株式の発行方法とは?企業の資金調達手段としての仕組みと流れを徹底解説

2025年10月15日

企業が事業を拡大したり、新規プロジェクトを立ち上げたりする際に必要となるのが「資金調達」です。その中でも、自社の株式を発行して資金を集める「株式発行」は、借入によらない有力な資金調達手段の一つです。特にベンチャー企業やスタートアップにとっては、成長のための大きな原動力となります。
ここでは、株式発行の基本的な仕組みから、発行の具体的な方法、手続きの流れ、そして発行時の注意点までをわかりやすく解説します。

1. 株式発行とは何か

「株式発行」とは、会社が新たに株式を発行し、投資家に引き受けてもらうことで資金を調達する方法を指します。株式を購入した投資家は、その会社の「所有者」の一部となり、配当を受け取る権利や、経営に関する議決権を持つようになります。

株式発行による資金調達は、銀行融資のように返済義務が発生しない点が大きな特徴です。そのため、企業は資金を得ながらも負債を増やさず、財務体質を健全に保つことができます。ただし、株主が増えることで経営権の分散が進むリスクもあるため、慎重な判断が求められます。

2. 株式の発行には2種類ある

株式発行には大きく分けて「設立時発行」と「新株発行(増資)」の2種類があります。

(1)設立時発行

会社を設立するときに、創業者や出資者が出資を行い、その対価として株式を受け取る形が「設立時発行」です。
たとえば、創業者が1,000万円を出資して会社を設立し、その資金をもとに会社が活動を開始するというように、会社のスタートアップ資金を集める段階で発行されます。

(2)新株発行(増資)

既に設立済みの会社が、新たに株式を発行して資金を調達する場合を「新株発行」または「増資」と呼びます。
事業拡大や設備投資、研究開発資金など、企業の成長に向けて必要な資金を確保するために行われます。新株発行の主な目的は資金調達ですが、他にも提携先企業や従業員へのインセンティブとして株式を発行するケースもあります。

3. 新株発行の主な方法

新株発行にはいくつかの方法があります。それぞれの方法によって、株式を誰にどのように発行するかが異なります。

(1)第三者割当増資

特定の投資家や企業、ベンチャーキャピタルなどに対して、新株を発行する方法です。
たとえば、提携先企業に株式を発行することで関係を強化したり、ベンチャーキャピタルからの出資を受けることで成長資金を得たりするケースが該当します。
この方法は柔軟でスピーディーに資金調達できる一方で、発行条件の妥当性や既存株主との公平性を保つ必要があります。

(2)公募増資

広く一般の投資家に新株を募集する方法です。上場企業が行うケースが多く、証券会社を通じて多くの投資家から資金を集めます。
市場を通じて資金調達できる反面、発行手数料や開示コストなどがかかるため、ある程度の規模を持つ企業でないと実施は難しいといえます。

(3)株主割当増資

既存の株主に対して、保有株数に応じて新株を割り当てる方法です。既存株主が新たに資金を出すことで会社の資金を増やす形になります。
既存株主の持株比率が保たれるため、経営権の希薄化を防ぐことができる点がメリットです。

(4)ストックオプション(新株予約権)

従業員や役員に対して、あらかじめ定めた価格で将来的に株式を取得できる権利を与える仕組みです。
直接の資金調達ではありませんが、従業員のモチベーションを高めるインセンティブとして活用されます。

4. 株式発行の流れ

実際に新株を発行する際の一般的な手順は次の通りです。

1.取締役会または株主総会の決議
 新株発行の目的や条件、発行株数、払込金額などを決定します。
 非公開会社の場合は株主総会での決議が必要になるケースもあります。

2.募集要項の作成
 発行条件(発行価額、払込期日、割当方法など)を明記した募集要項を作成します。

3.申込・払込
 引き受ける投資家や株主が申込を行い、指定の期日までに資金を払い込みます。

3.登記手続き
 払込が完了したら、法務局にて「資本金の増加の登記」を行います。
 これにより、新株発行が正式に効力を持ちます。

4.発行完了・株主名簿の更新
 登記完了後、新たな株主情報を反映し、会社として正式に新株を発行したことになります。

5. 株式発行によるメリット

株式発行には、次のようなメリットがあります。

・返済不要の資金調達が可能
 借入ではないため、返済や利息負担が発生しません。

・財務体質の強化
 自己資本が増えるため、企業の信用力が高まります。

・成長資金を確保しやすい
 ベンチャーキャピタルなどからの出資で、一気に大規模な資金を調達できることもあります。

・取引先や市場からの信頼性向上
 増資によって企業の安定性が高まり、取引先からの信用が強化されます。

6. 株式発行のデメリット・注意点

一方で、株式発行には次のようなデメリットも存在します。

・既存株主の持株比率が希薄化する
 新株を発行することで、既存株主の持つ割合が減り、経営権のコントロールが弱まる可能性があります。

・配当負担の増加
 株主が増えることで、将来的に配当の支払いが増えるリスクがあります。

・発行価格の設定が難しい
 特に非上場企業の場合、公正な発行価格の設定には専門家の意見が必要となることがあります。

・資本政策の見直しが必要
 発行タイミングや発行株数を誤ると、経営に支障をきたす場合があります。

7. 株式発行の成功に必要なポイント

株式発行を成功させるためには、以下の3点が重要です。

1.明確な資金使途を示す
 「何のために資金を調達するのか」を明確に示すことで、投資家の信頼を得やすくなります。

2.将来性をアピールする
 投資家は企業の将来性を重視します。成長戦略やビジネスモデルの優位性を具体的に説明することが大切です。

3.適切な発行方法を選ぶ
 既存株主構成、調達金額、スピードなどを考慮し、自社に最も適した方法を選びましょう。

8. まとめ

株式の発行は、企業にとって極めて重要な資金調達手段の一つです。返済義務がなく、企業の成長に直結する一方で、経営権の希薄化や資本政策上のリスクも伴います。
発行目的を明確にし、適切なタイミングと方法で実施すれば、企業価値を高め、持続的な成長へとつなげることが可能です。
特にスタートアップや中小企業にとっては、株式発行を戦略的に活用することが、事業の未来を左右する大きなカギとなるでしょう。