融資審査のポイントとは?金融機関が重視する基準と通過率を高めるコツ
2025年10月20日
事業を運営していくうえで、資金調達は欠かせません。
特に中小企業や個人事業主にとって、金融機関からの融資は最も一般的かつ重要な資金調達手段の一つです。しかし、「なぜ審査に通らないのか」「どんな点を見られているのか」が分からないまま申請している事業者も少なくありません。
この記事では、銀行や日本政策金融公庫などが行う融資審査のポイントを詳しく解説します。
審査で重視される要素を理解し、万全の準備を整えることで、資金調達の成功率を大きく高めることができます。
1. 融資審査とは何か
融資審査とは、金融機関が「申込者にお金を貸しても安全かどうか」を判断するためのプロセスです。
審査の目的はシンプルで、返済能力と信用力の確認にあります。
貸したお金が確実に返ってくる見込みがあるかどうか、これを多角的に判断するのが融資審査の本質です。
たとえば、銀行や信用金庫では、申込者の経営実績、資金の使い道、返済計画、過去の取引履歴などをもとに、融資の可否や限度額、金利条件を決定します。
このため、申込時には単なる「資金が足りない」という理由ではなく、「なぜ必要なのか」「返済計画は妥当か」といった説得力のある説明が求められます。
2. 金融機関が重視する主な審査ポイント
金融機関によって多少の違いはありますが、融資審査で共通して重視される項目は次のとおりです。
(1)事業の実態と将来性
最も重要なのは、事業が健全に運営されているか、今後も成長できるかという点です。
事業内容が明確で、安定した売上が見込める企業は審査で有利になります。
具体的には以下のような点をチェックされます。
・売上や利益の推移が安定しているか
・主要な取引先が信頼できるか
・市場や業界の動向が安定しているか
・将来的な事業計画が現実的か
単に「黒字だから大丈夫」というわけではなく、利益構造の健全性と継続性が見られます。
たとえ赤字であっても、明確な回復計画や成長戦略を示せば融資が通る可能性は十分にあります。
(2)資金使途の明確さ
融資を申し込む際、資金を「何に使うのか」は極めて重要です。
金融機関は、資金使途が明確で、返済に直結する使い道であるかどうかを重視します。
たとえば、以下のような目的であれば前向きに評価されやすいです。
・新設備の導入による生産性向上
・在庫仕入れによる売上拡大
・取引先増加に対応する運転資金
・新店舗や新サービスの展開
逆に、経営者個人の生活費補填や過剰な借入金返済など、収益向上に直結しない使い道は審査で不利になります。
「この資金がどのように事業成長に寄与するのか」を明確に説明できることがポイントです。
(3)返済能力の有無
金融機関は当然ながら「貸したお金が返ってくるか」を最重視します。
返済能力の判断には、以下のような指標が使われます。
・営業利益やキャッシュフローの安定性
・借入金返済額に対する余裕資金の割合(返済余力)
・自己資本比率や流動比率などの財務健全性
特に「返済原資=キャッシュフロー」が重要です。帳簿上の利益が出ていても、実際の入金が遅れて資金繰りが苦しい企業は、審査でマイナス評価となります。
資金繰り表を整備し、毎月の入出金の見通しを示せるようにしておくことが望ましいです。
(4)経営者の信用力
融資審査では、事業だけでなく経営者本人の信用も重視されます。
金融機関は「誰に貸すのか」を非常に重要視しており、経営者の誠実さ・実績・経営姿勢が融資判断を大きく左右します。
チェックされる主な項目は次のとおりです。
・過去の借入や返済履歴(信用情報)
・税金・社会保険料の納付状況
・経営者の自己資金比率
・事業に対する姿勢や危機対応力
「自己資金をしっかり投入している」「日々の経理を丁寧に行っている」といった行動も信頼につながります。
逆に、税金滞納や杜撰な帳簿管理は信用を失う要因です。
(5)担保・保証人の有無
融資の安全性を確保するために、担保や保証人の有無も審査項目に含まれます。
特に銀行融資では、不動産担保や保証協会の保証がある場合、審査が通りやすくなります。
ただし、担保や保証がなくても、事業の将来性や経営者の信頼性が高ければ融資が実行されるケースもあります。
日本政策金融公庫や一部の信用金庫では、無担保・無保証での融資制度も整備されています。
3. 融資審査を通過するための実践的ポイント
審査での印象を高め、融資通過率を上げるためには、次のような具体的な準備と工夫が効果的です。
① 資金計画を明確に立てる
「いくら必要か」「いつ必要か」「どのように返すか」を具体的に示すことが大切です。
あいまいな申請は「資金管理ができていない」と判断される可能性があります。
融資担当者が納得できる根拠を数字で示しましょう。
② 経営計画書を丁寧に作成する
特に新規創業や赤字企業の場合は、将来的な見通しを伝えるために「経営計画書」が必須です。
収支計画、マーケティング戦略、リスク対策を具体的にまとめ、「この事業なら回収できる」と思わせる資料を用意しましょう。
③ 財務状況を整理し、黒字化の見通しを立てる
決算書や試算表の整合性を確認し、必要であれば専門家にチェックしてもらいましょう。
経営改善計画書を添えることで、赤字でも前向きに評価されるケースがあります。
④ 金融機関との信頼関係を築く
審査担当者は「この人に貸したい」と思える経営者を重視します。
普段から取引銀行とコミュニケーションを取り、事業報告をこまめに行うことが信頼につながります。
また、複数行に同時申請するよりも、主力取引銀行を中心に申請する方が効果的です。
4. 融資が通りにくいケースとその改善策
融資審査に落ちる主な理由としては、次のようなものがあります。
・赤字や債務超過で返済能力に疑問がある
・税金・社会保険料の滞納がある
・事業計画が抽象的・根拠が乏しい
・過去に返済遅延や信用事故がある
これらを改善するには、まず**経営状況の「見える化」**が重要です。
数字やデータを整理し、根拠をもって説明できるようにすることで、印象は大きく変わります。
また、信頼できる税理士や中小企業診断士に相談し、第三者の意見を取り入れるのも効果的です。
5. まとめ:融資審査は「信用」と「準備」で決まる
融資審査は、単に書類を提出して結果を待つだけのものではありません。
金融機関の立場から見て、「安心して貸せる」と思わせる情報を丁寧に整えることが成功の鍵です。
ポイントを整理すると次のようになります。
・事業の実態と将来性を具体的に示す
・資金使途を明確にし、返済計画を現実的に立てる
・経営者の信用を高める行動(納税・誠実な対応)を継続する
・財務データや事業計画を整備し、説得力ある資料を用意する
これらを意識して準備すれば、融資審査の通過率は確実に上がります。
「信用は一日にして成らず」。日々の経営姿勢が、融資成功の最大のポイントとなるのです。
