ファクタリングを複数利用・併用するリスクと注意点!違法になるケースや代替案まで解説
2026年10月10日
ファクタリング(売掛債権の早期現金化)は、資金繰りの改善に非常に有効な手法として多くの企業や個人事業主に利用されています。しかし、一社からの資金調達だけでは目標金額に達しない場合や、急な資金ニーズに対応するために「複数のファクタリング会社を同時に利用(併用)する」という選択肢を考える事業者も少なくありません。
結論から申し上げますと、条件を守れば複数社のファクタリングを同時に併用すること自体は違法ではありません。しかし、正しい知識がないまま安易に複数利用を進めてしまうと、手数料の二重負担による財務状況の悪化や、二重譲渡(二重契約)という重大な違法行為・詐欺罪につながる極めて高い危険性をはらんでいます。
本記事では、ファクタリングを複数利用・併用する際のリスクや注意点、違法となるケースとならないケースの違い、そして安全に資金繰りを改善するための代替案まで、詳しく解説していきます。
ファクタリングの複数利用・併用は違法なのか
まず知っておくべきなのは「法的に併用が認められるケース」と「即座に違法・犯罪となるケース」の境界線です。ここを誤解すると、悪気はなくても犯罪者になってしまうリスクがあります。
売掛債権が別々であれば法的に問題はない
例えば「A社に対する売掛金100万円」をファクタリング会社X社に買い取ってもらい、「B社に対する売掛金100万円」をファクタリング会社Y社に買い取ってもらうという形であれば、法的に何ら問題はありません。
買い取ってもらう対象となる売買契約(売掛債権)がそれぞれ独立しているため、複数のファクタリング会社を同時に利用したとしても正当な取引として認められます。
同じ売掛債権を重複させる「二重譲渡」は犯罪
一方で絶対に行ってはならないのが、「同一の売掛債権(例:A社に対する100万円の売掛金)」をファクタリング会社X社とY社の両方に買い取らせる行為です。これを「二重譲渡」と呼びます。
二重譲渡は明確な契約違反であり、法的には「存在しない(または既に権利を失った)債権を売却して現金を騙し取った」とみなされます。これにより、詐欺罪や横領罪などに問われ、刑事告発される可能性が極めて高くなります。また、ファクタリング業者間で情報共有が行われているケースも多いため、二重譲渡はほぼ間違いなく発覚します。
ファクタリングを複数利用・併用する重大なリスク
別々の債権を用いて法的・形式的に正しく複数利用した場合であっても、実務上・財務上においては多くのリスクが伴います。資金調達を急ぐあまり併用に走ると、かえって会社を倒産に追い込む原因になりかねます。
手数料の二重・多重負担による粗利益の圧迫
ファクタリングの手数料は、一般的な銀行融資の金利と比較して高額に設定されています。特に2社間ファクタリングの場合、取引1回あたり8パーセントから18パーセント程度の手数料が発生することが珍しくありません。
複数の会社を利用すると、それぞれの案件に対して高い手数料が引かれます。その結果、本来得られるはずだった事業の粗利益が大幅に削られ、翌月以降の資金繰りがさらに悪化するという悪循環に陥りやすくなります。
契約手続きや資金管理の煩雑化と返済事故のリスク
利用するファクタリング会社が増えれば増えるほど、それぞれの契約内容、売買期日、手数料率、入金口座などの管理が非常に複雑化します。
特に2社間ファクタリングの場合、取引先(売掛先)から売掛金が入金された後、利用者が責任を持ってファクタリング会社へその資金をスライドして振り込まなければなりません。複数社を利用していると「どの売掛金がどのファクタリング会社のものか」の管理が甘くなり、支払期日の遅延や振込先ミスといった返済事故を引き起こす危険性が跳ね上がります。
悪質な業者(ヤミ金・違法業者)に遭遇する確率の増加
1社での審査が通らない、あるいは限度額に達してしまい焦って別のファクタリング会社を探している状態は、悪質な業者の標的になりやすいタイミングです。
正規のファクタリング会社を装った違法なヤミ金融業者や、相場を大きく逸脱した高額な手数料・違法な金利を要求する業者と接触してしまうリスクが高まります。また、渡した個人情報や企業情報が業者間で回覧され、別の違法勧誘に利用されるリスクも懸念されます。
売掛先(取引先)からの信用失墜のリスク
3社間ファクタリングを複数利用する場合や、2社間であっても債権譲渡登記を行う契約を結んでいる場合、売買された売掛債権の情報が第三者や取引先に知られる可能性が高まります。
取引先から「この会社は資金繰りが著しく悪化しており、複数のファクタリング業者に頼らざるを得ない状態なのではないか」と疑念を持たれると、今後の取引縮小や支払い条件の厳格化など、本業の継続に深刻な打撃を与えることになります。
ファクタリングを複数利用する際の注意点
資金繰りの都合上、どうしても一時的に複数利用を行わざるを得ない場合には、被害やトラブルを避けるために以下の注意点を徹底する必要があります。
既存のファクタリング会社に事前に相談・申告する
隠れて他社を利用しようとすると、審査時の信用情報照会や通帳の履歴から併用が発覚するケースが多々あります。隠蔽は業者からの不信感を招き、最悪の場合は利用停止や一括返済を求められる原因になります。
あらかじめ利用中の会社に「資金ニーズが追加で発生したため、別の売掛債権で他社を利用したい」「買取可能額の増額(枠の拡大)は可能か」などを正直に相談・確認することをおすすめします。
通帳履歴や契約書の厳格なチェックを受ける心構えを持つ
ファクタリング会社は審査時に、利用者の通帳履歴や売掛先との取引継続性を精査します。既に他社での利用履歴(ファクタリング会社名義での入出金など)がある場合、審査担当者は二重譲渡のリスクを警戒して通常よりも厳しい確認を行います。
誤解を受けないよう、譲渡対象とする売掛債権の契約書や発注書、納品書、請求書などのエビデンス資料を完璧に揃えて提示できるように準備しておくことが重要です。
複数利用を避けて資金繰りを改善するための代替案
複数利用はリスクが大きく、資金繰りの一時しのぎにしかなりません。根本的な解決を図るためには、他の資金調達方法やコスト見直しを検討することが先決です。
メインのファクタリング会社1社に枠の増額を交渉する
複数社に分散して利用するよりも、実績のある1社に絞って利用実績(支払いの遅延がない状態)を積み重ねる方が賢明です。信用が蓄積されれば、1社あたりの買取限度額を引き上げてもらえたり、手数料の引き下げ交渉に応じてもらえたりする可能性が高まります。
3社間ファクタリングへの移行で手数料を抑える
売掛先(取引先)の承諾を得られる状況であれば、2社間から3社間ファクタリングへの変更を検討しましょう。3社間ファクタリングは未回収リスクが低いため、手数料相場が1パーセントから9パーセント程度まで大幅に下がります。手数料負担を減らすことで、手元に残る資金を増やすことができます。
日本政策金融公庫や自治体のセーフティネット融資の活用
民間銀行の融資審査が厳しい場合でも、日本政策金融公庫の公的融資や自治体の制度融資であれば、低金利かつ比較的柔軟な条件で融資を受けられる可能性があります。入金までに数週間から数ヶ月の期間を要しますが、長期的な資金繰りの安定には最も有効です。
支払いスケジュールの見直しや不要な経費の削減
資金ショートを防ぐためには、入金を早めるだけでなく「出金を遅らせる」「出金を減らす」アプローチも不可欠です。主要な仕入れ先に対して支払い期日の延長を相談したり、固定費や不要なサブスクリプション契約を見直したりして、キャッシュアウトを最小限に抑える取り組みを実施しましょう。
まとめ
ファクタリングの複数利用・併用は、売掛債権がそれぞれ異なるものであれば法律上可能です。しかし、同一の債権を譲渡する「二重譲渡」は詐欺罪などに該当する重大な犯罪行為となるため、絶対に行ってはなりません。
また、正しく併用する場合であっても、高額な手数料の重複による粗利益の圧迫、資金管理の複雑化による返済トラブル、悪質業者の被害に遭うリスクなど、経営上のデメリットや危険性が非常に高くなります。
目先の資金を確保するために安易に複数社へ申し込むのではなく、まずは既存の取引先との信頼関係をもとに1社での買取枠増額や手数料減額を交渉するか、公的融資やコスト削減など根本的な経営改善に取り組むことを強く推奨いたします。
