Web3ファイナンスとは?次世代インターネットが変える金融のかたち
2025年11月5日
Web3ファイナンスとは
Web3ファイナンスとは、いわゆる Web3 の概念を金融領域に応用し、ブロックチェーン・スマートコントラクト・トークン等を駆使して「金融サービス・取引・資産所有」の仕組みを再構築するものです。従来の銀行・証券・中介機関が中心となった金融モデルとは異なり、個人またはコミュニティが主体となって金融活動に参加できるよう設計されています。
具体的には、貸し借り・交換・資産トークン化・流動化・分散型ガバナンスといったサービスが、スマートコントラクト上で実行され、これらを総称して「Web3ファイナンス(Web3 Finance)」と呼ぶことがあります。
なぜWeb3ファイナンスが注目されるのか?その背景
インターネットと金融の融合の加速
従来、金融とインターネット(Web)は別々の領域として存在していました。しかし、デジタル化の進展とともに、金融サービスがオンライン化・グローバル化し、さらにブロックチェーン技術により「価値・トークン・取引」の概念がインターネット上に移転しつつあります。Web3ファイナンスはこの延長線上にあり、「金融=プラットフォーム化/トークン化」へと変革する流れの中で生まれてきました。
従来金融サービスの限界と代替ニーズ
これまでの金融サービスでは、銀行・証券会社・保険会社といった仲介機関が重要な役割を担ってきました。しかし、手続きの煩雑さ・コスト・参入ハードル・国境を超えた取引の難しさなど、さまざまな限界も指摘されています。Web3ファイナンスでは、こうした仲介を減らし、スマートコントラクトや分散台帳を通じて、よりシンプル・迅速・低コストな金融サービスを実現することが期待されます。
「資産所有」「参加型経済」「グローバル化」の潮流
トークンやNFT、分散型自治組織(DAO)など、Web3テクノロジーが生む新しい価値概念により、「所有する」「参加する」というフィーリングが変わりつつあります。金融領域でも、伝統的には資産を持つ者/銀行を通す者が主役だったところから、一般ユーザー・支援者・参加者が資産保有・価値交換に関わる機会が増えています。加えて、インターネットを通じた「グローバルなアクセス・取引」が容易になったことで、地域や国を超えた金融参加が促進されています。
Web3ファイナンスの仕組み・主要構成要素
分散型金融(DeFi:Decentralized Finance)
Web3ファイナンスの代表的な仕組みとして、Decentralized Finance(DeFi)があります。銀行や証券会社を介さずに、ブロックチェーン上で「貸し借り」「交換(スワップ)」「流動性提供」「ステーキング」などの金融サービスが直接ユーザー間で提供されます。スマートコントラクトによって条件が自動で実行され、透明性・効率性が高まります。
Web3ファイナンスでは、資産をデジタルトークン化して取引可能にする仕組みが重要です。これにより、不動産・アート・債権・知的財産など、以前は流動性の低かった資産も「小口化」「グローバル化」「24時間取引可能」なものとなる可能性があります。
金融プロトコルやプラットフォームでは、運営や意思決定に参加できるトークン(ガバナンストークン)が用意されることがあります。保有者は議決権を持ち、プロトコルの方針決定に関与できます。これにより利用者自身がサービス設計・運営に参画する「参加型金融」が実現されつつあります。
Web3ファイナンスの根幹には、スマートコントラクトがあり、これが「条件付き実行」「信頼性」「透明性」を支えています。取引の流れ・履歴がブロックチェーン上に記録されるため、取引過程の改ざんが難しく、監査可能な金融サービスが提供できます。
Web3ファイナンスのメリット・魅力
銀行口座が無い・金融サービスが届きにくい地域のユーザーでも、Web3ファイナンスを通じてグローバルに参加できる可能性があります。インターネット接続があれば、貸し借り・資産運用・交換などが行えるため、金融包摂(Financial Inclusion)を促進すると言われています。
従来金融では多くの中間プロセス・書類・承認・人員が関与していましたが、Web3ファイナンスでは自動化・スマートコントラクト・24時間稼働が可能なため、手続きの迅速化・コスト削減が見込まれます。
トークン化された資産は、24時間かつ国境を超えて取引可能となるため、流動性が向上します。世界中のユーザーがアクセス可能なマーケットプレイスで、自分の資産を売買できる可能性が広がります。
ブロックチェーン上での記録・検証により、取引の透明性・信頼性が飛躍的に向上します。誰でも取引履歴を確認でき、かつ改ざんが困難な仕組みであるため、金融サービスそのものの信頼構造が変わる可能性があります。
Web3ファイナンスの課題・リスク
Web3ファイナンスは新しい金融モデルであるため、各国での証券法・金融商品取引法・暗号資産にかかる法制度がまだ整っていないケースがあります。発行・取引・保有における法的な曖昧さが、事業・投資双方にとってリスク要因です。
トークン化資産・DeFiプロトコルは増加しましたが、必ずしも安定的な流動性を持つわけではありません。市場が成熟していないため、価格変動・売却困難・セカンダリーマーケットが未整備という課題があります。
スマートコントラクトにバグがある、ハッキング・ウォレット紛失・取引インフラの停止など、技術的・運用的なリスクも大きくあります。また、プロトコル設計の甘さが原因で資金が凍結される・詐欺被害にあうケースも報告されています。
理論上は分散型・参加型金融が実現されるはずですが、実際にはトークン保有量による影響力集中・初期配分の偏り・運営者のブラックボックス性といった「従来と似た集中化の問題」が指摘されています。
日本国内におけるWeb3ファイナンスの現状
日本でも、Web3ファイナンスに関する実証実験やトークン化、分散型金融サービスの導入が少しずつ進んでいます。特に、ブロックチェーンを活用した資産トークン化・地域金融支援・デジタル証券発行といった動きが見られます。一方で、金融庁・暗号資産規制・税務対応といった制度面の検討が続いており、まだ一般的な実運用には時間がかかる状況です。
企業・自治体がこの領域に取り組む際には、トークン・スマートコントラクト・プラットフォーム設計に加えて、法務・税務・運用リスクの検討・ユーザー教育・セキュリティ対策が重要です。
今後の展望・可能性
Web3ファイナンスが普及すれば、「銀行・証券会社・取引所」といった従来の金融仲介者の役割が大きく変化する可能性があります。代わりに、スマートコントラクト・プロトコル・トークン・コミュニティがインフラとして機能し、新しい金融エコシステムが形成されるでしょう。
資産トークン化・グローバル流通・マイクロ参入といった動きが加速すると、従来の「特権的な資産所有」モデルが変わり、一般のユーザーにもアクセス可能な金融市場が広がる可能性があります。
法制度・会計基準・監査・税制・セキュリティ基盤といった「信頼できるインフラ」が整備されることで、Web3ファイナンスはより広く普及することが予想されます。複数国・地域間でのルール調整も重要なテーマとなります。
プロトコル設計・運用モデルが持続可能でなければ、初期の熱量だけで終わってしまう可能性があります。ユーザーが参加し、価値を感じ、継続できる経済モデルを設計することが、Web3ファイナンスの成功には不可欠です。
まとめ
Web3ファイナンスは、ブロックチェーン・スマートコントラクト・トークンを用いて、従来とは異なる金融サービス・資産流通・ガバナンスの仕組みを構築しようとする新たな潮流です。金融サービスの民主化・コスト削減・グローバル化・透明化といったメリットを持つ一方で、法制度・市場・技術・ガバナンスといった課題も抱えています。
今後、インフラ・制度・運用設計が整備されることで、Web3ファイナンスは一般社会・企業・自治体にとって現実的な選択肢となり得るでしょう。
