掛先から回収できなかった場合に売掛金全額を保証してもらうことが可能です。

売掛先の企業の信用度が怪しく感じるとき、売掛先企業が多くて与信管理がうまくいかないとき、長期間にわたって大きな売掛債権を保有しているときなどに売掛保証の利用がおすすめです。

ファクタリングとの違い

売掛保証と似たようなサービスに、債権買取を意味する「ファクタリング」があります。

売掛保証自体にも保証型ファクタリングという呼び方がありますが、両者には利用の目的に大きな違いがあります。

売掛保証では、売掛先から売掛金が入金されなくなるリスクに備える目的で利用します。

一方のファクタリングでは、事業資金を調達したい場合などに売掛金を売却して入金予定日より前に資金化する資金調達目的で利用します。

また、売掛保証とファクタリングでは売掛債権の債権者にも違いがあります。

売掛保証では、入金がなかった場合に保証会社から保証金を支払ってもらうことができますが、売掛債権は自社で保有することになります。

すなわち、引き続き売掛先へ入金を要求していくことになります。

一方のファクタリングでは、売掛債権をファクタリング会社へ売却することで資金を得るため、利用者は売掛先への入金を要求する必要がなくなります。

ただし、保証会社やファクタリング会社、プランによってこのあたりの契約内容は変わるため、内容をよく確認することが大切です。

売掛保証を利用するメリット

手数料を支払ってわざわざ売掛保証のサービスを利用するメリットには、どのようなものがあるでしょうか。

売掛金の未回収リスクを軽減できる

売掛保証を利用する目的の1つであり、最大のメリットのひとつでもあるのが売掛金の未回収リスクを軽減できる点です。

売掛金の入金が遅れるだけでも、自社のキャッシュフローの計画に狂いが生じ、場合によっては黒字倒産のリスクも孕むことになります。

万が一売掛先の企業が倒産するなどして売掛金を回収できないとなった場合は、もっと深刻な事態となります。

売掛金が全額そのまま損失となるため、利益への影響も大きくなるでしょう。

売掛保証を利用することで、こうしたリスクを大きく軽減し安定したビジネスに取り組めるようになるメリットがあります。

売掛先に知られることなく利用できる

売掛保証は、原則としてその取引があることを売掛先に知られることがありません。

売掛金を保証したい、信用度を知りたいなどどの理由で売掛保証を行うにしても、売掛先の企業に知られるとあまり良い印象を抱かれることはないでしょう。

売掛保証と仕組みが近いファクタリングを行う際も同様で、資金繰りに困っているのではないかと疑われてしまうリスクがあります。

ファクタリングのあるプランを除き、原則として売掛保証は売掛先に通知することなく取引が進行するため、安心してサービスを利用できます。

売掛先の範囲が広がる

売掛保証を利用することで、売掛先の信用度を知りつつ、入金がなくなるリスクを軽減することができます。

これにより、売掛債権を増やすリスクをあまり気にせずに、ビジネスの売掛先を増やしていくことができます。

与信管理業務を効率化できる

売掛保証を利用することで、売掛保証会社は売掛先の企業に対し与信審査を行います。

これはデメリットにもつながることですが、与信審査を行うことで、売掛金の保証をしていいのかどうかを判断しています。

ここであまりにも信用度の低い企業だった場合、保証会社のほうも「これは保証できない」となり契約を断られるケースもありますが、メリットとしては売掛保証会社に与信審査を行ってもらうことで与信管理業務を効率化できるという点が挙げられます。

自社で与信管理を行おうとすると、専用の部署が必要だったりそのための専門的なスキルをもった人員が必要だったりして、大きなコストを必要とします。

中小企業であれば、自社で与信管理を行うことは難しいでしょう。

売掛保証を利用することで必ず与信審査が行われるため、売掛金を保証しながら売掛先の信用度を測ることが可能になります。

売掛保証を活用するデメリット

売掛保証を利用する際には以下のようなデメリットもあるため、利用前にはよく把握しておきましょう。

支払保証を受けるまでに時間がかかる

仕組みが似ているファクタリングの場合は、資金調達が目的であることから、審査が素早く済めば即日入金してもらうことも可能です。

一方の売掛保証の場合は、売掛金が支払われなかった場合の保証のため、すぐさま資金化できるわけではありません。

加えて、売掛先からの支払いがないことが分かり、それを売掛保証会社に申告してからもすぐ保証金が支払われるわけではありません。

この期間に関しては売掛保証会社やプランによって変わるため、契約前によく確認しましょう。

売掛先次第では審査に落ちることがある

メリットの項でもご紹介したように、売掛保証会社は利用者と売掛保証契約を結ぶ際、売掛先の企業の与信審査を行います。

多くの場合は与信審査に通らないことはないといえますが、万が一審査に落ちてしまった場合は売掛保証のサービスを受けられません。

与信審査に落ちるということは、売掛金の入金をしてくれない可能性が高いということでもあり、売掛金未回収のリスクを自社が背負い続けることになります。

一方で、売掛先の企業の信用度が低いということを知れる機会には違いなく、売掛先との取引内容を見直すなどにより突然リスクに見舞われるよりもある程度の準備ができるという見方もできます。

手数料が発生する

売掛先から売掛金を回収できなかったリスクに備えられるというメリットの代価として、利用者は売掛保証会社へ手数料(保証料)を支払うことになります。

売掛先の状況を問わずに売掛金を回収できる代わりに保証を請求しなくてもコストが発生することは、理解した上で契約を結ぶ必要があります。

なお、手数料は会社や条件によって変動しますが、月額で固定費がかかる場合や請求額の数%といった形式があります。

売掛先の与信審査の結果、信用度が低ければ低いほど手数料が増えると考えると良いでしょう。

売掛保証を利用する際の一般的な流れ

売掛保証を利用したいと思った場合、一般的には以下の流れで取引を行うことができるので、ぜひ参考にしてください。

1.保証会社に問い合わせる

保証会社のWebサイトに問い合わせフォームがあればそこから、なければ電話から問い合わせを行いましょう。

多くの場合はWebサイトに保証の対象範囲や手数料の目安などが書かれてありますが、担当者に直接確認すると安心です。

時間的な余裕がある程度あるのであれば、複数の売掛保証会社から相見積りを取るのがおすすめです。

保証範囲や手数料の比較ができるほか、対応が心もとない会社の見極めもできるようになります。

2.会員登録を済ませる

売掛保証サービスの多くは、会員登録を行うことで利用できるようになります。

アカウント作成までは基本的に無料で行うことができます。

3.売掛先を登録し審査を受ける

実際に売掛保証のサービスを受けるには、売掛先の情報を登録することが必要不可欠です。

企業情報はもちろん、保証して欲しい売掛債権の内容、取引内容、決済方法などを入力します。

その後、売掛保証会社は信用情報機関などから情報を集めつつ、与信審査を行います。

なお、売掛保証においては、反社チェックなどの一般的なものを除き原則として利用者が審査を受けることはありません。

4.保証が開始

売掛先の与信審査が完了し、保証できる債権であると判断されれば、通知が届きます。

その後、改めて保証会社へ保証の依頼を行い、保証を開始してもらいます。

5.未払いを報告する

実際に売掛先からの入金が行われなかった場合には、未払いが発生したことを売掛保証会社に報告し、保証金の支払いを求めます。

その際には、売掛保証会社の求める書類に必要事項を記入して提出します。

6.保証会社からの入金を確認する

請求内容に不備がなければ、売掛保証会社から指定の口座へ入金が行われます。

入金がいつ行われるかについては、契約前に確認しておくのがおすすめです。

その後、倒産などどうしようもないケースを除き、売掛金をしっかり支払ってもらうよう売掛先へ働きかけを続けることになります。

売掛保証サービスを選ぶ際のチェックポイント

売掛保証サービスを利用したい場合には、できる限り相見積りを取るようにしましょう。

その上で、どのサービスを選べば良いのかについては以下のポイントをぜひ参考にしてください。

ニーズに合った保証内容かどうか

実際の保証内容が自社のニーズに合っているかどうかも、契約前によく確認しましょう。

例えば、保証できる金額に上限があったり、倒産など大きな結果となった場合のみ保証だったりなど、売掛保証会社やプランによって「どのように保証してくれるか」が変わります。

入金の遅延があった場合にも対応してくれるなど保証内容が手厚い場合も、手数料が割高になる可能性があるため、予算との相談も必要です。

このように、売掛保証と一言でいってもさまざまな保証内容があるため、自社の希望を明確にした上で相談するのがおすすめです。

予算に合った料金体系かどうか

売掛保証会社によって料金体系は異なってくるため、予算に合った料金体系が用意されているかどうかは重要なポイントです。

例えば、保証できる売掛債権の総額が決まっているプランや無制限のプラン、売掛先の登録数に上限があるプランなどがあります。

また、月額制のプランを用意しているところもあります。自社の予算はもちろん、受けたい保証と料金体系が合致しているかどうかを見極めることも重要です。

万全な保証体制かどうか

売掛保証を受けるとなった場合、売掛保証会社自身の信用度についても注意を払う必要があります。

保証会社も一企業である以上は、どのくらいの体制が整っているかは会社によって異なります。

具体的には、その企業1社で保証業務を行っているよりは外部機関とも協力して保証を行っているところが安心だといえます。

また、実際に担当者と話してみて、いろいろな質問をぶつけてみたときの反応でどのくらい信用できるかを判断するのも良いでしょう。

売掛保証の利用に向いている企業の特徴

売掛保証のサービスは売掛金の保証ができる反面、手数料によって利益は減少することになります。

自社が売掛保証を利用するべきかどうかについては、以下のポイントを参考にしてください。

売掛先の数が少ない

もし売掛先企業の数が一定数あるのであれば、売掛保証のサービスを利用する意義は少ないといえるでしょう。

多くの企業と取引があり収入源が分散されているのであれば、リスクも分散されているため、売掛先の未回収や入金遅延が発生したとしてもキャッシュフローへの影響は抑えられます。

一方、売掛先の数が少なく、1社への依存度が高い企業の場合は売掛保証の利用がおすすめです。

売掛先を増やすことがリスクヘッジになるとはいっても、営業努力の部分が大きくすぐさま増やすことは難しいでしょう。

売掛先が少ない間は、リスクヘッジとしての売掛保証の利用が向いています。

売掛金を回収するまでのスパンが長い

大きな契約や長期に渡る契約があり、売掛金が回収できるまでのスパンが長いという場合にも、売掛保証のサービスが利用できます。

回収までのスパンが長いと、貸し倒れのリスクから経営上の不安を抱えることがあるかもしれません。

売掛債権が思い切った経営の妨げになるようであれば、売掛保証によって安心を得るというのも1つの手段です。

また、買取型のファクタリングを利用し、早期に資金化して事業資金とする選択肢もあります。

与信管理を自社でするのが難しい

売掛先が多い場合はすでにリスクヘッジができているため売掛保証のメリットが薄いとご紹介しましたが、売掛先が多いゆえに与信管理が難しいというケースもあります。

安心して各売掛先とビジネスを行いたいという場合にも、売掛保証のサービスが利用できます。

自社で与信審査を行うためには一定の時間やコストを必要としますが、売掛保証を利用すればプロの手による与信審査を行ってもらうことが可能です。

まとめ

ここまで、売掛保証の重要性やメリット・デメリットについてご紹介してきました。

売掛保証のサービスを利用していれば、万が一売掛債権の未回収があった場合に保証金を支払ってもらうことができ、キャッシュフローが滞ってしまう事態を防ぐことができます。

売掛債権を売却することで資金を早期に入手し、設備投資などに当てたい、キャッシュフローを改善したいという目的がある場合には、ファクタリングの利用が適しています。