M&Aの資金調達方法とは?買収資金の種類や調達先と注意点を詳しく解説
2026年10月28日
M&Aを実施する際には、買収する企業や事業の取得費用だけでなく、専門家への報酬や契約にかかる費用、買収後の運転資金など、さまざまな資金が必要になります。
特に企業を買収する側にとっては、M&Aの成立までにまとまった資金を用意しなければならないケースが多く、「どのような方法で資金を調達すればよいのか」「自己資金だけで足りない場合はどうすればよいのか」と悩むこともあるでしょう。
M&Aの資金調達方法には、自己資金だけでなく、金融機関からの融資、M&A向けのローン、投資家からの出資、社債など、さまざまな選択肢があります。また、M&Aの規模や買収対象となる企業の収益性、買収後の事業計画などによって、適した資金調達方法は異なります。
さらに、M&Aでは「買収できるだけの資金があるか」だけでなく、買収後の運転資金や返済負担まで考慮して資金調達計画を立てることが重要です。
この記事では、M&Aにおける資金調達方法について詳しく解説します。M&Aに必要となる資金の種類や代表的な調達方法、それぞれのメリット・デメリット、資金調達を成功させるためのポイントまで紹介するので、M&Aを検討している企業はぜひ参考にしてください。
M&Aに資金調達が必要になる理由
M&Aでは、売り手企業や事業を取得するための買収資金が必要になります。
株式譲渡によるM&Aであれば、売り手企業の株式を取得するための対価を支払います。事業譲渡の場合は、取得する事業や資産などに応じて対価を支払うことになります。
しかし、M&Aで必要になる資金は買収対価だけではありません。
M&A仲介会社やFAなどの専門家を利用する場合は、相談料や着手金、中間報酬、成功報酬などが発生する場合があります。
また、法務・財務・税務などのデューデリジェンスを実施する場合にも専門家への報酬が必要になります。
さらに、M&Aが成立した後には、買収した企業や事業を運営するための運転資金が必要になるケースもあります。
そのため、M&Aの資金調達では「買収金額だけを用意すればよい」と考えるのではなく、M&Aの検討から成立、買収後までを含めた資金計画を立てることが重要です。
M&Aで必要になる主な資金
M&Aに必要となる資金は、案件の内容や取引規模によって大きく異なります。
具体的にどのような費用が必要になるのかを把握しておくことで、資金調達の計画を立てやすくなります。
企業や事業の買収資金
M&Aで最も大きな資金となるのが、企業や事業を取得するための買収資金です。
株式譲渡であれば株式の取得対価、事業譲渡であれば事業の取得対価が必要になります。
買収価格は、対象企業の純資産、収益力、将来性、ブランド力、顧客基盤など、さまざまな要素をもとに決定されます。
そのため、案件によって必要な資金額は大きく異なります。
M&A専門家への報酬
M&Aでは、M&A仲介会社やFA、弁護士、税理士、公認会計士などの専門家を利用することがあります。
専門家へ依頼する場合は、業務内容に応じて報酬が発生します。
報酬体系はサービスによって異なるため、契約前にどのような費用が発生するのかを確認しておくことが重要です。
デューデリジェンスの費用
M&Aでは、買収対象となる企業の財務状況や法務上の問題、税務上のリスクなどを調査するデューデリジェンスを実施することがあります。
デューデリジェンスによって、買収前には把握できなかった問題やリスクが見つかる場合があります。
そのため、M&Aの資金計画を立てる際には、買収価格だけでなくデューデリジェンスに必要な費用も考慮しておきましょう。
M&A後の運転資金
M&Aが成立した後には、買収した企業や事業を継続するための運転資金が必要になります。
買収資金に自己資金を使い切ってしまうと、M&A成立後の資金繰りが苦しくなる可能性があります。
そのため、M&Aの資金調達では、買収資金だけでなく買収後の運転資金まで含めて考えることが大切です。
M&Aの代表的な資金調達方法
M&Aの資金調達方法には複数の選択肢があります。
企業の財務状況やM&Aの規模、買収後の収益見込みなどを踏まえて、適した方法を選ぶことが重要です。
自己資金で調達する
M&Aの資金調達方法として最もシンプルなのが自己資金です。
自社が保有する現預金などを利用して買収資金を支払います。
自己資金を利用する場合、金融機関などから借り入れる必要がないため、返済負担が発生しないというメリットがあります。
また、融資審査を待つ必要がないため、資金を準備できていればスムーズにM&Aを進められる可能性があります。
一方で、自己資金をM&Aに多く投入すると、買収後の運転資金が不足する可能性があります。
そのため、自己資金だけで買収資金をまかなえる場合でも、手元資金をどの程度残しておくのかを慎重に検討する必要があります。
金融機関から融資を受ける
M&Aの資金調達方法として、銀行などの金融機関から融資を受ける方法があります。
M&Aの買収資金を借り入れによって調達することで、手元資金を残しながらM&Aを進められる可能性があります。
金融機関から融資を受ける場合は、自社の財務状況だけでなく、買収対象企業の事業内容やM&A後の事業計画などについても説明する必要があります。
特に重要なのが、M&Aによってどのような収益を生み出せるのかを具体的に説明することです。
M&A向け融資を利用する
金融機関によっては、M&Aを目的とした融資商品を提供している場合があります。
M&A向け融資では、買収対象企業の事業性やM&A後の収益計画などを踏まえて融資の可否が判断されることがあります。
通常の運転資金融資とは異なる視点で審査される可能性があるため、M&Aを具体的に検討している企業は金融機関へ相談してみるとよいでしょう。
日本政策金融公庫などの公的金融機関を利用する
M&Aの資金調達では、日本政策金融公庫などの公的な金融機関からの融資を検討する方法もあります。
中小企業が事業承継やM&Aを行う場合、利用できる制度が存在する可能性があります。
ただし、利用できる制度や条件は企業の状況やM&Aの内容によって異なります。
利用を検討する場合は、対象となる制度や融資条件を事前に確認することが重要です。
投資家から出資を受ける
投資家や事業会社などから出資を受けて、M&Aの資金を調達する方法もあります。
出資は融資とは異なり、原則として借入金のような返済義務を負わない点が特徴です。
一方で、株式を発行して出資を受ける場合には、株式の希薄化などについて検討する必要があります。
また、出資者との関係や経営方針についても考慮しなければなりません。
社債を発行する
一定の条件を満たす企業であれば、社債を発行してM&Aの資金を調達する方法もあります。
社債は投資家から資金を調達し、契約に基づいて利息の支払いや元本の償還を行う仕組みです。
ただし、中小企業にとっては発行条件や手続きなどのハードルがあるため、すべての企業に適しているわけではありません。
M&Aの資金調達で融資を利用するメリット
M&Aの資金調達で融資を利用する最大のメリットは、手元資金を残しながら買収を進められる可能性があることです。
例えば、M&Aに1億円必要だからといって、すべてを自己資金で支払う必要があるとは限りません。
一部を自己資金、一部を金融機関からの融資で調達することで、M&A後の運転資金を確保しやすくなる場合があります。
また、M&Aによって収益力を高められる企業であれば、買収後に生み出したキャッシュフローから借入金を返済するという考え方もできます。
ただし、M&A後の収益が想定を下回ると返済負担が経営を圧迫する可能性があります。
そのため、融資を利用する場合は返済可能性を十分に検討する必要があります。
M&Aの資金調達で自己資金を利用するメリット
自己資金によるM&Aには、借入金の返済や利息負担を増やさずに買収できるというメリットがあります。
また、金融機関の審査が不要であれば、融資にかかる時間を短縮できます。
一方で、自己資金を大量に投入すると、会社の手元資金が減少します。
M&Aでは、買収後に想定外の費用が発生する可能性もあります。
設備投資や人材採用、システム統合などに資金が必要になる場合もあるため、M&A後の資金需要を見越して現預金を残しておくことが重要です。
M&Aの資金調達方法を選ぶポイント
M&Aの資金調達方法は、単純に「最も金利が低い方法」や「最も多く借りられる方法」を選べばよいわけではありません。
自社の財務状況やM&A後の経営計画などを総合的に考える必要があります。
M&Aの規模に合わせて選ぶ
まずは、M&Aに必要となる資金総額を把握しましょう。
買収価格だけでなく、専門家への報酬やデューデリジェンス費用、税金、買収後の運転資金なども含めて計算します。
必要な資金額が明確になれば、自己資金で対応するのか、融資を利用するのか、出資を受けるのかなどを判断しやすくなります。
買収後の返済負担を考える
融資によってM&A資金を調達する場合は、買収後の返済負担を考慮することが重要です。
M&Aによって売上や利益が増加する予定であっても、実際の業績が計画どおりになるとは限りません。
そのため、売上が想定を下回った場合でも返済を続けられるかどうかをシミュレーションしておきましょう。
手元資金をどれだけ残すか考える
M&Aに自己資金を投入する場合は、買収後に必要な運転資金を確保できるか確認しましょう。
企業経営では、売上が入金される前に仕入れや人件費などの支払いが発生することがあります。
そのため、M&A後の資金繰りまで考えたうえで、自己資金の投入額を決定することが大切です。
M&A後の収益性を確認する
M&Aの資金調達では、買収後にどの程度の収益を見込めるのかも重要です。
例えば、買収によって売上を増加させられるのか、新規顧客を獲得できるのか、既存事業とのシナジーを生み出せるのかなどを検討します。
こうした情報を具体的な事業計画として整理しておくことで、金融機関などへM&Aの必要性や返済可能性を説明しやすくなります。
M&Aの資金調達で金融機関に説明する内容
M&Aのために金融機関から融資を受ける場合、単純に「この会社を買収したいので資金を貸してほしい」と伝えるだけでは十分とはいえません。
なぜその企業を買収するのか、買収によってどのような効果が期待できるのか、借入金をどのように返済するのかを具体的に説明することが重要です。
特に重要なのがM&A後の事業計画です。
買収した企業の売上や利益をどのように伸ばすのか、自社事業とどのようなシナジーを生み出すのかなどを整理しておきましょう。
また、M&A後に必要になる設備投資や人材採用などの費用についても、可能な限り具体的に計画しておくことが大切です。
M&Aの資金調達で注意したいポイント
M&Aでは多額の資金が動くことがあるため、資金調達方法を慎重に検討する必要があります。
買収価格だけで資金計画を立てない
M&Aに必要な資金は買収価格だけではありません。
M&A仲介会社や専門家への報酬、デューデリジェンス費用、契約関連費用などが発生する可能性があります。
さらに、買収後の事業運営にも資金が必要になります。
買収価格だけを基準に資金調達額を決めると、M&A成立後に資金が不足する可能性があるため注意しましょう。
過剰な借り入れを避ける
融資を利用すると手元資金を残しながらM&Aを実施できますが、借入額が大きくなれば返済負担も増加します。
M&Aによって期待した収益が得られなかった場合、返済が経営を圧迫する可能性があります。
そのため、借りられる金額ではなく、返済できる金額を基準に資金調達額を検討することが重要です。
M&A後の資金繰りまで考える
M&Aが成立した時点で資金計画を終了してはいけません。
買収後には、従業員の給与や仕入れ、設備投資、システム統合など、さまざまな支出が発生する可能性があります。
M&A後の資金繰りまで含めて、十分な資金を確保しておきましょう。
M&Aの資金調達をスムーズに進める方法
M&Aの資金調達をスムーズに進めるためには、できるだけ早い段階から準備を始めることが重要です。
特に金融機関から融資を受ける場合、審査や必要書類の準備などに時間がかかる可能性があります。
M&Aの候補企業が見つかってから資金調達を始めるのではなく、M&Aを検討し始めた段階から金融機関などへ相談しておくとよいでしょう。
また、自社の決算書や事業計画、買収対象企業の財務情報など、資金調達に必要となる資料を整理しておくことも大切です。
早い段階で金融機関に相談する
M&Aを検討している場合は、案件が具体化する前から金融機関へ相談する方法があります。
事前に相談しておけば、どの程度の融資が見込めるのか、どのような資料が必要なのかを把握しやすくなります。
M&Aの最終契約直前になってから融資を申し込むと、資金調達が間に合わない可能性もあるため注意しましょう。
資金調達先を一つに限定しない
M&Aの資金調達では、複数の方法を組み合わせることも可能です。
例えば、自己資金だけでなく金融機関からの融資を組み合わせることで、手元資金を残しながら買収資金を確保する方法があります。
案件によっては、複数の金融機関へ相談して条件を比較することも検討しましょう。
M&Aとファクタリングを組み合わせることはできるのか
M&Aの資金調達を考える際、自社が保有する売掛債権をファクタリングによって早期に現金化する方法を検討する企業もあります。
ファクタリングは、売掛債権をファクタリング会社へ譲渡し、その対価として資金を受け取る仕組みです。
銀行融資とは異なる資金調達方法であるため、M&Aに必要な資金を確保する手段の一つとして検討できる場合があります。
例えば、M&Aの実行時期が迫っているものの、売掛金の入金日が先に設定されている場合には、保有している売掛債権を早期に現金化することで資金繰りを調整できる可能性があります。
ただし、ファクタリングには手数料が発生するため、M&A全体の資金調達コストを考慮して利用する必要があります。
また、ファクタリング会社によって利用条件や手数料などが異なるため、契約内容を十分に確認することが重要です。
M&Aの資金調達は専門家への相談も検討する
M&Aでは、買収価格の妥当性や契約条件だけでなく、資金調達方法や税務、法務など、さまざまな専門知識が必要になります。
特に初めてM&Aを実施する企業の場合、自社だけで資金調達計画を作成することが難しいケースもあります。
M&A仲介会社やFA、公認会計士、税理士、金融機関などへ相談することで、資金調達を含めたM&A全体の計画を整理しやすくなります。
ただし、専門家によって得意分野や料金体系などが異なるため、依頼する際にはサービス内容と費用を確認しておきましょう。
M&Aの資金調達方法に関するよくある質問
M&Aの資金調達方法には何がありますか
代表的な方法として、自己資金、金融機関からの融資、M&A向け融資、公的金融機関からの融資、投資家からの出資、社債などがあります。
また、自社が保有している売掛債権をファクタリングで資金化する方法を検討できる場合もあります。
どの方法が適しているかは、M&Aの規模や自社の財務状況、買収後の収益計画などによって異なります。
M&Aの資金調達は自己資金だけでも可能ですか
自己資金だけでM&Aを実施することは可能です。
ただし、自己資金を買収資金に使いすぎると、M&A後の運転資金が不足する可能性があります。
買収後の資金繰りまで考慮し、必要な手元資金を残しておくことが重要です。
M&Aの資金調達で融資を受けるには何が重要ですか
M&A後にどのような収益を生み出し、どのように借入金を返済するのかを具体的に説明できることが重要です。
買収対象企業の事業内容や財務状況だけでなく、M&A後の事業計画やシナジーについても整理しておきましょう。
M&Aの資金調達では買収金額だけ考えればよいですか
買収金額だけではなく、M&A仲介会社などへの報酬、デューデリジェンス費用、契約関連費用、買収後の運転資金なども考慮する必要があります。
M&A成立後の資金繰りまで含めて、必要な資金を計算しましょう。
M&Aの資金調達にファクタリングを利用できますか
自社が売掛債権を保有している場合、ファクタリングによって資金化する方法を検討できるケースがあります。
ただし、ファクタリングには手数料が発生するため、M&A全体の資金調達コストや資金繰りを考慮したうえで利用することが重要です。
まとめ
M&Aの資金調達方法には、自己資金、金融機関からの融資、M&A向け融資、公的金融機関からの融資、投資家からの出資、社債など、さまざまな選択肢があります。
どの方法を選ぶべきかは、M&Aの規模や買収価格、自社の財務状況、M&A後の収益性、必要となる運転資金などによって変わります。
自己資金を利用すれば借入金の返済負担を増やさずにM&Aを実施できますが、手元資金が大きく減少する可能性があります。一方、融資を利用すれば手元資金を残しやすくなるものの、M&A後には元金や利息の返済が必要になります。
そのため、M&Aの資金調達では「いくら調達できるか」だけではなく、「M&A後も無理なく事業を継続できるか」という視点が重要です。
また、買収資金だけでなく、M&A仲介会社や専門家への報酬、デューデリジェンス費用、契約関連費用、買収後の運転資金なども含めて必要な資金を計算する必要があります。
M&Aを成功させるためには、買収契約を成立させることだけを目標にするのではなく、買収後の資金繰りや事業計画まで含めて資金調達方法を検討することが大切です。
「M&A 資金調達 方法」を検討している企業は、自社の資金状況とM&Aの目的を整理し、自己資金と融資など複数の方法を比較しながら、無理のない資金調達計画を立てましょう。
