一般社団法人が利用できる資金調達方法とは
2023年11月29日
一般社団法人は、法人の一つであり、非営利団体です。この一般社団法人は各種金融機関(日本政策金融公庫、制度融資、銀行等)から融資を受けることは可能なのでしょうか?
見ていきましょう。
制度融資
原則、対象外とされています。ですが、一部、一般社団法人や一般財団法人にも制度融資の利用を認めようとうする自治体が出てきてます。
ただし、融資の対象者が「社会的課題の解決に取り組む一般社団法人及び一般財団法人で市長の認定を受けた方」となっており、まだまだ対象者は限られているようです。
とは言え、このように国家戦略特区の規制改革を利用して融資を積極的に行おうとしている自治体も出てきていますので、一般社団法人の制度融資の活用に関しては今後の広がりに期待です。
日本政策金融公庫
制度上は利用可能ですが、一般社団法人にとって無担保無保証人の「新創業融資」による借入は、難易度が高いと言えます。
新創業融資は無担保、無保証人でしかも低金利で借り入れが可能であり、これから事業を立ち上げようとする起業家に最も多く利用されている融資制度です。
この新創業融資制度自体は、どの法人格でも利用可能ですが、非営利法人である一般社団法人については融資が難しいと言われています。
なぜでしょうか。
一般社団法人が営利を上げることを主たる目的としていない法人だからです。
一般社団法人は、株式会社などの営利法人とは違って、利益の分配が許されておらず、また、解散時の残余財産も基本的には分配が許されていません。
当然、融資を受けた場合はそのお金を返済していかなければなりませんが、その返済原資は「利益」です。
融資を行う側の立場としては、返済原資となる利益を積極的に上げてもわらなければなりません。
その点で、非営利法人である一般社団法人という法人格は、株式会社や合同会社などに比べると不利に働きます。
資産が潤沢で大規模な一般社団法人(資本が潤沢な企業群による協会組織等)であれば話は別ですが、そうではない一般社団人が大多数です。
とは言え、一般社団法人も制度上は利用可能となっていますので、チャレンジしてみる価値はあります。
日本政策金融公庫では「ソーシャルビジネス融資」という融資制度も設けられており、一般社団法人でも保育サービス事業と介護サービス事業(日本標準産業分類における老人福祉・介護事業、児童福祉事業、障がい者福祉事業等)を営む場合は、融資対象となっています。
プロパー融資(銀行)
銀行は信用保証協会などと違って一律に「一般社団法人はNG」としているわけではありません。銀行によって異なります。
信用保証協会を経由せずに銀行と直接借入契約を行う融資を「プロパー融資」といいいます。
まず、そもそも論として創業と同時にプロパーでお金を借りるのはです。これは営利法人である株式会社でもや合同会社にも同じことが言えます。
ですから、創業と同時に資金調達をしたい場合は、前述の日本政策金融公庫か、各自治体の制度融資を利用するしか方法はありません。
既存の一般社団法人で、十分に収益力がある、担保能力がある場合はもちろんプロパー融資も可能です。
融資審査のポイント
一般社団法人でも日本政策金融公庫や制度融資での資金調達が可能なのであれば、チャレンジはすべきです。なお、融資審査においては下記5点が重視されます。
・事業内容
・自己資金
・事業計画
・事業経験
・担保・保証人
この中で最重要視されるのが事業計画(事業計画書)です。
もともと株式会社や合同会社よりも不利な側面があるわけですから、事業計画は最低限、緻密で実行可能なものを策定しなければなりません。
銀行融資が難しい場合は、一般社団法人特有の資金調達制度もある
一般社団法人が行い得るその他の資金調達方法としては、基金というものがあります。
基金は借入ではありませんが、一定の条件のもとに返還義務が課せられています。
返還義務があるのですから、やはりここでも一定レベル以上の事業計画の策定が必要になります。
一般社団法人に基金を提供する人(拠出者と言います)にとって、拠出した基金はどのように使われるのか?は、当然気になるところです。
一般社団法人の基金の拠出者にとっては、自分が提供した基金を何に使って、どのように社会に役立ててくれるのか?が最も重要です。
事業計画によって基金の有効な使い方をいかに提示できるかが基金による資金調達の成否を握るといっても過言ではありません。
非営利型より普通法人型の方が借りやすい?
一般社団法人には税制上、大きく2つに分類することができます。
株式会社と同様に税金がかかる「普通型一般社団法人」と、一定の要件を満たすとNPO法人と同等の税制優遇を受けることができる「非営利型一般社団法人」です。
どちらの法人の方が借りやすいかという質問もよく頂戴するのですが、一概には言えません。個々の法人の財務状況や事業内容によります。
とは言え、非営利型法人(共益的活動を目的とする法人)の場合は収益事業を主たる目的としてはいけないなどの要件があるため(普通型法人にはそのような規制は一切ありません)、普通型法人に比べると若干ですが、ハードルは高くなる傾向があるようです。
各金融機関によっても考え方は異なります。
非営利型一般社団法人でもそれなりの資産があり、社会性の高い事業を行っている場合は、融資の可能性は低くないと思われます。