債務超過でも資金調達できる?ファクタリングで打開する経営危機
2025年8月12日
企業経営において、もっとも深刻な財務状態のひとつが「債務超過」です。自己資本がマイナスとなり、資産よりも負債が上回った状態では、銀行などの金融機関からの融資はほぼ絶望的です。しかし、事業自体は継続しており、売上もある――そんな状況にある企業も少なくありません。
「金融機関には頼れないが、何とか資金を調達して事業を維持したい」
「黒字転換の目処はあるが、運転資金が足りない」
こうした企業にとって、近年注目されている資金調達手段がファクタリングです。
本記事では、「債務超過」と「ファクタリング」というテーマを軸に、債務超過状態でも利用可能な資金調達の実態や、具体的な利用方法、注意点、そして再建の足掛かりとしての活用方法までを詳しく解説していきます。
1. 債務超過とは何か?経営に与える深刻な影響
1-1. 債務超過の定義
債務超過とは、企業の総資産よりも総負債が上回っている状態を指します。すなわち、貸借対照表における「純資産(自己資本)」がマイナスであるということです。
債務超過の状態にある企業は、会計的には「破綻寸前」と見なされ、金融機関からの信用を大きく失います。とくに、以下のような状況に陥ることが多くなります。
・銀行融資の審査が通らない
・既存の融資の返済期限が短縮される(期限の利益の喪失)
・取引先からの信用低下により支払条件が厳しくなる
・税金の滞納や人件費の支払い遅延が発生する
1-2. 債務超過でも事業は続くケースもある
しかし、債務超過に陥っていても、日々の取引が回っており、黒字経営が可能なケースもあります。たとえば、固定資産の評価減や減損会計によって一時的に純資産がマイナスになっているだけということも珍しくありません。
問題は、そうした企業でも「新たな資金調達」が困難になるという点です。ここにファクタリングの活用余地があります。
2. 債務超過の企業でも使えるファクタリングとは?
2-1. ファクタリングの基本的な仕組み
ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権(請求書)をファクタリング会社に売却することで、支払い期日前に現金を得ることができる資金調達方法です。特徴的なのは、借入ではなく「債権の売買」であるという点です。
そのため、通常の融資審査における「自己資本比率」や「債務超過の有無」は、審査においてさほど重視されません。審査対象は主に以下の通りです。
・売掛先の信用力(支払い能力)
・売掛債権の金額と期日
・請求書の真偽・正当性
・利用企業の事業継続性
つまり、債務超過でも、売掛先がしっかりしていれば利用可能なのです。
2-2. 2社間ファクタリングと3社間ファクタリング
ファクタリングには大きく分けて「2社間」「3社間」の2種類があります。
・2社間ファクタリング
自社とファクタリング会社の間で契約。売掛先に通知せずに資金化できる。債務超過企業に多く利用されるが、手数料はやや高め(5〜20%)。
・3社間ファクタリング
売掛先にも債権譲渡の通知を行い、直接ファクタリング会社に入金してもらう方式。手数料は安め(1〜5%)だが、売掛先の同意が必要。
債務超過企業にとっては、取引先との関係を崩さずに資金調達できる「2社間ファクタリング」が現実的な選択肢となるケースが多いです。
3. 債務超過企業がファクタリングを活用するメリット
3-1. 銀行融資に頼らず資金調達できる
債務超過状態では、金融機関からの借入は非常に困難です。しかしファクタリングであれば、売掛先の信用が高ければ問題なく資金化が可能です。
信用調査の中心が売掛先であるため、利用企業自身の債務状況が必ずしも重視されない点が大きな利点です。
3-2. 財務諸表に負債を増やさない
ファクタリングはあくまで債権の「譲渡」なので、貸借対照表上で負債として計上されません。つまり、自己資本比率に影響を与えないということです。これは、今後の再建計画や金融機関との交渉においても有利に働く可能性があります。
3-3. 資金繰りを改善して黒字転換のチャンスを広げる
債務超過の状態でも、売上が伸びている、経費削減が進んでいるといった改善傾向がある企業であれば、資金ショートを回避しながら黒字転換を目指すための手段としてファクタリングは非常に有効です。
人件費や仕入れの支払いができずに機会損失を招く前に、手元資金を確保して事業を維持することができます。
4. 債務超過企業がファクタリングを使う際の注意点
4-1. 手数料が割高になる可能性がある
債務超過企業の場合、ファクタリング会社から「倒産リスクがある」とみなされやすく、手数料がやや高めに設定されることがあります。とくに2社間ファクタリングでは10~20%程度の手数料がかかることもあり、資金繰りの改善に水を差す可能性があります。
事前に総費用(受け取れる金額)をしっかり確認しましょう。
4-2. 毎回のファクタリングに依存しすぎると危険
ファクタリングは便利な資金調達手段ですが、あくまで一時的な流動性確保の手段であり、長期的な経営改善にはなりません。
短期的な運転資金の補填に活用しつつ、並行して根本的な収益改善策や財務改善策を講じることが重要です。
4-3. 信頼できる業者を選ばなければ逆効果
債務超過企業は弱い立場にあるため、悪質業者のターゲットになりやすい傾向にあります。高額な違約金や不透明な契約条件を提示してくる業者には注意が必要です。
・手数料の総額を明確に提示してくれるか
・契約書を丁寧に説明してくれるか
・法人登記や所在地が明示されているか
これらを事前に確認し、慎重に業者を選定することが必要不可欠です。
5. ファクタリングで債務超過を打開するための活用戦略
債務超過企業がファクタリングを単なる資金調達手段として使うのではなく、再建への一歩とするためには、以下のような戦略的活用が求められます。
5-1. 「黒字化」への橋渡しとして使う
すでに事業は黒字、あるいは黒字転換の見込みがあるにも関わらず、資金繰りが逼迫している――そんな状況において、ファクタリングは「倒れないための橋渡し」として最適です。
売掛金の早期資金化で支払いに充て、事業を止めることなく成長軌道に乗せることができます。
5-2. 再建計画に沿って一時的に活用する
中小企業再生支援協議会や私的整理の支援機関と連携し、事業再生計画にファクタリングを組み込むことで、計画的かつ持続可能な再建が可能になります。
金融機関の理解も得やすく、資金繰りの透明性も確保できます。
5-3. ファクタリング実績をもとに他の資金調達へ
ファクタリングの利用実績は、将来的に信用力の回復材料になることもあります。きちんと返済履歴を残し、売上を安定させることで、数年後に金融機関からの再融資に繋げられる可能性もあるのです。
6. まとめ:ファクタリングは債務超過企業の「最後の砦」ではない
債務超過に陥ってしまった企業にとって、資金調達の選択肢は大幅に狭まります。融資は期待できず、自己資金も尽きていれば、経営は深刻な状況に直面します。
しかし、ファクタリングという選択肢を使えば、たとえ自己資本がマイナスでも、売掛金という「未来の現金」を資金化し、事業をつなぐことができます。
もちろん、手数料や契約条件には注意が必要であり、依存しすぎれば本末転倒です。しかし、正しく活用すれば、ファクタリングは単なる資金調達手段ではなく、再建の第一歩となり得るツールです。
「まだ、できることはある」
そう思える経営者にこそ、ファクタリングは価値を発揮する手段となるでしょう。