借入金の返済猶予とは|事業を守るための制度と活用ポイント

2025年11月14日

資金繰りが悪化した際、借入金の返済が重荷になり、事業継続に不安を抱える経営者は少なくありません。特に売上が一時的に落ち込んだ場合、資金が定期的に流出する返済は大きな負担となります。
そんな状況で有効な対策のひとつが 「返済猶予(リスケジュール)」 です。本記事では、返済猶予の仕組み、利用時の注意点、金融機関への伝え方、そして事業改善の視点までわかりやすく解説します。

借入金の返済猶予とは何か

返済猶予は、金融機関に相談し、元金の返済を一定期間止めたり、返済額を減額することで資金繰りを改善する仕組みです。
売上が回復するまでの時間を稼ぎ、事業の立て直しに集中できるメリットがあります。銀行、信用金庫、日本政策金融公庫など、多くの金融機関で相談可能です。

猶予期間中は元金支払が止まる場合が多く、利息のみ支払うケースが一般的です。

返済猶予が必要となる状況

返済猶予の相談が発生する背景には、以下のような経営環境の変化があります。

売上の急減による資金不足

繁忙期と閑散期の差が激しい業種や、景気の動向に左右されやすい事業では、売上減少が資金繰りを直撃します。突然の売上減により、短期間で返済負担が重くなることがあります。

仕入原価や固定費の増加

原材料費や光熱費、人件費が高騰すると、返済に充てる資金が不足します。固定費の増加は継続的な負担になるため、返済猶予を活用して一度立て直しを図るケースも多いです。

複数借入による返済負担の肥大化

複数の借入金を抱えている場合、返済日が重なることで資金が一度に流出し、資金繰りが苦しくなることがあります。一時的な猶予期間を設けることで、再構築の時間を確保できます。

返済猶予の主な方法

返済猶予には複数の形があり、金融機関と相談しながら最適な方法を選択します。

元金返済の停止(元金据置)

最も一般的な返済猶予の方法で、一定期間元金返済をストップし、利息のみを支払う形です。負担が大幅に軽くなるため、急場しのぎとして最も利用されています。

返済期間の延長

返済期間を長くすることで、毎月の返済額を減らす方法です。返済負担が分散されるため、中長期の資金繰り改善に適しています。

返済額の一部減額

金融機関と合意の上で、毎月の返済額を一定期間減額する方法です。利息のみ支払いよりは負担が残りますが、継続的な返済実績を維持できるメリットがあります。

返済猶予のメリットと注意点

返済猶予は事業を守るための有効な手段ですが、同時にデメリットやリスクもあります。

メリット

・資金繰りが即座に改善する
・事業再構築に必要な時間を確保できる
・倒産や廃業リスクを大幅に軽減できる

注意点

返済猶予は万能ではなく、あくまで“時間を稼ぐ”ための制度です。猶予期間が終われば再び返済が始まり、その時点の経営状況が改善していなければ再び資金繰りが厳しくなる可能性があります。
再度のリスケは難しくなる傾向にあるため、猶予期間中の事業改善が必須です。

金融機関に返済猶予を相談する際のポイント

実際に返済猶予を申請する際には、事前準備が非常に重要です。

事業の現状を正確に伝える

売上が下がった理由、資金繰りの状況、現時点での課題を正確に伝えることが信頼につながり、話がスムーズに進みます。
金融機関は事実を正しく共有する経営者を評価するため、隠し事は逆効果となります。

改善計画の提示

返済猶予を通すために最も重視されるのは「改善計画」です。
どのように売上回復を図るのか、経費をどう削減するのか、いつまでに資金繰りを安定させるのか──これらを明確にした計画書の提示は不可欠です。

必要資料の準備

・試算表
・資金繰り表
・直近の決算書
・既存借入一覧
こうした資料が整っていれば、金融機関は現状を迅速に判断できます。

返済猶予を成功させるために必要な視点

返済猶予は、単なる延命策にしては意味がありません。猶予期間を事業改善につなげることが最も重要です。

資金繰りの見える化

まず、毎月の資金の流れを正確に把握し、売上が入るタイミングと支出が出るタイミングを整理します。これにより、改善すべきポイントが明確になります。

収益構造の見直し

収益性の低い取引の縮小、利益率の高い商品の強化、無駄なコストの見直しなど、根本的な見直しが必要です。

新たな資金調達の検討

返済猶予だけでなく、補助金の活用、売掛金の早期資金化(ファクタリング)、投資家からの資金調達など、複数の選択肢を組み合わせることで改善スピードが上がります。

返済猶予は経営を立て直すための重要な手段

借入金の返済猶予は、資金繰りの厳しい局面において事業を守る非常に有効な制度です。しかし、それは「返済を止める」ことが目的ではなく、「事業を立て直すための時間を確保する」ためのものです。
適切に活用すれば、事業改善のチャンスを生み出し、新たな成長へのきっかけにもなります。

猶予期間中の行動次第で、事業の未来は大きく変わります。今まさに返済が重く感じている経営者は、早めに金融機関へ相談し、現状に合った対策を進めていくことが重要です。