長期借入金の平均的な返済期間はどれくらい?
2024年8月5日
いつもご愛読いただきありがとうございます。
資金の借り入れを考えておられる方で、返済期間で迷われている方は多いのではないでしょうか?
長期借入を行う場合は特に悩まれるかと思います。
今回は、平均的な長期借入金の返済期間についてお伝えしたいと思います。
返済期間は大きく2種類から考える
融資には、1年以内の返済期間を「短期借入金」、返済期間が1年を超える借入金を「長期借入金」があります。
資金の使いみちに応じて借入期間を考えなければなりません。
短期借入金
資金使途が運転資金などで、短期で返済できる事業資金に対応しているのが短期借入金です。
主に3種類あります。
手形貸付
手形貸付とは、申込人が金融機関に手形を差し入れ、手形期日までに資金を返済する方法です。利息を先に引かれて資金交付されます。
短期(1年以内)の借入であるため、金利が長期借入金より低いことが一般的です。手形期日に弁済できない場合、信用力の低下を招くため、期日管理には注意してください。
手形割引
手形割引とは、商取引で保有している受取手形を、金融機関で買い取ってもらい資金調達する方法です。手形期日前に資金化できるため、手形期日まで待つ必要がありません。
金融機関は、割引手数料を差し引いて資金交付をおこないます。審査の際には、申込人だけでなく、振出先についても審査するため、振出先の信用状況が思わしくない場合、手形割引を断られるケースもあるでしょう。
特に注意すべき点として、割引した手形が不渡りとなった場合、金融機関には申込人に不渡り手形を買い取ってもらう権利が発生するため(買戻請求権)、申込人は不渡手形を買い戻さなければなりません。
当座貸越
当座貸越とは、金融機関と当座貸越契約をおこない、契約時に限度額を設定し、当座預金が残高不足になった場合でも、限度額の範囲内であれば支払いができる仕組みです。
当座貸越の限度枠を設定していると、残高不足で小切手や手形の引き落としができない場合に、自動で融資してくれるため、不渡りを回避できます。
長期借入金
返済期間が1年以上となる借入金を長期借入金といいます。
主に企業の設備投資など、固定資産購入代金として長期借入金が利用されます。また、運転資金を長期的に返済しようと考えている場合にも、長期借入金が利用されます。
証書貸付
証書貸付とは、借入先が金融機関などに金銭消費貸借契約証書を差し出し、契約書に記入されている金額を借りる融資形態です。証書貸付は、毎月の返済額が一定です。短期借入金のように「期日一括返済」ではないため、返済面でゆとりをもてるでしょう。
しかしながら、返済期間中に社会情勢や経済動向の悪化に伴い、返済が厳しくなるリスクもあります。
目安となる返済期間は
結論から申しますと、幅はありますが1〜10年が平均的とされています。
使途によって借入額も異なることから幅ができます。
一般的に運転資金は短期資金、設備資金は長期資金といわれていますが、返済期間としてどれくらいの期間が妥当なのでしょうか。
運転資金は最長5年以内(措置期間2年あり)
通常、運転資金は短期資金と思われています。しかし、日本政策金融公庫では、融資の種類により多少の期間のずれはあるものの、据置期間2年以内を含め、概ね7年以内としています。実質の返済期間は、最長5年以内と考えられるでしょう。
「運転資金だから、短期借入金で対応しよう」と考える必要はありません。資金計画に応じて検討することをおすすめします。
設備資金は最長15年以内(措置期間5年あり)
日本政策金融公庫では、設備資金の期間は据置期間5年以内を含めおおむね20年以内となっています。実質の返済期間は、最長15年以内です。
一方、銀行など市中金融機関が利用する信用保証協会において、東京信用保証協会が保証している設備資金の期間は、おおよそ10年以内となっています。
設備資金での借入を検討している企業は、購入する固定資産によって返済期間を検討することが大切です。
そもそも「運転資金」「設備資金」とは
資金使途は、主に「運転資金」と「設備資金」の2種類に分けられます。
運転資金
運転資金とは、事業運営するにあたって発生する費用をまかなう資金をいいます。仕入資金や人件費、宣伝広告費といった費用などが該当します。
運転資金には主に次の5点を挙げられます。
経常運転資金
経常運転資金とは、企業が事業運営をおこなうための資金です。
一般的に売上を計上されても現金の入金は1~2ヶ月先となります。なぜなら、日本の商習慣は「掛(かけ)」または「つけ」での取引となるためです。そのため、売上が入金されるまでタイムラグが発生します。
一方で、人件費や光熱費などは毎月支払うため、入金されてから支払うわけにはいきません。このような常に必要となる運転資金を、経常運転資金と呼びます。
増加運転資金
売上が増加すると、比例して仕入や人件費などの費用も増加します。しかし、売掛金の入金は1~2ヶ月先であるため、増加運転資金が必要となります。
増加運転資金を金融機関より調達することで、売上や利益が増えたにもかかわらず、手持ち資金が不足して倒産するといった「黒字倒産」のリスクから回避できます。
減少運転資金
売上が減少しても人件費や家賃、光熱費といった「固定費」は費用として毎月一定額必要です。本来、売上でまかなっている資金が減少することにより、発生する運転資金を「減少運転資金」と呼びます。
企業は事前に資金繰り表などでキャッシュフローをつかんでおくことが重要です。
季節運転資金
季節運転資金とは、決まった季節に発生する運転資金です。
代表例として賞与(ボーナス)資金や、衣料関係の夏物、冬物などの仕入資金、スポーツ用品関係のスキー用品の仕入資金などがあります。
その他の運転資金
売上が横ばいであっても、運転資金を必要とするケースがあります。売掛債権、および買掛債務の回転期間に変化があった場合です。
一般的な計算方法は、下記の通りです。
運転資金=売掛債権(受取手形+売掛金)+商品-買掛債務(支払手形+買掛金)
計算式より、商品(在庫)を一定と考えると、運転資金の数字が大きくなるケースは以下を考えられます。
売掛債権が大きくなる
買掛債務が小さくなる
その両方
売掛債権が大きくなると、売上から回収までの期間が長くなったことを意味します。同様に、買掛債務が小さくなると、仕入から支払いまでの期間が短くなったことを意味します。
企業は、売掛債権および買掛債務の回転期間にも、目を配っておく必要があるでしょう。
設備資金
設備資金とは、企業が事業運営するために必要な固定資産購入資金です。
例えば、一般企業の場合、営業用の自動車や、顧客管理や書類作成などに使うパソコンやソフトウェア、また事務所の敷金などがあります。
業種別では、飲食業の冷蔵庫や食洗器、お客様用のテーブル・いすなど、建設業のショベルカーやユンボなどの購入資金が該当するでしょう。
まとめ
今回は長期借入金の返済期間についてお伝えしました。
運転資金は5年~7年
設備資金は5年~10年
と念頭に置いておくと良いでしょう。
ただし、長期借入は利息の関係で支払い総額が大きくなってしまうことがデメリットとして挙げられます。
自社の現状などを踏まえた上で、返済期間を定めることをオススメします。
最後までお読みいただきありがとうございました。