3社間ファクタリング契約で確認すべきこと | 注意点や安全に利用するためのポイントも紹介

2024年6月9日

ファクタリングを利用するためには、利用条件を記載した契約書を作成します。ファクタリング会社によって記載される項目が異なるため、契約書についてしっかり理解しておくことが大切です。

当記事では、ファクタリングの契約書で確認すべき項目や注意点、安全に利用するためのポイントを紹介します。

ファクタリングにおける契約形態とは?

ファクタリングは、企業が保有する売掛債権を期日前に現金化することで、資金調達できるサービスです。利用者はその対価として手数料をファクタリング会社に支払います。ファクタリングの契約形態には、以下のような種類があります。

2社間ファクタリング

2社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社のみで取引する形態です。売掛先への通知や承諾が必要なく、スピーディーに取引が可能ですが、手数料が高めに設定されています。

2社間ファクタリングについては、「2社間ファクタリングとは?違法性や3社間ファクタリングとの違い、利用するメリットを解説」で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

3者間ファクタリング

3者間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社、売掛先の3社が契約する形態です。3社間ファクタリングを利用するためには、債権が譲渡されたことを売掛先に通知し、承諾を得る必要があります。2社間ファクタリングより手数料が低く設定されることが多いですが、通知または承諾を得るための時間がかかる点がネックです。

ファクタリングで必要な契約書は大きく2つ

ファクタリングで必要な契約書は、売掛債権譲渡契約書と業務委託契約書の2つです。

売掛債権譲渡契約書は、売掛債権の譲渡を証明する契約書です。契約書には譲渡する売掛債権の範囲、債権譲渡通知の有無、債権譲渡登記の有無、手数料、契約の解除条件、損害賠償や違約金に関する条項などが記載されています。

業務委託契約書は、2社間ファクタリングを契約する際に必要となる契約書です。本来であれば、ファクタリング会社が売掛金の回収を行いますが、2社間ファクタリングは取引先に通知が行われない取引です。ファクタリング会社に代わって利用者が売掛金を回収する必要があるため、業務委託契約書が必要になります。

ファクタリングの契約書で確認すべき9つの項目

ここでは、ファクタリングの契約書で確認すべき項目を8つ紹介します。

1.債権譲渡通知

債権譲渡通知は、売掛債権の譲渡を売掛先に知らせるかを記載した項目です。3社間ファクタリングでは債権譲渡通知が必要ですが、2社間ファクタリングでは不要です。

2社間ファクタリングで、債権譲渡通知がないかを確認しておきましょう。ただし、2社間ファクタリングであっても踏み倒しが起こると判断された場合は、債権譲渡通知が行われることがあります。

2.債権譲渡登記

債権譲渡登記は、債権の譲渡が正式に行われたことを公的に記録するための手続きです。2社間ファクタリングでは、二重譲渡(同じ売掛債権を他の会社に売却すること)を防ぐために、利用社に債権譲渡登記を求める場合があります。

3.償還請求権

償還請求権とは、倒産などの理由で売掛金を回収できなくなった場合に、ファクタリング会社が利用者に請求できる権利です。償還請求権がある場合は利用者が弁済する必要があります。

ただしファクタリングは融資ではなく、売掛債権の譲渡であり、原則として売掛金の未回収のリスクはファクタリングが負います。そのため、ファクタリングは基本的には償還請求権のない契約です。未回収リスクを回避するためにも、償還請求権があるかどうかを確認しておきましょう。

4.担保・保証人

ファクタリングは融資ではないため、融資で必要な担保や保証人は必要としません。担保や保証人が記載されている場合は注意が必要です。悪徳業者である可能性があるため、契約しないようにしましょう。

5.手数料

ファクタリングでは、売掛金の買取に手数料が発生します。一般的に、2社間ファクタリングの手数料相場は10%〜20%、3社間ファクタリングは1%〜10%とされています。ファクタリングの相場を参考にしながら、手数料の内訳や追加で発生する費用がないかを確認しましょう。

6.報告義務

報告義務が記載されている場合は、売掛先の経営状況に変化があった場合に報告する必要があります。

7.損害賠償・違約金

損害賠償・違約金は、契約違反が発生した際にどのような責任を負うかを定めた項目です。どのような時に損害賠償・違約金が発生するのかを確認しておきましょう。

8.契約解除

契約解除の項目では、どのような契約違反があった場合に契約解除となるかが記載されています。

契約期間中であっても契約違反があった場合は契約解除となり、代金の返金を求められる場合があります。ファクタリング会社によっては契約解除の条件が異なるため、確認しておきましょう。

9.契約期間

ファクタリングは通常、1回の取引で終了します。しかしファクタリング会社によっては継続利用を前提とした契約書を作成している場合があります。契約期間はどれくらいあるのか、自動更新であるかをチェックしておきましょう。

ファクタリングの契約書を交わす際の流れ

ここでは、ファクタリングの契約書を交わす際の流れを紹介します。

・手数料や入金スピードなどの条件を検討する
・ファクタリングを申し込む
・売掛債権の審査が行われる
・ファクタリング会社と契約を結ぶ
・ファクタリング会社から入金される
・各ステップについて順を追って解説します。

1.手数料や入金スピードなどの条件を検討する

ファクタリングを利用する前に、複数社で手数料や入金までのスピードなど条件をしっかりと検討する必要があります。手数料や入金スピードなどはファクタリング会社によってさまざまです。

例えば、急ぎで資金が必要な場合は、即日遅くて数日での対応が可能なファクタリングを選ぶことが重要です。

複数社で比較検討し、自社の資金調達ニーズに合致したファクタリングサービスを利用しましょう。

2.ファクタリングを申し込む

利用するファクタリングサービスが決まったら、ファクタリング会社に申し込みます。申し込み方法は以下の4つが一般的です。

ファクタリング会社のホームページから申し込む
電話で申し込む
郵送で申し込む
直接訪問して申し込む
申し込みの際には、請求書や通帳のコピー、身分証明書などを提出する必要があります。必要書類は各ファクタリング会社で異なるため、事前に確認して揃えておきましょう。

3.売掛債権の審査が行われる

申し込み後、ファクタリング会社による売掛債権の審査が行われます。基本的に書類をもとに審査が進められますが、必要に応じて電話やメール、面談にて質問が求められる場合があります。

ファクタリングの審査は銀行融資の審査と比べると、自社の信用力はそこまで重視されません。ファクタリング会社にとって重要なのは、売掛金を回収することであるからです。そのため審査では、売掛債権の質(規模や支払期日)や売掛先の信用状況、財務状況などが重点的にチェックされます。

4.ファクタリングの契約を結ぶ

審査に通過したら、ファクタリング会社と正式な契約を結びます。利用者は、このタイミングで契約書を作成します。契約書の内容は一語一句目を通し、不明な点は遠慮せず担当者に聞きましょう。

契約書は2枚作成し、利用者とファクタリング会社でそれぞれ1枚ずつ保管します。ファクタリングの取引が行われたことを証明する書類であるため、絶対になくさないようにしてください。

5.ファクタリング会社から入金される

契約が成立すると、ファクタリング会社から手数料を差し引いた分の代金が指定の口座に入金されます。

ファクタリングの契約を交わす際の注意点

ファクタリングの契約の際に注意しなければいけないのが、悪徳業者の存在です。貸金業の登録が不要であることに漬け込んで、法外な手数料や違法な契約を行う悪徳業者が存在します。

ファクタリングだと思ったら、高金利の貸付であったという被害事例も報告されています。悪徳業者に騙されないためにも、契約書の内容をしっかりと理解することが大切です。

回答をはぐらかしたり、対応が不誠実である場合は悪徳業者である可能性があるため、契約はしないようにしましょう。

ファクタリングを安全に利用するためのポイント

ここでは、ファクタリングを安全に利用するためのポイントを紹介します。

手数料相場との乖離はないかを確認する

ファクタリング会社が提示する手数料が相場と大きく乖離していないかを確認しましょう。

しかし、手数料はファクタリング会社によって異なるため、複数の会社を比較検討することが賢明です。相場よりも高い手数料を提示された場合は、その理由を明確に聞き、納得できない場合は他の会社を検討しましょう。

契約期間の認識に間違いはないかを確認する

ファクタリング会社は、基本的に1回きりの契約ですが、複数月で取引を行う契約もあります。継続取引の場合は、どれくらいの期間なのか、月額手数料が発生するのかを確認する必要があります。

また、契約はいつでも解除できるか、どのような条件で契約解除できるのかも確認しておきましょう。

契約書の控えを用意してもらえるかを確認する

契約書の控えを用意してもらえるかを確認しましょう。契約書は、取引の条件や約束事を明確に記載した法的効力を持つ重要な文書です。後々のトラブルを避けるためにも、利用者とファクタリング会社で契約書を保管しておくのが一般的です。

ファクタリング契約では償還請求権や債権譲渡通知、手数料など、確認すべき項目が多岐にわたります。そのため、契約締結時に控えを受け取ることを忘れないようにしましょう。なお、悪徳業者の場合は、なにかと理由をつけて契約書の控えを用意してくれない場合があるため、注意が必要です。

ファクタリングの契約書を交わした後に行うべきこと

ここでは、ファクタリングの契約後に行うべきことを紹介します。

入金を確認する

契約締結後、ファクタリング会社から手数料を差し引いた分の売掛金の代金が入金されます。契約通り、指定の口座に入金があったのか、金額に誤りがないかを確認します。入金がない場合や金額が異なっている場合は、ファクタリング会社に速やかに連絡しましょう。

2社間ファクタリングの場合は、ファクタリング会社に売掛金を支払う

2社間ファクタリングでは、売掛先から売掛金が入金されたら、利用者はファクタリング会社に売掛金を支払いましょう。

なお、契約後の売掛債権はファクタリング会社のものです。入金された売掛金を他の支払いに流用すると、売掛金を支払えない事態になりかねません。売掛金が支払えない場合は損害賠償や横領罪に問われる可能性があるため、流用をしないようにしましょう。

債権譲渡登記を抹消する

2社間ファクタリングで債権譲渡登記を行った場合は、取引終了後に債権譲渡登記を抹消しましょう。

抹消登記を行わないと、次回別のファクタリング会社に契約する際に、二重譲渡と捉えられる可能性があります。トラブルを防ぐためにも、取引終了後の抹消登記は必ず行いましょう。債権譲渡登記の抹消登記は、申請書類の提出と登録免許税として1,000円ほどかかります。

まとめ

ファクタリングの契約書には専門用語も含まれていることから、目を通すのが面倒だと感じる方もいるかもしれません。しかし、契約後の食い違いやトラブルを防ぐためにも、契約書の項目を理解したうえで、隅々までチェックすることが大切です。