ファクタリング契約時の利用規約と注意点について詳しく解説
2025年1月6日
この記事では、ファクタリングで資金調達するときの注意点や、契約書で必ず確認するべき項目について解説していきます。
ファクタリングで資金調達するときには、契約書の内容が大変重要です。
なぜならファクタリングは売掛債権を売却する資金調達の手段であるのにも関わらず、契約書の内容がお金を借りるときの金銭消費貸借契約であれば後々トラブルが起きてしまうからです。
ファクタリングの契約書に利用者が不利になる項目や内容が含まれていないか、この記事を参考に署名する前に必ず確認するようにしましょう。
ファクタリングの契約形態
ファクタリングとは、企業や個人事業主が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、本来売掛先から入金される予定よりも前に現金化できるサービスです。
ファクタリング会社が売掛債権を買い取る契約となるため、資金調達の手段ではあるものの借入れではなく、「売買契約」に分類されます。
金融機関からお金を借りるときには「金銭消費貸借契約書」で契約を結ぶことになりますが、ファクタリングではこれとは異なる契約書で契約を結びます。
ファクタリング契約書の確認必須項目
ファクタリングで資金調達するときに、契約締結前に必ず確認しておきたいのがファクタリング契約書の内容です。
ファクタリング契約を結ぶときには、ファクタリング会社の担当者に要点伝えてもらい、疑問点など解決しながら進めていくことが一般的です。
しかし事前にファクタリング契約書に記載される内容を理解しておこうとすれば、インターネット上の契約書のテンプレートなどを参考に、それぞれの条項について理解を深めていくしかありません。
ただ、ファクタリング契約書はファクタリング会社によって異なる上に、専門用語などが記載されていると理解するまで時間がかかってしまい、間違ったとらえ方をしてしまう可能性もあります。
そこで、ほんとんどのファクタリング契約書で記載されている項目9つを紹介します。
1.債権譲渡通知の有無
2.債権譲渡登記の有無
3.償還請求権の有無
4.発生する売買手数料
5.担保設定の有無
6.報告義務
7.損害賠償・違約金
8.契約の解除
9.契約期間と解約方法
それぞれの項目で何を確認するべきか、不利な契約を結ぶことがないように理解しておきましょう。
1.債権譲渡通知の有無
ファクタリング契約で行う売掛先に対する「債権譲渡通知」とは、売掛債権を譲渡する債権の債務者(売掛先)に対して、債権者(債権の持ち主)が利用者からファクタリング会社に変わった事実を知らせることです。
3社間ファクタリングでは、売掛金は売掛先からファクタリング会社に対し、直接支払われます。
そのためファクタリング会社は売掛先から売掛金を回収することになるため、あとでトラブルにならないためにも債権者が変わったことを認めてもらう必要があります。
しかし2社間ファクタリングの場合、売掛金は利用者が売掛先から回収し、回収した資金を利用者からファクタリング会社に渡します。
そのため債権譲渡通知を売掛先に送ることも承諾を得ることも必要ありませんが、もしも2社間ファクタリングなのに契約書に債権譲渡通知項目が入っていると、売掛先に債権を譲渡したことを知られてしまい2社間ファクタリングを選ぶ意味がありません。
2社間ファクタリングで契約するときには、債権譲渡通知の有無は必ず確認するようにしましょう。
2.債権譲渡登記の有無
3社間ファクタリングでは、債権譲渡通知により債権者が変更されたことを売掛先に知らせるため、ファクタリング会社は新たな権利者になったことを主張できます。
しかし2社間ファクタリングの場合、売掛先には売掛債権の譲渡の事実は知らせず、売掛金の回収も利用者が行います。
そのため、利用者が売掛先から売掛金を回収しているのにも関わらず、そのお金を使い込んでしまったり流用したりといったことが起きないとは限りません。
ファクタリング会社にとって、2社間ファクタリングは買い取った債権が貸し倒れになってしまうリスクの高い契約といえますが、そのリスクを回避するために行われるのが「債権譲渡登記」です。
「債権譲渡登記」とは、第三者に対し債権の譲渡があったことを主張(証明)するために、債権譲渡登記所(法務局)で行う登記制度を指しています。
債権を譲り受けた新たな債権者が、債権を譲渡された事実を法的に公示することにより、他に債権者であると主張する第三者などがあらわれたときにも主張することができます。
譲渡された売掛債権の権利関係をはっきりさせるため、2社間ファクタリングでは債権譲渡登記を要求されることもありますが、登記にかかる費用は利用者が負担しなければなりません。
さらに登記情報のため、誰でも法務局で閲覧することができるようになり、売掛先や取引金融機関などが確認するとファクタリングの利用を知られてしまいます。
すべてのファクタリング会社が債権譲渡登記を要求するわけではないため、事前に登記の必要性を確認しておくようにしましょう。
3.償還請求権の有無
ファクタリング会社に売掛債権を譲渡した後で、もしも売掛先が倒産してしまったら、売掛金は回収できなくなりファクタリング会社は貸し倒れの債権を抱えることになってしまいます。
そこで、ファクタリング会社が利用者に対し、売掛先から資金を回収できなかったときには、利用者へ弁済するように請求できる権利が「償還請求権」です。
もしもファクタリング契約書が償還請求権「あり」の契約だった場合、その契約は「リコース契約」となり、利用者は売掛先の倒産リスクまで背負うことになってしまいます。
償還請求権「なし」の契約なら「ノンリコース契約」となり、万一売掛先の倒産などで売掛金の回収ができなくなっても、利用者はその責任を負うことはありません。
リコース契約によるファクタリングは、利用者にとって不利な契約となるだけでなく、実質的には売掛債権を担保にした融資契約となるため、お金を借りる契約となります。
万一、貸し倒れという不測の事態に陥ったとき、償還請求権の有無によって利用者が負う責任は大きく変わってくるため、必ず確認するようにしてください。
4.売買手数料
ファクタリング契約でファクタリング会社に支払う売買手数料は、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングのどちらで契約するのか、選んだファクタリング会社によって異なります。
ファクタリング売買手数料の一般的な相場は、2社間・3社間それぞれ次のとおりです。
・2社間ファクタリング 10〜20%
・3社間ファクタリング 1〜9%
ファクタリング契約においては、売買手数料だけでなく印紙代などが実費で必要となるため、事前にどのくらいの費用がかかるか必要しておくようにしましょう。
5.担保設定の有無
ファクタリングはお金を借りて資金を調達するわけではないため、担保を差し入れることも保証人を設定することも必要ありません。
しかし、ファクタリング契約書なのに担保や保証人の記載があった場合には、売掛先から資金の回収ができないときに
保証人に弁済義務が発生したり担保として差し入れた不動産などを取られてしまったりすることになります。
通常、ファクタリングで担保や保証人を求められることはないため、もしファクタリング契約書の中に保証人や担保の条項があったときには契約を中止し、別のファクタリング会社に相談するようにしてください。
6.報告義務
売掛先に不穏の動きなどがあった場合、回収できるはずだった売掛金が入金されなくなる可能性もありますが、ファクタリング会社は売掛先と接触する機会もないためその不穏な動きに気がつきにくい状態です。
売掛先の情報については、ファクタリング会社よりも利用者のほうが入手しやすい立場にあるため、もしも不穏な動きなどがあったときにはその状況をファクタリング会社に報告してあげたほうがよいでしょう。
ファクタリング契約書に報告義務が記載されている場合には、利用者はファクタリング会社に、売掛先の状況について報告する義務が生じます。
報告義務を怠ったことによってファクタリング会社が損害を受けることになれば、利用者はファクタリング会社から損害賠償請求されることになりますので、必ず報告義務は守るようにしてください。
7.損害賠償・違約金
ファクタリングは、契約に関係するすべての者の信頼によって成り立つ取引です。
ファクタリング契約書に記載されている義務を怠った場合、その代償を支払う必要があるのか、その場合にはいくら払わなければならないのか、損害賠償や違約金についても確認しておきましょう。
損害賠償や違約金を負担する範囲が極端に広いときや、発生する損害賠償額や違約金が高額なときには、不利な契約となるため見送ったほうが賢明といえます。
8.契約の解除
ファクタリング契約中、利用者に重大な契約違反があったときには、その契約は強制的に解除されます。
すでに現金化した資金を受け取っているときには返還することが必要になりますが、どのような行為が重大な契約違反に該当するのか、契約書に記載されている内容を確認しておきましょう。
9.契約期間と解約方法
ファクタリングを使った資金調達は、一度のみ利用するケースもあれば、数か月に渡り継続して利用することを前提とした契約を結ぶこともあります。
数か月利用するのは、少しずつ対象とする売掛金額を少なくすることで、資金繰りを改善させることができるからです。
しかし希望していない契約期間になっている場合や、契約を中断できない契約になっていないか確認が必要です。
自動更新になるのか、解約する場合にはどうすればよいのかなども確認しておきましょう。
まとめ
ファクタリングを使って資金調達するときには、ファクタリング会社との間で結ぶ契約書の内容が大変重要です。
売掛債権をファクタリング会社に売却し、現金化することで資金を調達できる方法がファクタリングですが、契約書が融資を受けるときの契約内容になっていれば、後で様々な責任を負うことになったり想定していなかったコストが発生したりとトラブルが起きてしまいます。
そのため、ファクタリングで資金調達するときには、お伝えした項目や注意点を必ず確認するようにし、もしも相手が悪徳な業者と疑われるときには契約を中止するようにしましょう。
一般的なファクタリング会社であっても、契約書に利用者が不利になる項目や内容が含まれていないか確認し、不明な点や疑問点は担当者に質問しながら契約を進めていくことが必要です。