税金・社会保険料滞納で資金調達を受ける際の対策

2024年7月25日

税金や社会保険料を滞納している会社は、それを金融機関(ここでは銀行、信用保証協会、日本政策金融公庫とします)に知られてしまっては、融資を受けるのが難しくなります。では、どうすればよいのでしょうか。

金融機関は融資審査にあたり税金滞納・社会保険料滞納の事実をどう調べるか

税金や社会保険料の滞納の事実は、以下の方法で金融機関から調べられます。

・納税証明書の要求
・税金を納付した領収書の要求
・決算書の勘定科目内訳書での、未払法人税や未払消費税、未払費用の中の社会保険料未払計上を見られる。
・通帳の提出を要求され、社会保険料を滞納なく支払っているかを見られる(日本政策金融公庫は社会保険料でこの方法を使うことが多い)。
納税証明書や税金納付の領収書を金融機関から必要書類として求められなかった場合や、決算書の勘定科目内訳書を金融機関からしっかり見られなかった場合。税金や社会保険料の滞納があっても融資審査が通り融資を受けられることがあります。しかしそれは運が良かっただけです。

税金滞納・社会保険料滞納の会社が融資を受けるための5つの対策

税金や社会保険料を滞納している会社が融資を受けたい場合、以下5つの対策があります。

1.知人から一時的にお金を借り、滞納を解消した上で融資を申し込む。
2.ノンバンクから会社がお金を借り、滞納を解消した上で融資を申し込む。
3.経営者が個人でカードローンや消費者金融でお金を借り、滞納を解消した上で融資を申し込む。
4.税務署や年金事務所(社会保険料滞納の場合)から分割支払いの合意をとり合意書を金融機関に示す。
5.今回受ける融資で税金や社会保険料を返済したいと金融機関に交渉する。
それぞれ見ていきます。

1.知人から一時的にお金を借り、滞納を解消した上で融資を申し込む。

この方法をとる場合、以下の問題があります。

お金を借りる知人を見つけられるかどうか。また滞納金額が大きくなるほど、それだけのお金を貸してくれる人を見つけるのが難しくなります。
知人には、金融機関から融資を受けたらその資金で返済することを約束した上で一時的にお金を借ります(融資を受けてもすぐに返済しなくていいよと知人から言われたらそうしてください)。しかし、金融機関からの融資で出た資金の多くを知人への返済にあてることで融資を受けた目的(運転資金として活用など)が達成できなくなり、資金繰りに影響が出てしまいます。

2.ノンバンクから会社がお金を借り、滞納を解消した上で融資を申し込む。

ノンバンクとは、銀行や信用金庫、政府系金融機関以外で融資をする金融会社のことです。金利が銀行などに比べて高いが、融資審査は銀行などに比べて通りやすい、という特徴があります。この方法をとる場合、以下の問題があります。

ノンバンクの審査が通るかどうか。また滞納金額が大きければ、大きい金額をノンバンクから借りることは難しくなります。
金融機関にノンバンクからお金を借りたことが分かれば、審査のマイナスポイントになり、税金や社会保険料の滞納を解消した上で融資を申し込んでも審査が厳しくなります。経営者の個人信用情報を金融機関が見ればノンバンクから借りた事実が分かってしまいます。ノンバンクから会社で借りたとしても、連帯保証人として経営者の個人信用情報にノンバンクからの借入情報が掲載されます。特に日本政策金融公庫、一部の信用保証協会は、個人信用情報を見てきます。

3.経営者が個人でカードローンや消費者金融でお金を借り、滞納を解消した上で融資を申し込む。

2番ではノンバンクから会社が借りる場合でしたが、これは経営者個人が借りる場合です。個人で借りるには、カードローンや消費者金融があり、カードローンの中には銀行系のカードローンやノンバンクのカードローンがあります。この方法をとる場合、以下の問題があります。

カードローンや消費者金融の審査が通るかどうか。また滞納金額が大きければ、大きい金額を借りることは難しくなります。
金融機関に経営者個人がカードローンや消費者金融でお金を借りたことが分かれば、審査のマイナスポイントとなり、税金や社会保険料の滞納を解消した上で融資を申し込んでも審査が厳しくなります。経営者の個人信用情報を金融機関が見れば分かってしまいます。ただし、カードローンでも銀行のカードローンであれば、ノンバンクのカードローンや消費者金融から借りる場合よりは印象はまだ良いです。

4.税務署や年金事務所(社会保険料滞納の場合)から分割支払いの合意をとり合意書を金融機関に示す。

税務署や年金事務所に、滞納分の分割支払いを交渉し、合意書をとった上で銀行に示します。合意書は、税務署では「換価の猶予通知書」、年金事務所では「納付誓約書」などの書類です。うまくいけば1年かけて滞納解消する分割支払いで合意をとることができます。それを金融機関に見せた上で融資審査をしてもらいます。この方法をとる場合、以下の問題があります。

分割支払いの合意をしてもらえるよう、税務署や年金事務所と交渉しなければならず、交渉が成功するかは分かりません。
分割合意しても、金額が大きい場合は1カ月あたりの滞納分支払額が大きくなってしまいます。合意する以上は税務署や年金事務所は合意した金額の支払いを毎月求めてくるため、確実に支払いできる金額で合意をとらなければ、後で資金繰りが厳しくなります。
分割の合意をとったからといって滞納が解消したわけではなく、合意したことを金融機関がどこまで評価してくれるか分かりません。結局審査が通らず融資を受けられなくても、税務署や年金事務所と合意して決められた支払いはしていかねばなりません。

5.今回受ける融資で税金や社会保険料を返済したいと金融機関に交渉する。

金融機関から融資を受けられれば、その一部を税金や社会保険料の滞納解消に使えます。この方法をとる場合、以下の問題があります。

金融機関が、今回の融資で滞納を解消することを条件として融資を出してくれるケースはめったにありません。今回が初めての滞納で、滞納に金融機関が納得するようなやむをえない事情がある場合など、よほど金融機関が理解できる事情がなければ難しいです。

税金や社会保険料を滞納していて金融機関の融資審査に支障が出る場合、これら5つの方法のどれか、もしくは方法を組み合わせて、対策をとれないか考えてください。