株式会社の資金調達法について!仕組みと株式、株式と社債の違いまで全解説

2024年1月8日

株式会社の資金調達法は、大きくわけて以下の3種類あります。

■資本を増やす=エクイティファイナンス
■負債を増やす=デットファイナンス
■資産を現金化する=アセットファイナンス

どの方法を選べばいいかは、状況に応じてメリットやデメリットを比較した上で決定する必要があります。

まず、株式会社の資金調達について知っておくべき知識をわかりやすくまとめました。

上記3つの方法について、

◎株式会社が資金調達する3つの手段とそのメリット・デメリット

をわかりやすく解説します。
さらに、株式発行ならではの資金調達法として特に株式発行にフォーカスし、

◎株式と社債の違い
◎株式発行による資金調達の仕組み
◎株式発行による資金調達の流れ

を深掘りします。

最後まで読めば、株式会社の資金調達方法について必要な知識が得られるでしょう。
あなたの会社がこの記事をもとに必要な資金調達をできるよう願っています。

株式と社債の違い

まず、株式発行はエクイティファイナンス、社債はデットファイナンスに分類されることを思い出してください。
ということは、

■株式=資本
■社債=負債

なのです。

株式を買った人は、その企業に「出資」したことになります。
株主として議決権を持ち、企業の経営に意見を述べることができるわけです。

一方で、社債を買うということは、その企業に「融資」することです。
企業側としては、毎年利息を払い、期限が来れば元金を返済しなければなりません。

返済の必要がないかわりに、経営に介入される恐れがあるのが株式、そのリスクはないかわりに返済義務があるのが社債と考えればいいでしょう。

それぞれの特徴とメリット・デメリットを表にまとめましたので、以下を参照してください。

                            
位置づけ         
株式:資本              
社債:負債

返済の必要                       
株式:なし              
社債:あり

購入者の利益
株式:議決権をもち経営に関与できる、配当が得られる、株主優待を受けられる、株価が上がれば売却益を得られる              
社債:定期的に利子が入る

企業側のメリット
株式:信用度が低かったり赤字でも発行できる、返済の必要がない             
社債:株式より短期間で発行できる、経営に介入されない、株価に影響しない

企業側のデメリット
株式: 株主が経営に介入する恐れがある、新株発行で株式の数が増えると1株当たりの価値が下がる可能性がある             
社債:定期的に利息を支払わなければならない、期限になれば返済しなければならない

株式会社が資金調達する3つの手段とメリット・デメリット

株式会社の資金到達といえば、「株式の発行」が代表的ですよね。
が、そのほかにも「融資を受ける」「ベンチャーキャピタルなどから出資を受ける」「社債を発行する」などさまざまな方法があります。

これらは、大きく以下の3つのカテゴリーに分類されます。

◎エクイティファイナンス=資本を増やす
◎デットファイナンス=負債を増やす
◎アセットファイナンス=資産を現金化する

資本を増やす=エクイティファイナンス

まず、資金を調達するために、「資本を増やす」という方法があります。
これは「エクイティファイナンス」とも呼ばれます。

「資本を増やす」には具体的にどうするかというと、「新しく株式を発行する」のです。
新株発行には、以下の4種類の方法があります。

◎公募増資(時価発行増資)
◎株主割当増資
◎第三者割当増資
◎転換社債型新株予約権付社債(CB)

それぞれ説明しましょう。

公募増資(時価発行増資)

「公募増資」は、広く一般の投資家に向けて新株を発行する方法です。
その際の株価は、発行時のその企業の株価=時価か、時価に近い価格に設定されるため、「時価発行増資」とも呼ばれます。

株主割当増資

「株主割当増資」は、すでにその企業の株を保有している株主に対して、新株を発行する方法です。
株主それぞれがいま持っている株式の割合に応じて、新株の権利が割り当てられます。
といっても、株主は割当通りにかならず新株を引き受けなければいけない義務はありません。
ほしくなければ買わなければいいですし、割り当ての一部だけを持つこともできます。
その際の株価は、時価よりも割安に設定されます。

第三者割当増資

「第三者割当増資」は、既存の株主であるかないかにかかわらず、特定の第三者に向けて新株の権利を割り当てる方法です。
たとえば提携している企業や取引のある金融機関、ベンチャーキャピタルなどに新株を引き受けてもらいます。
これにより、提携する企業との関係性がより強固になり、経営面や技術面での協力も得られるようになります。
また、自社の株価が低く、ほかの増資方法が利用できない場合に行われることもあります。

転換社債型新株予約権付社債

「転換社債型新株予約権付社債(CB=Convertible Bond)」は、新株予約権がついている社債です。
そのまま社債として保有している人には、通常の社債と同様に毎年利子が支払われますが、決められた期間内であれば、その企業の株式に転換することもできます。
その際は、最初から決められていた「転換価格」で株式に転換します。

エクイティファイナンスのメリット・デメリット

資金調達したい株式会社からすれば、エクイティファイナンスで調達した資金は融資と違って返済しなくてもよいというメリットがあります。
また、発行した株式の価格が下がっても、差額を補償する必要もありません。

信用度が低い企業でも、株式を発行することはできますし、担保や保証人も必要ないのも利点です。

ただし、新株を発行することでその企業の株式の数が増え、1株当たりの価値が下がるかもしれません。
発行手続きにも時間もかかるため、すぐに資金が必要な場合には向かないというデメリットもあります。

また、株式には議決権がともないます。
投資家の持ち株比率が高くなると、企業経営に介入される恐れがありますし、場合によっては現在の経営陣から経営権を奪われてしまう危険性もあるので、注意が必要です。

負債を増やす=デットファイナンス

次に、「負債を増やす」方法について説明しましょう。

「負債を増やせば、むしろ資金は減ってしまうのでは?」と感じるかもしれません。
が、この「負債」とは「融資」のことです。
つまり負債を増やす資金調達法とは、「融資を受けること」なのです。

その具体的な方法としては、主に以下のようなものがあります。

◎金融機関からの融資
◎公的融資
◎社債

金融機関からの融資

「金融機関からの融資」は、銀行や信用金庫、ノンバンクなど民間の金融機関から資金を借り入れることです。
企業の事業内容や信用度などを審査された上で、融資の可否や融資限度額が決められるため、経営状態のよくない企業や零細企業などは、融資を断わられたり、希望額に満たない融資しか受けられない可能性もあります。
審査のハードルの高さは、「銀行>信用金庫>ノンバンク」となっていて、銀行からの融資はもっとも信用度が求められます。

公的融資

「公的融資」とは、民間ではなく公的機関からの融資です。
融資を受けられる機関には、「国民政策金融公庫」「商工組合中央金庫」「信用保証協会」などがあります。

「国民政策金融公庫」は、政府系金融機関のひとつです。
中小企業や個人事業主、ベンチャー企業、スタートアップ企業など、銀行融資が受けにくい事業者に向けて、低金利で融資を行ってくれます。
「商工組合中央金庫」も同じく政府系金融機関で、中小企業向け融資を行っています。

「信用保証協会」は、金融機関ではありません。
中小企業や個人事業主などが融資を受ける際に、その債務を保証してくれる機関です。
たとえばある中小企業が銀行に直接融資を申し込んでも、信用度が低いために審査に通らなかったとします。
そこで、信用保証協会に保証料を支払うことで保証してもらいます。
この保証がつくと、もしその企業が融資金の返済を滞らせたり、返済不能に陥った場合、その残債を信用保証協会がかわりに弁済してくれるわけです。
そのため、直接融資はしてくれない銀行も、信用保証協会の保証がつけば融資してくれるようになります。

社債

「社債」は、企業が投資家から出資してもらうのと引き換えに発行する債券です。
一般的な「融資」とは異なりますが、デットファイナンスに含まれます。
というのも、あらかじめ決めた期限がくれば、投資家に資金を返還する必要があるからです。
また、それまでは毎年一定率の利子を投資家に支払います。

デットファイナンスのメリット・デメリット

負債による資金調達のメリットは、第一に「レバレッジ効果」です。
レバレッジ効果とは、資金を借り入れることでその金額以上の利益を上げることを指します。
たとえば、設備投資すれば利益が500万円見込めるのに、自己資本が300万円足りない場合、その300万円を融資してもらうことで十分な設備投資ができるはずです。
その結果500万円の利益を得られれば、融資額より利益が上回ることになりますよね。
これがレバレッジ効果です。

また、融資をしてくれる金融機関は銀行、信用金庫、政府系金融機関など多種多様で数も多いため、1か所で審査が通らなくても、別のもっと審査基準がゆるいところを探して融資を受けることができます。

株式発行は経営権に影響を及ぼしますが、融資であればそのリスクもありませんし、返済金の利息は「損金」扱いなので節税にもなります。

一方で、融資には金融機関による審査があり、信用度の低い企業や経営状態が悪い企業の場合、融資自体を受けられない恐れがあります。
審査に通っても、いくらまで借りられるか、金利や返済期間はどの程度かは金融機関が決定するため、自分の思い通りの金額が借りられないケースもあるのです。

そして、融資を受けられたら、毎月かならず一定額を返済し続けなければなりません。
これは、経営が厳しい零細企業にとっては大きな負担になるといえるでしょう。

資産を現金化する=アセットファイナンス

最後は、「持っている資産を現金化する」方法です。
その企業が保有している不動産や売掛債権、知的財産などの「資産」を、証券に換えるなどして売却します。
これを資産の「流動化」または「証券化」といい、以下のような種類に分けられます。

◎資産の売却
◎ファクタリング
◎不要在庫の処分
◎セール&リースバック
◎権利の売却

資産の売却

「資産の売却」は、企業が保有している資産を売却して現金化します。
売却する資産としては、不動産、機械設備、自動車などが考えられます。
資産自体を手放したくなければ、たとえば不動産の場合は、他社にリースしてその賃料を担保に証券を発行することもできます。

ファクタリング

「ファクタリング」は、売掛債権を売却して現金化する方法です。
たとえば6か月後に入金される予定の売掛債権を、専門のファクタリング会社に売却することで、今すぐに現金化することができます。
手数料は引かれますが、短期間での資金調達が可能です。

不要在庫の処分

「不要在庫の処分」は、倉庫に眠っている在庫商品を、業者に売却する方法です。
買取先さえ見つかればすぐに現金化できますが、在庫は時間が経てば経つほど資産価値が下がるのが一般的なので、できるだけ早期に処分する必要があります。

セール&リースバック

「セール&リースバック」は、資産を売却後もリースして利用し続けるという方法です。
たとえば不動産、機械設備、自動車などを、リース会社や金融機関にいったん売却します。
そして、あらためてリース契約を結び、リース料を支払うことで、不動産や設備を使い続けることができるわけです。

権利の売却

「権利の売却」は、営業権や知的財産権などの権利を他者に売却するものです。
特許、商標権、著作権などを完全に譲渡することもできますし、専用で利用できる権利をあたえてその利用料を受け取ったりすることができます。

アセットファイナンスのメリット・デメリット

これらの方法は、株式発行や融資に比べて早期に資金調達できるというメリットがあります。
ファクタリングなどは、場合によっては即日現金化してくれる業者もあるので、急ぎで資金が必要な場合にはとても有効な方法だといえるでしょう。

一方で、そもそも資産と言えるものがなければ利用できない方法ですし、資産があってもその評価額相当までしか資金化できません。
1,000万円必要であっても、資産が800万円分しかなければ調達額は不足するわけです。

さらに調達できる金額は、資産のもともとの価格よりも低くなる傾向があります。
たとえばファクタリングを利用する場合、500万円の売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらうと、数%~20%程度の手数料を引かれてしまいます。
現金化により、資産が目減りしてしまうデメリットがあるのです。

株式発行による資金調達の仕組み

株式と社債の違いはわかったかと思います。
それを踏まえて、株式会社ならではの資金調達法といえば、やはり「株式の発行」ですよね。
ここからは、株式発行についてさらにくわしく掘り下げていきましょう。

まず、株式発行によって資金調達できる仕組みを説明します。
まず、企業が株式を発行します。
それを投資家や企業が買う=出資を受けることで、多額の資金を調達することができます。
そしてこの資金をもとに、さらに営業利益を上げることを目指します。

一方、株式を購入した投資家や企業は、出資者=株主として議決権を持ち、株主総会に参加して経営に意見を述べることができるようになります。
というのも、その企業の営業利益が上がれば株価が上がり、株主が保有する株の価値が高まるからです。
また株主には、配当や株主優待といったメリットもあります。

以上が株式発行による資金調達の仕組みです。

株式発行による資金調達の流れ

株式を発行して資金調達したい場合、どのような流れで実施すればいいのでしょうか?

その流れは以下の図のようになっています。

募集事項の決定

まず、株式を引き受けてくれる投資家や企業を募集するために、募集条件をいろいろと決める必要があります。
決めることは、以下の5点です。

1)募集株式の数
2)募集株式の払込金額またはその算定方法
3)金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨ならびに当該財産の内容および価額
4)募集株式と引換えにする金銭の払込み、または3)の財産給付の期日またはその期間
5)増加する資本金および資本準備金に関する事項

簡単にいえば、今回発行する株式の数と1株あたりの金額、その払い込み期日や期間などを決めるわけです。

これらの募集事項をどのように決めるのかは、その企業が株式に譲渡制限をつけているかいないかによって異なります。

株式の全部または一部でも譲渡制限のない企業は「公開会社」と呼ばれ、その場合の募集事項は取締役会の決議によって決められます。
一方、すべての株式に譲渡制限がかけられている企業は「非公開会社」と呼ばれ、募集事項は株主総会の特別決議によって決めなければなりません。

募集事項の通知

募集事項が決まったら、投資家に向けてその内容を通知します。
もし公募増資でない場合は、株主に向けて、

■第三者割当て:払込期日または払込期間の初日の2週間前までに
■株主割当て:申込期日の2週間前までに

通知する必要があります。

募集株式の申し込み

募集要項を見て、株式を引き受けようと決めた投資家や企業が、申し込みをしてきます。
申し込みの際には、「自分が何株引き受けたいか」という希望数も申告されます。

募集株式の割り当て

申し込みが集まったら、株式会社側が「誰に何株割り当てるか」を決定します。
投資家の希望数の範囲内で、何株割り当てるかは企業側の裁量に任せられています。
割り当てを決めたら、払込期日の前日、または払込期間の初日の前日までに、申し込んだ投資家や企業に向けて、それぞれの割り当て数を知らせなければなりません。

ただ、株主割当ての場合は、最初に「誰に何株割り当てるか」も決定していますので、この工程は必要ありません。

出資の履行(=払い込み)

割り当てを知らされた投資家や企業は、払込期日まで、または払込期間中に募集事項で定められた金額を払い込みます。
この時点で、振り込みをした人・企業は株式を発行した企業の株主になります。

登記

株式会社が発行した株の数や資本金額は、登記簿に記載されています。
新株を発行すると、それらが変わるので、登記を変更しなければなりません。

そこで、株式を発行した企業は、払込期限から2週間以内に法務局で、

■発行済み株式の総数:以前の数に今回発行した新株の数を加えたもの
■資本金:今回の募集株式で増資したあとの金額

に登記を変更する手続きをします。

これで株式発行による資金調達は終了です。

まとめ

株式会社の資金調達について、知りたいことがよくわかったかと思います。

では最後にこの記事の要点をまとめてみましょう。

◎株式会社の資金調達は大きくわけて以下の3種
・資本を増やす=エクイティファイナンス
・負債を増やす=デットファイナンス
・資産を現金化する=アセットファイナンス

◎株式発行による資金調達の流れは以下の通り
1)募集事項の決定
2)募集事項の通知
3)募集株式の申し込み
4)募集株式の割り当て
5)出資の履行
6)登記

この記事を踏まえて、あなたの会社が必要な資金を調達できるよう願っています。