中小企業が使える補助金・助成金のメリット・デメリット解説
2024年9月27日
ポストコロナの厳しい事業環境において、中小企業に対する助成金・補助金の重要性が高まっています。
本記事では、国や自治体による補助金・助成金制度の中から中小企業が使える制度について解説します。
中小企業の経営者の方は、チェックリストとしてぜひ活用してください。
開業、設備投資、商品開発に使える補助金
新たに創業、開業したり、設備投資や商品開発を行うときに使える補助金は、以下のとおりです。
・概要
都内における開業率の向上を目的とする
・要件
都内で創業予定の個人又は創業から5年未満の中小企業者等
・補助率・補助額
対象経費の3分の2以内(上限400万円・下限100万円)
・対象経費
賃借料、広告費、器具備品購入費・産業財産権出願・導入費、専門家指導費、従業員人件費
創業助成事業
自治体ごとに中小企業に対する補助金制度が設けられていますが、東京都では「創業助成事業」を実施しています。
概要
都内、中小企業の創意工夫を活かし、既存事業の深化・発展を支援することで、都内中小事業者の経営基盤強化を目的とする
・要件
都内で既存事業の深化と発展の取組を行う中小企業や個人事業主
・補助率・補助額
対象経費の3分の2以内(上限800万円・下限100万円)
・対象経費
原材料費、機械装置・工具器具費 、委託・外注費 、産業財産権出願・導入費 、規格等認証・登録費 、設備等導入費 、システム等導入費 、専門家指導費 、不動産賃借料 、販売促進費 、その他経費
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、中小企業がウィズコロナ・ポストコロナの時代に向けて、社会の変化に対応するための事業再構築を支援するための補助金です。
新たな市場への進出や事業転換を通じて、企業が売上を拡大し、経済環境に順応することを目的としています。
概要は以下のとおりです。
・概要
中小企業等の事業再構築を支援する
・要件
下記①、②の両方を満たすこと。
①経済産業省が示す「事業再構築指針」に沿った3〜5年の事業計画書を作成し、認定経営革新等支援機関の確認を受けていること
②補助事業終了後3〜5年で付加価値額を年率平均3.0%〜5.0%(事業類型により異なる)以上増加させること。又は従業員一人当たり付加価値額を年率平均3.0%〜5.0%(事業類型により異なる)以上増加させること。
・補助率・補助額
補助額(成長枠)
【従業員数20人以下】100万円~2,000万円
【従業員数21~50人】100万円~4,000万円
【従業員数51~100人】100万円~5,000万円
【従業員数101人以上】100万円~7,000万円
補助率(成長枠)
中小企業者等2分の1(大規模な賃上げを行う場合は3分の2)
中堅企業等3分の1(大規模な賃上げを行う場合は2分の1)
・対象経費
建物費(建物の建設・改修など。購入・賃貸は対象外。新築については必要性が認められた場合のみ)
機械装置・システム構築費(設備、専用ソフトの購入やリース等)
技術導入費(知的財産権導入に要する経費)
専門家経費(専門家に依頼したコンサルティング業務や旅費などの経費)
運搬費(運搬料、宅配・郵送料等に要する経費)
クラウドサービス利用費(サーバーの領域を借りる費用・サーバー上のサービスを利用する費用)
外注費(事業遂行に要する加工、設計等)
知的財産権等関連経費(特許権などの取得にかかる経費)
広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)
研修費(事業遂行に必要な教育訓練や講座受講等に係る経費)
廃業費(廃止手続費・解体費・原状回復費など)
7つある枠のうち、中小企業が活用しやすい枠は成長枠です。経費は、対象になるものとならないものがあるため、申請前にきちんと確認しましょう。
事業再構築補助金の特長と活用事例
事業再構築補助金は、特に新たな事業への進出や、国内回帰を目指す取り組みに対して強力な支援を行います。
例えば、コロナ禍で苦境に立たされた企業が、新たな市場へ進出するための設備投資や、既存事業を大幅に転換するための費用をカバーすることが可能です。
また、建物費が計上できる点も大きな特長で、新築や改装費用に対して補助を受けることができます。
これにより、環境に配慮した新事業を推進する企業にとって、大きな後押しとなるでしょう。
このように、事業再構築補助金は、中小企業がウィズコロナ・ポストコロナの時代に向けて、社会の変化に適応し、持続的な成長を目指すための強力な支援制度です。
ものづくり補助金
正式名称を、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といいます。製造業などにおける、試作品開発や生産性向上などを目的とした設備投資等を支援します。
・概要
生産性向上などのための設備投資を支援する
・要件
以下の要件を満たし、3年から5年の事業計画を策定・実施する中小企業等
給与支払総額を年平均1.5%以上増やす
事業場内最低賃金を、地域別最低賃金+30円以上にする
付加価値額(営業利益、人件費、減価償却費)を年平均3%以上増やす
補助上限額、補助率
・省力化(オーダーメイド)枠:750万円~8,000万円、1/2~2/3
・製品・サービス高付加価値化枠(通常類型):750万円~1,250万円、1/2~2/3
・製品・サービス高付加価値化枠(成長分野進出類型):1,000万円~2,500万円、2/3
・グローバル枠:3,000万円、1/2~2/3
対象経費
・機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費
・海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費(グローバル枠のみ)
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者等の生産性向上および、持続的な経営の発展を目的とした制度です。概要は以下のとおりです。
・概要
小規模事業者等の生産性向上および、持続的な経営の発展を目的とする
・要件
経営計画に基づき、販路拡大及び業務効率化を目的とする取り組み
商工会などの支援を受ける など
・補助率・補助額
補助率
3分の2(賃金引上げ枠のうち赤字事業者については4分の3)
補助額(上限)
[通常枠]50万円
[賃金引上げ枠、卒業枠、後継者支援枠、創業枠]200万円
・対象経費
機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む)、旅費、開発費、資料購入費、雑役務費、借料、設備処分費、委託・外注費
2022年に設定されていたインボイス枠は、インボイス特例に変更されています。申請できる枠は、5つのうち1つのみですので注意しましょう。
IT導入補助金
正式名称を、「サービス等生産性向上IT導入支援事業」といいます。中小企業が、自社の課題を解決するためのITツール導入に係る経費の一部を補助する制度です。概要は以下のとおりです。
・概要
自社の課題やニーズに合ったITツールの導入により、経営力の向上・サイバー攻撃の被害抑制・デジタル化推進などを目的とする
・要件
類型ごとのプロセス要件を満たし、労働生産性の向上につながるITツールであること
・補助率・補助額
補助額
[通常枠]A類型 5万円~150万円未満
B類型 150万円~450万円以下
[セキュリティ対策推進枠] 5万円~100万円
[デジタル化基盤導入枠] 下限なし~350万円
補助率
[通常枠][セキュリティ対策推進枠] 2分の1以内
[デジタル化基盤導入枠] 3分の2~4分の3
・対象経費
ソフトウェア購入費、クラウド利用料、導入関連費
(デジタル化基盤導入枠<デジタル化基盤導入類型>は、左記に加えハードウェア購入費が対象)
事業承継・引継ぎ補助金
事業の承継・再編・統合などを行う中小企業者等を支援する制度です。ここでは、そのうち経営革新事業についてまとめます。
・概要
事業承継をきっかけに経営革新を行う中小企業者等を支援する
・要件
2017年4月1日~2024年4月24日(事業承継対象期間)に事業承継を実施した(予定を含む)中小企業者
・補助率・補助額
補助率
補助対象経費の3分の2または2分の1以内
補助額
下限100万円から上限600万円または800万円以内
(廃棄費はプラス150万円以内)
・対象経費
事業費
店舗等借入費・設備費・原材料費・産業財産権等関連経費・謝金・旅費・マーケティング調査費・広告費・会場借用費・外注費・委託費
廃棄費
廃業支援費・在庫廃棄費・解体費・原状回復費・リースの解約費・移転移設費用
中小企業省力化投資補助事業
中小企業の売上拡大と生産性向上を支援するために、2024年春に新設された「中小企業省力化投資補助事業」についてご紹介します。
この制度は、IT導入補助金の自動化設備版とも言えるもので、人手不足を解消するためのIoTやロボットなどの汎用製品を導入する際に利用できる補助金です。
国が提供する「カタログ」に掲載された製品を、中小企業が自由に選んで導入できる仕組みとなっており、事業計画書の作成などの煩雑な手続きが不要な点も特徴です。
予算規模は5,000億円と大規模で、2024年の中小企業向け補助金の中でも特に注目されています。
この補助金は、工場向けの無人搬送ロボットや検品・仕分けシステム、さらには飲食店の配膳ロボットや自動清掃ロボットなど、幅広い自動化設備が対象になる見込みです。
人手不足に対応するための自動化を検討している中小企業にとって、非常に有用な制度となるでしょう。
まとめ
本記事で紹介したように、中小企業が使える補助金・助成金制度はとても数が多くなっています。そのうえ、不正受給防止および情勢に対応するため、制度内容が毎年変わることもあります。自社に合った補助金・助成金の受給を適切に受けるには、こまめな情報収集が欠かせません。