株式会社が資金調達で「株式発行」を利用するメリットとは

2024年9月18日

いつもご愛読いただきありがとうございます。
今回は、株式会社の資金調達において、株式を利用するメリットについてお伝えします。
資金調達には、さまざまな方法がありますが、株式会社だからことできる、「株式発行」について、知っていただければと思います。

株式とは

そもそも株式とは、わかりやすく言うと「企業が資金調達のために活用できる制度」です。金融機関からの融資は「間接金融」、株式や社債による資金調達は「直接金融」と呼ばれます。

投資家に出資してもらう際に企業は株式を発行し、出資金額が企業の自己資本となります。投資家が株を売却したい場合は、その株を買いたい別の投資家を見つける必要があり、発行した企業が返済する必要はありません。
ただし、株式を利用して資金を得た企業に利益が出た場合、その利益を株主と分ける必要があります。利益を株主に分配することを配当金や分配金と呼びます。

また、株式を保有する株主には、株主総会での議決権が与えられます。つまり、意見を表明することで企業経営に参加できるようになります。株式の過半数を保有する株主には経営権が発生するため、経営権を渡したくない場合は自社と通じた人のみで過半数の株式を保有する必要があります。

社債との違い

資金調達の方法として、株式に似た仕組みが社債です。社債とは、投資家から融資を得る制度で、社債を発行した企業には利息や返済が発生します。株式は自己資本の扱いでしたが、社債は負債となります。

ただし株式とは異なり、株主に議決権や経営権を与える必要がありません。また、株式より短期間で発行できたり、株価に影響を与えることが少ないといったメリットもあります。

株式を発行して資金調達する際の流れ

株式を発行して資金調達する際の流れは、以下のとおりです。

募集事項を決定する
募集事項を通知する
申し込み内容を確認する
募集株式を割り当てる
払い込みを確認する
登記を変更する

①募集事項を決定する

募集要項は、投資家が株式発行の目的や内容、リスクなどを理解し、投資判断を行うための重要な資料です。

会社は、発行する株式の種類や数、払込金額、出資の目的とする財産の内容と価額などの募集事項を決定します。これらの事項は、株主総会の特別決議によって決められることが一般的です。

②募集事項を通知する

決定された募集事項は、投資家や株主に通知しましょう。その結果、投資家は新たな投資の機会を知ることができ、株式を引き受ける意思を持つことができます。

③申し込み内容を確認する

投資家からの申し込みがあったら、申し込み内容を確認しましょう。投資家が提案された条件にきちんと従っているか、検証します。

④募集株式を割り当てる

申し込み内容が適切であれば、募集株式を申し込み者に割り当てます。一般的に、株主総会や取締役会によって承認されることが多いです。

⑤払い込みを確認する

株式が割り当てられると、投資家は約束された払込金額を支払います。払い込みをチェックし、資金を正しく受け取ることができたか確認しましょう。

⑥登記を変更する

資金調達が完了し、払い込みを確認した後は、商業登記簿に資本金の変更を登記します。これにより、新しい株主の情報が公式記録として更新されます。

株式を発行する方法は3種類

株式会社が資金調達する方法には、以下の3種類があります。

エクイティファイナンス:資本を増やす
デットファイナンス:負債を増やす
アセットファイナンス:資産を現金化する
このうち、株式発行による資金調達はエクイティファイナンスに該当します。

また、株式を発行する方法には以下の4種類があります。それぞれの特徴を理解し、自社に合った方法を検討しましょう。

株主割当

既存の株主に対し、持株比率に応じた株式を発行する方法です。条件に合意してもらう必要があるものの、比較的素早く資金調達できます。既存株主の負担になるような大きい金額の資金調達には不向きです。
第三者割当
既存株主ではなく、第三者に株式を発行する方法です。既存株主の持株比率は下がるため株価の低下が危ぶまれるものの、特定の相手に対する交渉で済むため、短時間で大きな金額を資金調達できる可能性があります。

公募発行

既存株主でも特定の第三者でもなく、株式を公募により発行する方法です。調達できる金額が大きくなり、発行後は株式の売買数が増加する可能性もあります。ただし、株主数が増えるため対応コストもかかります。

転換社債型新株予約権付社債

債券としての性質と株式としての性質を併せ持つ証券です。発行時に決められた価格(転換価額)で、一定期間内に株式に転換することができる債券のことを指します。

株式発行で資金調達を行うメリット

では、株式発行で資金調達を行う際、どのようなメリットがあるのでしょうか。

財務体質を強化できる

財務体質を強化できることも、株式発行で資金調達するメリットです。財務体質とは、企業の財務状況のことを指します。自己資本比率が高く、負債が少ないほど財務体質が健全とされています。

繰り返しになりますが、株式発行により調達した資金は自己資本です。株式発行による資金調達は、金融機関からの融資や社債発行などの負債と比較し、自己資本比率を高める結果となります。

自己資本比率を上げて財務体質を強化することで、安定的な経営を実行できたり、融資を受けやすくなったりと信用力が向上します。

返済する必要がない

株式発行で調達資金は、返済する必要はありません。金融機関からの融資や社債の発行による資金調達は企業の負債となり、返済する必要があります。

しかし、株式は自己資本となる仕組みのため、株主に対しての返済は不要です。前述のとおり、株主が株を売却したい場合は、株を購入したい別の投資家を探して購入してもらう仕組みのため、投資家間の株の売買に企業は関わりません。

まとめ

今回は、株式会社が資金調達する際に株式を利用するメリットについてお伝えしました。
しかし、株式発行には経営権を奪われたり、既存株主の反感を買うことで株価が低下したりする可能性があることも理解しておくことが重要です。
自社に適した方法で株式発行による資金調達を行うことをお勧めします。
最後までお読みいただきありがとうございました!