ファクタリングは税金滞納でも利用できる?審査の考え方と対処法を解説

2026年10月4日

ファクタリングは税金滞納でも利用できる?審査の考え方と対処法を解説

前書き

ファクタリングは、事業者が保有する売掛債権を買い取ってもらい、支払期日より前に資金を受け取れる仕組みです。銀行融資に比べて審査がスピーディーで、決算書や担保が必要ないことも多いため、資金繰りに悩む事業者から注目されています。一方で、税金の滞納がある場合に利用できるのかどうかは、多くの経営者が気になるポイントではないでしょうか。

国税や地方税の滞納があると、ファクタリング会社の審査に影響するだけでなく、税務署による財産の差押えによって資金調達そのものが難しくなる場合があります。特に売掛金は税務署が差押えの対象とできる財産の代表例であり、ファクタリングで売掛金を譲渡しようとしている時点で滞納処分が進んでいると、取引そのものが無効になったり、差押えとの優劣が問題になったりするおそれがあります。

この記事では、ファクタリングの基本的な仕組みを整理したうえで、税金滞納がある場合に審査でどのようにみられるのか、利用が可能なケースと難しいケースの違い、滞納を抱えたまま資金調達を進めるリスク、そして滞納を解消するための現実的な対処法までを順番に解説します。資金繰りに困っていて、今後の選択肢を知りたい方の参考になれば幸いです。

ファクタリングの基本的な仕組みを理解する

ファクタリングとは何か

ファクタリングとは、事業者が保有する売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、その対価として手数料を差し引いた金額を前払いで受け取る金融サービスです。たとえば100万円の売掛金に対して、手数料を差し引いた90万円程度を受け取り、後日取引先から入金された100万円をファクタリング会社が受け取る、という流れが一般的です。

借入ではなく債権の売買にあたるため、負債として計上されない点がメリットとされています。ただし、実態としては資金調達の手段として使われることが多く、手数料の水準や契約条件によっては、結果的に高コストな資金調達になることもあります。

2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違い

ファクタリングには、大きく分けて2社間と3社間の2つの形式があります。2社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社の2者で契約を結ぶ方式で、取引先に債権譲渡の事実を知らせないまま資金を受け取れることが特徴です。取引先への通知がないため、取引関係に影響しにくいという利点がある一方、手数料が高めに設定されやすく、審査もある程度厳しくなる傾向があります。

3社間ファクタリングは、利用者、ファクタリング会社、取引先の3者で契約を結ぶ方式です。取引先による債権譲渡の承諾があるため、ファクタリング会社にとっては回収の確実性が高く、手数料を抑えられる場合が多いとされています。ただし、取引先に事情が知られるため、利用をためらう経営者も少なくありません。

税金滞納がファクタリングの審査に与える影響

審査で確認されやすいポイント

ファクタリング会社は、主に売掛先の信用力と、利用者である事業者の状況を総合的に判断します。売掛先が上場企業や大手企業であれば、支払いの確実性が高いと評価されやすく、利用者側の財務状況が多少厳しくても審査を通りやすくなる傾向があります。

一方で、利用者側については、直近の資金繰り状況、取引の継続性、そして税金や社会保険料の滞納の有無が重視されることがあります。税金の滞納は、事業者が資金繰りに行き詰まっているサインとして受け取られやすく、審査上のマイナス要素になり得ます。また、滞納がある場合は、後述するように売掛金そのものが差押えの対象となっている可能性があるため、ファクタリング会社としてもリスクを慎重に見極める必要があります。

税務署による差押えとの関係

税金を納めないまま放置すると、税務署は督促を経て、最終的に財産の差押えを行うことができます。差押えの対象には、預貯金や不動産、動産などと並び、売掛金などの債権も含まれます。税務署が取引先に対して売掛金の支払先を指定するように求めたり、取引先から直接税金として徴収したりすることもあります。

ここで問題になるのが、差押えと債権譲渡の関係です。差押えが行われた後に売掛金をファクタリング会社へ譲渡しても、差押えの効力は残るため、ファクタリング会社は売掛金を回収できない可能性があります。逆に、譲渡が先に行われていた場合でも、第三者への対抗要件の具備の時期などによって優劣が決まるため、事情によっては税務署の差押えが優先されることもあります。いずれにしても、滞納処分が進んでいる状況での債権譲渡は、ファクタリング会社にとって非常にリスクの高い取引になります。

そのため、税金の滞納を抱えたまま売掛金を譲渡しようとすると、審査で断られるだけでなく、後々の法的トラブルに発展するおそれもあります。

税金滞納があっても利用できる可能性があるケース

滞納の内容と期間によって判断は変わる

税金の滞納といっても、少額の延滞から多額の滞納、さらに差押えの予告や実施段階に至ったものまで、状況はさまざまです。一般的には、滞納額が小さく、期間も短く、税務署との間で納付や分納の話し合いが進んでいる場合は、審査上の影響が比較的軽いと考えられます。

また、滞納の原因が一時的な資金繰りの悪化であり、その後の売上の回復見込みや、受注の確実性を示せる場合には、ファクタリング会社の判断が前向きになることもあります。ただし、こうした判断はあくまで個別の会社の基準によるため、必ず利用できるとは限りません。

分納や納税猶予を活用している場合

税務署との間で分納計画を立て、それを確実に守っている場合は、事業者として納税の意思と能力を示していると評価されることがあります。同様に、納税猶予の制度を利用している場合も、直ちに差押えが行われるリスクは抑えられるため、審査で不利になりにくいケースがあります。

もっとも、分納中であっても、滞納処分が既に進んでいる場合や、分納の約束を守れていない場合には、売掛金の譲渡自体が難しくなることがあります。自社がどの段階にあるのかを正確に把握し、税務署の担当者と状況を共有しておくことが大切です。

税金滞納がある場合に利用が難しいケース

差押えが既に行われている場合

すでに税務署によって売掛金が差し押さえられている場合は、その売掛金をファクタリング会社へ譲渡することは、基本的に難しいと考えられます。差押えの効力により、売掛金の処分は制限されるためです。この場合、ファクタリング会社は回収リスクを負うことになるため、審査で断られる可能性が高くなります。

また、差押えの対象が売掛金以外の財産であっても、事業全体の資金繰りが圧迫されていることの証左とみなされ、審査が厳しくなることがあります。

悪質な業者による契約トラブルに注意する

税金滞納を抱えた事業者は、資金繰りに焦りを感じやすく、その足元を見た悪質な業者に狙われることがあります。たとえば、審査が通りやすいと強調しながら、契約後に高額な手数料を請求したり、売掛金の回収を強引に進めたりするケースが報告されています。中には、実質的に高利の貸付けにあたるような条件を提示する業者も存在します。

業者を選ぶ際には、手数料の内訳や総額を書面で確認し、契約内容に不明点がないかを必ず確かめることが重要です。また、「必ず通る」「税金の滞納があっても問題ない」といった断定的な勧誘には注意が必要です。契約を急がせる業者や、契約前に高額な事前費用を求める業者は避けるべきでしょう。

税金を滞納したままファクタリングを利用するリスク

売掛金の回収トラブルに発展する可能性

ファクタリングを利用して売掛金を譲渡した後に、税務署による差押えが行われた場合、取引先はどちらに支払うべきかで混乱することになります。その結果、売掛先との関係が悪化したり、支払いが遅延したりするおそれがあります。取引先の信用を損なえば、今後の取引にも影響しかねません。

また、ファクタリング会社との間でも、債権の帰属をめぐって争いが生じることがあります。最終的に裁判や交渉にまで発展すると、時間と費用がかかり、事業の立て直しをさらに難しくしてしまいます。

二重の資金負担になるおそれ

税金の滞納を放置すると、延滞税などの負担が増えていきます。延滞税は納期限の翌日から日割りで発生し、滞納期間が長くなるほど負担が重くなる仕組みです。さらに、ファクタリングの手数料を支払うことで、資金繰りの負担がさらに重なる可能性があります。

資金を一時的に確保できたとしても、根本的な納税が行われていなければ、問題は先送りされるだけです。むしろ、手数料と延滞税の両方を抱えることで、資金繰りの悪化を加速させてしまうおそれがあります。

滞納を解消するための具体的な対処法

まずは税務署へ相談する

税金の滞納に気づいたら、できるだけ早く所轄の税務署に相談することが基本です。税務署は、事業者の状況を踏まえたうえで、分納計画の作成や納税猶予の申請など、さまざまな選択肢を検討してくれます。自ら相談の窓口に足を運ぶことで、滞納処分を回避しやすくなるだけでなく、審査の観点からも誠実な姿勢が評価されやすくなります。

相談の際には、現在の資金繰りの状況、売上の見込み、支払い可能な金額などを整理して伝えることが大切です。税務署の担当者は、事業の継続を前提とした現実的な計画を一緒に考えてくれることが多いとされています。

税理士や専門家の力を借りる

税務上の手続きや資金繰りの見直しには、税理士などの専門家の支援が有効です。税理士は、滞納の経緯を整理し、税務署との交渉をサポートしたり、納税計画の立て方を提案したりしてくれます。また、事業全体の収支を見直し、どこにコストを削減できるかを一緒に検討することもできます。

さらに、中小企業のための支援機関として、商工会議所や商工会、よろず支援拠点などの相談窓口も利用できます。資金繰りの改善策や、利用できる公的な融資制度の情報を得られる場合があるため、早い段階で相談しておくと安心です。

滞納を解消してから資金調達を検討する

滞納を完全に解消してから資金調達を検討することができれば、審査上の不安は大きく減ります。まずは税務署と合意した分納計画を着実に実行し、滞納額を減らしていくことが重要です。滞納が解消されれば、ファクタリングの審査においても、売掛金の帰属に関する懸念が解消されるため、利用できる選択肢が広がります。

また、税金の完納証明を取得できれば、取引先やファクタリング会社に対して経営の健全性を示す材料にもなります。資金調達を急ぐあまり、滞納を抱えたまま手数料の高い取引に踏み切るのではなく、まずは納税の見通しを立てることを優先するのが賢明です。

ファクタリングを検討する際の注意点

契約前に確認しておきたいポイント

ファクタリングを利用する前に、手数料の総額、契約期間、債権の買戻し条件、そして契約解除時の取り扱いを必ず確認しましょう。特に、債権の買戻しを求められる条項や、遅延損害金の設定がどのようになっているかは、後のトラブルを防ぐうえで重要です。

また、ファクタリング会社が古物商や貸金業の登録を行っているかどうかも、確認の材料になります。登録情報は公的な検索サイトなどで調べられるため、契約前に一度確認しておくと安心です。

資金繰り全体を見直す視点を持つ

ファクタリングは、あくまで一時的な資金繰りの手段であり、根本的な経営課題を解決するものではありません。税金の滞納が生じている背景には、売上の減少、コストの増加、取引先からの入金遅延などの構造的な問題が隠れていることが多いといえます。

そのため、ファクタリングを利用する場合でも、売上の回復策や経費の見直し、取引条件の改善などを並行して進めることが大切です。資金の流れを定期的に確認し、無理のない返済計画や納税計画を立てることで、再び滞納に陥るリスクを減らすことができます。

まとめ

ファクタリングは、売掛金を活用して資金を早期に調達できる便利な仕組みですが、税金の滞納がある場合には、審査で不利になるだけでなく、税務署による差押えとの関係で大きなリスクを伴います。滞納の内容や進行状況によっては利用できるケースもありますが、差押えが行われている場合などは特に慎重な判断が必要です。

最も大切なのは、滞納を放置せず、できるだけ早く税務署や専門家に相談することです。分納や納税猶予といった制度を活用しながら滞納を解消し、そのうえで資金調達を検討することで、事業の立て直しと資金繰りの安定の両方を目指すことができます。ファクタリングの利用を考えている場合も、手数料や契約条件を十分に確認し、焦って悪質な業者と契約することのないよう注意してください。

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の税務や法律上の判断を示すものではありません。具体的な対応については、税理士や弁護士などの専門家にご相談ください。