持ち株比率と株主権利の関係

2023年12月18日

株式投資をしていると、良く持ち株比率という言葉を耳にしませんか。
株主だけでなく経営者や起業家にとって、重要なキーワードです。
本記事では株の仕組から持ち株比率の意味、それに応じた株主の権利や行使する要件、会社の経営権を維持するために必要な持ち株比率まで初心者の方にも分かりやすく解説します。

まずは株の仕組を理解しよう!

株(株式)とは、会社が事業に必要な資金を調達するために発行しているもので、お金を出してくれた人(投資家)に、その金額に応じて交付される、いわば証明書のようなものです。
株は会社から直接買う事はできず、基本は証券会社を通じて、証券取引所から購入します。
会社からは、「お金を出してくれてありがとう!」という意味で、会社の利益の一部を配当金として株主に還元したり、優待制度がある会社なら、会社の製品や割引などが受けることができます。
また、持っている株は売る権利もあり、買った時よりも株価が上がったタイミングで売却したりと、その差額で多くの投資家が利益を得ています。
ちなみに、買った株の会社が業績悪化などで倒産した場合には、投資したお金が全く返ってこないというリスクもあります。但し、投資額以上のリスクを負うことはありません。

持ち株比率によって異なる権利

さて、ここまでで、株(株式)について、株主の権利についてざっくりと理解していただけたかと思います。ここからは、持ち株比率とその権利について解説していきましょう!

持ち株比率とは?

持株比率とは、その会社の発行済株式総数に対し、株主が保有する株式の割合のことです。
この保有率で、どの程度、会社の経営に参加できるかが明確になるので、株主や会社経営者にとっては重要な割合となります。
簡単にいうと、原則として会社の株を1株または1単元でも保有していれば、議決権が一つ与えられますが、株主総会招集請求権や株主総会招集権、株主提案権には、ある一定以上の待ち株がなければ権限はありません。
持ち株比率は、下記数式で求めることができます。
持ち株比率=(保有株式数÷発行済株式数)×100
例えば、会社の発行株式数が100株で、株主Aさんの持ち株が50株であれば、(50÷100)×100=持株比率は50%、持ち株が25株であれば、(25÷100)×100=25%ということになります。

持ち株比率別の権利

株主として、自分が持っている株の比率を把握し、何ができるのかを知っておくことは大切なことです。
では、持ち株比率に応じた権利をみていきましょう!
1株以上 : ・議事録閲覧権・株主代表訴訟
1% : 株主総会における議案提出権
3%以上 : 主総会の招集、会社の帳簿等、経営資料の閲覧ができる。
33.4%(1/3以上) : 特別決議を単独で阻止することが可能
50.1%(1/2超) : 株主総会の普通決議ができる。
役員報酬の変更、剰余金の配当などの事柄を単独で可決できる。
66.7%(2/3以上) : 株主総会の特別決議ができる。取締役の解任、定款変更、合併や解散、など、会社経営に関する重要な事柄を単独で可決できる。
100% : 全て自分の意志で決定する事ができる。

普通決議では、役員の報酬額を決めたり、会社の剰余金を株主に増配したりなど使い道を決める事ができます。
ただし、それ以上の特別決議については単独で通すことはできないので、絶対的な権力があるとはいえません。
2/3以上の持ち株比率があれば、特別決議ができるので、会社における重要事項を一人で決める事ができます。
具体的には重要度の高い決議事項である、定款の変更や解散、合併、事業譲渡など、会社組織に関する事項を決める事ができるので、一人で会社経営する方や中小起業のオーナーならこの持ち株比率を保持しておきたいところです。

株主の権利とは?

株主は出資した金額に比例した数の株を保有し、その持ち株に応じてさまざまな権利を持つ事ができます。
日本の会社法上の株式会社では、株主の権利は、以下の3つが主とされています。
1. 剰余金配当請求権
2. 残余財産分配請求権
3. 株主総会の議決権

また、株主の権利は「自益権」であるか「共益権」であるか、「単独株主権」であるか「少数株主権」であるかによって分類されます。
・自益権
株主個人の利益だけに関係する権利で、主とされる権利三つのうちの、配当を受ける「利益配当請求権」、会社が倒産した時などに残った財産の分配を受けられる「残余財産分配請求権」などがあります。

・共益権
株主が会社の経営に参与するための権利で、主とされる権利3つのうちの一つで、株主総会に参加して議決に関わる「議決権」があります。その他の権利は株の保有率で異なり、株を沢山保有しているほど、会社に影響を与える権利となります。

・単独株主権
1株でも持っていれば認められる権利

・少数株主権
一定割合以上の株を持っていないと認められない権利
自益権はすべて単独株主権であり、共益権は、議決権は単独株主権ですが、それ以外は、単独株主権であるものと、少数株主権であるものとがあります。

会社経営に必要な持ち株比率はどのくらい?

さて上記では、持ち株比率により経営が脅かされる事例をご紹介しました。
もちろん、出資100%オレ!となれば、誰にも経営を脅かされることはありません。
しかし、会社経営というのは、大きな資金を必要とするので、そんなオーナー社長ばかりではありません。
では経営者としては、どのくらいの持ち株比率があれば、安心して経営をしていけるのでしょうか?
普通決議で過半数こえたら、一応、その会社では一番権力があるわけなんだし、半分もあれば大丈夫なんじゃない?…いやいや!大丈夫じゃ、ありません!
安心して経営するのに必要な持ち株比率は、2/3以上であることが重要です。
先述しましたが、2/3以上の持ち株比率であれば、会社の経営に関わる重要な決議を社長の裁量と判断で行うことができるからです。
中には、株式が創業者の家族や親族などに分散されていて、社長自身が2/3以上の株式を保有していないこともあります。
その場合、親族同士の敵対が原因で、社長を解任!!なんて、ドラマみたいなこともありえますし、大塚家具のお家騒動のような事件がおこることも考えられます。
もし、社長のあなたの持ち株比率が低い場合には、日ごろから株主に感謝の気持ちを忘れずに、業績の開示や経営方針の説明をするなど、株主との間に信頼関係を築いておく事が大事ですよ!

まとめ

株主だけではなく、起業家や経営者にとっても重要な持ち株比率について解説しました。
会社で一番偉いのは株主と言われるように、持ち株にはその割合によって会社の経営権をも左右する力があるのです。
これから起業される方、経営権を守る持ち株比率があることを理解し、経営に必要な持ち株を保持しておけば、安定して会社を経営し続ける事ができるので、ぜひ覚えておいてください。