サプライチェーン・ファイナンスとは?
2023年10月23日
大流行したコロナウィルスなどの影響により、サプライチェーンの分断や複雑化が大きな話題となっています。
課題の多いサプライチェーンの一連の流れに資金を供給し、円滑化するための仕組みとして「サプライチェーン・ファイナンス」の重要性が増しています。ブロックチェーン技術を活用する動きもみられるサプライチェーン・ファイナンスの仕組みをわかりやすくひも解いていきます。
サプライチェーンとは?
そもそもサプライチェーンとは何なのでしょうか。商品や製品は消費者の手元に届くまで、原材料や部品などの購入、商品・製品の製造、小売店や販売店の販売までさまざまな企業が関わっています。
こうした調達から販売までのフローの中で行われる取引のサイクルをチェーン(鎖)に見立てて、サプライチェーンと呼んでいます。
サプライチェーン・ファイナンスとは何か
サプライチェーン・ファイナンスとは、企業の構築する部品や原材料の供給網といったサプライチェーンに金融機関が絡み、売掛債権の購入などを実施することで、製品の製造から販売までの一連の流れにおける企業の早期資金化をサポートする金融サービスのことです。
商品が製造され、販売に至るまでのサプライチェーン全体に資金を供給することで、そこに関わる企業全体の資金繰り改善を可能にする、新しい融資形態の1つといえます。
従来から銀行は手形の割引などにより、これらの運転資金を供給しているものの、サプライチェーンの複雑化・グローバル化が進展しており、資金需要の拡大に対応できていませんでした。
これに対して、サプライチェーン・ファイナンスは、金融機関が商品や製品の供給元であるサプライヤーの信用力を評価して、必要なときにバイヤーに代わって代金の立て替え払いをする。金融機関は、手数料やリスクに応じた支払代金のディスカウントを行うことで利益を得ます。
昨今はサプライチェーン・ファイナンスによる証券化商品も組成され、機関投資家による投資も拡大しています。
サプライチェーン・ファイナンスが普及した背景
サプライチェーン・ファイナンスが普及してきたのは、主に2008年のリーマンショック後。欧米を中心に中小企業向けの資金供給が難しくなったことが原因で、欧米の大手銀行が新たな収入源を構築するために、大企業の信用力を利用した中小向け金融の仕組みを考案したのが始まりだと言われています。
従来、日本企業の資金調達は、不動産担保と小切手や約束手形などの企業間の信用取引でした。紙ベースの約束手形は、発行、保管、配送にコストがかかり、紛失や盗難のリスクから次第に減少していきます。また、不動産担保もバブル崩壊後の地価下落の影響もあり、企業が融資を受けるにはハードルが高いものになっていきました。
その中で、2008年12月に電子記録債権法が施行されます。2013年には、金融庁が動産・売掛金担保融資(ABL)を積極的に推進しました。テクノロジーの進化に伴う債権のデジタル化は、資金調達のコスト削減にもつながっています。複雑な流通経路となるサプライチェーンに対する融資システムも、現在の技術なら組むことが可能になりました。
サプライチェーン・ファイナンスの仕組み
通常取引においてサプライヤーは、顧客に商品やサービスを提供し、請求書を発行して支払いを受けます。しかし、サプライチェーン・ファイナンスは、以下のような仕組みとなります。
①サプライヤーは、バイヤーに商品を納品し30~180日後などの支払条件で代金を支払うことを約束する
②サプライヤーは、金融機関に承認された請求書を渡し、すぐに債権額に応じた金額の支払いを金融機関から受け取る
③バイヤーは、指定された期日に金融機関へ商品の代金を支払う
実際のサプライチェーンのフローは、さらに複雑なものになるでしょう。なぜなら、親元のサプライヤーの販売先であるバイヤーは複数あり、さらにそれぞれが販売網を有しているからです。1つの商品を製造するメーカーは、部品や原材料を購入するバイヤーにもなります。
また、部品を納入する企業は原材料を購入するバイヤーとなり、部品を供給するサプライヤーと原材料を購入するバイヤーを兼ねることは珍しくありません。近年は、電子記録債権の発行により売掛債権が電子化され、債権の分割が容易になっています。
複雑なサプライチェーンのフローの中で、売掛債権は分割して一部を支払いに回し、一部を期日まで保有することも可能です。売掛債権の電子化により、サプライチェーン全体の企業の資金繰りや支払い問題は、柔軟に対応できるようになっています。