ファクタリングで用いる勘定科目とは?種類と仕訳例を解説
2025年1月23日
ファクタリングの会計処理で用いる勘定科目は、「買取型」と「保証型」のどちらのファクタリングサービスを利用するかによって異なります。
また、買取型の場合には、2社間と3社間のどちらのファクタリング契約を結ぶかによって、仕訳方法は変わってきます。
そこで、ファクタリングの会計処理で用いる勘定科目やその種類、仕訳例について利用するサービスや契約形態にわけて解説します。
ファクタリングとは
「ファクタリング」とは、まだ入金されていない売掛金をファクタリング会社に譲渡し、買取代金を受け取ることで資金調達できる金融サービスです。
借入れではないため、審査では売掛先の信用力が重視されることで、赤字決算で銀行融資を受けられない中小企業などが利用しやすい方法ともいえます。
ファクタリングには、利用者とファクタリング会社で取引が完結する「2社間ファクタリング」と、売掛先に通知や承諾が必要となる「3社間ファクタリング」があります。
契約においては、一般的に以下の流れで手続を行います。
1.ファクタリング会社に相談・申し込みをする
2.買取金額の見積もりを依頼する
3.提示された金額に合意のもとで債権譲渡契約を結ぶ
4.売買手数料を差し引いた額が入金される
5.利用者が売掛先から売掛金を回収しファクタリング会社へ支払う(2社間の場合)
6.ファクタリング会社が売掛先から売掛金を回収する(3社間の場合)
ファクタリングの種類
ファクタリングと呼ばれるサービスには、主に以下の2つの種類があります。
・買取型ファクタリング
・保証型ファクタリング
どちらのサービスを利用するかによって会計処理は異なるため、それぞれの内容を理解しておきましょう。
買取型ファクタリング
「買取ファクタリング」とは、中小企業の資金調達において利用されるファクタリングであり、売掛金を現金化できる金融サービスです。
最短即日に現金化できることもあるなど、迅速性が求められる資金ニーズに対応可能な方法であり、審査では売掛先の信用力が重視されます。
そのため財務状況や経営状態が悪い場合でも申し込みできるため、銀行融資の審査に通らず資金調達方法に悩む中小企業にもおすすめです。
保証型ファクタリング
「保証ファクタリング」とは、売掛金の一定割合を保証してもらえるサービスであり、未回収による貸倒れリスクを回避できます。
また、売掛先の信用力に関する調査も実施されるため、与信管理にも活用することも可能です。
ただし保証されるのは売掛先が倒産したことにより支払不能状態が確定した場合のみです。
単に支払いが遅れているだけの場合や、債務不履行では保証されません。
ファクタリングの会計上使用する勘定科目
ファクタリングを利用したときの会計処理において、用いる勘定科目は買取型と保証型によって異なりますが、主に以下の種類が挙げられます。
・売掛金
・未収入金
・売上債権売却損
・支払手数料
・貸倒損失
・雑収入
それぞれ説明します。
売掛金
商品やサービスを提供し、売上として計上したものの入金期日まで回収できないときには、「売掛金」の勘定科目を使用します。
売上代金を後に受け取る権利を売掛債権といいますが、売掛金はその1つです。
買取型と保証型のファクタリングの場合でも、売掛金の勘定科目を使った仕訳を行います。
未収入金
ファクタリング会社と契約締結したときには、「未収入金」の勘定科目を使います。
売掛金は営業上の取引により発生した未回収の代金ですが、未収入金は商品や製品以外のものを売ったときなどに使う勘定科目です。
売上債権売却損
ファクタリング会社から買取代金を受け取ったとき、差し引かれる売買手数料を「売上債権売却損」の勘定科目で処理します。
売上債権売却損は、売上債権を売却したときの損失分を処理する勘定科目です。
支払手数料
保証型ファクタリングで売掛金が問題なく入金された場合は、ファクタリング会社に支払う保証料を「支払手数料」の勘定科目で処理します。
支払手数料は、商品やサービスに付随して発生する手数料などの費用や、専門家に対する報酬を計上するときの勘定科目です。
貸倒損失
売掛金が回収できなくなったときの損失額は「貸倒損失」の勘定科目で処理します。
貸倒損失は、取引先が倒産したために債権や貸付金、未収入金などを回収できなくなったときに使う勘定科目です。
雑収入
保証型ファクタリングにおいて、売掛先の倒産により支払われた保証金は「雑収入」の勘定科目で処理します。
雑収入は、本業と直接関係のない収入で、金額が比較的小さい場合に用いる勘定科目です。
ファクタリングの会計・仕訳方法
ファクタリングの会計において、仕訳をたてるときは以下のうちどちらのサービスを利用するかによって異なります。
・買取型ファクタリングの場合
・保証型ファクタリングの場合
それぞれの会計・仕訳方法について説明します。
買取型ファクタリングの場合
買取型ファクタリングには、2社間と3社間の2つの契約形態があります。
どちらの契約形態の場合でも、売掛金がファクタリング会社へ移転されたのか判別した上で会計処理を行います。
まずはファクタリング利用には関係なく、商品やサービスを販売し、その代金は後日回収するのなら売掛金を相手科目として売上を計上します。
<商品100万円を販売し、代金は後日回収する>
借 方 :売掛金1,000,000
貸 方:売上1,000,000
売掛金はファクタリング会社へ譲渡し、買取代金は入金されていないのであれば、未収入金で処理します。
<売掛金100万円をファクタリング会社に譲渡したものの、買取代金はまだ受け取っていない>
借 方 :未収入金1,000,000
貸 方:売掛金1,000,000
2社間ファクタリング
2社間ファクタリングを利用し、買取代金が入金されたときには以下の仕訳処理を行います。
<売掛金100万円をファクタリング会社へ譲渡し、売買手数料の10万円が差し引かれた残りが普通預金に入金された>
借 方 :普通預金900,000、売掛債権売却損100,000
貸 方:未収入金1,000,000
その後、2社間ファクタリングでは利用者がファクタリング会社に代行する形で売掛金を回収します。
売掛先から売掛金が入金されたときには、本来、ファクタリング会社に渡すべきお金を預かることになるため、「預り金」の勘定科目を使って処理しましょう。
<売掛先から売掛金100万円が普通預金口座に入金された>
借 方 :普通預金1,000,000
貸 方:預り金1,000,000
売掛先から入金された売掛金をファクタリング会社へ支払ったときの仕訳は以下のとおりです。
<売掛先から回収した売掛金100万円を普通預金からファクタリング会社へ支払った>
借 方 :預り金1,000,000
貸 方:普通預金1,000,000
3社間ファクタリング
3社間ファクタリングを利用した場合は、売掛先からファクタリング会社へ直接、売掛金の支払いがあります。
そのためファクタリング会社から買取代金が入金された段階で契約は完結しますが、そのときの仕訳は以下のとおりです。
<売掛金100万円をファクタリング会社に譲渡し、売買手数料5万円が差し引かれた残りが普通預金に入金された>
借 方 :普通預金950,000、売掛債権売却損50,000
貸 方:未収入金1,000,000
保証型ファクタリングの場合
保証型ファクタリングを利用したときには、売掛先が倒産して保証の対象になったのか、ならなかったのかによって仕訳処理は異なります。
売掛金を保証するファクタリング会社から、保証金が支払われるケースとそうではない場合があります。
保証型ファクタリングの契約を結んだ後に、売掛先から売掛金を回収できた場合でも、ファクタリング会社に対する保証料の支払いは免除されません。
そのため以下の仕訳処理を行います。
<保証型ファクタリングを契約したため、ファクタリング会社に保証料1万円を支払った>
借 方 :支払手数料10,000
貸 方:普通預金10,000
保証型ファクタリングの契約後、売掛先が倒産したため売掛金を回収できなかったときには、保証の対象です。
そのためまずは以下の仕訳処理を行います。
<売掛金が回収できず、売掛金50万円が貸倒れとなった>
借 方 :貸倒損失500,000
貸 方:売掛金500,000
貸倒れとなったものの、ファクタリング契約に基づいて保証金を受け取ったときには「雑収入」の勘定科目で仕訳処理を行います。
<売掛先が倒産したため、保証金40万円受け取った>
借 方 :普通預金400,000
貸 方:雑収入400,000
ファクタリングの会計処理における注意点
ファクタリングを利用したときには、会計処理において以下の4つに注意しましょう。
1.売買手数料の処理方法
2.消込処理の実施
3.決算時の仕訳処理
4.消費税の扱い
それぞれの注意点について説明します。
売買手数料の処理方法
ファクタリングの会計処理においては、ファクタリング会社に支払う売買手数料の処理方法に注意しましょう。
売買手数料を差し引いた分は損失となるため、「売掛債権売却損」の勘定科目で処理します。
「支払手数料」や「雑損失」で処理することもできますが、仮にファクタリング利用額が増えれば、前年よりも支払手数料や雑損失が増えてしまいます。
銀行融資も視野に入れている場合、決算書を確認した銀行担当者に疑念を抱かれる恐れもあると留意しておきましょう。
消込処理の実施
ファクタリングの会計処理において、消込処理は適切に行いましょう。
消込処理は、企業が正確に財務状態を把握・管理するために欠かせません。
売掛金や買掛金などの記録を正確に照合し、帳簿上の残高が金銭の動きと一致することを確認しておくことが必要です。
2社間ファクタリングにおいて、売掛先から売掛金を回収し、ファクタリング会社に回収分を支払ったのか記しておくことが必要といえます。
また、帳簿ズレも早期発見できるため、財務上のリスクを低減させることができます。
決算時の仕訳処理
ファクタリングの会計処理において、決算時には正確に損益計算書・貸借対照表を作成する決算整理仕訳も必要です。
売掛金を売却したとき、ファクタリング会社から受け取るまでのお金は未収入金の分類されるため、残っていないか確認しておきましょう。
消費税の扱い
ファクタリングで受け取る買取代金は、消費税のかからない非課税取引によるお金です。
そのためファクタリング会社から請求された売買手数料に消費税が課税されているときには、指摘して修正してもらいましょう。
ただし、債権譲渡登記が必要な契約において、司法書士に対して支払う報酬は消費税がかかります。
まとめ
ファクタリングの会計処理では、売掛金・未収入金・売上債権売却損・支払手数料・貸倒損失・雑収入などの勘定科目を使用します。
ただし仕訳処理は、買取型と保証型のどちらのサービスを利用するのか、買取型のうち2社間と3社間の契約形態の種類によって異なります。
ファクタリングで資金調達する際には、紹介した仕訳処理の事例などを参考に、会計処理方法を正しく理解しておきましょう。