ファクタリングを提供するのに免許は不要?法的根拠から解説

2023年9月28日

ファクタリングサービスをあまり知らない方からすると、特別な免許がないと違法なのでは?と不安になるかもしれません。
そこでこちらの記事では以下のようなことについて、誰にでもわかりやすく解説します。

・ファクタリング業には免許や登録は必要なのか
・そもそもファクタリングと貸金にはどのような違いがあるのか
・ファクタリング会社で貸金業の登録が必要となるのはどのような場合か
・貸金業登録を偽装している悪質業者はどのように見抜いたら良いか

最後まで読めば、ファクタリングにおける免許や登録の必要性を正しく理解できるでしょう。

正確な知識を身につけることで不安や疑問を解消でき、また将来的なトラブルに巻き込まれるリスクも抑えられるようになります。

ファクタリング会社に免許・登録は不要

結論から言うと、正規のファクタリング業を営むには免許も登録も(現時点では)必要ありません。

基本的にファクタリングは売掛債権の買取であり、貸金には当たらないとされているのです。

金融庁の公式サイトにも以下の記載があります。

“「ファクタリング」とは、一般に、企業が取引先に対し有する売掛債権をファクタリング会社が買い取り、買い取った債権の管理・回収を自ら行う金融業務をいいます。
このようなファクタリングの法定性質は、売買契約に基づく指名債権の譲渡であり、金銭の貸し借りではないので、貸金業の登録は必要ありません。”

ファクタリングは「貸金」ではないので、当然ながら貸金業の登録は不要となるわけです。

また特にファクタリング業を行うにあたって免許制度もありません。

つまり「ファクタリング業は(法人であれば)誰でも自由に始められる」というわけです。

免許制度も登録義務もないファクタリング業界は「法律フリー(無法)状態」であり、利用者側は法律で十分には守られていない状況を理解しておかねばなりません。

さきほどの金融庁公式サイトの説明には以下のような続きがあります。

“しかしながら、この「ファクタリング」とみせかけて、実際には、高金利で金銭を貸し付けている事例(具体的には、「ファクタリング」と称し、高額な手数料を差し引いて売掛債権の買取代金を支払う(貸し付ける)一方で、当該債権の管理・回収を自ら行わず、同債権の売り主をして売掛債権を回収させた後、回収した売掛金を原資として買取代金を返済させるもの)が発生しています。”

これらの金融庁のアドバイスをわかりやすく読み解くとするならば

・現状では貸金業法のようにファクタリングを取り締まる法律はない
・しかしファクタリングを装った闇金融が横行しているので各自十分に気をつけてほしい
ということになると思います。

ここからはファクタリングにおける「登録」についての考え方を詳しく解説します。

ファクタリング業を直接的に規制する法律はない

ファクタリング取引を直接的に規制する法律は(現時点では)ありません。

直接規制する法律がないということは、「契約自由の原則」がそのまま当てはめられるということになるのです。

これが例えば「売掛債権を担保としてお金を貸す」のであれば貸金業とみなされ、貸金業法を遵守せねばなりません。

貸金業法では法定金利が年20%を上限とする等かなり厳格な取り決めがあり、利用者側はしっかりと守られているわけです。

しかしファクタリングにおいては、貸金業法の法定金利のような決まり事は特にありません。

貸金業法では法定金利を大幅に越えるような高額な手数料設定でも、ファクタリング取引であれば規制されることはないのです。

つまり貸金ではなく売掛債権の買取を専業とするのであれば、貸金業の登録が無くとも(現時点では)法的には問題ないことになります。

ただし気をつけなければならないのは「法的に問題ない」≒「法律は守ってくれない」という事実です。

一部のファクタリング業者を紹介するサイトでは、法的に問題ないことを盾に悪質ファクタリングを正当化しています。

そのようなサイトは暴利を貪る業者から「紹介手数料」を荒稼ぎしているのです。

結局はサイトの収益に目がくらんでいるだけで、利用者がどうなろうと責任を取ることは決してありません。

甘い勧誘文句に騙されずに、冷静に正しい判断を下す必要があります。

ファクタリング取引では契約書はなくとも法律的には問題ないがリスクは高い

ファクタリング取引では、契約書の作成義務はありません。

契約書の取り交わしがないからといって法律違反とはなりませんし、罰則規定もないのです。

悪質業者はこのような法律のスキマを狙い「仮契約なので契約書は発行しない」といった手口で、あえて契約書を交わさないケースがあります。

これは巧妙な罠であり、契約書を交わさないファクタリング取引は悪質業者の思うつぼになりかねません。

仮に弁護士に悪質ファクタリング案件を依頼するとしても、契約書なしでは苦戦を強いられるのは必至です。

契約書がない状態は、不安定な状況でリスクが高いことを認識しておく必要があります。

貸金業の登録業者は信用できる?

結論を先に言ってしまえば「貸金業の登録があるなら、ある程度は信頼しても良い」ということになります。

ただし、貸金業の登録があるからと言って、100%信頼できるとまでは言い切れません。

「貸金業登録の信頼性」を理解するために、貸金業登録制度について(東京都を例に)簡単に確認しておきましょう。

“貸金業を営もうとする者は、登録を受けることが必要です。(貸金業法 第3条)
また、3年ごとに登録を更新しなくては、その効力は失われます。
成年被後見人または被保佐人、登録取消後5年を経過しない者、禁錮以上の刑を受けたなどの場合には、登録は受けられません。(貸金業法 第6条)”

貸金業においては免許ではなく「登録」が必要となっています。

「貸金業務取扱主任者」の有資格者の設置義務や3年毎の登録更新など、ある程度行政サイドのチェックが入ることになります。

貸金業者として登録し、また登録を維持するにはそれなりの要件を満たさねばならないため、質の低すぎる業者を排除するための一定の役割は果たしているわけです。

提出書類の要件と登録条件を満たしているのであれば、原則として所轄行政機関は登録を妨げることはできません。

ただし形式上の要件を満たせば誰でも登録できるかと言えば、実務の現場ではそんなことはありえません。

特に貸金業においては悪質業者の撲滅に行政は力を入れていますから簡単に審査が通過できないのです。

逆に言えば貸金業登録済のファクタリング会社は、上記のようなハードルをクリアしていることになります。

無登録の業者よりも信頼度が高いのは言うまでもありません。

ファクタリングと貸金の違いとは

ファクタリングと貸金は、事業資金の調達手段という意味では似ている部分もありますが、「似て非なる」ものです。

しっかりと区別しないと、貸金業法が適用されるのか否かの判断ができなくなってしまいます。

ファクタリングと貸金の違いを正確に理解することで、ファクタリングを装った貸金である「偽装ファクタリング」を見抜けるようになります。

こちらの項目ではファクタリングと貸金の違いについて簡単にわかりやすく解説しておきましょう。

売掛債権担保融資は禁止されているわけではないが利息制限がある

じつは売掛債権を担保にした融資は、禁止されてはいません。

実際に銀行やノンバンクでも売掛債権担保融資を正規融資商品として取り扱っています。

偽装ファクタリングで問題とされるのは「利息制限を超えた法外な手数料」です。

悪質ファクタリング業者は、暴利をファクタリングというスキームを悪用してごまかしています。

ファクタリングは売掛債権の売買

繰り返しになりますが、ファクタリングの法定性質は売買契約に基づく債権の譲渡です。

本来のファクタリングでは債権譲渡後は、債権の管理&回収をファクタリング会社が行います。

ようするにファクタリングに「支払い」や「返済」という概念はフィットしないのです。

もしも感覚的に支払いや返済という雰囲気を感じるとするならば、ファクタリングを装った「事実上の貸金」である可能性が高くなります。

正規のファクタリングはいったん売掛債権を売却したならば、後はファクタリング会社の責任なのです。

偽装ファクタリングではファクタリング業者は自ら売掛債権の回収を行いません。

売掛債権を担保扱いして、事実上資金を貸し付けているわけです。

貸金は金銭の貸し借り

ファクタリングが売掛債権の譲渡であるのに対して、貸金は純粋なお金の貸し借りのことを指します。

ファクタリングでは売掛債権を買取ってもらったら(利用者側は)それで終わりが基本ですが、貸金では借りたお金を「返済」する必要があります。

裏返してみれば「返済」があるのなら、それは貸金であると定義され得るというわけです。

「貸金」は世の中に広く浸透した取引ということもあり、法整備が行き届いています。

かつて貸金業界ではヤミ金が暗躍していましたが、法整備によって相当数が退場を余儀なくされました。

行き場を失ったヤミ金が次に目をつけたのが、法律がザル状態のファクタリング業界というわけなのです。

ファクタリング会社で貸金業の登録が必要なケース

以下のようなケースでは、ファクタリング会社がファクタリングであると主張しても、事実上は貸金と変わらないと認められ、貸金業の登録が必要となります。

【貸金と認められるファクタリング会社】
・手数料を支払うことで「ジャンプ」させるような契約
・ファクタリング業者に償還請求権があり、リスクを負わない契約となっている
・掛け目を設定して全額を買い取らず、残りの売掛金を実質的な担保にしている

手数料を支払うことで「ジャンプ」させるような契約

約束手形の支払期日に間に合わなくなった場合に、支払日を延長してもらう「手形ジャンプ」という手法はご存知のことでしょう。

偽装ファクタリングにおいても、手数料を支払うことで支払日をジャンプされるような手口が確認されています。

しかし手数料を要求して支払日を延長するような手法は、売掛債権の譲渡というファクタリングのスキームを逸脱するものです。

当然ながら事実上の貸金と認定される可能性が高くなり、無登録での取引は認められないでしょう。

ファクタリング会社に償還請求権があり、リスクを負わない契約となっている

正規のファクタリングでは償還請求権が無く、ファクタリング会社が売掛金回収におけるリスクを負うのが基本です。

しかし利用者側に回収が委託されていて、未回収となった時に償還請求が行われる契約は「事実上の貸金」と認められる可能性が大きくなります。

金融庁ではファクタリング会社に償還請求権があるケースでは実質的な貸金とみなすべきと考えていることが伺えます。

貸金業の登録の有無を確認するようにもアドバイスしていますので、上記の場合には貸金業の登録は必要と判断されることになるでしょう。

掛け目を設定して全額を買い取らず、残りの売掛金を実質的な担保にしている

ファクタリングでは売掛債権全額を買取し、リスクはすべてファクタリング会社が負うのが原則です。

しかし偽装ファクタリングでは「掛け目」を設定して全額は買い取らないケースがあります。

売却代金の一部が、売掛が実際に回収して支払われるまで留保されてしまうのです。

これは売掛債権を担保としている性質が色濃く、事実上の貸金と認定される可能性が大きくなるでしょう。

ファクタリングにおける貸金業登録の偽装業者の見抜き方

ファクタリングにおける貸金業登録の偽装業者の見抜き方は、次の4つがあります。

ファクタリング会社が貸金業登録番号を掲出していたとしても100%信頼はできません。

悪質業者は無登録でも架空の登録番号もしくは別の正規登録業者の登録番号を偽装している場合があります。

別の正規登録業者を偽装する場合は、いかにも似たような名前を用いて関係があるように見せかける手口が確認されています。

こちらの項目では、上記のような狡猾な偽装業者を確実に見抜くための方法を解説します。

日本貸金業協会の公式サイトで検索

日本貸金業協会の貸金業相談・紛争解決センターの公式サイトでは「ヤミ金(悪質業者)の検索」サービスを利用できます。

実際の被害内容や勧誘手口(詐欺メールの内容や偽装サイトのイメージなど)まで確認することができます。

全悪質業者のリストも公開されているので、チェックしてみるのもおすすめです。悪質業者の手口を知ることで被害に会うリスクを抑えられることでしょう。

貸金業登録業者検索で確認

貸金業登録業者検索(金融庁「登録貸金業者情報検索サービス入力ページ」)で、利用検討中の業者を検索することで、未登録業者をチェックできます。

また架空の登録番号や、他社の番号を偽装している場合も、登録業者検索によってチェック可能です。

架空の番号なら情報がヒットしませんし、他社の番号を偽装した場合は社名などが合致しないので簡単に見抜くことができます。

また電話での登録照会も可能です。

信頼できる公的機関等に確認する

ここ最近、金融庁や警察庁などの所轄官庁では「悪質ファクタリング」への警戒を強めています。

偽装業者の情報も集まっていますから、あやしいと感じたときには各官庁の相談窓口へ電話するのがおすすめです。

「金融庁」と聞くと、なんだか敷居が高く感じてしまうかもしれません。

しかし専門の相談員(金融サービス相談員)が丁寧に質問や相談に答えてくれますから、安心して相談してみてください。

※ウェブサイト・FAX・郵送でも相談可能ですが、すべて電話での回答となります

ファクタリングの利用は事業の存続を左右しかねない重要な決断ですから、相談を遠慮する必要など全くありません。

日本ファクタリング業協会に確認する

「ファクタリング業界の自主規制機関」である一般社団法人日本ファクタリング業協会に確認するのも良い方法です。

日本ファクタリング業協会は、悪質な企業および反社会勢力の進出が目立ち始めたことにより、業界の自主規制を目的として設立された団体です。

令和元年9月には「ファクタリング業法法制化準備委員会」を設置するなど、安心してファクタリングを利用できる環境づくりに尽力しています。

また金融庁、警察、貸金業協会等と情報交換するなど行政との連携&協力も行っているようです。

偽装ファクタリング業者については、日本ファクタリング業協会の公式サイトの「相談・苦情・質問フォーム」から手軽に相談や質問できます。

まとめ

こちらの記事ではファクタリングの免許(登録)の必要性や法的根拠等について解説しました。
内容を理解していただいたことで、ファクタリングに関する法的位置づけを確認できたことでしょう。
法的に未整備なファクタリング取引を利用するにあたっての注意点を把握した上で、安全かつ適切にファクタリングを利用するためのヒントをつかんでください。