病院やクリニックにおける資金調達の種類とは

2023年8月30日

病院やクリニックでは、医療法の規定によって例外を除いて収益事業は行えなくなっています。それでも日々、健全な運営を目指すためには資金調達についての計画は重要な要素になります。高額な医療機器の導入や人件費など考えていかなければいけないことは色々あり、資金調達の方法も様々なものがあります。短期、中期、長期の資金計画を考えていく上でどのような資金調達方法を活用すればより効率的な経営をすることができるかご紹介いたします。

間接金融での資金調達方法

間接金融は投資家から病院などが直接資金を調達するのではなく、金融機関などに集まった資金を利用するもので銀行の融資などが代表的なものになります。

信用情報などを把握している金融機関などであれば適切な資金調達についてアドバイスをもらうことができるメリットがあるが、必ずしも融資を受けられるわけではないことや、担保が必要になるという注意点もあります。

医師・歯科医師信用組合

信用組合とは「相互扶助」を理念とし、「中小企業等協同組合法」に基づく協同組合組織の金融機関です。信用組合の形態としては「地域」「業域」「職域」の3種類があり、医師信用組合、歯科医師信用組合は「業域」にあたります。また利益の追求を目的とせず、組合員の発展を目的とした組織となります。

新規開業ローンでは該当の信用組合の都道府県内で開業すること、医師会に入会すること、組合員加入(出資金が必要)が条件となっております。用途はクリニック開業に伴う設備資金や運転資金などに利用できます。

担保は有担保、無担保が選べるようになっており、保証人には原則配偶者がなることと明記している信用組合が多くあります。信用組合は金融機関ですから審査の結果次第では融資が受けることができなかったり、減額で決定したりと計画通りの資金調達ができなくなる場合があります。

信用組合毎に様々なローンがあり、上記の新規開業ローンの他にフリーローン、医療機器購入ローン、医師会入会金サポートローンなどがあり、開業を検討している地域に信用組合があれば概要を確認してみるものいいかもしれません。現在、大阪府、神奈川県、福井県、静岡県などにあります。

福祉医療機構

独立行政法人福祉医療機構とは国の政策効果が最大になるよう、地域の福祉医療の向上を目指して幅広く総合的に支援する組織で福祉医療の円滑な整備のための資金の調達手段として福祉医療貸付事業を行っております。

医療貸付事業では病院、クリニック、医療従事者養成施設などを対象に建築や機械購入のための資金調達を目的とした設置・整備資金と、新設などに必要な資金調達や、経営の安定化を図るための資金調達を目的とした長期運転資金の融資があります。

貸付の方法は機構に直接融資の申請をする直接貸付と機構の代理店となっている金融機関に融資の申請をする代理貸付があります。融資の相談には時間を要することがあるので計画の初期の段階からはじめておく方がいいでしょう。

融資の条件としては病院、クリニックともに所有者を問わない物件の担保提供が必要になります。保証人については金利が上乗せになる保証人不要制度と法人代表者や個人の連帯保証人を立てる個人保証とを選ぶことができます。

直接金融での資金調達方法

銀行の融資などが該当する間接金融に対して不特定多数の投資家から直接資金の提供を受けて資金調達を行うことを直接金融と言います。

直接金融では多額の資金を集めることができるというメリットがありますが、調達のためのコストがかかる上、信用情報などの開示をはじめとした様々な手続きが煩雑になるというデメリットもあります。

ここでは直接金融にあたるものをいくつかご紹介いたします。

リースバック方式

高額な医療機器・事務機器を購入しリース会社に売却、その後にリース契約をして月々リース料を支払うという方法です。所有資産売却により資金調達ができる、メンテナンスなどの手間が省かれるという利点もありますが、契約期間中は解約ができない、購入することに比べてリース料は高めに設定されるというデメリットもあります。技術進歩の早い医療機器はリースバックではなくリースで対応するということを検討する必要があります。

医療機関債

金銭消費貸借契約となり、発行に関する規定もありません。日本医療法人協会では知人や地域住民、職員などから募集をする少人数私募債の発行方式に準拠する形式を提言しています。これは全ての医療機関が行えるわけではなく、監査法人などの監査を受けていることなどの制約があり、厚生労働省からも過去3年間の医業経営が健全であることなどのガイドラインが出されています。

金融機関から融資を受ける際のポイント

金融機関の融資の基本は「返済が約束された先にお金を貸す」ことです。融資は事業計画がしっかりしていること、返済の計画に無理がないことなどの他、様々な検討要素が集まって融資が決定します。全額希望通り融資が決定することもあれば、減額での決定や、信用度によっては利息が高くなることもあります。

診療報酬債権流動化

病院・クリニックが持っている診療報酬債権を担保として資金調達をする方法です。診療報酬債権は一定の事由がない限り支払われるものなので信用度が高く、これを活用して資金調達を行います。ファクタリング会社の審査も比較的緩く、短期で資金の調達ができるというメリットがありますが、診療報酬の金額が資金調達の金額となるので多額の金額を必要とする場合や長期の資金調達には向きません。

返済計画はどれくらいの期間を設定するのか

返済期間は短い方が理想ではありますが、毎月の返済の額が大きくなれば、返済が難しい月も発生してきます。期間はある程度、長めに設定し、まとまった資金ができた時に繰り上げで返済していく方向で計画を立てるほうが無理はなくなります。

また完済までの期間には借主の年齢が関係してくることから、医師の年齢も重要な要素となってきます。

開業にはどれくらい費用がかかるのか

開業する診療科、場所によって開業の資金は変わってきます。また開業して1年ほどの運転資金には概算でも1000万円ほど準備が必要になると言われています。下記の表は場所、医療機器、設備・什器などのトータルの概算になります。

診療報酬の見込みはどうか

診療報酬は病院・クリニックの収入に直結する大切な要素です。そのため、融資の判断に少なからず関わってくる要素と言えます。開業をするにあたって資金の計画に問題があると考えられる場合には事業計画から見直していくことも一つの方法です。

融資には担保が必要なことが多い

金融機関でも無担保のローンもありますが、担保の提供を求められることが多くあります。提供した担保の評価によって借入の限度額も変わってきますし、すでに別の借入に担保を提供しているなどということもあります。自身が提供する担保の状況の確認も早めにしておくことをお勧めします。

新たな資金調達方法がある

資金調達には時間がかかる、コストがかかるなど日々、忙しい病院、クリニックの現場の負担となっていました。そこで注目を集めているのが今までの直接金融、間接金融に加えて新しく電子記録債権を利用した方法です。

電子記録債権とは?

電子記録債権とは売掛債権などを電子化しインターネット上での取引を可能にし、資金調達を円滑に進めていくことを目的として作られています。

取引銀行とシステムを共有、一括管理することによって売掛債権所有者は一つ一つを管理・契約する手間が省けます。

現在、金融庁から認可された電子債権記録機関はみずほ、三菱UFJ、三井住友銀行が100%出資した会社と全国銀行協会が100%出資した会社、Tranzaxが100%出資した会社の5社があります。

電子記録債権を活用した資金調達のメリット

電子記録債権ではペーパーレスなので手形の発行作業などが省略でき、支払い処理にかかる時間を短縮できます。また審査から融資実行までも2~4営業日と今までの資金調達方法と比べてもかなり早くなっています。

事務上でもインターネット上の取引となるので手形を発行した際に必要だった印紙が必要では無くなります。また手形、振込など様々な決済方法を利用していると事務上、非効率になりますが、決済方法を一本化することで事務の簡略化が図れます。

反面、デメリットとしては自身が導入していても相手方が導入していなければ活用できないことや、インターネット上の取引となるのでウイルスなどの被害をうけることも考えなければいけません。

まとめ

医療機関は株式会社のような営利法人とは違い不特定多数の人に向けて株式や社債を発行して広く資金を調達することはできず、収益事業を行うこともできないため、診療報酬債権以外の収入の基盤を作ることは難しくなっています。病院やクリニックが資金面で安定した経営ができるようになるには10年はかかるという人もいます。また今回のコロナのようにいつもの日常が突然大きく変化してしまうこともあります。

日々の診療で患者の方々との信頼関係を築き事業の安定を計っていくと同時に、中・長期的な資金の計画、危機管理の事業計画についても常に検討を繰り返していくことで安定した経営を目指していくことが大切になります。