給料ファクタリングはなぜ違法なのか?仕組みと危険性を徹底解説

2025年8月24日

近年、ネット上で「給料ファクタリング」という言葉を見かける機会が増えました。「給料日前に現金が手に入る」「審査が甘いから誰でも利用できる」といった宣伝文句に惹かれ、利用を検討した人もいるかもしれません。
しかし、給料ファクタリングはすでに金融庁や裁判所によって「違法」と判断されているサービスです。なぜ違法とされるのか、その背景や仕組み、リスクについて詳しく解説します。

給料ファクタリングとは何か

給料ファクタリングとは、勤務先から支給される予定の給与を担保にして、業者から前もって現金を受け取る仕組みを指します。
例えば、月末に20万円の給与を受け取る予定の労働者が、その前に10万円必要になったとします。このとき、給料ファクタリング業者に給与債権を「売却」したことにして、実際には8万円程度を受け取り、後日給与が支払われたら10万円を業者に返すという流れです。

一見すると「給与債権の売買」であり、正規のファクタリングのように見えますが、実態は「給与を担保にお金を借りる」行為とほとんど変わりません。

通常のファクタリングとの違い

一般的にファクタリングとは、企業が取引先に対して持つ売掛金を金融業者に譲渡し、早期に資金化する手段です。

・対象:法人が保有する売掛債権

・法律上の根拠:民法に基づく債権譲渡

・社会的意義:中小企業の資金繰り改善

これに対して給料ファクタリングは、

・対象:労働者個人の給与債権

・法的根拠:あいまい、貸金業法の規制を回避するため「売買」と偽装

・社会的影響:高額な手数料による生活困窮

という特徴があり、正規のファクタリングとは性質がまったく異なります。

給料ファクタリングが違法とされる理由

では、なぜ給料ファクタリングは違法とされるのでしょうか。主な理由は3つあります。

1. 実態が「貸金業」に該当するため

給料ファクタリング業者は「給与債権の買取だから貸付ではない」と主張します。しかし実際には、給与支給日までのつなぎ資金を労働者に渡し、後で給与から回収する仕組みになっています。
これは形式上「売買」であっても、実態は「金銭の貸付」と認定されます。貸金業を営むには貸金業法に基づく登録が必要ですが、多くの給料ファクタリング業者は無登録で営業しており、明らかに違法です。

2. 違法な高金利の発生

給料ファクタリングの手数料は「20%〜50%」といった高額なケースが多く、年利換算すると数百%に達することもあります。これは利息制限法や出資法の上限を大幅に超えており、ヤミ金と同等の行為と判断されます。

3. 利用者保護が欠如している

貸金業法では、借り手を守るための上限金利や取り立て規制が定められています。しかし給料ファクタリング業者は「債権売買」という名目を利用し、これらの規制を回避してきました。結果として、過酷な取り立てや給与口座の差し押さえなど、利用者が深刻な被害に遭う事例が後を絶ちません。

行政と裁判所の判断

2020年以降、複数の裁判所が「給料ファクタリングは貸金業に該当する」と判断し、業者の行為を違法と認定しました。
さらに金融庁・消費者庁も合同で注意喚起を発表し、給料ファクタリングは利用者に重大な不利益を与える違法行為であると明言しています。こうした動きを受け、多くの業者が摘発や業務停止命令を受けました。

給料ファクタリングを利用した場合のリスク

もし利用してしまった場合、以下のようなリスクが想定されます。

・返済負担の増大
高額な手数料により、利用者は給与を受け取っても実際の手取りが減り、さらに生活が苦しくなる。

・違法な取り立て
業者から執拗な電話やメールによる督促を受けたり、勤務先に連絡が入るなど、社会生活に大きな悪影響を及ぼす。

・個人情報の悪用
申込時に提供した身分証や給与明細、銀行口座の情報が不正に利用される可能性がある。

・多重債務に陥る危険
一度利用すると返済が追いつかず、他の違法業者を転々と利用する悪循環に陥ることもあります。

合法的な給与前払いサービスとの違い

ここで注意が必要なのは、「給与前払いサービス」との混同です。
給与前払いサービスは、企業が福利厚生として導入し、労働者がすでに働いた分の給与を前倒しで受け取れる仕組みです。これは企業と従業員の直接契約であり、貸金業法の規制対象にはなりません。
違法性があるのは、第三者の業者が介入して給与債権を担保に資金を渡す「給料ファクタリング」です。

給料ファクタリングを利用しないためにできること

違法なサービスに巻き込まれないためには、以下の点に注意しましょう。

・「審査なし・即日入金・給料を現金化」といった広告には注意

・資金が必要な場合は、企業の給与前払い制度や正規の金融機関を利用

・消費生活センターや弁護士に相談する

特に生活費の不足など急を要する場面では冷静さを欠きやすいため、あらかじめ信頼できる資金調達手段を把握しておくことが重要です。

まとめ

給料ファクタリングは、名称こそ「ファクタリング」とされていますが、その実態は違法な貸金業です。高額な手数料や過酷な取り立てにより、利用者の生活や信用を大きく損なう危険性があります。
裁判所や金融庁もすでに違法性を認定しており、今後も摘発は続くでしょう。

急な資金が必要な場合でも、給料ファクタリングの利用は絶対に避け、合法的で安全な方法を選択することが大切です。正規の金融機関、あるいは勤務先の給与前払い制度などを活用し、生活の安定を第一に考えるようにしましょう。