リバースファクタリングの仕組みとメリットデメリットを解説

2023年2月28日

リバースファクタリングは、新たな資金調達方法として注目を集めています。そこで今回は、日本ではまだ珍しいリバースファクタリングの仕組みとメリット・デメリットを解説していきましょう。

なお、ファクタリングの仕組みや種類などのより詳細に関して、ファクタリングとは?仕組みや種類、メリット・デメリットまでわかりやすく解説!で詳しく解説しています。こちらも合わせてご覧ください。

リバースファクタリングとは

まず、リバースファクタリングとはどのようなもので、通常のファクタリングとどのような違いがあるのか見ていきます。

通常のファクタリング

一般的にファクタリング(factoring)とは、自社が有している未払いの売掛債権を資金回収前にファクタリング会社に売却、支払い期日よりも前に資金調達する方法のことを言います。

日本の商慣習では、商品やサービスの納品をした後に請求書を発行、期日までに請求金額を支払うという信用取引が多くなっています。納品から支払いまでのタイムラグによって、商品を販売した側の会社に売掛債権が発生するのです。この売掛債権を売却することにより、タイムラグを短期化して迅速に資金調達できるというのがファクタリングのポイント。

また、ファクタリングを使用することで、入金までに取引先が倒産してしまうといった不測の事態が起きた際の貸倒リスクを低減することにもつながります。

3社間ファクタリング

ファクタリングでは、ファクタリング会社と買掛先企業による2社間ファクタリング、先の2社に売掛先企業を加えた3社で取引される3社間ファクタリングが選べますが、リバースファクタリングの場合は3社間ファクタリングとなります。

リバースファクタリングの利用にあたっては、ファクタリング会社に手数料を支払う必要があります。手数料相場はおおむね3~5%。この際注意したいのが、依頼元の売掛先企業ではなく買掛先企業が手数料を支払うという点です。

リバースファクタリング

対するリバースファクタリングは、商品やサービスを購入して買掛金を有している側の企業(売掛先)がファクタリング会社に依頼し、取引先への支払いを代行してもらう方法のこと。サプライチェーン・ファイナンスとも呼ばれます。

通常のファクタリングの依頼元が買掛先であるのに対し、リバースファクタリングを依頼するのは売掛先。依頼する企業の立場が逆であることから「リバース」という名が付けられました。

リバースファクタリングを使うとファクタリング会社が支払いを代行してくれるため、売掛先企業の支払い期日を実質的に先延ばしすることができます。支払いまでの期間が長くなるので、売掛先企業の資金繰りに余裕が生まれるのです。買掛先企業にとっても迅速かつ確実に資金回収ができるため、双方にメリットのある仕組みと言えるでしょう。

売掛先企業にとってのメリット

それでは、リバースファクタリングにはどのようなメリットがあるのでしょうか。依頼元である売掛先企業にとってのメリットを3つご紹介します。

支払いサイトを長くすることができる

支払いサイトとは、取引代金の締め日から実際に代金を支払うまでに設けられる猶予期間のこと。先ほどお話しした通り、日本では信用取引が一般的なため、ほとんどの取引で一定の支払いサイトが設定されます。

リバースファクタリングでは、元の支払い期日の後にファクタリング会社へ代金を支払うことになるため、実質的な支払い期間を先延ばしして支払いサイトを長くすることができるという点は売掛先企業にとって大きなメリットです。一時的に手元資金が不足している時、リバースファクタリングを使用して支払いサイトを長くできれば、当面の資金繰りを改善することができます。

これは一種の資金調達とも捉えられます。例えば、リバースファクタリングによって100万円分の支払いサイトを3ヶ月長くできた場合、3ヶ月分の運転資金100万円を調達したことと同義。リバースファクタリングは資金調達方法としても有効なのです。

なお、詳しくは後ほど解説しますが、リバースファクタリングによって買掛先企業は早期に資金回収が可能となります。買掛先企業にとってリバースファクタリングを利用する取引先は「早期に現金化できるありがたい取引先」となるため、優秀な取引先を獲得できる可能性が高まるというのも、リバースファクタリングのメリットと言えます。

複数の支払いを一本化できる

仮に全ての取引先がリバースファクタリングの利用に同意してくれれば、売掛先企業としては複数の支払いを一本化できることになります。支払いの一本化により、通常なら1つ1つの支払いに対してかかる振込手数料や事務作業の削減が可能となり、全体的なコストカットが実現できるのです。

費用が発生しない

リバースファクタリングを利用するにあたっては、ファクタリング会社に一定の手数料を支払う必要があります。リバースファクタリングは、支払いを受ける買掛先企業側が手数料を支払う仕組みになっているため、売掛先企業に費用は発生しません。売掛先企業にとっては一切費用負担することなく資金繰り改善・資金調達ができるという、とても使い勝手のいい仕組みと言えるでしょう。

買掛先企業にとってのメリット

続いて、リバースファクタリングを使うことによる買掛先企業にとってのメリットを解説していきます。

貸倒リスクを軽減できる

確実に売掛金を回収できるという点。もし、従来の支払いサイト中に売掛先企業の経営状況が悪化して代金支払いが困難な状況になったとしても、買掛先企業はファクタリング会社から売掛金を確実に回収できるので、貸倒リスクを低減できます。

早期に売掛金を回収できる

買掛先企業にとって最大のメリットは、ファクタリング会社が売掛金を代わりに支払ってくれるため、元の支払い期日よりも早く売掛金を資金化できること。通常の取引だと支払いサイトが1ヶ月~数ヶ月に設定されますが、リバースファクタリングを使えば数日で支払いが完了する場合が多く、短期での資金繰りの改善効果は大きいと言えます。

特に売掛金の支払い期日がある時期に集中していて黒字倒産のリスクがある企業は、リバースファクタリングにより資金回収時期を分散化できるため、経営の安定化を図れます。

リバースファクタリングは発注企業と下請け企業の間で使われることも多く、手元資金に余裕のない下請け企業を救済するための手段としても活用可能。下請け企業に対する支払いを遅らせることは下請法に抵触する危険性がありますが、リバースファクタリングであれば合法的に支払い時期を先延ばしできます。売掛先企業の支払い猶予を確保しながら下請け企業の資金繰り悪化を防ぐことで、取引先との良好な関係構築にもつながるのです。

売掛先企業にとってのデメリット

以上、売掛先企業・買掛先企業双方にとってのメリットをご紹介してきましたが、リバースファクタリングにはデメリットも存在します。次に売掛先企業にとってのデメリットを2つ見ていきましょう。

扱う会社が少ない

日本ではリバースファクタリングを扱う会社がまだ少なく、選択肢が限られるという点もデメリット。扱う会社が少ない理由としては、リバースファクタリング自体が日本であまり知られていないこと、リバースファクタリングは大企業が使用する傾向にあり取扱金額が大きいことが挙げられます。

取引先が手数料を負担することになる

売掛先企業にとって手数料負担が発生しないことはメリットですが、裏を返せば買掛先企業に手数料を負担させなければいけないということであり、取引上のデメリットにもなり得ます。リバースファクタリングは3社間取引ですので、利用するにあたっては買掛先企業の同意を取り付けなければなりません。手数料負担を嫌う取引先だと、合意形成が困難になる可能性もあるでしょう。

また、交渉力の高い買掛先企業が相手だと、リバースファクタリングの手数料を負担する分、発注金額を上乗せするよう要求されるかもしれません。このように売掛先企業にとって手数料負担がないことはメリットばかりではない、ということを理解しておく必要があります。

買掛先企業にとってのデメリット

一方、買掛先企業にとってのデメリットとして挙げられるのが、ファクタリング会社に支払う手数料を負担しなければならない点。買掛先企業としては売掛金を前倒しで確実に回収できる一方、ファクタリング会社から受け取れるのは手数料分を差し引いた額ということになります。要するに、手数料を支払ってでも早期に資金化したいか、支払い期日まで待って全額を資金化するかという選択になるのです。

ただ、リバースファクタリングは3社間ファクタリングであり、2社間ファクタリングに比べて手数料は低め。多くの場合で手数料は3~5%程度に抑えられています。早期に資金化してキャッシュフローを改善できるというメリットと比較すれば、決して高い手数料額ではないと考えられるでしょう。

さらに、再三お伝えしている通り、リバースファクタリングには貸倒リスクを低減するという意味合いもあります。買掛先企業からすれば、リスクをファクタリング会社に背負ってもらうことになるため、一種の保険料を払っていると考えればいいかもしれません。

リバースファクタリングのまとめ

日本ではまだ一般的でないリバースファクタリングですが、上手に活用すれば、売掛先企業・買掛先企業双方にメリットのある仕組みだということがお分かりいただけたかと思います。銀行融資などと併用すればキャッシュフローを潤滑に回すことができ、事業拡大に結びつけることも可能です。新たな資金調達方法を模索しているのであれば、リバースファクタリングを取り入れてみるといいのではないでしょうか。