IT導入補助金とは?メリットやデメリットについて解説

2024年9月27日

「IT導入補助金に興味はあるけど、どんな会社なら補助金をもらえるのか知りたい」
「IT導入補助金の申請の流れを知りたい」

今回はこんな方のために、2024年度(令和6年度)のIT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業補助金)の概要や、対象となる事業所やITツールなどをわかりやすく解説します。

IT導入補助金を使って、お得にITツールを自社に導入したい方は、ぜひご覧ください。

IT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業補助金)とは

IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者等が生産性向上に役立つITツールを導入する際に、経費の一部を国に補助してもらえる制度です。正式名称は「サービス等生産性向上IT導入支援事業補助金」で、経済産業省が所管しています。

2024年度のIT導入補助金では、補助率が通常枠では購入費用の1/2以内、インボイス枠では1/2~4/5以内の補助金が支給されます。

2024年度のIT導入補助金の補助額の最大は450万円です(補助額150万円~450万円の通常枠のみ)。

2023年度のIT導入補助金からの変更点は?

2024年度のIT導入補助金では、2023年度から主に以下の点が変更されました。

【2023年度からの変更点】
・デジタル化基盤導入枠が廃止され、インボイス枠が新設
・ECサイトの制作がIT導入補助金の対象外になった
・通常枠のA類型・B類型という名称が廃止された
・これまで小規模事業者が対象だったが、インボイス枠の「電子取引類型」では大企業もIT導入補助金の利用が可能になった

IT導入補助金では、どんなITツールを導入できるのか?

IT導入補助金では、以下のようなITツールの導入が可能です。

IT導入補助金を使用できる、汎用的なITツールの例

【IT導入補助金を使用できる、汎用的なITツールの例】
営業・顧客管理
CRM(顧客管理システム)・SFA(営業支援システム)・MA(マーケティングオートメーション)・カスタマーサポートツール・メタバース…など

会計・経理関係
会計ソフト・経費精算システム・電子帳簿保存システム・請求書発行システム…など

生産管理
生産管理システム・在庫管理システム・製品情報管理システム・購買管理システム・品質管理システム・物流管理システム…など

人事・労務管理
給与計算システム・勤怠管理システム・採用管理システム・人事管理システム・健康経営支援システム…など

業務効率化
RPA(業務自動化)

以上はどの会社・組織でも活用しやすい汎用的なITツールですが、以下のような特定の業種のみで活用するITツールも、IT導入補助金の対象です。

【特定の業種で活用するITツール】
電子カルテ・3次元CAD・土木積算システム・工事原価作成ツール・車両管理システム…など

なお、後述するインボイス枠については、インボイス制度に対応した会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフトなどを含むことが条件になります。

さらに、インボイス枠の「インボイス対応類型」ではパソコン・タブレットなどのデバイスや、レジ・券売機なども補助対象になりえます。

IT導入補助金の補助事業対象者 どんな企業・組織が補助金を受けられるのか?

IT導入補助金は、資本金・常勤の従業員数が規程以下の中小企業者等が対象となります。
※企業組合、協業組合等の組合関連、医療法人、社会福祉法人及び特定非営利活動法人を含みます

ただし、インボイス枠の「電子取引類型」では中小企業だけでなく、大企業なども対象になります。
また、公募要領に「過去に申請を受け付けた主な組織形態」が紹介されていますので、「自分の組織はIT導入補助金を使えるの?」と疑問に思った際は以下をご覧ください。

【過去にIT導入補助金の申請が受け付けられた主な組織形態】
株式会社・有限会社・合同会社・合名会社・合資会社・特定非営利活動法人(NPO 法人) ・企業組合・協業組合・事業協同組合・協同組合連合会・商工組合・商店街振興組合・商店街振興組合連合会・生活衛生同業組合・生活衛生同業小組合・一般社団法人・一般財団法人・学校法人・公益社団法人・公益財団法人・農事組合法人・労働組合・農業協同組合・農業協同組合連合会・漁業協同組合・漁業協同組合連合会・森林組合・森林組合連合会・商工会・商工会連合会・商工会議所・都道府県職業能力開発協会・土地改良事業団連合会

IT導入補助金の対象外となる事業者

以下のような事業者はIT導入補助金を利用できません。

1.大企業のグループ企業や、課税所得額が大きい企業
※具体的には以下の要件のいずれかに合致する企業
発行済株式の総数又は出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業・小規模事業者等
発行済株式の総数又は出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業・小規模事業者等
大企業の役員又は職員を兼ねている者が、役員総数の2分の1以上を占めている中小企業・小規模事業者等
発行済株式の総数又は出資価格の総額を1.~3. に該当する中小企業・小規模事業者等が所有している中小企業・小規模事業者等
1.~3.に該当する中小企業・小規模事業者等の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の全てを占めている中小企業・小規模事業者等
確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業・小規模事業者等

2.IT導入支援事業者
3.経済産業省又は中小機構から補助金等指定停止措置または指名停止措置が講じられている事業者
4.風俗営業事業者
5.反社会的勢力
6.過去1年において、労働関係法令違反により送検処分を受けている事業者
7.宗教法人
8.法人格のない団体(同窓会・PTA・サークル等)
9.その他、IT導入補助金の目的・趣旨から適切でないと経済産業省及び中小機構並びにIT導入補助金事務局が判断する者

2024年度のIT導入補助金の分類

2024年度のIT導入補助金は以下の3枠に大きく分類され、それぞれ事業目的や対象経費、補助率が異なります。

・通常枠…業務効率化や売上向上などの生産性向上に役立つITツールが対象
・インボイス枠…インボイス対応の会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフトなどのITツールが対象
・セキュリティ対策推進枠…サイバー攻撃などへのセキュリティ対策を強化するITツールが対象
・複数社連携IT導入枠…複数の企業が共同で導入するITツールが対象

また、インボイス対応枠には通常の(インボイス対応類型)とは別に、(電子取引類型)が存在します。

自社が導入したいITツールによって、どの枠を利用するのが適切なのかを検討してください。

「どの枠を利用したらいいのかわからない…」という場合は、通常枠が対象となるITツールの幅が最も広く使いやすいので、通常枠の利用を前提に準備を進めるとよいでしょう。IT導入支援事業者に相談すると、より確実です。

通常枠は補助額によって2パターンに分かれる

IT導入補助金の通常枠は補助額によって以下の2パターンに分かれます。

A.補助額が5万円~150万円未満
B.補助額が150万円~450万円以下

どちらのパターンかによって導入するソフトウェアの要件や、その他の条件が変動します。
IT導入補助金の補助対象にならない経費
なお、以下の経費はIT導入補助金の補助の対象になりません。
以下のような経費を含んで申請しないようにご注意ください。

【IT導入補助金の補助対象にならない経費の例】
・補助事業者の顧客が実質負担する費用がITツール代金に含まれるもの(売上原価に相当すると事務局が判断するもの)
・ITツールの利用料が、交付申請時に金額が定められないもの
・対外的に無料で提供されているもの
・リース・レンタル契約のITツール(サイバーセキュリティお助け隊サービスを除く)
・中古品
・交付決定前に購入したITツール
・交通費、宿泊費
・補助金申請、報告に係る申請代行費
・公租公課(消費税)
・その他、本事業の目的・趣旨から適切でないと中小企業庁及び中小機構並びに事務局が判断するもの

IT導入支援事業者とは

IT導入支援事業者は共に補助金申請を進めるパートナー企業

IT導入支援事業者とは、IT導入補助金を申請する企業を支援し、ITツールの導入や申請のサポートをおこなう共同事業者(パートナー)のことです。

IT導入補助金の対象ITツールを提供しているITベンダーや、対象ITツールを取り扱っている販売会社などが、IT導入支援事業者として活動していることが多いです。

IT導入補助金を利用してITツールを導入するには、かならずIT導入支援事業者として登録を受けた販売者から購入しなければなりません。

IT導入支援事業者の選び方

IT導入補助金を利用する場合、「どのITツールを導入するか」「IT導入補助金のどの申請枠・申請類型を使用するか」だけでなく、IT導入支援事業者選びも重要になってきます。

申請したいITツールが明確に決まっている場合は、まずはそのITツールを提供しているITベンダーに相談するとよいでしょう。
一方、「IT導入補助金を使いたいが、どのITツールが自社に最適なのか決めかねている」「自社に適したITツールを選んでほしい、提案してほしい」という場合は、複数のITツールを取り扱っている販売会社系のIT導入支援事業者に相談するのがオススメです。

IT導入補助金のメリット

1.規程に違反しないかぎり、返済不要のお金を受け取れる

IT導入補助金は融資などと違い、規程に違反しないかぎり返済義務などはありません。
中小企業・小規模事業者にとって、もっとも大きなメリットです。

2.業務効率化・生産性をアップできる

中小企業・小規模事業者は紙やExcel中心で業務を進めているところも多く、職場のIT化が十分に進んでいません。

これまで導入費用がIT化・DX化を阻む壁になっていた会社も多かったでしょうが、IT導入補助金を利用すればコストを抑えてITツールを導入できるため、業務効率化・生産性アップが飛躍的に進む可能性があります。

3.従業員のモチベーションアップや離職率低下につながる

非効率で前時代的な業務を日々強いられている場合、どんなに真面目な従業員でもモチベーションは低下し、徒労感を覚えてしまいます。

「この職場には将来性がない」と考えて、他社に転職してしまう従業員も増えてしまうでしょう。

ITツールを導入して業務を効率化すれば、従業員の士気を高く保てますし、長期的には離職率の低下にもつながります。

4.多種多様なITツールが補助の対象になる

IT導入補助金の対象になるITツールは、会計ソフト・経費精算システムから、SFA(営業支援システム)・MA(マーケティングオートメーション)・健康経営支援に至るまで、非常に幅が広いです。

IT導入補助金のデメリット

IT導入補助金は、返済不要の補助金を受け取れる非常に魅力的な制度ですが、デメリットも存在します。
これらのデメリットもしっかり理解したうえで申請するようにしましょう。

1.確実に補助金がもらえるとはかぎらない

IT導入補助金には審査がありますので、確実に補助金が交付されるとはかぎりません。

IT導入補助金の採択率は例年40%~60%程度なので、申請をしても補助金がもらえない可能性が相当ある点は理解しておきましょう。

2.必要書類の準備や手続きの手間がかかる

IT導入補助金では、必要書類の準備や手続きをするのに労力・時間がかかる点もデメリットです。

一定の条件を満たせばほぼ確実にもらえる助成金とは違い、補助金では申請の内容が採択されるか否かを大きく左右します。

3.補助金は後払いなので、まずは自費で購入費の全額を支払う必要がある

IT導入補助金は申請者(採択後)がITツールを購入したあとに、審査などの期間を経たうえで支給されます。
リース契約などは対象外になってしまうため、ITツールが高額であっても購入費用の全額を支払わなければなりません。

キャッシュフローが厳しい企業などでは、この点がネックになる可能性があります。

ただし、IT導入補助金では採択の可否が出たあとに、ITツールを購入することが大原則です。

そのため「補助金をあてにしていたのに、高額なITツールを購入したあとで、採択に落ちてしまった…」といった事態は原理的に起こりえないのは、安心できるポイントでしょう。

4.交付決定がなされるまで、ITツールを導入できない

先述したように、IT導入補助金では採択の可否が通知されて、交付決定がなされるまでITツールの購入・導入ができません。

そのため、ITツールの購入・導入を交付決定日まで待つ必要があります。

「ITツールを今すぐ導入して、業務を効率化したい」という場合は、IT導入補助金を使わずにそのまま購入したほうがよいでしょう。