複数のファクタリング会社に債権譲渡するとばれる!
2023年11月8日
ファクタリングを利用したことのある方は「売掛金を買取してもらったけど別の会社にも売却してもばれないのでは?」と考えたことはありませんか?これは二重譲渡といい、詐欺罪や横領罪に該当する立派な犯罪行為です。
特に売掛先が介入しない2者間ファクタリングの場合は「ばれないだろう」と思われがちですが、取引における一連の流れの中で必ず発覚するようになっています。
この記事では二重譲渡が発覚してしまう理由や、二重譲渡にならない利用方法などを解説します。ぜひご覧ください。
ファクタリングは売掛債権を譲渡する契約
ファクタリングとは、自社が保有する売掛金を資金化するものです。売掛先から入金される前の売掛金を売却することで資金を得る方法なので、自社が保有していた債権を譲渡する形になることから、法的には債権譲渡取引として分類されます。
2つの取引方式
ファクタリングの取引方式には「3者間ファクタリング」と「2者間ファクタリング」の2つがあります。
2者間ファクタリングは売掛先に資金調達の事実を知らせる必要がなく、審査から入金までのスピードが早いのが特徴です。
3者間ファクタリングでは売掛先が契約に入ることから未回収リスクを抑えられるため、2者間よりも安い手数料で資金化が可能です。
債権譲渡登記について
2者間ファクタリングを利用する場合、債権譲渡登記が必要になることがあります。これは債権譲渡に関する情報を法務局に登記して誰でも閲覧できる状態にすることです。
これにより債権者が変わったことを誰でも確認できるようになり、権利関係でトラブルになった場合にどちらが権利者なのかを示すことができるようになります。
2者間ファクタリングでは債権譲渡登記を必須としている会社もあるので覚えておきましょう。
複数社へ譲渡する“二重譲渡”は犯罪
二重譲渡とは同じものを複数の相手に渡すことで、ファクタリングでは一つの売掛金を複数社に売却することを表しています。これは不当に資金を得ようとする横領罪や詐欺罪に該当する立派な犯罪です。
同一の債権でも見積りまではOK
資金調達の際は、必要な手数料などを含めてできるだけ自社にメリットがある会社を選びたいと思うのは当然のこと。複数社を比較してよりよい道を選択するのはビジネスの基本でもあります。
そのため、同じ債権でも複数社に見積りを依頼するのは問題ありません。
複数の売掛債権を別々のファクタリング会社へ譲渡するのはOK
同じ売掛金を複数社へ売却するのは犯罪ですが、複数ある売掛金を別々の会社に譲渡することは可能です。
1枚の請求書を3社に売却するのは違法ですが、3枚の請求書を1枚ずつ計3社へ売却するのは問題ない、とイメージすると分かりやすいでしょう。
ファクタリングの相見積りは推奨
ファクタリングにおいて相見積りを取るメリットは3つあります。
1つ目は「交渉を有利に進められる可能性がある」ことです。複数社と比較していると伝えれば、担当者から他社よりもいい条件を提示してくれる可能性があります。交渉次第では手数料を抑えられることがあるのです。
2つ目は「手数料の相場を把握できる」ことです。手数料の目安はあるものの、実際は会社や契約内容、買取金額などによって異なります。正確な金額を把握するためには、複数社から見積りを取って同条件で比較するのがおすすめです。
3つ目は「悪徳業者を見極められる」ことです。複数社と比較する中で、他社には記載されていない不審な項目が計上されていたり、手数料が法外であったりと、ちょっとした違和感に気づきやすくなります。トラブルを回避するためにも、複数社と比較することはとても重要なのです。
二重譲渡がばれるのはどんなとき?
相見積りを面倒だと思う経営者の方もいるかもしれませんが、だからといって二重譲渡を行ってはいけません。以下でご紹介するタイミングでばれてしまうため、間違っても手を染めないようにしましょう。
契約を行うとき
見積りの段階で二重譲渡の事実を見抜かれなかった場合でも、契約時には債権譲渡登記の有無を確認する場合が多いため、契約の段階で発覚してしまいます。
せっかく契約まで進んでも、すでに債権譲渡登記が設定されていると契約できなくなる可能性が高いです。
見積りを取るとき
最初に資金調達を行った際に債権譲渡登記をした場合、債権が譲渡された事実が一般開示されるので誰でも閲覧することができます。
見積りを依頼すると、簡易審査の時点で債権譲渡登記されているかどうかをチェックされる場合があるので、見積りを依頼した段階で二重譲渡が判明する可能性があります。
ただし2者間ファクタリングの場合、即日入金を謳っている会社では見積り段階で二重譲渡の確認をしない可能性があるので、このチェックをくぐりぬけてしまう可能性はゼロではありません。
売掛債権の期日がきたとき
債権譲渡登記が不要な会社と契約して資金調達ができたとしても、弁済期日を迎えると二重譲渡を隠し通すことはほぼ不可能です。
たとえばA社とB社から資金調達ができたとしても、売掛先からの入金は1社につき1度だけなので、A社への弁済を終わらせたとしてもB社への弁済に使える資金がなくなってしまいます。
このタイミングでB社は弁済できない理由について聞き取り調査を行い、すぐに登記状況を照会して発覚するのです。
内部告発・従業員からの問い合わせがあったとき
ファクタリング会社の調査だけでなく、会社内部からの告発や通報によって二重譲渡が判明する場合があります。
資金の流れを管理する経理担当者が「A社に弁済する資金はあるけどB社に弁済する資金がない」などの異変に気づいたタイミングで、二重譲渡が発覚することがあるのです。
二重譲渡がばれるとどうなる?
二重譲渡は立派な犯罪行為なので、発覚すれば刑事責任や損害賠償の支払いなどが発生します。社会的信頼を大きく崩し、金銭面でも苦しむこととなるので絶対に手を出してはいけません。
ここでは二重譲渡の事実が明るみに出ると起こりうることについて解説します。
売掛先企業に知られ、信用が失墜する
弁済ができない原因を調査する段階で、必ず売掛先にも調査のメスが入ります。ところが売掛先の経営状況は問題ないので、売掛先からしてみれば「きちんと支払ったのになぜ弁済ができないのか?」と疑われますし、そもそも資金調達の事実を伝えていなければファクタリング利用も同時に発覚してしまいます。
犯罪を犯した企業と取引を続けることは、巻き込み事故のような形で社会的な信頼を失ってしまうため、ほとんどの場合は取引の中止を求められることでしょう。
支払い不能となる
1枚の請求書を複数社に売却していた場合、どちらか一方の会社に弁済するための資金がなくなってしまうため、支払いができなくなります。
弁済ができなくなった段階で、自社や売掛先を対象とした経営状況の調査が行われるため、早期のうちに二重譲渡がばれて支払い不能となるでしょう。
詐欺罪・横領罪に問われる
二重譲渡は「詐欺罪」と「横領罪」に問われます。資金調達を終えてから二重譲渡が判明すればこれらの罪に該当するのは当然ですが、注意すべきは見積り段階で判明しても罪に問われる可能性があるということです。
見積り時点で判明した場合、まだ金銭のやりとりが行われていないため詐欺罪には当たりませんが、不正に資金を取得しようとした点で詐欺未遂罪に該当します。
事業継続が危うくなる
弁済できる資金がなく、売掛先からの信頼を失い、取引自体がなくなってしまえば資金繰りは悪化する一方です。
事業を続けられるだけの資金がなく、社会的信頼を失ってしまった企業は事業継続ができず、そのまま倒産に追い込まれることがあります。
まとめ
すでに売却済みの売掛金を他社に売却することを二重譲渡といい、詐欺罪や横領罪に該当する犯罪行為です。二重譲渡は見積りの段階や弁済のタイミングで必ず発覚するので、「ばれないだろう」と思い込んで手を出してしまうと取り返しがつかないことになります。
ファクタリングは正しく活用し、資金調達に活かすようにしましょう。