資金調達の目的別に合った種類について解説

2023年12月14日

起業したならば、まず「資金をショートさせない」ことが重要となります。資金ショートさえ起こさなければ、倒産はしません。資金調達は、資金をショートさせないための手段のひとつなのです。
資金調達の知識があれば、金融機関に対する交渉力は向上します。また、日頃から資金調達に関する情報を仕入れておけば、いざ資金繰りに困ったときにも慌てずに済むでしょう。先々の財務状況を予測して計画的に資金調達すれば、経営上の余裕になるはずです。
ここでは、スモールビジネス事業者のための「資金調達の目的」や、「種類別のメリット・注意点」について解説します。

資金調達の4つの目的

資金調達の目的には、大きく分けて「起業・開業資金」「設備投資」「運転資金」「事業拡大」の4つがあります。まずは、この4つの目的について解説します。

起業・開業資金

起業や店舗の開業には、資金が必要です。店舗の開業に必要な資金は、店舗・事務所の準備資金のほか、電話・電気などの設備費用や、オフィス用品・店舗の什器などの費用があります。開業後はすぐに売上が立つ保証がなく、まだ代金が入金されるまでに時間を要しますが、その間にも家賃や光熱費などの経費がかかってしまいます。開業前後の費用をまかなうために、資金調達しておく必要があるでしょう。

設備投資

スモールビジネスでは設備を更新したり、新たに設備を導入したりするなどの設備投資が生じます。その際にも資金調達が必要です。設備投資目的の資金調達は比較的長期での借り入れとなり、小規模事業者では7~10年、中小企業では5年が目安となるでしょう。最終的には事業計画をもとに、金融機関との交渉の上で、返済期間を設定するケースが多いです。
設備投資の結果、想定より収益が上がらないと一気に資金繰りが厳しくなります。そのため損益計画、資金繰り計画、事業計画などを作成して、ROI法や回収期間法などをベースに、総合的な投資判断ができるのが理想的でしょう。

運転資金

仕入ビジネスは、材料の仕入れ費用や広告宣伝費、従業員の給料などを支払った後、そこから生み出した商品などの売上が立って、しばらく経って入金されます。支払いと入金のタイムラグを埋めるのが、運転資金の資金調達です。運転資金の資金調達には、一定期間分の借り入れを繰り返す場合もあります。

資金調達時における金融機関の融資審査において、最も重要なのは「資金使途」。「運転資金は、何に使ってもいい」と誤解されることもありますが、運転資金の資金調達時も資金使途はやはり重視されており、金融機関は「何に必要なお金か」をしっかり審査しています。その際には資金繰り計画表を作成すると、お金の流れやどこで資金が不足するかが説明しやすくなるでしょう。

スモールビジネスにおいて「赤字補填のために運転資金を借りたい」というケースも往々にしてありますが、基本的に金融機関は赤字補填のために融資してくれません。また、事業再生においても、リスケジュール(融資先と相談の上で貸付条件を変更すること)をして返済中断していることから、新たな運転資金の借り入れは困難といえます。

事業拡大

スモールビジネスの事業を拡大させるためにも、資金調達は必要です。内訳としては店舗・工場を増やす資金、人員を増強するための採用コストなどが挙げられます。費用を投じてから、実際に売上や利益を回収するまでに時間がかかるため、その間の経営を支える資金調達が必要となってくるのです。

資金調達の種類

資金調達の方法は、大きく「エクイティファイナンス」「デットファイナンス」「アセットファイナンス」「補助金・助成金」に分類できます。
スモールビジネス事業者に関係の深いものから現段階で縁遠いものまでさまざまですが、将来的に利用する可能性もあり、知識として知っておいて損はありません。ここでは、主な資金調達の方法をご紹介します。

エクイティファイナンス

資本を増やして資金調達するエクイティファイナンスは、スモールビジネス事業者の選択肢に挙がらないかもしれません。ただし、事業拡大に伴って資本増強が視野に入ってくる可能性もあるため、基本的な知識は押さえておきたいところです。

ベンチャーキャピタル

ベンチャーキャピタルとは、機関投資家などから資金を集めてファンドを立ち上げ、未上場のスタートアップ企業に投資する投資会社です。ベンチャーキャピタルの投資目的は、投資先企業が新規株式公開(IPO)したり、他社に買収されたりする際に株式売却益を得るため(IPOを義務付けず、インカムゲイン目的で投資する中小企業投資育成のような例もある)。多くの場合、ベンチャーキャピタルからの資金調達ができるのは、将来的に上場の可能性がある成長企業です。

新株発行(株主割当増資・第三者割当増資)

新株発行は、新たに株式を発行して資金を得る方法です。新株発行には、既存株主の持ち分に応じて株式を割り当てる「株主割当増資」と、新規・既存株主問わず、良好な関係の第三者を選んで割り当てる「第三者割当増資」があります。私募債などの債券は利払いや償還の必要がありますが、株式は「出資を受ける」もの。償還の必要がありません。

エンジェル投資家

エンジェル投資家とは、起業前や起業して間もない企業に出資する個人投資家のこと。スモールビジネスでエンジェル投資家に投資を受けるケースはごくまれです。

資本性劣後ローン

資本性劣後ローンは、日本政策金融公庫などの政府系金融機関や民間金融機関が実施している融資制度です。借入を負債(借金)ではなく、自己資本と見なすことから財務安定化につながります。新型コロナウイルス感染症や各種危機への対応策として、注目を集めている制度です。

デットファイナンス

デットファイナンスとは、例えば「金融機関などから融資を受け、資金を調達すること」です。スモールビジネス事業者にとって利用頻度や利用する可能性が高いものから順に解説します。

信用保証付き融資・自治体からの制度融資

都道府県ごとに設置されている信用保証協会の審査を受け、債務保証を得られた際に融資を受けられます。実際に融資を行うのは銀行、信金、信用組合といった民間の金融機関です。また、自治体が窓口となり、自治体予算も入れて融資内容も決めている自治体からの制度融資や、金利・保証料を自治体が補助してくれる自治体保証付き融資もあります。

日本政策金融公庫の融資

政府系金融機関には日本政策金融公庫、商工組合中央金庫などがあり、スモールビジネスにおいては日本政策金融公庫の国民生活事業が主な窓口です。スモールビジネスで一番利用されることが多い窓口であり、起業相談から事業承継まで、幅広く相談に乗ってくれます。起業時・起業後問わず、資金調達についてはまずここに相談すべきでしょう。返済が終わる前に、次の運転資金調達の相談をして関係継続させることをおすすめします。

金融機関からのプロパー融資

銀行や信用金庫、信用組合などの金融機関が独自に審査を行って融資をする「プロパー融資」もデットファイナンスのひとつです。
信用保証協会の保証なく金融機関がリスクを負うため、当然、審査は厳格です。スモールビジネスでプロパー融資を受けるのはハードルが高いのが実情ですが、自治体からの制度融資などを利用して返済実績を積むと、事業拡大時にプロパー融資を受けられる可能性も高まっていくでしょう。信用金庫などで地元のスモールビジネスにプロパー融資を行っている実例も見られます。

親族・知人などからの借り入れ

創業時、親族や知人から資金を借りることがあります。また、創業後、経営難が続いてどこからも借りられない状況となり、親族・知人に頼らざるをえないケースもあります。ただ、その状況で借り入れを依頼するのは心苦しさが生まれるもの。創業時以外は、親族・知人からできるだけ借りないのが望ましいといえるでしょう。

ノンバンクからの融資

「ノンバンク」と呼ばれる金融会社のローンや、事業者向けカードローンもあります。ノンバンクとは「預金業務を行わずに融資などを行う金融会社」で、銀行などより金利は高め。ヤミ金(悪徳金融)と誤解されることもありますがまったく異なる存在で、計画的に利用すれば何の問題もありません。

手形割

手形割は、先々受け取るはずの売上金について、手数料を払うことで早く資金化する仕組みです。取引先から受け取った手形を、記載期日前に現金化し、金融機関や手形割引業者に手数料を支払います。手形割は昔からある資金調達の方法ですが、一部の業界を除きスモールビジネスにおいてはあまり一般的ではありません。

私募債

私募債は、債券を発行し、知人や親族、取引先などに買ってもらうもの。私募債には「金融機関から融資が受けられないために私募債で資金調達する」というイメージも一部にあるようですが、期日が来れば償還(返済)の必要はあるため、企業の業績がそもそもかんばしくなく、償還可能性が低ければ、私募債発行は困難です。
一定規模の中小企業では私募債を金融機関が引き受け、信用保証協会が保証をつける特定社債保証制度 新しいウィンドウで開くもありますが、スモールビジネスにおいて、私募債を発行するケースはまれといえます。

クラウドファンディング

クラウドファンディングは出資者に対する特典提供を条件に、インターネットを通じて事業計画を公開し、広く資金を集める方法です。スタートアップや、一定規模の企業が新規事業を興す際に使うケースもあります。
スモールビジネスになじみが深い「株式型」「貸付型」「ファンド型」クラウドファンディングは、投資者への還元(償還、返済)が必要な金融商品取引法の対象となるため、デットファイナンスに含まれることが多いです。

補助金・助成金

国や地方自治体、財団などから支給される補助金・助成金も、資金調達の手段として挙げられます。経済産業省が技術開発・研究開発費として支給する補助金や、厚生労働省が人件費や人材育成のために支給する助成金があり、基本的にはどちらも返済不要です。

注意したいのは、公募期間が決まっていること。公募中の補助金・助成金を探す必要があります。
中小企業庁のWebサイトの情報や、弥生会計の「資金調達ナビ」内で検索すると、公募情報がタイムリーに得られます。

また、補助金申請にあたっては、経済産業省の認定支援機関になっている税理士に相談するのがおすすめです。まずは顧問税理士に問い合わせてみましょう。
厚生労働省の助成金を申請する際は、申請書類準備が厳しいため、社会保険労務士に相談するのも良いでしょう。

アセットファイナンス

アセットファイナンスは、中堅・大企業など保有資産がある企業が、資産を現金化する資金調達の選択肢です。スモールビジネスは、ファクタリングを除いて難しいのが実情です。

固定資産の売却

社宅、保養所、有価証券、ゴルフ会員権など、処分しても事業継続に差し支えない資産を売却し、資金を調達する方法もあります。最近では、「企業は固定資産をあまり持たないほうがいい」という考え方が一般的になってきているため、事業に直接関わらない資産について検討してもいいでしょう。ただし、税金の関係もあるため、顧問税理士との協議が必要です。

リースバック

事業に必要な資産を、リース会社に売却して資金を得る方法です。工場設備や営業車両などをリース会社へいったん売却し、リース会社から設備などを賃貸して事業を継続させます。リース会社に対する賃貸料が発生するため、本当に効果的かどうかは十分な検討が必要です。
なお、リースバックは業績悪化時や事業再生時にも活用される場合があります(事業再生時は『セール&リースバック』)。

ファクタリング

企業が売掛債権や在庫を売却して資金調達する方法です。ファクタリングは金融機関やそのグループ会社、ノンバンク系企業も手掛けています。ただ、高額な手数料を取るような一部のファクタリング会社には注意が必要です。金融庁からも注意喚起の通達 新しいウィンドウで開くが出ていることもあり、利用の際は顧問税理士に確認しておきたいところです。