商工ローンって何?仕組みを徹底解説
2023年4月12日
事業を経営するすべての人にとって資金繰りは、永遠の課題です。順調に利益を確保していても、常に資金繰りのことを頭に入れておく必要があります。
資金調達手段にも様々なものがあります。その一つが「商工ローン」です。「商工ローン」には、あまりいいイメージが無いと考える方も多いかもしれません。「商工ローン」とはどのようなローンなのでしょうか?
商工ローンとは?
「商工ローン」とは、主に中小企業向けの無担保ローンの総称です。無担保・小口・短期融資のサービスを指します。商工ローンと類似の商品が「ビジネスローン」です。
ビジネスローンと商工ローンの違い
もともと、商工ローンは「ノンバンクが開発したローン」です。銀行融資の利用が難しい中小企業に対し「高金利」「担保不要」「即日融資が可能」という「借りやすさ」と「利便性」を目指したサービスです。銀行との競合に対抗して、ノンバンクの特色を打ち出して開発された商品です。
これに対してビジネスローンは「銀行が開発したローン」です。銀行がプロパー融資では対応が難しい、収益性の低い中小企業に対して金利を高めに設定することで、融資対応を可能にしたサービスです。「商工ローン」を提供するノンバンクに顧客を取られることに対して「銀行も中小企業向けのサービスが必要」とされ開発された商品です。
・ビジネスローン→銀行が開発
・商工ローン→ノンバンクが開発
つまり「ビジネスローン」と「商工ローン」はサービス内容はほぼ同じものですが、誕生の経緯が異なるサービスです。
ところが最近では、ノンバンクも「商工ローン」という名称から「ビジネスローン」と商品名を変更してきています。それには「商工ローン」という名称に悪いイメージがついてしまったことが背景にあります。
なぜ「商工ローン」には悪いイメージがあるのか?
1998年以降問題となったのが「ノンバンク」「商工ローン会社」による違法取立の問題です。いくつかのノンバンクが「グレーゾーン金利での高金利での貸出」と「違法取立」を行っていたことが、大きな社会問題となりました。
中には「目玉ひとつを売れ」「腎臓を売れ」といった違法取立の実態が被害者の録音テープなどで告発され、ノンバンク社員が恐喝と貸金業法違反容疑で逮捕されるといった事態も発生しました。
この問題は「商工ローン問題」として、テレビ、ラジオ、新聞、週刊誌などのマスコミによって大々的に報じられました。
またアメリカの「リーマン・ブラザーズ・グループ」から巨額の借り入れを行っていた「株式会社SFCG(旧株式会社商工ファンド)」は、リーマン・ショックの影響をモロに受け、経営悪化。東京地方裁判所第20部へ民事再生法の適用を申請して受理されました。負債総額は3380億4000万円に及びました。
この倒産の背景には
・粉飾決算による違法配当
・保有していた債権を日本振興銀行と複数の信託銀行に二重譲渡
・経営陣の財産流出行為
など、多くの違反行為が発覚したため、民事再生手続は廃止され、破産手続に移行したのです。
このような社会的に大きな問題を集める事件が「商工ローン会社」=「ノンバンク」に発生したために「商工ローン」=「危険」という悪いイメージが定着してしまったのです。
そのため「商工ローン」を法律に従って提供していたノンバンクも、商品名を「商工ローン」から「ビジネスローン」へ改めて、イメージの回復を図るようになりました。
商工ローンは安心して利用できるのか?
「商工ローン」から名称が変更されるようになった「ビジネスローン」。ではこれらのローンは、現在はたして安心して利用できるようになっているのでしょうか。2007年(平成19年)に「貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」が施行され、以下の規定が施行されました。
グレーゾーン金利の撤廃
貸金業法の改正前は、金利の規定は以下のようになっていました。
「出資法→刑事罰の対象になる」の上限:29.2%
「利息制限法→刑事罰の対象にならない」の上限
・10万円未満:20.0%
・10万円以上~100万円未満:18.0%
・100万円以上:15.0%
以前から多くの商工ローンは、刑事罰の対象にならないため「出資法の上限=29.2%」で貸出を行っていました。利息制限法以上、出資法以下が、いわゆる「グレーゾーン金利」です。
貸金業法の改正により
・利息制限法の上限金利を超える金利帯での貸付けは民事上無効かつ行政処分の対象
・出資法の上限金利が20%に引き下げ
となり、グレーゾーン金利が撤廃されました。
取立て行為の規制
・夜間に加えて日中の執拗な取立行為など、取立規制を強化
・公正証書作成にかかる委任状の取得を禁止。利息制限法の金利を超える・貸付けの契約について公正証書の作成の嘱託を禁止
・貸付業者が、借り手等の自殺により保険金が支払われる保険契約を締結することを禁止
・貸付けにあたり、トータルの元利負担額などを説明した書面の事前交付を義務付ける
・連帯保証人の保護を徹底するため、連帯保証人に対して、催告・検索の抗弁権がないことの説明を義務付け
このように商工ローン会社が行う業務・取立の規制が強化されました。
ヤミ金融に対する罰則強化
・懲役5年から10年に厳罰強化
貸金業の参入条件の厳格化
・純資産が5,000万円以上の貸金業者でなければ、貸金業を営むことができない
・法令遵守のための助言・指導を行う貸金業務取扱主任者について、資格試験を導入し、合格者(主任者登録を受けた者)を営業所ごとに配置することが義務化
新規参入会社の条件が厳格化されることで、小規模悪徳業者が参入できなくなりました。
業務改善命令の導入
・規制違反に対して機動的に対処するため、登録取消や業務停止に加え、業務改善命令が導入
金融庁の監督強化が図られるようになりました。
これらの改正を含めて法律整備が行われるようになったことで、現在では「商工ローン」「ビジネスローン」いずれにしても安心して利用できる体制が整っています。
悪徳業者には注意が必要
ただし、金融業者の中には法律を遵守しない悪徳業者、いわゆる「ヤミ金業者」がまだまだ存在しています。そもそも法律を守りませんので、先に挙げた規制も無視して貸出を行います。商工ローン・ビジネスローンは安心して利用できるとはいえ、このような「ヤミ金業者」には注意しなければいけません。
ヤミ金業者であるかどうかを見抜く一番の方法は「貸金業者登録業者」であるかどうかを確認することです。正式業者であれば「関東財務局長〇〇第00~号」といった登録番号が、ホームページなどに掲載されているはずです。利用を考えている商工ローンやビジネスローンを提供している金融業者に、この登録番号があるかどうかを確認しましょう。
商工ローンのメリット
審査基準が緩やか
そもそも銀行ローンに対抗して開発された商工ローン。銀行では融資を受けにくい中小企業向けの商品ですので、審査基準が銀行ローン(特にプロパーローン)に比べて緩やかになっています。
とはいってもどのような企業でも融資を受けれるというわけではありません。借入希望金額に応じた返済能力は、自社業績や利益などから求められることになります。
来店不要な先も多い
最近の商工ローン(ビジネスローン)は、来店不要としている先も多くあります。インターネットや電話、FAXから申込ができ、必要書類もFAXやパソコンからの画像化で対応できるようになっています。インターネットの申込では24時間365日受付可能といった先も多く、利便性も高くなっています。
スピードが早い
借入までのスピードも銀行ローンとの差別化から早めの先が多くなっています。早ければ申込を行ったその日に融資を受けることができる「即日融資」に対応している先も多くあります。急な資金需要でも対応可能になっています。
商工ローンのデメリット
融資金額が低い
商工ローン(ビジネスローン)の借入上限金額は、低めの先が多くなっています。ほとんどの先では数百万、多くて500万円~800万円程度の借入上限金額です。1,000万円を超える金額の借入は難しいのが現状です。
金利が高い
商工ローン(ビジネスローン)の上限金利は、先に述べた(改正)貸金業法の上限金利で設定されているものがほとんどです。特に初めての利用者に対しては、多くの金融機関がこの上限金利での契約となります。
銀行ローン(特にプロパーローン)や日本政策金融公庫といった金融機関に比較するとかなり高めであることが分かります。
連帯保証人が必要のケースもある
商工ローン(ビジネスローン)は基本的に担保は不要です。ただし連帯保証人が必要になるケースがあります。法人借入においては代表者以外の第三者を保証人として要求されることもあります。保証の義務や責任をきちんと説明して納得してもらえる、信頼できる方を見つけるのが難しいこともあります。
商工ローン利用時の注意点
融資条件をしっかりチェックする
商工ローン(ビジネスローン)を利用したいと考える場面では、急な資金需要が発生したケースも多いのではないでしょうか。「どうしてもすぐに借りなければいけない」状況に追い込まれたことで、融資条件をしっかり確認しないで、契約を結んでしまわないように注意しなければいけません。
・返済期間は?
・金利は?
・保証人は?
・返済方法は?
自社にあった商工ローン(ビジネスローン)を選択するためにも、複数の金融機関を比較して、諸条件を確認するようにしましょう。
ヤミ金業者に注意
現在の商工ローン(ビジネスローン)は法律の整備や規制の強化が進んだことで、安心できる商品となっています。それでも法律を守らない「ヤミ金業者」には注意しておかなくてはいけません。
・誰でも即融資可能
・無審査で融資可能
・ブラックでもOK
このような宣伝を掲げている金融業者はヤミ金である可能性が高いので、絶対に関係を持たないようにしましょう。
きちんとした返済計画を
「とにかく借りなければいけない」という状況では、返済については後回しになりがちです。商工ローン(ビジネスローン)は金利が高めに設定されている分、利息を含めた返済負担も大きくなります。自社の利益から儒分返済できるように、返済計画はしっかりと立てておく必要があります。
・毎月いくら返済するのか
・いつまでに返済するのか
・早期に返済できる目途はあるのか
しっかりと返済計画を立てるとともに、不要・不急な借入は控えることが大切です。
まとめ
現在の金融業界では「商工ローン」は「ビジネスローン」と名称を変えて提供されています。法律の整備や規制の強化が進んだことで、一時期に比較して、安心、手軽に利用できる資金調達手段です。
ただし商工ローン(ビジネスローン)の利用には、いくつかの注意点もあります。手軽に借入できるからといって、安易に頼ることはおすすめ出ません。まずは自社の状況をよく把握してみましょう。
・他の資金調達手段は利用できないか
・自社努力で解決できないか
商工ローン(ビジネスローン)を利用する場合は、複数の金融機関を比較して、じっくりと利用を検討していきましょう。