ファクタリングの経費処理どうしたらいい?注意点など解説
2023年12月28日
法人でも個人事業主でも、毎年決算書(確定申告書)を作成しなければなりません。
決算書を作成するのにも、日々の会計業務は欠かすことができません。
特に重要となってくるのが経費処理です。
経費を正確に処理することで法人税を減らすことができます。経費処理が不正確であれば税務調査を受けるリスクが高まり不利に働きます。
ファクタリングを利用する際にも同様に経費処理を行います。
複雑な経費処理ではありませんが、ファクタリングの流れに沿って、注意点も踏まえつつ経費処理することが大切です。
この記事では、ファクタリングの経費処理と注意点について詳しく解説します。
ファクタリングの経費処理って?
ファクタリングは、資金調達方法の一種です。
一般的に「資金調達」といえば、銀行や日本政策金融公庫、ノンバンクなどから融資を受けることをイメージします。
融資を受けた際には、借入金が自社の預金口座に振り込まれ、手数料や保証料などが差し引かれることも多いです。
借入金が入ってくることによって生じる動きを帳簿に記録するのが会計処理であり、保証料や手数料などは経費処理によって仕訳する必要があります。
借入金の返済にも会計処理が必要です。
支払うお金は元金と支払利息に分けて考え、支払利息については経費処理しなければなりません。
融資に伴うお金の動きだけではなく、お金の動きが生じた場合には全て会計処理が必要です。
ファクタリングを利用した際にも会計処理を行います。
ファクタリング会社に売掛金を売却することによって、「買取代金が入ってくる」「ファクタリング手数料を支払う」といったお金の動きが生じるためです。
特に、ファクタリングには手数料がつきものですから、経費処理について一通り理解しておく必要があります。
ファクタリング方式によって経費処理が変わる
ファクタリングの経費処理を知るには、ファクタリングの流れに合わせて、実際の経費処理を見ていくのがベストです。
経費処理はお金の動きによって変化します。
そのため、同じファクタリングでも、ファクタリング方式や入金のタイミングなどによって経費処理が異なります。
売掛金を売却するファクタリングの方式は、以下の2つです。
・2社間ファクタリング:ファクタリングの利用会社(以下、利用会社)とファクタリング会社の2社間で取引する方式
・3社間ファクタリング:利用会社、ファクタリング会社、売掛先の3社間で取引する方式
方式や入金のタイミングを意識すると、経費処理の理解がスムーズです。
2社間ファクタリングの経費処理
一般的に、2社間ファクタリングは以下の流れで手続きします。
・ファクタリングの依頼:ファクタリング会社に2社間ファクタリングを申し込み、必要書類を提出する。
・売掛金の発生:売掛先に商品を納入し、請求書を発行する。売掛金が発生する。
・ファクタリング契約:利用会社が条件に合意すると、利用会社とファクタリング会社の間でファクタリング契約を結ぶ。
・ファクタリング審査:ファクタリング会社が審査を実施し、ファクタリングの可否とファクタリング条件を決定する。
・売掛先から入金:2社間ファクタリングは売掛先が関与しないため、売掛先はファクタリングの利用を知らない。支払期日には、売掛先は利用会社に代金を振り込む。
・ファクタリング会社から入金:契約締結後、ファクタリング会社から利用会社に買取代金を振り込む。
・ファクタリング会社へ弁済:売掛先から支払われた代金をファクタリング会社に振り込み、2社間ファクタリングが完結する。
2社間ファクタリングの経費処理のポイントは、買取代金の入金のタイミングです。
2社間ファクタリングは売掛先が関与しないため、スピーディにファクタリングできます。
即日対応を基本とするファクタリング会社も多いです。
しかし、必ずしも即日対応を受けられるとは限らず、入金が翌日以降になることもあります。
したがって、翌日以降に入金される場合と、即日で入金される場合(ファクタリング契約と入金が同時の場合)で経費処理が異なります。
具体的には以下の通りです。
即日で入金される場合
即日で入金される場合の経費処理は、少しだけ簡単です。
即日入金の場合、「ファクタリング契約時の経費処理」と「ファクタリング会社からの入金時の経費処理」をひとつにまとめます。
ファクタリング契約を結んだその日に入金されるため、契約と入金には数分~数時間のラグがあったとしても、同時に行われたものとみなして経費処理できるのです。
一旦未収金として処理する必要がなく、その分だけ仕訳が簡単になります。
もちろん、税務署から問題視されることもありません。
むしろ、経費処理はできるだけ簡素な方が好ましいとされています。
簡素な方が労働力を削減でき、計算のミスなども発生しにくいからです。
翌日以降に入金される場合
経費処理の際、借方と貸方は以下のように考えます。
借方:資産の増加と費用の発生を計上する欄
貸方:負債の増加、資産の減少、収益の発生を計上する欄
①売掛金の発生時
ファクタリングの利用に関係なく、信用取引を行った際に必ず行う処理です。
売掛先に対して請求書を発行し、売掛先が請求書を受理したタイミングで売掛金を計上します。
売掛金は流動資産ですから、売掛金の発生は「資産の増加」として借方に記載します。
売上は「収益の発生」として貸方に記載してください。
なお、ファクタリング会社への申し込みと審査の際には、利用会社の資産内容には何ら動き(現金が入ってくる、売掛金が出ていくなど)がないため、経費処理も発生しません。
②ファクタリング契約時
翌日以降に入金される場合、ファクタリング契約を結んだ時点で②の処理を行います。
未収金とは、資産の売却が確定したものの、まだ代金を受け取っていない状態です。
未収金は流動資産の一種であり、資産の増加ですから借方に記載しましょう。
ファクタリングは売掛債権(売掛金)譲渡取引の一種ですから、ファクタリング契約を締結した時点で、売掛金の譲渡が成立します。
ファクタリングする前は、売掛金の債権者は利用会社でしたが、契約締結と同時にファクタリング会社が新たな債権者となりました。
売掛金はファクタリング会社のものになり、利用会社では売掛金が減少します。
これを貸方に計上してください。
③ファクタリング会社からの入金時
後日、ファクタリング会社から利用会社に代金が入金されます。
利用会社の口座に入金されるのが普通ですから、買取代金は普通預金の増加として借方に計上します。
ここで重要となるのが、ファクタリング手数料の経費処理です。
ファクタリング手数料は費用の発生ですから、借方に「売上債権売却損」として計上しなければなりません。
売掛金の額面金額が100万円、手数料率が5%の場合には、入金の際に5万円の手数料が差し引かれるため、しっかりと経費処理を行います。
入金された時点で、②で借方に計上した「未収金」という資産が減少します。
これを貸方に計上し、入金時の経費処理は完了です。
④売掛先からの入金時
後日、ファクタリングの利用を知らない売掛先は、利用会社の口座に売掛金を振り込みます。
入ってきた売掛金の額面金額100万円の動き(お金の入り)を借方に記録してください。
もちろん、このお金は利用会社のものではなく、ファクタリング会社に支払わなければならないお金です。
支払いは確定しているもののまだ支払っていない、つまりこれはお金を預かっている状態です。
預り金は負債ですから、貸方に計上します。
⑤ファクタリング会社への弁済時
売掛先から入金された代金をファクタリング会社に弁済し、負債として計上していた預り金が減少します。
負債の減少は、相対的に資産が増加することを意味するため、預り金を借方に計上しましょう。
同時に、売掛先から入金された代金(普通預金)が減少するため、これを貸方に計上します。
以上で、2社間ファクタリングの経費処理は全て完了です。
3社間ファクタリングの経費処理
次に、3社間ファクタリングの経費処理を見ていきましょう。
多くのファクタリング会社では以下の流れで3社間ファクタリングを進めます。
・ファクタリングの依頼:ファクタリング会社に3社間ファクタリングを申し込み、必要書類を提出する。
・売掛金の発生:売掛先に商品を納入し、請求書を発行する。売掛金が発生する。
・ファクタリング契約:利用会社が条件に合意すると、利用会社とファクタリング会社の間でファクタリング契約を結ぶ。
・ファクタリング審査:ファクタリング会社が審査を実施し、ファクタリングの可否とファクタリング条件を決定する。
・売掛先から入金: 譲渡承諾の時点で、売掛先が支払先の変更を認めているため、支払期日には売掛先からファクタリング会社へ直接支払われる。
・債権譲渡通知・承諾:売掛先に債権譲渡通知書を送付し、譲渡の承諾を取り付ける。3社間取引が成立する。
・ファクタリング会社から入金:売掛先の承諾後、ファクタリング会社から利用会社に買取代金を振り込む。
3社間ファクタリングは売掛先が関与するため、債権譲渡通知・承諾の手続きが必要です。
利用会社から売掛先に対し、債権譲渡通知書を内容証明郵便で送付し、売掛先は承諾書に署名してファクタリング会社に送付します。
「利用会社→売掛先→ファクタリング会社」の流れで少なくとも2回の郵送手続きを行うため、数日を要します。
したがって、3社間ファクタリングは即日ファクタリングが不可能であり、経費処理も「後日入金の経費処理」の一択です。
また、3社間ファクタリングでは売掛金を直接(売掛先→ファクタリング会社)決済するため、「売掛先からの入金時」「ファクタリング会社への弁済時」の経費処理も不要です。
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングは、手続きの流れは異なるものの、経費処理のタイミングはほとんど同じです。
売掛金が発生した時、ファクタリングを契約したとき、買取代金を受け取った時の計3回、経費処理を行います。
2社間ファクタリングと全く同じように考えて問題ありません。
ファクタリングの経費処理の注意点
ここまでの内容を踏まえて、ファクタリングの経費処理の注意点をまとめます。
勘定科目は色々
ファクタリングの際には、手数料を経費として処理します。
ファクタリング会社ごとに手数料の設定は異なりますが、大きく分けると以下の2パターンです。
・諸経費を全てひとまとめにして「ファクタリング手数料」として請求する
・買取手数料、事務手数料、審査手数料、登記費用など、発生した諸経費をそれぞれ請求する
優良ファクタリング会社でも手数料の仕組みが異なります。
これに対し、優良ファクタリング会社Sでは「買取手数料+事務手数料」という料金設定です。
ファクタリング手数料として一括で支払う場合も、それぞれ個別に支払う場合も、経費処理は全て「売上債権売却損」として処理します。
そもそも、会計ソフトの勘定科目に「ファクタリング手数料」や「事務手数料」という項目は存在しません。
会計ソフトによっては、「売上債権売却損」という項目が存在しないこともあります。
その場合には類似の項目で経費処理すれば問題ありません。
売上債権売却損とは、「売上債権の売却によって生じた損失」です。
したがって、手形割引の際に支払う「割引料」としても経費処理できます。
このほか、「雑損失」として処理することも認められています。
経費処理の内容に虚偽がなければ、勘定科目が少々異なっても問題ないと考えましょう。
会計期間をまたぐ場合
注意しておきたいのは、後日支払いの流れでファクタリングする際に会計期間をまたぐ「期ズレ」です。
経費処理は、あくまでも会計期間に基づく必要があります。
したがって、翌期に計上すべき(会計期間をまたぐ)経費を、今期に前倒しして計上することは認められません。
それを認めてしまうと、売上や経費の処理を意図的にずらし、課税額を減らすこともできるからです。
ファクタリング契約と入金で会計期間をまたぐ場合、売上債権売却損の発生は翌期です。
何とか入金前(売上債権売却損の発生前)に売上債権売却損として経費処理し、法人税を減らしたいところですが、そのような経費処理は避けてください。
意図的な期ズレは一種の粉飾ですから、税務署も厳しくチェックします。
税務調査の原因TOP3は「期ズレ」「役員賞与」「寄付金」と言われるほどです。
会社にとって税務調査は百害あって一利なしです。
反面調査(調査先の実態を掴むために、調査先の取引先にも税務調査を行うこと)が実施され、取引先の信用を失うこともあります。
そのようなリスクを避けるためにも、以下の3点に注意して経費処理しましょう。
・期ズレが起こりそうなタイミングでのファクタリングは避ける
・期ズレが起こりそうなタイミングでファクタリングする際には、即日対応の2社間ファクタリングを利用する
・会計期間をまたいでしまった場合には、会計ルールに基づいて経費処理し、期ズレを防ぐ
まとめ
ファクタリングを初めて利用する際には、手続きの流れやお金の動き、手数料を支払うタイミングなどが分からず、経費処理で戸惑うことも多いと思います。
しかし、ファクタリングの流れと経費処理のポイント、特に入金のタイミング(契約の同日か、後日か)による違いを理解すれば、経費処理は難しくありません。
税務調査を避けるためにも、正しく経費処理することが大切です。
経費処理が不安な場合には、利用時にファクタリング会社に尋ねても良いでしょう。
コンサルタントが在籍しているファクタリング会社では、経費処理のサポートも可能です。