劣後債って何? メリットやリスクを解説

2023年8月24日

みなさん劣後債と見たこと、聞いたことはありますか?
劣後債とは、投資家への債務の弁済順位が低い債券です。債券にはさまざまな種類や特約があり、仕組みがわかりにくいと感じる人もいるでしょう。

今回は、債券のなかでも劣後債の種類、メリット、リスクについてわかりやすく解説します。

劣後債とは

劣後債とは、債権者(投資家)への債務の弁済順位が低い債券です。正式名称では「劣後特約付社債」と呼ばれています。

債券は投資家が発行体(国や企業など)へお金を貸し付け、満期になると額面金額が戻ってくるものです。発行体にとっては借金に該当するため、基本的には投資した金額が満期に返還されます。

しかし、万が一発行体が破綻した場合、投資家への債務弁済に対する優先度は投資家が保有している債券の種類によって異なります。

債務弁済の優先度が高い投資家とは、普通社債を保有する投資家です。劣後債を保有する投資家への弁済は、普通社債を保有する投資家への弁済が済んだ後に余力があれば行われます。

劣後債は、普通社債よりも発行体の破綻時に投資家が損失を被るリスクが高くなっていますが、その分、高い利回りを期待できる仕組みです。

また、劣後債は、弁済順位が高い普通社債と弁済順位が低い株式の間に位置しているため、ハイブリッド証券とも呼ばれています。

期限付劣後債と永久劣後債

劣後債には期限付劣後債と永久劣後債があります。

【期限付劣後債】
期限付劣後債とは、償還期限が定められている劣後債です。永久劣後債よりも利回りが低くなりますが、弁済順位が高くなっています。
【永久劣後債】
永久劣後債とは、償還期限が設定されていない劣後債です。満期が定められておらず期限付劣後債よりも債務の弁済順位が低いため、期限付劣後債よりも高い利回りを期待できます。

劣後債の期限前償還条項とは?

劣後債は、償還までの期間が30年を超えるものや、償還期限が定められていない永久劣後債など償還期間が長いケースが珍しくありません。そのため、期限前償還条項というものが付帯している場合があります。

期限前償還条項とは、発行体が任意に決定した時期に早期償還できる権利です。

期限前償還条項が付帯している場合、ファーストコール日(期限前償還をできる最初の日)に額面金額が償還されるケースが一般的です。ファーストコール日は5~10年目の利払い日に設定されるケースが多いことから、償還期限が長い劣後債でも、実質5~10年程度の債券と考える投資家もいます。

償還期限が先送りになる場合、発行体の資金繰り悪化が原因の可能性があるため注意が必要です。投資家のリスクとしては、劣後債の市場価値が下がったり、他の好条件の債券に切り替える機会を逃したりする可能性が考えられるでしょう。

劣後債のメリット

劣後債の大きなメリットは、普通社債よりも利率が高いことです。また、劣後債はドル建てで発行されることが多く、円安時に為替差益を得られることもあります。

ドル建ての劣後債なら円安で有利

劣後債は、ドル建てで発行されるケースが少なくありません。理由は、海外へ事業展開している企業にとって、ドル建てでの劣後債発行はドルを効率よく調達する手段になるためです。

投資家がドル建ての劣後債を購入した場合、円安時に有利になります。利息に加えて為替差益も得られる場合があるでしょう。

ただし、円高の場合は為替差損が発生するため、購入後も為替の値動きに注視することをおすすめします。

普通社債よりも利率が高い

同じ企業が発行する社債でも、劣後債と普通社債では利率が異なります。
以下はとある会社が過去に発行した、劣後債と普通社債の利率を比較したものです。

利率(年)
S株式会社 劣後債 2.4%
普通社債 1.38%
P株式会社 劣後債 0.74%~1%
普通社債 0.08~0.39%

どちらの企業も劣後債のほうが高い利率となっており、P株式会社の場合、最大10倍以上の差があります。債券投資で高いリターンを得たい人にとって、劣後債の利率は魅力的といえるでしょう。

劣後債のリスク

一般的な債券には発行体の信用リスクや流動性リスクなどがありますが、劣後債には劣後債特有のリスクがあります。

期限前償還条項によるリスク

劣後債に期限前償還条項が付帯している場合、期限前に償還される可能性があります。債券投資で投資家が得られる利益は、保有期間中に支払われる利息です。

劣後債が期限前に償還された場合、想定よりも利回りが下がる可能性があるでしょう。

劣後リスク

劣後債は債務の弁済順位が低いため、発行元の企業が倒産した場合は元本が返還されないリスクが高いです。劣後債を購入する前に、企業の業績や格付け等でリスクの高さを確認しておくことをおすすめします。

元利金の支払い免除によるリスク

期限付劣後債のなかには、従来型の期限付劣後債に実質破綻時免除特約が付された「新型劣後債」と呼ばれるものがあります。

実質破綻時債務免除特約とは、債券の発行体が実質破綻状態になった場合、元利金を支払う義務が免除される特約です。同特約が付帯している場合、投資したお金が戻ってこない可能性があるため注意が必要です。

劣後債を購入する際は、どのような特約が付帯しているか確認したうえで購入しましょう。

劣後債を発行する企業の特徴とは?

劣後債は銀行や保険会社など、金融機関が発行するケースが多くなっています。理由は、劣後債を発行する際の資金を資本金として計上できるためです。

金融機関は、自己資本の比率を一定以上の基準に保つ必要があります。

投資家からの資金調達手段として社債を発行する方法がありますが、発行元にとって社債は負債です。負債が増えることで自己資本の比率が低くなり、金融機関に定められた基準をクリアできなくなってしまいます。

そこで、資金調達の際、資本として計上できる劣後債を発行すれば、自己資本を高めながら資金調達が可能になるという仕組みです。

まとめ

劣後債は、普通社債よりも債務の弁済順位が低い代わりに高い利回りを期待できる債券です。利率が高く魅力的ですが、劣後リスクや期限前償還条項によるリスクなど、劣後債特有のリスクがあります。

また、ドル建ての劣後債も多く、一般的な社債よりも構造がわかりにくいため、リスクや内容をしっかりと理解したうえで購入しましょう。