2024年ファクタリングはどうなる?市場動向と予測を解説!

2024年1月21日

近年、日本で目覚ましい成長を遂げているファクタリング。
売掛金の売却によって手軽に資金を調達でき、コロナ禍で資金繰りが苦しい会社でも利用しやすいサービスです。
市場の成長に伴い、ファクタリング業者の新規開業が増え続けており、サービスも多様化しています。
2024年、ファクタリング市場はどのように変化していくのでしょうか。
この記事では、ファクタリング市場の最新の動向、2024年以降の予測について詳しく解説します。

政府も推奨するファクタリング

多くの場合、会社の資金調達は銀行融資によって行います。
特に、日本の中小企業は銀行融資への依存度が高いとされており、政府もこれを問題視しています。
なぜ銀行融資への依存が問題になるのかと言えば、金融環境の悪化などによって経営環境・金融環境が悪化した場合、資金調達が困難になるからです。
銀行融資以外に資金調達方法を持たない会社では、資金繰りに行き詰る恐れがあります。
融資は、金融機関や貸金業者などの外部機関が調達先となる「外部資金調達」であり、調達先の判断によって資金調達が左右されます。
特に問題となるのが自社の経営状況、とりわけ返済能力です。
経営に何らかの問題があれば融資を受けられない可能性が高く、担保や保証の不足によって融資を拒否されることも珍しくありません。
そこで、銀行融資とは審査基準が異なる資金調達方法を確保しておくことにより、資金ショートの危険を回避できます。
ファクタリングは、銀行融資と根本的に異なる資金調達方法です。
ファクタリングは資産(売掛金)の売却による資金調達、すなわち「内部資金調達」に含まれます。
このため、ファクタリング審査で重視されるのは自社の経営状況ではなく、あくまでも売掛金の支払人である売掛先の経営状況です。
自社の経営に問題があっても、売掛先の経営に問題がなければファクタリングによって資金を調達できます。
政府は、中小企業の銀行融資への依存度を下げるためにも、ファクタリングによる資金調達の多様化を促しているのです。
政府の姿勢は2024年も変わらないと考えられます。

2024年のファクタリング市場動向

次に、2024年のファクタリング市場の動向をみていきましょう。

2024年のファクタリング市場規模予測

ファクタリングは、世界的にみれば古い歴史があります。
しかしながら、日本でファクタリングが普及し始めたのはごく最近のことです。
2010年代から2023年までの間に、ファクタリングの市場規模は大幅に拡大しました。
2024年以降もこの流れは続くと考えられます。
株式会社グローバルインフォメーションの資料によれば、ファクタリングの市場規模は2023年から2027年にかけて1兆7204億1000万米ドル(日本円にして約220兆円)に成長するとの予測です。
なお、2023年~2027年の年間平均成長率は7.54%。
この背景には、ファクタリングにおけるブロックチェーンの活用などが挙げられます。
2023年以降、ファクタリング市場の成長が加速し、予測を上回ることも考えられます。

2024年のファクタリング業界のトレンド

市場規模の拡大が予測される2024年。
ファクタリング業界にどのような変化が起こるのでしょうか。
2024年のトレンドを7つ紹介します。

オンラインファクタリングが普及

2024年のトレンドとしてまず挙げられるのは、オンラインファクタリングの普及率が高まっていくことです。
オンラインファクタリングは、従来の2社間ファクタリングに比べて以下の点で優れています。
「完全非対面取引であること」
「必要書類が少ないこと」
「手数料が安いこと」
「スピーディに資金調達できること」
「安全性が高いこと」
現在、オンラインファクタリングを導入しているのは、優良ファクタリング会社のごく一部です。
しかしながら、特に2社間ファクタリング特化型ではオンラインファクタリングの普及が進んでいます。
オンライン専業として新規開業するファクタリング会社も少なくありません。
2024年を通して、オンラインファクタリングがさらに普及していくと考えられます。

業者数は増加傾向

ファクタリングの普及が始まってからというもの、ファクタリング業者の数は増加する一方です。
現在、ファクタリング方式別の業者数は以下のようになっています。
1.2社間ファクタリング特化型の業者…23社
2.1のうち、建設業専門の業者…1社
3.1のうち、運送業専門の業者…1社
4.1のうち、個人事業主向けの業者…3社
5.診療・介護報酬特化型の業者…4社
6.3社間ファクタリング特化型の業者…13社
7.6のうち、銀行系のファクタリング業者…8社
8.2社間ファクタリング・3社間ファクタリングの両方を取り扱う業者…46社
この分類からわかるのは、業者の数が非常に多くなっていること、また業種特化型の業者が登場していることです。
2024年も、基本的にはこの傾向が続くと考えて良いでしょう。

業種別の特化型ファクタリングが増える可能性

上記の分類にもある通り、近年では特定業種に特化型のファクタリングサービスも徐々に登場してきました。
もちろん、多種多様なファクタリングに対応しつつ、なおかつ特定業種に力を入れているファクタリング会社もあります。
現在、特定業種に特化したファクタリング業者はごくわずかですが、今後も業種別のニーズに応じて特化型のファクタリングが増えていくことでしょう。
中でも、建設業界と運送業界には2024年も注目です。
これらの業界はファクタリングのニーズが高く、特化型ファクタリングとして新規に参入しやすい環境にあります。

従来型のファクタリングは減っていくか?

オンラインファクタリングの普及に伴い予測されるのが、従来型(オフライン)のファクタリングが徐々に減少していくことです。
もちろん、現時点ではオンライン型よりも従来型のファクタリングの方が主流であり、3社間ファクタリングではオンラインがほとんど活用されていません。
オンライン型と従来型の普及率が逆転するには、まだまだ時間を要するでしょう。
したがって、2024年だけで従来型が急速に減少することはないはずです。
とはいえ、オンライン型の普及に伴い、2024年で従来型の普及率が減少傾向を入ることもあり得ます。
また、このトレンドは長期的に続くと考えられます。
従来型のファクタリングを利用している会社では、2024年を機にオンラインファクタリングへの切り替えを検討してみても良いでしょう。

不確定債権もファクタリング可能に?

2024年のトレンドとして、不確定債権のファクタリングも広がると考えられます。
基本的に、ファクタリングの対象となる売掛金は確定債権だけです。
確定債権とは、請求内容(請求先、請求額、支払期日など)が確定している売掛債権のことです。
簡単にいえば、利用会社から売掛先に対して請求を行い、売掛先が請求書を受理したものを確定債権といいます。
確定債権は請求内容が確定しているため、ファクタリング審査に必要な情報(売掛先の会社名、売掛金の額面金額、支払期日までの残存日数など)が揃っています。
つまりファクタリング会社は、確定的な情報をもとに審査でき、リスク測定の精度も高まるというわけです。
逆に、不確定債権のファクタリングは容易ではありません。
請求内容が確定していなければ、ファクタリング会社は確度の低い情報をもとに審査せざるを得ず、リスク測定が困難なためです。
だからこそ、ほとんどのファクタリング会社は確定債権のみを対象とし、不確定債権のファクタリングは対象外としています。
しかし近年、不確定債権に対応するファクタリングサービスも徐々に増えてきました。
サービス名は「将来債権ファクタリング」「注文書ファクタリング」などファクタリング会社によって様々です。
現在、不確定債権に対応しているサービスはごくわずかですが、2024年を通して増加する可能性があります。

法整備には動きなし

債権譲渡に関する改正民法が施行されたのは2020年4月ですが、改正案の成立はそれに先立つこと3年、2017年5月のことです。
このように、民法の改正は数年がかりで行われます。
2020年の改正が直近であり、その後は債権譲渡に関する改正案は見られません。
したがって、2024年はファクタリングに関する法整備はないと考えて良いでしょう。
もちろん、過去にはファクタリングを装う違法業者を短期間で排除するべく、金融庁や警視庁が強く取り締まったこともありました。
このような動きにより、2024年にファクタリングの周辺環境が変化することは考えられます。

譲渡禁止特約への対応が緩和

既に解説した通り、政府はファクタリングの普及を後押ししています。
法整備にも意欲的に取り組んでおり、ファクタリングの利用環境が徐々に改善されている状況です。
最近の動きとしては、2020年4月の民法改正が挙げられます。
この改正によって、ファクタリング会社の譲渡禁止特約への対応も変わりつつあります。
譲渡禁止特約とは、債権者(利用会社)と債務者(売掛先)の間で売買契約を交わす際に、事前に売掛金の譲渡を禁止する特約です。
法改正以前は、譲渡禁止特約付きの売掛金はファクタリングできませんでした。
というのも、ファクタリングの事実を知った場合、売掛先が譲渡禁止特約を理由に支払いを拒否するなどして、回収時にトラブルが発生する可能性があったためです。
しかしながら、2020年の法改正によって、譲渡禁止特約付きの売掛金もファクタリング可能になりました。
民法第466条には以下のように明記されています。
「当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。」
ただし、ファクタリング会社によって対応はまちまちです。
法的にファクタリングが認められるようになったとはいえ、譲渡禁止特約の有無によって取り扱い方が異なるため、現在も譲渡禁止特約付きの売掛金には対応していないファクタリング会社も少なくありません。
しかし、法改正から時間が経過するにつれて、譲渡禁止特約への対応を緩和するファクタリング会社が増えていることも事実です。
2024年も、譲渡禁止特約に柔軟に対応するファクタリング会社が増えると予測されます。

ファクタリングのメリット

ファクタリングは優れた資金調達方法であり、日常の資金繰りだけではなく経営改善にも役立つものです。
このような認識は一般的になりつつあり、2024年もファクタリングの普及率は高まっていくことでしょう。
具体的には、ファクタリングにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
2024年版のメリットを紹介します。

1.資金調達の多様化にファクタリングを

ファクタリングが資金調達方法の多様化に役立つことは、政府も認めているところです。
2024年はファクタリングサービスがさらに向上し、利用のハードルはさらに下がると考えられます。
業績・財務の悪化によって銀行から融資を断られた会社、税金の滞納やリスケジュールによってそもそも融資の見込みがゼロの会社では、ファクタリングの利用がますます広がっていくでしょう。
このほか、創業後間もない会社は融資に苦労するものですが、ファクタリングならば簡単に資金を調達できます。
アフターコロナで社会が大きく変化する中で、時代に合わせた産業の創出、起業の促進が求められています。
2024年に起業を考えている方も、ファクタリングを積極的に取り入れましょう。

2.無担保・無保証が原則

ここまでの解説でも触れた通り、ファクタリングは無担保・無保証が原則です。
バブル崩壊以降、日本の金融機関では不動産担保への依存解消に取り組んできました。
しかし2024年の今でも、銀行融資の際に担保が重視されています。
また、会社によっては信用保証協会の保証付融資を受けることができません。
特に問題となるのが、コロナ禍でセーフティネット保証を受けた会社です。
セーフティネット保証制度では、一般保証とは別枠で保証を受けられる制度ですが、これはあくまでも一般の保証枠だけでは足りない会社を対象としています。
つまり、セーフティネット保証で融資を受ける会社は、一般保証の枠を既に使い切っていることが前提となります。
その場合、セーフティネット保証による借入金を完済しないうちは、一般保証による保証付融資を受けることも困難です。
したがって、2024年は担保・保証の不足によって銀行融資に苦労する会社が少なくないでしょう。
2024年の資金調達には、無担保・無保証のファクタリングを活用すべきです。

3.リスクマネジメントへの活用

ファクタリングがリスクマネジメントにも役立つことは、よく知られたメリットです。
ファクタリング契約は「償還請求権なし」が原則のため、ファクタリングした売掛金が回収不能になっても買い戻す義務がありません。
これは、本来ならば自社が負うべき回収不能リスクを、ファクタリング会社に移転できるということです。
2024年は、このメリットが一層役に立つでしょう。
なぜならば、コロナ倒産への備えになるからです。
帝国データバンクが2023年2月に発表したデータによると、倒産件数は574件、前年同月比で34.1%増、前月比で5.1%増となりました。
また、倒産件数574件の負債総額は1005億4600万円、前年同月比で28.8%増、前月比では何と98.0%増となっています。
前年同月比34.1%増という結果は、2009年1月、すなわちリーマンショック以来(14年1ヶ月ぶり)です。
なお、前年同月比での増加が10ヶ月連続で続いており、今後もこの傾向が続く可能性が濃厚です。
コロナ倒産に巻き込まれた場合、連鎖倒産に陥る危険性があります。
2024年は、回収不能リスクとの闘いになるかもしれません。
ファクタリングをリスクマネジメントに活用し、回収不能リスクを回避しましょう。

4.オンラインでより便利に

近年、ファクタリング業界ではオンライン化が急速に進んでいます。
2024年も、オンラインファクタリングが増えると考えられます。
オンラインファクタリングは、従来のファクタリングに比べて圧倒的に便利です。
特に、従来のファクタリングでは基本だった「契約時の対面取引」が不要になるため、より手軽に、スピーディにファクタリングできます。
また、手数料が安いこと、債権譲渡登記が不要であることなどもメリットです。
従来型のファクタリングを利用してきた会社も、2024年はオンラインファクタリングへの切り替えを検討してみてはいかがでしょうか。

5.必要書類はもっと少なく

ファクタリングは、必要書類が少ないことも大きなメリットです。
手元にある書類だけで申し込める場合が多く、改めて書類を作成する必要がありません。
例えば、No.1でご提出いただく書類は以下の4点です。
「直近3ヶ月の取引入金が確認できる書類(入金通帳・当座通帳・当座照合表)」
「決算書直近2期分(勘定科目明細付で税務申告済みの捺印のあるもの)」
「成因資料(請求書・発注書・納品書など)」
「取引先企業との基本契約書」
ファクタリング会社によっては、事業計画書や登記簿謄本といった、作成・取得に手間のかかる書類を求めることもあります。
しかし、現在、そのようなファクタリング会社はごく少数です。
必要書類の点数は年々減っており、今後もその傾向が続くと考えられます。
資金調達に伴う書類作成に悩んでいるならば、ファクタリングがおすすめです。

6.緊急の資金調達はファクタリング一択

2024年も、緊急の資金調達はファクタリング一択となるでしょう。
ファクタリングは、様々な資金調達方法の中でも特にスピーディです。
2社間ファクタリングならば最短即日、オンラインファクタリングならば最短数時間で調達できます。
これにより、以下のような場合にはファクタリングでの調達が最適です。
「好採算の大型案件を依頼された。受注したいが、先行コストの負担が大きい。取引先は素早い回答を求めているため、即座に資金調達のうえ受注したい。」
「売掛先の倒産により売掛金を回収できなくなった。支払いが数日後に迫っているが、手元資金が不足している。資金ショートを回避するために、すぐに資金を調達したい。」
「従業員が交通事故を起こし、一時的に車両が使えなくなった。従業員は入院し、人材も足りない。車両は短期間のレンタル、人材は外注によってカバーしたいが、どちらも先払いのため手元資金が足りない。業務全体が回らなくなってしまうため、すぐにでも調達したい。」
上記のいずれの場合でも、ファクタリングならば十分に対応できます。
2024年も、緊急の資金調達にはファクタリングが役立ちます。

7.秘匿性の高さ

2024年までにファクタリングの認知度は大幅に向上しましたが、違法業者が紛れ込んでいることもあり、ファクタリングに対して良くないイメージを抱く人はまだまだ多いです。
売掛先にファクタリングの利用を知られると、資金繰り難や経営悪化を疑われる恐れがあります。
売掛先の信用リスクを避けるためには、秘匿性が高い2社間でのファクタリングがおすすめです。
2社間ファクタリングは、申し込みから契約まで一切売掛先が関与しません。
債権譲渡通知も必要なく、売掛先に知られることなくファクタリングできます。
一方、3社間ファクタリングは売掛先を含む3社間取引のため、売掛先に知られず利用することは不可能です。
多くの会社にとってこの違いは非常に大きく、実際の利用をみても、2社間ファクタリングを選ぶ会社が圧倒的多数です。
ただし2社間ファクタリングの秘匿性も完全ではありません。
なぜならば、2社間ファクタリングの際には債権譲渡登記が必要となるためです。
登記内容は公示されるため、たとえ2社間ファクタリングを利用しても、登記情報から売掛先に知られる危険があります。
この危険を回避するには、オンラインファクタリングがおすすめです。
オンラインファクタリングは債権譲渡登記が不要のため、登記情報から露見することがありません。
ファクタリング業界において一層のオンライン化が予想される2024年、秘匿性の観点からもオンラインファクタリングを積極的に活用すべきでしょう。

8.キャッシュフローを改善できる

ファクタリングは、資金を調達すると同時にキャッシュフローの改善もできます。
資金繰りはお金の流れを予測するものですが、キャッシュフローはお金の流れの結果をまとめたものです。
ファクタリングによってキャッシュフローが改善する理由は、「売掛金を早期回収できること」にあります。
キャッシュフローは収支の結果であり、実際に売掛金を回収して初めてキャッシュインフロー(お金が入ってくる流れ)を計上します。
回収サイトが長い場合、売掛金を回収するまでに時間がかかるため、キャッシュインフローの減少は避けられません。
一方、経費は回収サイトに関係なく発生するため、キャッシュアウトフロー(お金が出ていく流れ)は基本的に一定です。
キャッシュインフローが減少し、キャッシュアウトフローが一定であれば、キャッシュフローは当然悪化します。
逆に、キャッシュインフローが増加し、キャッシュアウトフローが一定であれば、キャッシュフローは改善します。
ファクタリングは、売掛金の早期資金化サービスです。
支払期日を待たずに回収することで、実質的な回収サイトを大幅に短縮できます。
これが、「キャッシュフロー改善」という結果につながるわけです。
2024年はアフターコロナでの経営難、とりわけコロナ倒産の影響が顕在化してくるでしょう。
取引先の経営が悪化した場合、自社のキャッシュフローも連鎖的に悪化することが考えられます。
キャッシュフローの悪化防止、改善のためにもファクタリングを活用しましょう。

9.財務の維持・改善に役立つ

ファクタリングは財務の維持・改善に役立ちます。これも大きなメリットになるでしょう。
銀行や貸金業者から融資を受けた場合、借入金は他人資本のため、自己資本比率の低下を招きます。
自己資本比率の低下は財務悪化を意味します。
これに対し、ファクタリングは資産の売却ですから、調達した資金は他人資本ではなく、財務も悪化しません。
つまり、ファクタリングは財務を維持しながら資金を調達できるのです。
また、ファクタリングはオフバランス化にも役立ちます。
オフバランス化とは、バランスシートから資産項目を減らす(オフ化する)ことによって、財務健全性を高めることです。
色々な資産が対象となりますが、流動資産である売掛金を減らすこともオフバランス化につながります。
例えば、回収サイトが長い売掛金をファクタリングによって早期回収すれば、その分だけ売掛金を減らすことができます。
回収サイトが長く、資金繰り負担が大きい売掛金を除くのですから、財務健全性が高まることは一目瞭然です。
コロナ以降、企業を取り巻く環境は日に日に厳しさを増しており、2024年も厳しい状況が続くと考えられます。
経済のさらなる悪化に備えるため、またいずれ来るべき経済回復の波に乗り遅れないためにも、ファクタリングを財務維持・改善に役立てましょう。

10. 銀行の評価が悪化しない

ここまで挙げたファクタリングのメリットに、以下のようなメリットがありました。
「銀行融資を断られた会社でも調達できる」
「無担保・無保証で利用できる」
「最短即日で資金調達できる」
これをみて、「ビジネスローンも同じメリットがある」と感じた人も多いことでしょう。
確かに、ビジネスローンは銀行融資を断られた会社でも調達できる可能性があります。
不動産担保専門のビジネスローンもありますが、基本的には無担保・無保証です。
消費者金融系のビジネスローンには、即日融資を謳うものが少なくありません。
しかし、ファクタリングとビジネスローンを比較した場合、ビジネスローンには大きな欠点があります。
それは、ビジネスローンで借りているだけで銀行の評価が悪化することです。
実際、ビジネスローンから借り入れている会社は、銀行の融資審査に通りにくくなります。
2024年以降、このような傾向はさらに強くなると考えられます。
これまでの銀行融資では、担保余力や資産内容、これまでの借入状況などが大きな判断材料となっていました。
しかし近年、銀行の企業評価は将来のキャッシュフローや財務健全性を重視する方法に変わってきています。
ビジネスローンからの借入れは金利が高く、キャッシュフローを圧迫する要因となります。
また、銀行から借りられない場合にビジネスローンを利用するのですから、財務健全性も低く評価される可能性が高いです。
この点で、ファクタリングは非常に優れています。
ファクタリングは高金利の借り入れではなく、ビジネスローンのように銀行の評価が悪化しません。
上述の通り、ファクタリングはキャッシュフローの改善、オフバランス化による財務改善にも役立ちます。
つまり、銀行評価が悪化するどころか、むしろファクタリングによって評価の改善が期待できるのです。
ビジネスローンに依存している会社は、2024年を機にファクタリングへのシフトをおすすめします。

ファクタリングの課題

次に、2024年におけるファクタリングの課題をみていきましょう。

違法業者の問題

最初に考えたいのは、違法業者の存在です。
ここでいう違法業者とは、表面的にはファクタリングを謳っているものの、実質的には貸付けとみなされる業者のことです。
具体的には、「償還請求権あり」「担保・保証あり」などによって貸付けとみなされます。
金融庁では違法業者を「ファクタリングを装って違法な貸付けを行う業者」と表現しており、「違法業者=ヤミ金業者」と断定しています。
業務内容から「ファクタリングではなく貸付け」とみなされた場合、貸金業者として法規制を守らねばなりません。
つまり、貸金三法といわれる貸金業法・出資法・利息制限法の3つを全て守る必要があるのです。
金融庁は、貸金業者に対して登録制を採っていますが、ファクタリングを装っている業者が、わざわざ厳しい基準をクリアして登録するはずがありません。
したがって、違法業者は金融庁の登録を受けておらず、貸金業法違反(無登録営業)により摘発対象となります。
また、貸付けの金利は融資額によって年利15~20%に規制されています。
ファクタリングの手数料を年利換算すると、この上限を超える場合がほとんどです。
このため、利息制限法・出資法にも違反しています。
ファクタリング業界に違法業者が紛れ込んでいることは、現在でも変わりません。
徐々に改善されているものの、ファクタリング業を規制する法律がない以上やむを得ないことです。
したがって、ファクタリングを活用するには違法業者を避けることが前提となります。
今後も引き続き、違法業者には注意してください。

業者数増加の問題

2024年以降のファクタリング市場の予測でも解説した通り、今後もファクタリング市場は成長し続けます。
年間の平均成長率は7.54%、2023年から2027年にかけて約1.5倍に拡大する見通しです。
市場が拡大する時期にはビジネスチャンスも生まれるため、多数の業者が新規に参入します。
実際に、2023年までに多くのファクタリング会社が新規開業し、大手金融グループの参入も増えてきました。
基本的には、業者の増加は悪いことではありません。
業者が増加すれば競争が激しくなり、サービスが洗練され、利用しやすくなるからです。
しかし同時に、新規開業の業者の中に違法業者が紛れ込んでいたり、サービスが悪い業者に遭遇する危険もあります。
どのファクタリング会社を選べば良いのか分からなくなるのも問題です。
ファクタリングの効果を高めるには、自社に適したファクタリング会社を選ぶことが欠かせません。
同じ売掛金をファクタリングした場合でも、業者によって条件が大きく変わることも珍しくないのです。
2024年以降も業者の数は増え続けるはずです。
違法業者やサービスの悪い業者を避けるためにも、少なくとも業歴5年以上の優良業者に限定してファクタリング会社を選ぶなどの工夫が求められます。

ファクタリングの注意点

ファクタリングにはたくさんのメリットがある反面、注意点もあります。
今後は、ファクタリングの注意点とどのように向かい合うべきでしょうか。
現状のファクタリング事情を踏まえて解説します。

1.調達できるとは限らない

ファクタリングを初めて利用する会社では、「ファクタリングなら必ず調達できる」「ファクタリングは審査不要」などと勘違いしているケースが少なくありません。
確かに、メリットにもある通りファクタリングは調達のハードルが低いです。
しかし、ファクタリングにも審査があり、審査に落ちた場合には資金を調達できません。
ポイントは、融資とファクタリングの審査基準が異なる点です。
融資では融資先を審査するのに対し、ファクタリングでは売掛先を審査します。
これにより、融資の審査に落ちた会社でも、売掛先に問題がなければ資金を調達できるのです。
逆に言えば、利用会社に問題がなくとも、売掛先に問題があればファクタリングの審査には通りません。
融資の審査に通っても、ファクタリングの審査には落ちることもあり得るのです。
これはファクタリングの仕組みによるものですから、2024年以降も変わらないデメリットといえます。
確実に資金調達するためにも、信用のある売掛先の売掛金を選ぶこと、柔軟に審査してくれるファクタリング会社を選ぶことが大切です。

2.高額のファクタリングに注意

ファクタリング会社によって、利用額の設定は様々です。
少額ファクタリングは、業者側の採算の関係から利用条件が悪化しやすいと言われますが、個人事業主メインのファクタリングを利用したり、少額ファクタリングに特化している業者を選んだりすることで対応できます。
注意したいのは高額のファクタリングです。
利用額の限度を「数億円まで」「上限なし」などに設定しているファクタリング会社もありますが、利用額が大きいほどハードルが上がると考えてください。
買取額が大きいほど、回収不能に陥った際の損失が大きくなるため、ファクタリング会社は慎重に審査せざるを得ません。
また、買取資金の準備がなければ、ファクタリング会社自身が何らかの方法で資金を調達したうえで買い取る必要があります。
つまり、高額のファクタリングは審査の難易度が高くなり、資金調達スピードも鈍くなるのです。
高額のファクタリングを希望する場合には、審査能力が高く、資金量も豊富なファクタリング会社を利用するのがポイントです。
今後はファクタリング業界がますます発展し、新たに大手の参入も考えられます。
大手グループ系列のファクタリング会社は、資金量が豊富なため、高額のファクタリングに対応できるケースが多いです。
ただし、新規事業としてファクタリングに参入するのですから、大手とはいえ対応力や審査能力には不安があります。
多額の資金調達が必要になった場合には、銀行融資に加えてファクタリングでの調達も検討してみてください。

3.手数料は徐々に安く

ファクタリングは、手数料の高さが大きなデメリットといわれます。
もちろん、銀行融資と比べると大幅に高い水準です。
しかし、最近ではファクタリングの手数料は徐々に安くなってきています。
実際に、手数料が安いファクタリング会社とファクタリング方式を選ぶことで、手数料をかなり抑えることができます。
「2社間ファクタリング:相場は額面金額の10~30%」
「3社間ファクタリング:相場は額面金額の1~10%」
「オンラインファクタリング:相場は額面金額の10%以下」
手数料が安いファクタリング会社を選ぶことによって、手数料を相場の半分以下に抑えることも可能です。
業者間の競争やオンラインファクタリングの普及によって、今後も手数料は下がっていくと考えられます。
初めてファクタリングを利用する方は、「ファクタリングは手数料が高くて危険」という先入観を抱くよりも、「手数料が安いファクタリング会社もある」と考えた方が良いでしょう。

4.債権譲渡登記の問題は緩和

既に述べた通り、2社間ファクタリングには債権譲渡登記がつきものです。
これに伴い、10万円程度の登記コストが発生したり、登記情報から売掛先に知られたりするリスクがありました。
しかし、2024年には債権譲渡登記の問題も大幅に緩和されるでしょう。
なぜならば、債権譲渡登記不要のオンラインファクタリングが普及すると考えられるためです。
裏を返せば、オンライン化に積極的に取り組むことによって、ファクタリング会社はオンラインの需要を取り込むことができます。
これにより、2024年以降は以下のような流れが予測されます。
「優良業者でオンラインファクタリングの導入が相次ぐ」
「オンライン専業のファクタリングサービスの新規参入が増える」
「技術的・資金的な問題によりオンラインに対応できない業者が淘汰される」
「相対的にオンラインファクタリングの利用率が高まる」
「オンラインファクタリングが主流になっていく」
オンラインファクタリングが主流になれば、「債権譲渡登記が必要」というデメリットはなくなるでしょう。

まとめ

ファクタリング市場の動向、それを踏まえたメリットと注意点について解説しました。
今後もファクタリング市場は成長すると予測されています。
成長に伴い、利用会社が享受できるメリットは高まり、注意点は緩和されていくことでしょう。
ただし、新規参入の業者を利用することにより、思わぬデメリットを被ることも考えられます。