インボイス制度で振込手数料は誰が負担する?処理方法と注意点を解説

2026年10月20日

インボイス制度の導入後、請求金額から振込手数料が差し引かれて入金される取引について、どのように処理すればよいのか分からないというケースが増えています。

特に、売り手側が請求した金額よりも少ない金額が入金された場合、振込手数料をどちらが負担するのか、インボイスを発行する必要があるのか、仕入税額控除を受けられるのかなど、確認すべきポイントがあります。

振込手数料の負担については、単純に「支払う側が負担する」「受け取る側が負担する」と決まっているわけではなく、取引条件や当事者間の合意によって決まります。

また、インボイス制度では、振込手数料を売上代金から差し引く処理が、売上値引きに該当するのか、買い手側が金融機関へ支払った手数料として処理するのかによって、必要な対応が変わります。

この記事では、インボイス制度における振込手数料の負担、売り手側と買い手側の処理方法、仕入税額控除を受けるための対応、注意点について詳しく解説します。

インボイス制度で振込手数料の負担者はどう決まる

振込手数料をどちらが負担するかについて、インボイス制度そのものが一律に決めているわけではありません。

基本的には、売り手と買い手の契約や取引条件によって負担者を決めます。

たとえば、商品代金10万円を請求し、買い手が振込手数料を負担する契約であれば、買い手が銀行などへ振込手数料を支払います。

一方、売り手が振込手数料を負担するという取り決めの場合は、売り手側の負担となります。

ただし、取引上の力関係を利用して、一方的に振込手数料を相手へ負担させる場合には、独占禁止法や下請法などとの関係にも注意が必要です。

請求額から振込手数料を差し引いて入金するケース

実務でよくあるのが、売り手が10万円を請求したにもかかわらず、買い手から9万9,500円しか入金されないケースです。

この場合、差額500円が振込手数料として差し引かれている可能性があります。

売り手側では、売掛金10万円を回収したものの、実際の入金額は9万9,500円となるため、差額500円について会計処理が必要になります。

この差額をどのように処理するかによって、インボイス制度上の対応も変わります。

振込手数料を売上値引きとして処理する場合

売り手側が振込手数料相当額を負担し、請求額からその金額を差し引く場合、実質的に売上値引きとして処理する方法があります。

たとえば、10万円の売掛金について500円を差し引き、9万9,500円を回収したとします。

この場合、500円について売上値引きとして処理することが考えられます。

売上に係る対価の返還等に該当する場合、インボイス制度では適格返還請求書に関するルールが関係します。

ただし、税込1万円未満の売上に係る対価の返還等については、適格返還請求書の交付義務が免除される特例があります。

振込手数料相当額の差額が少額の場合には、この少額返還の特例が関係する可能性があります。

買い手が振込手数料を負担する場合

買い手側が銀行などへ振込手数料を支払う場合、買い手と金融機関との間で手数料の支払いが発生します。

この場合、売り手から振込手数料についてインボイスを受け取るわけではありません。

金融機関から適格請求書の交付を受けることで、原則として仕入税額控除を検討できます。

ただし、ATMや金融機関のサービスを利用した場合など、一定の取引については適格請求書の保存が不要となる「帳簿のみ保存」の特例が適用できる場合があります。

ATMの振込手数料には特例がある

金融機関のATMを利用して振込を行った場合、一定の条件を満たせば、インボイスの保存がなくても帳簿のみの保存によって仕入税額控除を受けられる場合があります。

これは、一定の金融機関が行うATMによる振込手数料などについて、適格請求書の交付義務が免除される取引に該当する場合があるためです。

ただし、すべてのATM取引が無条件に対象になるわけではありません。

取引内容や利用したサービスなどを確認し、帳簿に必要事項を記載して保存することが重要です。

売り手側が振込手数料を負担するときの注意点

売り手側が振込手数料を負担する場合、請求額と実際の入金額が一致しなくなるため、経理処理を明確にしておく必要があります。

たとえば、毎月100万円を請求している取引先から、毎回振込手数料を差し引かれて入金される場合があります。

この場合、売掛金の消込処理を行う際に、差額をどのような勘定科目・税区分で処理するのかをあらかじめ決めておくと、処理がスムーズになります。

振込手数料を買い手が負担する場合の注意点

買い手が振込手数料を負担する場合には、原則として請求金額をそのまま売り手へ支払うことになります。

たとえば、10万円の商品代金に対して500円の振込手数料が発生した場合、買い手は10万円を売り手へ支払い、別途500円を金融機関へ支払うという形です。

この場合、売り手側では10万円の売掛金を全額回収できます。

買い手側では、商品代金と振込手数料を分けて処理することになります。

振込手数料を差し引く場合は取引条件を確認する

振込手数料を請求額から差し引く場合には、取引先との契約内容を確認することが重要です。

契約上は買い手負担となっているにもかかわらず、買い手が一方的に請求額から振込手数料を差し引いている場合、単なる経理処理の問題では済まない可能性があります。

特に、継続的な取引において相手の同意なく代金を減額すると、独占禁止法や下請法などの問題につながる可能性があります。

インボイス制度への対応だけでなく、取引条件そのものを確認することが大切です。

インボイス制度で振込手数料を処理するときのポイント

振込手数料を処理するときは、まず誰が金融機関へ手数料を支払っているのかを確認しましょう。

次に、売り手側が手数料相当額を負担しているのか、それとも買い手側が負担しているのかを確認します。

売上代金から差し引かれている場合は、売上値引きとして扱うのか、売り手側の支払手数料として扱うのかなど、実際の取引内容に応じた処理が必要です。

インボイス制度では、取引の実態に応じて適格請求書や適格返還請求書の保存などが必要になる場合があるため、単純に差額を経費として処理すればよいとは限りません。

振込手数料と仕入税額控除

買い手側が振込手数料を負担する場合、金融機関から受けたサービスについて仕入税額控除を受けられる可能性があります。

ただし、仕入税額控除を受けるためには、原則として帳簿と適格請求書等の保存が必要です。

一方で、一定の金融機関によるATMを利用した振込手数料などについては、帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けられる場合があります。

そのため、実際の取引内容に応じてインボイス制度上の保存要件を確認する必要があります。

売上値引きと振込手数料を区別する

インボイス制度に対応するうえでは、「振込手数料」と「売上値引き」を区別することが重要です。

たとえば、取引先が請求金額から500円を差し引いた場合、その500円が本当に銀行への振込手数料なのか、それとも取引先との合意による値引きなのかによって会計処理が変わります。

取引の実態を確認せず、すべてを振込手数料として処理すると、インボイス制度上の処理を誤る可能性があります。

振込手数料をめぐるトラブルを防ぐ方法

振込手数料に関するトラブルを防ぐためには、契約段階で負担者を明確にしておくことが重要です。

「振込手数料は買い手負担」「振込手数料は売り手負担」など、具体的な条件を契約書や発注書などで確認できるようにしておくと、後から認識の違いが生じにくくなります。

また、取引先から請求金額と異なる金額が入金された場合には、差額の理由を確認することも大切です。

インボイス制度への対応と振込手数料の関係

インボイス制度では、振込手数料のような少額の取引についても、仕入税額控除を受けるための保存要件などを確認する必要があります。

一方で、一定の少額な返還について適格返還請求書の交付が不要となる特例や、一定の金融機関取引について帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる特例があります。

そのため、振込手数料については「必ずインボイスを発行してもらう必要がある」と考えるのではなく、どのような取引に該当するのかを確認することが重要です。

まとめ

インボイス制度における振込手数料の負担者は、インボイス制度によって一律に決められているわけではなく、基本的には取引条件や当事者間の合意によって決まります。

売り手が振込手数料を負担する場合、請求額から手数料相当額を差し引いて入金するケースがあります。この場合、差額を売上値引きとして処理するのか、別の方法で処理するのかを取引の実態に応じて判断する必要があります。

一方、買い手が金融機関へ振込手数料を支払う場合は、金融機関から受けたサービスに対する支払いとして処理します。一定の金融機関取引では、適格請求書の保存が不要となり、帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けられる特例もあります。

また、請求額から一方的に振込手数料を差し引くことは、インボイス制度だけでなく、独占禁止法や下請法などの観点からも注意が必要です。

振込手数料を適切に処理するためには、誰が手数料を負担するのか、請求額から差し引くのか、売上値引きに該当するのかなどを明確にし、取引先との契約内容に沿って処理することが重要です。