売上債権回転期間とは?
2023年2月28日
売上債権回転期間とは一体どんな期間なのでしょうか。
売上債権回転期間については知らなくても、顧客の状況や入金状況について熟知している場合がありますが、売上債権管理の観点から売上債権回転期間を考えましょう。
この記事では、売上債権回転期間の意味や計算式をはじめ、目安や平均についてを紹介します。
また、売上債権回転期間が長くなる理由についても説明します。
売上債権回転期間とは
売上債権の回収率との関係
売上債権回転期間とは、売上高に対する売上債権の割合のことです。会社の売上債権がどれくらいの期間で回収できるかを計る指標として用いられます。
売上債権回転期間が短い場合とは、売上債権が回収により現金化できるまでの期間が短く、資金繰りが健全な状態といえます。売上債権回転期間が短いほど、現金回収スピードが速いということです。
会社には、売上債権(営業債権)である受取手形や売掛金と、営業外債権である貸付金、未収入金などがあり、これらをまとめて金銭債権といいます。会社は、これら金銭債権のうち、営業による債権がどのくらいの期間で回収されるのかを把握し、資金繰りを考えていかなければなりません。
会社が営業活動を進めるにあたり必要となる資金のことを「運転資金」と言いますが、売上債権回収期間が大きい会社ほど、運転資金の他への負担は大きくなるのです。
売上債権回転期間の計算式
売上債権回転期間の計算式は次のとおりです。
<売上債権回転期間 = 売上債権 ÷ 売上高>
しかし、年度で計算しても現実的ではなく、資金繰り等に有効に利用するためには、「月数」や「日数」で表します。
売上債権回転日数の計算式
売上債権回転日数の計算式は次のとおりです。
<売上債権回転日数 = 売上債権 ÷ (売上高 ÷ 365日)>
売上債権回転日数とは、何日で売上債権を回収できるかを示す指標です。
宿泊業などの場合、チェックアウト時に精算することが多いため売上債権回転日数は、短くなる傾向があります。
売上債権回転月数の計算式
売上債権回転日数の計算式は次のとおりです。
<売上債権回転月数 = 売上債権 ÷ (売上高 ÷ 12ヶ月)>
売上債権回転月数とは、何ヶ月で売上債権を回収できるかを示す指標となります。
2ヶ月を超えると会社の負担が大きくなると言われます。
売上債権回転期間の平均・目安
中小企業実態基本調査(令和元年確報)で、業態別の売上債権回転期間(月数及び日数)を求めますと、次の表のようになっています。現金取引の多い、小売業や飲食業の売上債権回転率が短くなっていることがわかるかと思います。
これに対して卸売業、製造業のように売上のほとんどが対法人であり、手形の利用が多いなどの場合には売上債権回転期間は長くなってきます。
業界や会社の規模により目安は異なりますが、売上債権改定期間(日)が30でほぼ翌月回収され、売上債権改定期間(日)が60だと、回収まで2ヶ月もかかることになります。
中小企業の目安としては、売上債権回転日数を30日以下とすることを目指しましょう。
売上債権回転期間が長いとき
売上債権回転期間が長期化する場合
例えば、売上債権回転期間が昨年より長期化した場合は、新たな資金繰りを考えないといけなくなります。継続した取引のある顧客が同様の売上があるにもかかわらず、売掛金の回収に時間がかかっている場合などは問題となる箇所を分析します。
・売上は確かに計上されているか
・売掛金から手形に変わったものはないか
・請求書は確かに届いているか
・営業担当から得意先の情報を得ていないか
・手形のサイトが変わっていないか
得意先元帳から、顧客別の売上債権回転期間を計算し、長期化している顧客はどれかを突き止めます。それが全体の回転期間を長期化する原因となっている場合もあります。
売上債権回転期間の長期化の問題点
売上債権回転期間が長期化すると何が問題かはもうおわかりだと思います。
「資金繰り」への影響です。資金繰り表は社内はもちろんのこと、取引先や金融機関の人たちが見ても納得できるものでなければなりません。計画性、安定性、安全性にどこまで配慮できるかにかかっています。
資金繰りの収支尻がマイナスとなる「資金ショート」の原因は大きく2つあり、それは「支出の増加」と「収入の減少」に他なりません。
このうち収入の減少要因には、次のケースが考えられます。
・受取手形が不渡りになった
・手形の返還や支払い繰り延べの要請を受けた
・売上が少ない
・予定していた売掛金が回収できない
定期的に売上債権回転期間をチェックすることにより、これらの問題点が把握できます。
取引先に手形の返却を依頼するのは、決済資金が不足して、そのままだと手形の不渡りを出すことが確実視される場合に不渡りを回避するためです。また、手形の繰り延べ要請とは、手形返却までには至らずとも、予定期日までに決済資金不足が決定したということです。
いずれも、手形の利用は割引手形としたり、裏書手形としたり、便利な反面、リスクがあるため手形の管理は徹底して行います。
加えて、売掛金管理においても定期的に入金業務担当者に状況報告を求めるなど回収までの期間管理を継続します。
売上債権回転期間の長期化への対策
売掛金や受取手形の管理を徹底し、売上債権回転期間を長期化しないための対策として次のようなものがあります。
①顧客情報を把握する
まず、顧客情報がすべて登録されているか確認します。顧客名、顧客住所、顧客の経理担当者、請求月、請求書フォーマット(顧客によっては専用請求書を利用することもあるため)です。1つの会社で異なる部門の場合には個々に登録したほうがよい場合もあります。
売掛金管理業務は顧客の網羅性が重要です。
②延滞の責任者を明確にする
売掛金管理においては、入金の遅延を督促するのは営業部なのか経理部なのかを社内で明確にしておきます。連絡のしかたによって、大切な顧客との関係に傷がつくこともありますので、社内における連絡担当者、責任者を決めておきます。
③顧客の締め日を管理
継続的な取引の場合は、顧客の請求締日を確認しておきましょう。請求書を提出するタイミングを変更することで回転期間が改善されることもあります。
④未回収の理由を記録
回収の遅延している売掛金について、未回収の理由がわかるものは記録に残しておきます。
単なる支払い漏れなのか、資金不足なのか、その請求に支払う意思がないのかでは、それぞれ対応のしかたも変わり、将来同様のことがあったときの参考になります。
⑤口座振替の利用
振込や手形ではなく、口座振替を利用することで期日での入金の確実性が増します。
口座振替は一過性の顧客では難しいですが、ある程度継続的な取引が想定される顧客には有効です。
上記以外にも、日単位や週単位の資金繰り表を作成したり、資金繰り予定表と資金繰り実績表の比較によって、差異が生じている顧客について状況を聞いてみる等、最終的には個々の売上に対しどのようにして早期回収をするかを経理担当だけでなく、営業等を交え会社全体で対策を立てます。
仕入債務回転期間>売上債権回転期間がよい
仕入債務回転期間とは
商品を仕入れてから買掛金や支払手形が決済されるまでの期間のことを「仕入債務回転期間」といいます。
よって、仕入債務回転期間が「仕入から支払いまでの期間」であり、売上債権回転期間は「請求から代金回収までの期間」となります。
上の図では、仕入債務回転日数は長くはなっていますが、支払が回収より前になっているため、会社の支払負担は難しい場合もあります。
そこで、資金繰りから見た理想は次のとおりです。
仕入債務回転期間 > 売上債権回転期間
資金繰りには、支払日と回収日をうまく調整して、資金不足の回避策を講じなければなりません。
予め、売掛金や受取手形の入金が終わった日を想定し、会社の支払日を決めると、入出金がかみ合います。支払日については、予め仕入先に連絡する等ある程度融通のきくものがありますので、支払日を調整して上記の不等式が成り立つように検討しましょう。
売上債権回転期間のまとめ
売上債権管理とは、単に売掛金や受取手形の管理ではなく、会社全体の資金繰りに影響する重要な情報管理です。
それぞれの顧客についての情報をできるだけ社内で共有化し、第三者に説明可能な資金繰りが可能となるように、売上債権回転期間を活用しましょう。