法人口座が作れない理由は?主な審査基準や審査に落ちる原因を解説
2024年10月21日
法人で事業を始める場合、個人名義の銀行口座を使って取引きをしても問題はありません。
しかし、会社の資金をプライベートで使っているのではないかと疑われるケースもあるため、事業運営でのリスクを減らすためにも法人口座を作るようおすすめします。
法人口座は個人名義の口座と比べると開設までに時間がかかるため、あらかじめ審査基準を把握しておくのが大事です。
今回は、法人口座のメリットと口座開設の際の審査基準などを解説します。
法人口座が作れない場合でも事業取引はできる
会社を経営するにあたり、法人口座は必須になるのでしょうか。作る手間を考えれば個人口座でも問題ないと考える方もいるかもしれません。
結論から言うと、法人口座の開設は必須ではなく任意です。そのため、個人口座でも管理がしっかりとできればまったく問題ありません。
法人口座は、会社の取引で利用する金融機関の口座です。名義は会社の代表名義ではなく、「株式会社○○」といった法人名となります。
会社を起ち上げたら勝手に口座が作られることはなく、自分で申請して開設しなくてはなりません。
口座開設にあたって、金融機関に自ら足を運ぶ必要があります。会社を起ち上げる際には様々な手続きが必要となるため、法人口座を作るためだけに金融機関に行くのは面倒に感じる方もいるかもしれません。
法人口座の開設にはメリットが多い
個人口座でも事業の取引きは可能とはいえ、法人口座を開設したほうがより多くのメリットを得られます。
リスクを抑えた事業継続も可能となる、法人口座開設の魅力をご紹介します。
財務状況の把握に便利
支払いや振込みは銀行を通して行うので、会社で使う資金の流れが通帳を見ただけで確認できます。手元の残高の確認もすぐ把握でき、削減できる支出項目や資金繰りについての検討もしやすくなります。
法人向けのインターネットバンキングも活用すれば会計ソフトと連携させることも可能です。入出金の明細データを自動で取り込む会計ソフトもあるので、仕分け作業の手間も大幅に削減できます。
インターネットバンキングは24時間365日利用できるものが多いので、必要な時にすぐ活用可能です。窓口に行く必要もないので、時間と労力の削減に大きく貢献してくれます。法人向けのインターネットバンキングにおいては、利用料がかかるケースが多くあります。
少しでも費用を抑えたいのであれば、利用料が一定期間免除になるなどのサービスを実施している金融機関を選ぶのがおすすめです。
社会的信用度が上がりやすい
個人口座で取引きをしても法律上は問題ありません。
しかし、会社と個人の資産が区別されていないので、管理ができていないのではないかといった不安を税務署や取引先に与える場合もあります。
そのような心配は、今後の経営にも影響をもたらす恐れもあります。少しでも不安のある会社とは取引きをしたくないと考える企業も少なくありません。
法人口座を開設すれば会社と個人の資産が分かれていることが明確に判断できるので、社会的な信用度アップにつながります。
社会的信頼度が高まれば、取引する上でスムーズに進む可能性が高まります。
法人用クレジットカードが作れる
銀行の法人口座を持つことで、法人用のクレジットカードが作れるようになります。
銀行口座を個人と法人で使い分けるように、クレジットカードも個人と法人で使い分けることで、経理処理が格段に効率化できます。
また、法人で使う経費をクレジットカード決済にすることで、マイルをはじめとした様々なポイントを貯められることもメリットの1つです。
融資を受ける際に有利になる
法人の銀行口座を作っておけば、融資を受ける際に有利になる場合があります。
法人を経営する場合でも、個人の銀行口座を使っても問題はありませんが、取引先から見られる時に「なぜ法人なのに個人の銀行口座なのか?」と疑問や不信感が生まれる可能性があります。
法人として銀行に融資を申し込む際にも、同じように法人口座を作っていないことに対する疑問や不信感を抱かれる原因となり、融資の審査においてネガティブに働く危険性が高まります。
将来的に銀行から融資を受ける可能性が少しでもあるのであれば、早いうちに法人口座を作っておくことをおすすめします。
法人口座が個人口座よりも作りにくい理由
個人口座は金融機関で申請をすればすぐに口座が開設できます。しかし、その対象が法人になっただけで開設の難易度が急激に上がります。
なぜ開設できないのかという理由は、金融機関からも具体的に教えてはもらえません。個人口座とは違って審査が厳しいことを理解した上で申請してください。
なぜ法人口座が作りにくいのか、その理由は「マネーロンダリング」が関係しています。
マネーロンダリングとは、詐欺行為や薬物販売の収益など、その出所や所有者はわからないようにし、あたかも正当な商品を譲渡した際に受け取った代金として装うことを指します。
例え犯罪行為であっても、ビジネスをして売り上げた資金とすれば、表向きでは犯罪行為だとはわかりません。
こうしたことから、法人口座を活用してマネーロンダリングを行う人が増え、法人口座が作りにくくなってしまった経緯があります。
法人口座が作れない!主な審査基準、審査に落ちる原因とは?
法人口座の開設をするために申請しても、審査を通らなければ口座開設ができません。
きちんとしたビジネスで使うための口座でも、なぜ審査に落ちてしまうのか、理由を知りたい方もいるのではないでしょうか。審査に落ちてもその原因は教えてくれないため、以下に考えられる要因として、主な審査基準を紹介します。
法人の実態が掴めない
客観的に見て、法人の実態が掴めないと判断されれば審査に落ちます。
実態が掴めなければ、振り込め詐欺や薬物の取引きで使われるなど、犯罪に利用されてしまう恐れがあると銀行側は判断します。少しでもそのリスクがあれば、銀行は口座開設を認めません。
また、過去の取引履歴を証明する書類や、事務所やオフィスの賃貸借契約書に不備がある場合も、審査で不利に働いてしまうので気を付けてください。
法務局で法人の手続きをしてからすぐのタイミングで口座開設を申し込んだ場合も審査に落ちやすいようです。
銀行での登記確認ができないことが原因のため、法人登記の手続きが完了していることを確かめた上で口座開設の申請をします。
事業内容がわかりにくい
会社の事業内容がわかりにくいというだけでも、口座を不正利用される恐れがあるので審査に落ちやすいと言われています。実際、正当なビジネスをしている会社でも、銀行の担当者にその内容が伝わらなければ審査通過は叶いません。
事業内容を説明する際には、登記簿謄本の「履歴事項全部証明書」を提出して説明することになります。
小売りやサービス業など、事業内容が多い場合は内容を並べるだけでは実態がわかりにくいこともあります。
そのため、誰が見ても何をしている会社なのかわかりやすいように、どの事業をメインに行っている会社であるかなど、詳細を説明することが必要です。説明がしきれないと判断すれば、メインの事業のみを申告する方法もおすすめです。
資本金が少ない
資本金の額で審査に落ちるケースもあります。法律上、会社設立では1円から登記が可能です。
しかし、資本金があまりにも少なすぎると実態のない会社、いわゆるペーパーカンパニーと判断されて審査に落ちてしまいます。
法人口座の開設では、最低でも100万円ほどの資本金があると安心ですが、事業内容によって目安となる資本金額には違いがあります。自身の会社の事業内容に合った資本金を把握し準備をしてから申し込めば、スムーズに手続きが行えるでしょう。
申請書と登記書類の住所が一致しない
口座を開設する際に申請書を出しますが、申請書に記載された住所と登記書類の住所が一致しないと審査に落ちる要因になります。
申請書の不備の場合もありますが、故意ではなくても住所が異なっていれば、怪しいと判断されて審査に落ちてしまいます。
申請書を出す際には不備がないか、最後に目を通してしっかりと確認することが大切です。
また、会社を移転したばかりで家賃をまだ支払っていない状況も、審査に通らない恐れがあります。入居実績がないと判断されれば、会社に対する信用度は下がってしまうため、日を置いてから申請すると審査に通りやすくなります。
また、会社の本社所在地から距離のある金融機関の支店で口座を開こうと審査を申し出た場合、通常は申請を断られるので注意してください。
金融機関では、支店ごとに管轄するエリアが定められています。そのため、エリア外にある会社は申請ができません。
申請をする際には、本社所在地から最寄りの支店にある窓口に足を運び、申し込む申請をします。申請できるかわからない場合は、事前に対応可能か聞くと安心です。
代表者に信用性がない
審査では会社の情報だけではなく代表者の情報も審査の対象です。申請の際には、代表者のこれまでの経歴や実績をヒアリングします。その内容と調査結果を照らし合わせ、総合的に判断しています。
もし、反社会的勢力と関わりがある、破産や任意整理の経歴がある、といった人物であれば、信用できないと判断されて審査は通りません。これから口座を開設しようと考えている方は、日頃の取引きを見直し、これまでに不利になるような取引きをしてこなかったか振り返ってみることも大切です。
その他の原因
現在は固定電話のない会社も多くなっていますが、固定電話のない会社は会社の実態がないと判断される場合があり審査に落ちてしまうことも考えられます。
携帯電話のみで取引先と連絡を取り合っている会社であれば、固定電話の設置を検討してください。
また、法人口座開設の目的が明確ではない場合も断られる可能性が高くなります。法人口座を開設する目的には、入金・決済・融資返済・海外送金などがあります。自社がどういった用途で使用するのか明確に伝えることが大事です。
ネット銀行の場合は、会社のホームページの有無が審査に影響するケースもあります。審査に落ちるリスクを減らすためにも、あらかじめホームページを制作してから申し込むと良いでしょう。
法人口座の審査落ちを回避するための5つのポイント
法人口座開設の厳しい審査を通過するためにも、準備を怠らないことが大切です。審査落ちを回避するための対策を解説していきます。
1.会社設立の際に早めに準備する
法人口座を開設するためには、主に「定款」「登記事項全部証明書」「印鑑証明書」の3点が必要です。
定款は法人設立時に作成する書類ですが、登記事項全部証明書は法人登記後に法務局で発行してもらえるようになります。
さらに、印鑑証明書は代表者個人と法人の2種類が必要です。
法人の印鑑を作るのにも数日かかり、印鑑証明書も法務局に行き、発行してもらわなければなりません。
法人口座の開設手続きに必要なものを揃えるのにも時間がかかるため、必要に迫られる前に早めに準備を始めることをおすすめします。
2.法人口座の審査基準を把握する
法人口座を作る際の金融機関の主な審査基準は以下の通りです。
1.会社の場所
2.事業内容
3.資本金額
4.固定電話の有無
5.ホームページの有無
ただし、金融機関によって審査の基準に違いがあり、ある銀行では審査に通らなくても、ほかの銀行では審査に通過するケースもあります。
そのため、申し込む銀行の審査基準を前もって調査し、条件を満たせるようにしっかりと準備をしておくことが必要です。審査基準がわからない場合には、上記の基準をすべて満たせるように準備しておくと安心です。
3.金融機関ごとの難易度も把握する
金融機関といっても種類は豊富にあります。それぞれの金融機関によって審査の基準に違いがあるだけでなく、その難易度にも違いがあることを把握しておきましょう。
一般的に法人口座の設立は、信用金庫・信用組合→地方銀行→メガバンクの順に難易度が上がる傾向にあります。
個人口座でメインバンクとして活用している、規模の大きい会社を経営している場合は、法人口座開設も比較的スムーズに進む可能性があります。
しかし、そうでない場合は審査に通らないこともあるので、メガバンクよりも審査基準が甘い地方銀行や信用金庫での開設を検討するのも方法のひとつです。
地方銀行や信用金庫で口座開設に申し込む際には、自社がその地域に与えるプラスの影響についても詳しく説明することで、担当者に共感してもらいやすくなり、口座開設の可能性も上がります。
また、実店舗のないネット銀行は比較的審査が通りやすい傾向にあります。口座開設時にはオンラインや郵送で手続きが可能であり、スムーズな点がメリットです。
しかし、必要書類に不備があれば、当然のことですが審査には進めません。書類の準備や事業説明のための書類は、入念にチェックをしてください。
4.法人口座開設のために必要な提出書類の不備を防ぐ
法人口座の開設では必要な書類が多くあります。不備が多ければ、信頼できないと判断されて審査に落ちることも少なくありません。落ちるリスクを減らすためにも、万全に用意をして審査に臨むようにします。
【開設に必要となる書類の一例】
・履歴事項全部証明書(会社謄本)
・印鑑証明書
・代表者の本人確認書類
・定款
・法人番号が確認できる書類
・賃貸借契約書の写し
・事業計画書
・法人設立届出書
・事業の実態が把握できるもの(会社案内やパンフレットなど)
・青色申告の承認申請書
履歴事項全部証明書・印鑑証明書・代表者の本人確認書類の3点は、どの金融機関でも必要です。
そのほかは、金融機関によって必要な書類が変わるので、前もって確認してください。
5.事業内容や口座開設の目的を明確に説明できるように準備
法人口座を作る際、審査担当者に事業内容や口座開設の目的を説明します。説明がわかりにくいと不信感を与えてしまうので、内容によっては審査を通らない場合もあります。
自信がない場合は、はっきり明確に説明できるように事前練習をしておくと安心です。
審査に落ちてしまったら、再度審査に申し込むことも可能です。
その際には、銀行への相談や説明を繰り返し、意思疎通を図ることで信用度がアップするケースもあります。審査に一度落ちたからといって諦めず、根気よく説明をしていきましょう。
法人口座開設を断られた時の対処法
今回解説した内容を網羅して準備をして、法人口座の開設に臨んだにもかかわらず、口座開設を断られる可能性も十分に考えられます。
口座開設を断られたとしても、必ずしも書類の不備や問題があったというわけではありません。各銀行が設定している審査基準に合わなかったり、意図がうまく伝わっていなかったりする可能性もあります。
ここからは法人口座開設を断られた時の対処法も解説するので、万が一断られた際には参考にしてください。
個人口座を開設済みの金融機関へ相談
法人口座を開設する際には、代表者個人の信用も審査基準に含まれています。
そのため、法人口座開設を断られた際には、個人としてクレジットカードの引き落とし先に設定していたり、会社員時代に給与の振込先として使っていたりと、すでに個人として口座を開設している金融機関へ相談してみましょう。
必ずしも法人口座を開設できるとは限りませんが、何の関わりもない場合に比べると、口座を開設できる可能性が上がります。
取引先に金融機関を相談
すでに取引先がある場合は、取引先に金融機関の担当者を紹介してもらうことも有効な手段の1つです。
提出した書類を見て審査基準に合わないと誤解された場合でも、金融機関の担当者に直接説明すれば、誤解が解ける可能性もあります。特定の金融機関でどうしても法人口座を開設したいと考えている方は、担当者を紹介してもらうことをおすすめします。
まとめ
法人口座があれば、税務署や取引先からの信用度が上がります。新たな取引先の獲得にも影響を与えるため、法人口座は事業発展に有効なアイテムのひとつです。
しかし、口座開設には必要な書類も多く、審査に通らない場合もあります。
スムーズな開設を目指すためにも、審査落ちを回避するために対策を立てることが大切です。
必要な書類を含め、事前準備を万端にすることで、審査に通る可能性が高まります。