資金調達におけるタームシートとは?
2024年1月1日
投資契約とは
会社がVC等の第三者から投資を受ける際には投資条件等を定めるための契約を締結する必要があります。このとき、契約当事者となるのは、投資を受ける会社、既存株主である創業者等、新たに投資するVC等の三者です。
投資契約を締結すること自体は会社法で求められている手続ではありませんが、契約を締結していないと投資を受けた企業としてはVC等から受けた金員が投資目的のものであることを証明することができないため後々トラブルの元になりかねません。投資目的のものといえなければ、後からVC等に出資金を引き上げられたりするリスクもあるのです。このため、特に投資を受ける会社にとって投資契約をきちんと締結することは大切です。
投資契約の種類
投資を受ける際に締結される契約については一本の契約書として作成することも不可能ではないのですが、通常は契約内容に応じて複数の契約書にわけて締結されます。投資家と契約を締結する際にもっとも重要となるのは投資契約書と株主間契約書です。
投資契約書は、投資を受ける会社と新たに投資をするVC等の投資家との間で締結される契約書であり、投資対象となる株式等の内容に関する条項や、投資判断の前提となる投資先企業の財務状況や経営状況に関する条項などが定められます。
これに対し、株主間契約書は、創業者などの既存株主を含めて締結される契約です。多くの場合、創業者などの既存株主は投資を受ける会社の持株比率の過半数以上を保有しています。会社法上、持株比率の過半数以上を持つ株主は原則として会社経営の基本的事項に関して単独で決定することができます。VC等の投資家としては経営に関与することを前提として投資していることも多いのですが、それを実現するためには創業者など過半数以上の持株比率を維持する既存株主を契約で拘束しておく必要があるというわけです。
投資契約における第三者割当増資
VC等による投資の対象が株式である場合には、投資を受ける会社がVC等の投資家のために新たに株式を発行することになります。このとき用いられる手法が第三者割当増資です。第三者割当増資とは、会社が特定の第三者に対して新たに発行する株式を引き受ける権利を付与し、VC等の投資家がこれを購入するという手続であり会社法上定められた株式発行の方法の一つです。第三者割当増資により株式を発行しVC等の投資家から資金調達をする場合には、投資条件等を含め契約交渉段階で決定すべき事項が多岐にわたります。
投資契約におけるタームシート
タームシートの意義
第三者割当増資によって新たに株式を発行してVC等の投資家から資金調達する場合には投資契約を締結することになりますが、この投資契約の内容は長大となりがちで、なおかつ複数の当事者との間と契約交渉段階で複雑な権利関係の調整をする必要があります。
このため、投資契約書を作成する前段階で主要な契約条件を一覧表形式で列挙したタームシートを作成し、これをベースとして契約交渉をすることが実務上よく行われています。
タームシートの項目
投資契約および株主間契約におけるタームシートの項目は投資案件ごとに異なるためあくまでも目安となりますが、主要な項目は以下のとおりです。なお、種類株式を発行する場合には、種類株主に関する内容も追加されます。
契約当事者に関する事項
資金調達の概要(発行する株式の種類、発行可能株式総数および発行済株式総数、発行株式数、発行価額、払込金額の総額、払込条件、資本金等、払込期日、資金使途等)
種類株式に関する事項(優先配当、残余財産分配の優先、取得請求権、取得条項、議決権、株式分割等)
株式に関する事項(表明保証、投資家の優先引受権、契約違反時の取り扱い、契約終了等)
会社の運営に関する事項(資金使途、上場努力義務に関する条項、取締役やオブザーバーの派遣、投資家に対する事前承認・事前通知、投資家に対する情報開示、創業株主の専念義務等)
種類株式に関する事項
VC等から投資を受けるにあたって種類株式を発行する場合には、種類株式に関する条項がタームシートに記載されます。種類株式とは、権利等に関する内容の一部が異なる株式をいいVC等から投資を受けるときに利用されることがあります。
例えば、剰余金配当や残余財産分配に関して異なる内容を定めた種類株式や、一定の株主総会決議事項について拒否権を付与する内容の種類株式などがあります。VC等の投資家は、投資後に投資先企業の経営にある程度関与することを想定しているため、このような内容を持つ種類株式を発行することがあります。