内部資金調達の要は内部留保?内部留保を大きくするためには

2024年4月4日

内部資金調達とは?

資金調達というと、大きく分けて2つあります。

それは、増資や私募債、借入などの「外部資金調達」と、今から説明する「内部資金調達」です。

内部資金調達とは、簡単にいうと、会社で利益を残しその結果「内部留保」をためていくことです。
しかし内部資金調達を広くとらえると、それにとどまらず、「企業間信用」や「債権回収の早期化」、「在庫削減」、「不要資産売却」なども該当します。

企業間信用を活用する

「債権回収の早期化」や「在庫削減」、「不要資産売却」などの内部資金調達については、別の機会に解説しますので、ここでは、「企業間信用」についてみていきたいと思います。

企業間信用とは、おおまかには、買掛金などの支払いサイトを長くしてもらい、売掛金などの入金サイトを短くしてもらうことです。
つまり、企業間の信用(ツケ)の部分を、うまくコントロールして資金繰り改善に役立てるということです。

極端にいうと、支払いが1ケ月後で、入金が前金制のビジネスモデルであると、運転資金は0円ということになります。
つまり、売上を増加させればさせるほど、会社のお金が増えていくことになります。

一方、「買掛金のサイト(例30日など)<売掛金のサイト」の場合、金額の多寡などにより異なりますが、一般的には、売上を増加させればさせるほど、手元資金が減少していくことになります。

ということは、同じ売上及び利益の会社でも手元資金の大きさは異なるのです。

企業間信用をうまく活用できると、外部資金調達の一部を肩代わりすることが可能になります。
また、企業間信用は、金利や配当が不要なのも良いところです。

内部資金と外部資金

内部資金は、計上した利益を配当へまわさず、社内に留保している分になります。稼得した資金を配当するか否かは、配当政策との絡みで考える必要があり、新規投資に対する資金の要否だけの問題ではありません。従来、日本企業の場合には、メーン・バンクや相互持ち合い等によるコントロールが強かったことから、配当は安定配当が求められ、一定配当が基本的な配当政策として採られてきました。

 しかし、近年では個人投資家や外国人投資家、ファンドの台頭により、高配当を望む声も高まり、配当政策の見直しが行われるようになってきました。また、十分な投資機会がない場合には、多額の現金を抱えることになり、敵対的買収の標的となる可能性も出てくるため、増配するケースも見受けられるようになりました。

 上記のように、配当政策は複合的な要因で考えていく必要があるため、「多額の資金が必要だから内部留保を行う」といった単純な戦略決定は行えません。

 一方で、外部資金の利用では、借入、社債、新株の発行、自己株式の処分といった方法により、新たに外部から資金を調達することになります。これら外部資金では、大きく分けて、負債と自己資本に分けられますが、負債は借入金や社債、自己資本は増資、自己株式の処分が該当します。また、近年では、資産流動化による資金調達の手法も活発に行われております。

 外部資金を利用する場合には、財務指標が悪化しないように、負債と自己資本をバランスよく調達していくことが重要になります。バランスを失った資金調達は、調達コストの上昇につながり、最終的には企業の倒産リスクを高めてしまう恐れがあります。

内部留保を大きくする経営

とはいえ内部資金調達の王道は、「内部留保を大きく」していくことです。

内部留保とは、貸借対照表では右下にある純資産の部に計上されます。
そしてその内部留保を大きくするためには、損益計算書の税引後利益を積み重ねていくことになります。
つまり、会社で利益を計上し、税金を支払うことによってのみ内部留保は手厚くなるのです。

更にここでは、資金調達手段としての内部留保を考えていますので、単に税引後利益を積み重ねるだけではダメです。
無駄遣いをせず、会社の現預金残高を増やしていくことが大切です。
つまり、貸借対照表の左上にある現預金残高を増加させることです。

「本社を建てる」や「新規出店を行なう」というときには、全体の投資金額の2~3割以上をこの内部留保でまかなえるように努力しましょう。

融資基準がゆるいときには、フルローンがつくこともありますが、後々毎月の返済金額がボディーブローのように効いてきますので、なるべく自己資金を確保してから投資を行なうようにしましょう。

決算書では利益より内部留保が重要

ちなみに、決算書でどこが一番重要ですかと聞かれると、私は売上でも利益でもなく、この内部留保と答えます。

つまり、貸借対照表の右下にある純資産の部のことです。
ここがマイナスであるといわゆる債務超過の会社です。

損益計算書の利益も重要ですが、しょせん単年度の結果でしかありません。
この純資産の部は、20期の会社であれば、過去20期の利益を累積(黒字はプラス、赤字はマイナス)した結果となります。

その会社の本当の力がわかります。
もちろん金融機関などもこの純資産の部を最初に確認されます。

政治と経済は両輪ですので、政治の影響で、今年はいわゆる一般的な景気指標が上昇し景気は良くなります。

現在、内部留保が厚い会社は、攻めに転じてもいいのかもしれません。
一方、現在、内部留保が薄い会社は、この機会に内部留保が厚くなるようにがんばりましょう。