自宅を活かして老後資金を確保する「リバースモーゲージ」とは?仕組み・活用法・注意点を徹底解説
2025年8月8日
日本は世界有数の超高齢社会に突入し、「長生きするリスク」への備えが社会的な課題となっています。年金収入だけでは安心して暮らせない、医療・介護費が将来不安、という声が多く聞かれるなか、注目されている資金調達手法の一つが「リバースモーゲージ」です。
リバースモーゲージは、高齢者が所有する自宅を担保に生活資金を借りるという制度。特に「自宅はあるが、現金が少ない」というケースで有効に機能します。
この記事では、リバースモーゲージの仕組みからメリット・デメリット、利用の条件、よくある誤解までをわかりやすく解説します。自宅という資産を活用しながら、安心して老後を過ごしたいと考える方にとって、有益な情報を網羅した内容となっています。
リバースモーゲージとは?
リバースモーゲージとは、自宅などの不動産を担保にして、銀行や自治体などの金融機関から生活資金を「分割で借りる」仕組みのことです。特徴的なのは、借り手の死亡後に不動産を売却して返済するという点です。
通常の住宅ローンでは「お金を先に借りて、返済しながら家を買う」のに対し、リバースモーゲージでは「家を担保にして、亡くなるまで返済せずにお金を受け取る」という、まさに“逆の住宅ローン”のような制度です。
・資金の受け取り方法には、
・月々の定額受け取り(年金形式)
・必要に応じての都度借り入れ(一括借入含む)
など複数の形式があります。
利用できる人の条件
リバースモーゲージは誰でも利用できるわけではなく、以下のような利用条件が設定されていることが一般的です。
・借り手の年齢が概ね55歳以上~65歳以上
・自宅などの不動産を所有していること
・不動産が一定の評価額以上であること
・配偶者がいる場合は、配偶者も契約に同意
・借入期間中は対象の住宅に住み続けること
さらに、借り入れ上限は担保となる不動産の評価額に基づいて決まるため、築年数や立地、評価額が低い物件では希望通りに借りられないこともあります。
リバースモーゲージの主なメリット
リバースモーゲージが近年注目されているのは、そのメリットが多岐にわたるからです。とくに高齢期における安心と自由をもたらす制度設計が魅力です。
1. 自宅に住み続けながら資金を得られる
最大の魅力は、自宅を売却せずに住み続けたまま、現金を得られることです。引っ越しの必要がなく、住み慣れた家で老後を送れるという精神的安心感は大きな価値です。
2. 返済は基本的に“死亡後”でOK
生存中に元本や利息を返済する必要は基本的にありません。借り手が亡くなった後、不動産を売却して返済に充てるため、生活の中での資金負担がありません。
3. 年金以外の“定期収入”を得られる
分割型のリバースモーゲージを選べば、第2の年金のように毎月一定額を受け取ることが可能です。老後資金に不安がある人には大きな安心材料になります。
4. 生活保護や介護費、住宅改修などにも活用可能
生活費だけでなく、医療費や介護サービス費、住宅のバリアフリー改修などにも使えるため、生活の質を維持・向上する選択肢としても有効です。
リバースモーゲージのデメリット・注意点
リバースモーゲージには便利な面だけでなく、慎重な判断が必要なポイントも存在します。誤解や想定外のリスクを避けるためにも、以下の注意点は理解しておきましょう。
1. 相続人とのトラブルになる可能性
借り手の死亡後、担保となった不動産は売却されてしまうため、子どもや相続人に自宅を残せないケースが多くなります。相続人の理解と同意が必要です。
2. 不動産価格の下落で返済額が上回るリスク
リバースモーゲージの返済原資は不動産の売却額ですが、将来的に地価が下がった場合、担保価値が借入額を下回る(アンダーウォーター)ことがあります。制度によっては、残債を相続人が負う可能性もゼロではありません。
3. 地方や古い家では利用できないことも
築年数が古い物件や、郊外・過疎地域の物件は評価額が低く、金融機関が担保価値を認めず利用できないことがあります。都心部や流通性の高いエリアの住宅が有利です。
4. 長生きリスクと借入限度額のバランス
長生きするほど借入額が膨らみ、担保価値とのバランスが崩れる懸念があります。そのため、長寿化社会においては契約期間や上限額の見直しが求められる場面もあります。
公的と民間、どちらを選ぶ?
リバースモーゲージは、大きく分けて自治体が提供する公的制度と、銀行などが提供する民間サービスがあります。
自治体(社会福祉協議会など)によるリバースモーゲージ
・生活保護レベルの生活困窮者向けが多い
・借入額は比較的小規模(例:月5万円程度)
・利子は無利子~低金利
・要件は厳しめ(年収や資産の制限あり)
民間金融機関によるリバースモーゲージ
・住宅ローンのある高齢者向けの商品も
・借入枠や資金使途が広く、利便性が高い
・利息は変動制が多く、金利上昇リスクあり
・途中解約や返済条件なども要確認
自身のニーズや収入状況、資産背景に応じて、どちらの制度が適しているかを見極めることが重要です。
リバースモーゲージの活用例
事例1:年金が少ない80代女性のケース
持ち家に一人暮らしの80代女性。年金が月8万円と少なく、生活が困難に。リバースモーゲージで月額6万円を受け取り、生活に余裕が生まれた。自宅を売らずに済み、安心して老後を過ごしている。
事例2:介護費用の補填として利用
夫の介護が必要となり、バリアフリー改修やデイサービスの費用が家計を圧迫。リバースモーゲージで資金を確保し、自宅に住みながら夫婦二人の生活を継続。
リバースモーゲージを利用する際のポイント
契約内容をよく確認すること
金利、受け取り方法、借入上限、返済条件などを詳細にチェック。
・相続人と話し合っておくこと
死亡後に自宅が売却されることについて、子どもなどとしっかり話し合っておきましょう。
・複数社から比較検討すること
金融機関ごとに条件や金利が大きく異なるため、事前に見積もりを取り比較することが大切です。
・将来的な資産価値の変動も考慮
不動産市場の動向や、住宅の維持管理状況もリスク管理の一環として重要です。
まとめ:住み慣れた我が家を“資産”に変える選択肢
リバースモーゲージは、自宅という眠れる資産を活用し、現金収入を得るという非常に有効な制度です。特に、年金だけでは不安な方や、老後の医療・介護に備えたい方にとって、有力な選択肢となり得ます。
ただし、相続や将来のリスク、契約内容などを正しく理解し、家族とも共有することが必要です。
“老後は安心して、自宅で過ごしたい”という想いをかなえるために、リバースモーゲージという制度をぜひ一度、真剣に検討してみてください。