建設業のファクタリングは最適? 元請けから入金がない時

2024年1月22日

売掛債権を売却することでスピーディーに資金を調達できる資金繰手段のことをファクタリングといいます。様々な業種がある中で最も資金繰りが厳しい業種の1つと言われている建設業で多く利用されています。
ファクタリングは比較的最近になって広まった金融取引です。そのため詳しくは知らないという方や、悪いイメージを持っているという方もいるでしょう。
本記事ではファクタリングが建設業によく利用されている理由や、ファクタリング会社を選ぶ際に知っておくべきポイント、資金繰りの改善に役立つ情報などについて解説します。

建設業がファクタリング会社を選ぶ際のポイント

ここでは建設業がファクタリング会社を選ぶ際にトラブルや損を回避するために注意すべき点を5つ解説します。

現金化までのスピード

ファクタリングの大きなメリットは、現金化するスピードが早いところにあります。これが早急に資金を必要とする場面が多い中小企業にファクタリングの利用が多い理由の1つです。急いで資金が必要なのにもかかわらず、審査が進まず入金までに時間がかかっていては、ファクタリングを利用する意味がありません。

最短即日、平均しても2〜3日で対応できるファクタリング会社が一般的であることから、審査から現金調達までスムーズな取引ができる企業を選ぶといいでしょう。さらにスピードを重視する場合は、24時間申し込みを受け付けているオンラインファクタリングを利用するのも手です。オンライファクタリングには手続きが簡略、手数料が安い、書類郵送の手間や費用・時間が不要といったメリットがあります。

手数料の低さ

ファクタリングは利用する際手数料がかかります。取引金額が大きくなると手数料も高額になるため、なるべく低い手数料で利用できるところを選ぶのがよいでしょう。またファクタリングの種類によっても手数料は大きく異なります。ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがあり、2社間ファクタリングは自社とファクタリング会社が直接取引をする方法です。売掛先から了承を得る必要がないため売掛先に知られずに利用することが可能です。

3社間ファクタリングは、自社とファクタリング会社と売掛先で取引する方法です。一般的に2社間ファクタリングの手数料は10~20%、3社間ファクタリングの手数料は1~5%が相場となっています。2社間ファクタリングのほうが手数料が高いのはファクタリング会社が負う未回収リスクが高いためです。

買取限度額の高さ

民間のファクタリング会社の多くは、買取限度額を設定しています。小規模なファクタリング会社だと数百万円程度の資本金で運営していることが多く買取限度額は1,000万円程度までが限界です。しかし銀行系のファクタリング会社は数十億円規模の資本金で運営しているところもあり、民間のファクタリング会社では扱えないような億単位の大口取引を得意としています。

銀行系のファクタリング会社はおしなべて審査が厳しいというデメリットがありますが、手数料が低くて信頼性が担保されているというメリットがあります。売掛金があまりに大きい場合は、銀行傘下のファクタリング会社や銀行のファクタリングなど大手を利用するとよいでしょう。ただし大手銀行系は審査時間が長い傾向があるため急な資金調達には不向きな場合もあります。

業者の信頼度

ファクタリングは比較的新しい資金調達方法であるため、法律などの整備が整っていない部分もあります。中には高額な手数料を請求したり、ファクタリングを装って貸し付けを行ったりする悪徳業者も存在するのも事実です。ファクタリング業を行うためには財務局長または都道府県知事の登録を受ける必要があるため、登録を受けている業者なのかを必ず確認するといいでしょう。

他にもホームページに会社情報が正しく記載されているか、電話番号はつながるか、架空の記載がないかなども法務局で商業登記簿謄本を閲覧するなどして事前に確認しておくと安心です。信頼度を判断するためには企業の実績を確認するのも重要です。建設業における実績がある企業なのか、資金力のある企業なのかなども慎重に確認しておくといいでしょう。

2社間ファクタリングが可能か

先にも触れたようにファクタリングには大きく分けて2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの2種類が存在します。前者では利用会社とファクタリング会社の2社間のみで取引を行うため、原則として売掛先にファクタリングの利用が知られることはありません。またファクタリング会社が売掛債権を利用会社から直接買い取るため現金化のスピードが早いのも特徴です。

しかし前者よりも未回収リスクが高いために手数料が高くなる点がネックです。一方後者では、2社間に売掛先を加えた3社間の合意の下で取引が行われます。売掛先にファクタリングの利用が知られてしまう点はネックですが、手数料は前者と比較して低い傾向にあります。売掛先にファクタリングの利用を伏せたくて現金化を急いでいる場合には2社間ファクタリングを選んだほうがいいでしょう。

建設業の資金調達に関する問題点

建設業は一般の業種とは異なる点が多いため資金繰りの難易度や手順も異なるものとなっています。ここでは建設業の資金調達に関する問題点について3つ解説します。

工事着手から入金までの期間が長い

手形の振出日から支払期日までの日数を「手形サイト」、会社の締め日から支払期日までの日数を「支払いサイト」といいます。中小企業庁によると、建設機械において発注側企業の39%が手形サイトを120日以内としています。さらに建設機械はほかの業種と比べて120日超の割合も高いことが特徴です。手形サイトが長くなればなるほど、実際に現金を手にするまでの時間も長くなります。

例えば「月末締めの翌月末払い」の会社が売掛金の支払いに手形サイト120日の手形を使用する場合、支払いサイトは150日(30日+120日)になります。つまり当月の売掛金が現金化されるのは150日後になるわけです。建設物の規模によっては着工から入金までに半年~1年、もしくは数年以上かかるケースもあります。

材料や外注費などは立て替えになる

建設業は請負契約がほとんどであるため、仕事を完成・納品させてはじめて報酬を受け取る権利が生じます。そのため完工後にまとめて入金としている場合が多く、先に支払う必要がある材料費や専門業者への外注費、重機のリース料などは、自社で立て替えなければいけません。

その反面、売掛金の入金は数か月先という場合が多いため、会社の資金繰りが厳しい状況に陥りやすいといえます。支払いが先行する分に関しては着手金として前受けで受け取れる場合もありますが、それでも不足した分は自己資金で立て替える必要があります。結果として受注はあるのに工事を完成させる前に資金が不足してしまうという事態が起きるわけです。

建設業は請負契約が当たり前

契約の形態としては請負契約と委任契約の2種類がありますが、建設業では請負契約が一般的な契約形態です。請負契約とは請負人がある仕事を完成することを約束し、発注者がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束するものです。請負人は仕事を完成させる義務があり、完成しなければ報酬は請求できません。請負人が仕事を完成させない場合や完成した仕事に瑕疵があった場合は、発注者は契約を解除したり請負人に損害賠償を請求することもできます。

完成しなければ資金が入って来ないため、請負人である建設会社にしてみれば工事費用を自社で負担しなければならない時間が長く、資金繰りが厳しい時期が続くことが問題として指摘できます。これは下請けから孫請けまで多重請負をしている場合では特に顕著となる問題です。

ファクタリングが建設業によく利用されている理由

ここでは建設業でファクタリングが利用されることが多い理由について5つ解説します。

銀行融資より早く資金調達ができる

銀行融資では、融資を受けるまでに早くても1週間、長い場合だと3ヶ月程度かかってしまうこともあります。そのため突然資金が必要になった場合などには対応できません。しかしファクタリングでは最短即日で現金化が可能です。銀行融資のように自社の信用度調査を行わず保証人や担保も不要なため審査に時間が掛からず、スピーディーな取引が可能です。

最近では対面契約の他にオンライン契約にも対応しているファクタリング会社も増えつつあり、よりスムーズかつスピーディーに資金調達しやすくなっています。また工事完成までの一時的な資金が必要なだけで、借り入れを行うほど長期間困っているわけではない場合も、ファクタリングはつなぎの資金として利用しやすいといえます。

企業の評価に影響しない

銀行で融資を受ける際には、企業の評価が重視されます。もしも銀行に自社の業績が芳しくないという印象を与えてしまった場合、今後の融資が受けられなくなってしまう可能性があります。しかしファクタリングで調達した資金は借り入れではないため、銀行融資と違って負債には計上されず、貸借対照表上では資産に計上される売掛金が減って現金が増えるだけです。

対外的に見ても負債が増えたわけではないtため、経営状況を懸念される心配もなく、企業の評価が下がることもありません。国や地方団体などが発注する公共工事を受注しようとする場合に受けなければいけない経営事項審査(入札審査)への影響もなく、社会的な信用力に影響が出ることもありません。各金融機関が照会しているJICCやCICなどの信用情報機関に記録を残すことなく、資金調達ができます。

資金繰りの不安が解消され案件を受けやすくなる

建設業は請負契約が基本ため、仕事を完成させてから入金されるまでに時間がかかり、結果として資金繰りを悪化させてしまうことがあります。また工事を行うための材料費や外注費は立て替えになる場合が多いため、多額の資金が必要になります。そのため資金力がない会社は、次の案件の依頼が来たとしても仕事を受けづらい状況になってしまうのです。

その点、ファクタリングは後に入金される予定の金額を事前に現金化できる仕組みであるため、ファクタリングで調達した資金を新しい仕事の費用に回すことができます。ファクタリングを使った売掛債権の早期現金化で支出に応じた収入が確保でき、経営基盤の安定化にも貢献します。

審査が通りやすい

銀行融資の場合は融資を受ける側の信用度が重視され、融資する金額に対して返済能力はあるか、返済債務が残っているか、複数社から借り入れているかなど自社の財務内容を深く審査されます。しかしファクタリングの場合は自社の信用度ではなく売掛先の信用度が重視されるため、審査の難易度が下がる点が利用しやすいポイントです。

通常の銀行からの借り入れの場合では、自社が赤字や債務超過になっていたり、税金の滞納などがあったりした場合は審査の際にマイナス要因になります。ファクタリングでは自社の信用度は関係ないため、たとえ自社の経営状況がよくなかったとしても売掛先の経営状態がしっかりしていれば大抵の場合審査を通過することが可能です。

元請会社が倒産してもお金を返す必要がない

工事が完遂した後に取引先の企業が倒産した場合、売掛金を回収するのは甚だしく困難、もしくは不可能です。回収できなかった売掛金のマイナス額が大きければ、自社の経営に大きな影響を与えかねません。しかしファクタリングを利用して売掛債権の現金化をした場合では、元請会社の倒産リスクを負うのはファクタリング会社になります。

一般的なファクタリング契約では一定の手数料を支払う代わりに売掛金未回収時でも保証してくれるケースが多く、元請会社が倒産した場合でも調達した資金を返還する必要はありません。何もせずに売掛先からの入金を待つよりもファクタリングを実施して資金調達をしたほうが倒産リスクを回避できるとも言えるでしょう。浮き沈みの絶えない建設業界ではファクタリング利用のメリットは大きいと言えます。

まとめ

資金繰りの条件が厳しい建設業ではファクタリングは資金繰りを改善する有効な手段の一つです。しかし手数料がかかってしまうことや、悪質な業者の存在によって売掛金を大きく目減りさせてしまうリスクがあることにも注意しなければなりません。