短期借入金とは、長期借入金との違いも併せて解説
2023年4月27日
借入金には短期借入金と長期借入金の2つがあり決算書などでよく見ると思います。どちらも借入金であることに違いはないのですが、返済までの期間が異なるのが特徴です。
ここでは短期借入金の特徴と長期借入金との違い、そして短期借入金の仕訳例を見ていきましょう。
短期借入金とは?
短期借入金とは、決算日の翌日から起算して1年以内に返済を予定しているものです。
短期借入金の種類
短期借入金に該当する借入金の種類は以下の通りです。
・取引先や個人からの借入金
・当座借越
・手形借入金
・銀行からの借入金
株主や役員、従業員からの借り入れは、他の借り入れ先よりも高い利率で借り入れることによって利益供与を行うリスクがある、また通常の資金調達の方法ではないという判断になるため、区別して管理しましょう。
短期借入金と長期借入金はどう違う?
同じ借入金であっても、短期借入金と長期借入金では性質が異なります。ここでは借入金として資金を調達する場合に、短期借入金と長期借入金にはどのような違いがあるのかを見ていきましょう。
短期借入金の定義
短期借入金は、会計上で1年以内に返済期日が到来する借入金です。銀行や信用金庫といった金融機関が借入先となっており、一般的に長期借入金よりも金利が低くなる傾向があります。また短期での借り入れは運転資金を想定し、最終的に売掛金を回収できれば返済できるように設計します。売掛金の範囲内ならば、赤字だとしても融資を受けられる可能性があるのです。
長期借入金の定義
長期借入金は、返済期日が1年を超える借入金です。設備投資の手当てであることが多く、利益と減価償却費の計上によるキャッシュフローで返済します。担保の提供・事業計画を求められることも多いので、継続的な営業キャッシュフローの見込みがないと、審査のハードルが高い融資を受けるのは難しいでしょう。
長期借入金は借入先によって金利が大きく変わる点も特徴です。金融機関の場合は変動金利・有担保であることが主なので、土地や建物、株式などを保有していないと借入ができません。しかし最近は金融庁の指導により、できる限り無担保での貸し付けを行うことが増えています。優良企業であると認められれば、代表取締役の連帯保証も求めない、という金融機関が多いです。
大きな違いは「返済期限」
短期借入金と長期借入金の違いは、返済期限の違いです。そもそも借入金とは、企業が調達する資金の中で株式や社債の発行を必要とせず、金融機関などから調達した金銭債権です。
1年基準が適用となり、短期借入金と長期借入金に区別されます。ただし貸借対照表の日付から起算し、返済期限が1年を超える場合は長期借入金です。
短期借入金の区分
短期借入金は、貸借対照表の「流動負債」として区分されます。負債の部というのは、将来支払う必要のある債務です。会社が他人から調達した資金という意味で「他人資本」と呼ばれることもあります。
また負債の部は返済期間が1年内のものを「流動負債」、返済期限が1年以上のものを「固定負債」として区分するため、短期借入金は流動負債、長期借入金は固定負債として分類されます。
短期借入金のチェックポイント
短期借入金について、知っておきたいポイントを紹介します。
当座比率
現金・預金・売掛金・受取手形などすぐにお金に替えられる可能性の高い資産のことを「当座資産」と呼びます。流動比率は現金化が難しい棚卸資産も含んで計算しますが、棚卸資産は売れないと現金化されないため、当座資産には含みません。
現金化されやすい当座資産だけに絞ることで、流動比率よりも厳しい目で会社の支払い能力をチェックします。
当座比率=当座資産╱流動負債×100
当座比率も、流動比率と同じく数式で算出される値が100%を切ると、やはり支払いが厳しくなる可能性が高いです。ただし実際は80%程度が平均値となるため、80%を下回る場合はかなり危険だと考えましょう。
流動比率
短期借入金の返済期限は1年以内です。額が大きいと資金繰りに大きな影響を及ぼすため、適切な額の範囲を超えていないかどうかを見る指標として「流動比率」が使われます。
流動比率=流動資産╱流動負債×100
流動資産は、現金・受取手形・預金・棚卸資産・売掛金などです。一方、流動負債は支払手形・買掛金・未払費用などが含まれます。
流動資産が流動負債よりも多いと、短期的な支払い能力は十分あるとみなされます。しかし流動資産よりも流動負債が多くなると、1年以内に資金が足りなくなる可能性が高いでしょう。計算式で算出される値が100%を切る場合は注意が必要です。
短期借入金の実際の仕訳例
短期借入金について十分理解したところで、短期借入金でよくある仕訳例をチェックしていきます。短期借入金は支払利息・租税公課とは区別して仕訳をしてください。借入金が複数に渡る場合は、借入先ごとに補助科目を設定しておくと、管理しやすいです。また長期借入金の返済期間が残り1年となったら、短期借入金に振り分けましょう。
3ヶ月前の借入金を返済した場合
1, 銀行から3ヶ月後を期限として運転資金100万円を借り入れた
借方:普通預金 1,000,000
貸方:短期借入金 1,000,000
2, 3ヶ月前の借入金を利息1万円と一緒に返済した
借方:短期借入金 1,000,000 支払利息 10,000
貸方:普通預金 1,010,000
長期借入金だった借入金の返済期限が残り1年となった場合
3, 決算時、1年以内に返済予定の長期借入金100万円を短期借入金として振り替えた
借方:長期借入金:1,000,000
貸方:短期借入金 1,000,000
長期借入金の返済期間が残り1年となると、短期借入金に振り替えるのが一般的です。ただし、負債及び純資産の合計額の100分の1を超える額である場合は「1年以内返済予定長期借入金」として流動負債に計上してください。
当座借越契約の締結を行って借入をした場合
1, 当座借越契約の締結で100万円を借り入れた
借方:当座預金 1,000,000
貸方:短期借入金 1,000,000
2, 80万円を返済した
借方:短期借入金 800,000
貸方:当座預金 800,000
期末で当座預金口座がマイナス20万円であり、これを借入金に振り替えた
借方:当座預金 200,000
貸方:短期借入金 200,000
当座借越契約には専用当座借越と一般当座借越があります。専用当座借越は一定の額まで借り入れができ、その額まではいつでも借り入れと返済ができるという方法です。一方で一般当座借越は当座預金口座がマイナスでも決まった額までは自動的にマイナスにできる、という方法です。
短期借入金以外にも勘定科目は多くあります。中には違いがわからなかったり、適切な勘定科目がわからず、雑損失に振り分けてしまうこともあるのではないでしょうか。
当サイトで無料配布している「勘定科目と仕訳のルールBOOK」では、短期借入金以外にも、合計で86個の勘定科目と仕訳例について解説しています。そのため、「勘定科目を覚えられない…」という方にもおすすめです。雑損失の金額が膨らみ、税務署から指摘を受ける前に、確認しておきましょう。
短期借入金を把握して不備のない仕訳を!
短期借入金は、決算日の翌日より1年以内に返済する借入金に使用する勘定科目のことです。貸借対照表の日付から起算し、返済期限が1年を超える場合は長期借入金となる点に注意してください。短期借入金にもさまざまな種類があるため、仕訳も複雑になりがちです。
資金調達に欠かすことができない短期借入金を、きちんと扱って不備のない仕訳を行いましょう。