ファクタリングが貸金業ではない法的根拠と契約時の注意点を解説

2023年3月30日

ファクタリングをしようと調べてみると、いい内容が書かれているものや反対によくない内容を見かけることがあるかもしれません。
金融庁のHPにあるファクタリングの注意喚起を見かけたら不安になりますよね。

下記のような疑問が次々と沸いてきませんか。

「ファクタリングとは貸金業なのか?」
「ファクタリングは貸金業法に違反するのか?」
「ファクタリングと貸金業はどの違うのか?」

結論から言うと、ファクタリングは貸金業ではありません。

ファクタリングとは売掛金をファクタリング会社が買い取る売買契約だと金融庁HPに記載されています。

そのためファクタリング業者は貸金業の登録を受ける必要もないのです。

しかし、ファクタリングが日本では近年急速に広まってきた金融サービスであるため、ファクタリングを取り巻く法整備が追い付いていないのが現状です。

そのため法律をくぐり抜けようとする悪質行為が横行しており、被害報告が相次いでいます。

ファクタリング自体は健全で優良な資金調達方法ですが、もしファクタリングを騙った悪質業者と契約をしてしまったら金銭トラブルに巻き込まれかねません。

この記事を読めばファクタリングと貸金業の違いを正しく理解でき、さらに貸金業法に触れる悪質業者を見抜いて優良なファクタリング業者を選ぶことができます。

安心してファクタリングを利用するためにも是非最後まで読んでいってくださいね。

ファクタリングは貸金業ではない

ファクタリングは貸金業とは全く別の金融サービスです。

そのためファクタリング業者は貸金業の登録を受ける必要もなく、適切な範囲内で業務を行うのであれば違法ではありません。

このことを理解するためにこの章では次の項目を見ていきましょう。

・ファクタリングと貸金業の違い
・貸金業登録なしのファクタリング業者が貸付を行うのは違法

貸金業とファクタリングの違い

貸金業とファクタリングはどういう点が異なるのでしょうか。

2つが全く違うサービスだと区別するためには、貸金業とファクタリングを正しく理解する必要があります。

ではそれぞれについて詳しく見ていきましょう。

貸金業とは

貸金業とは利用者にお金を貸して利息をつけて返してもらうサービスのことで、つまり金銭の貸付、融資を指します。

正確には貸金業法で次のように定義されています。

”「貸金業」とは、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によってする金銭の交付又は当該方法によってする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に「貸付け」という。)で業として行うものをいう。”

この定義に当てはまり、貸金業を営む業者として代表的なものが次のとおりです。

・事業者金融
・消費者金融
・クレジットカード会社
・リース会社
・抵当証券業、など

※銀行や信用金庫などは貸金業ではありません。
銀行と区別するためこれらの貸金業者のことをノンバンクとも呼びます。

貸金業を営むためには財務局または各都道府県行政庁に登録を受ける必要があり、登録後も3年ごとに更新しなければいけません。

そして貸金業法には借入総額・利息の上限や返済金の取り立て方法などが細かく定められており、貸金業者はこれを遵守することが義務付けられています。

ファクタリングとは

それに対してファクタリングは次のようなサービスのことを指します。

「利用者が持っている売掛金をファクタリング会社へ売却することにより、本来より早く売掛金を資金化する金融サービスのこと」

※売掛金…商品やサービスの売上代金を受け取る権利。売掛債権。

企業や事業主が商品またはサービスを売ると相手先からその代金を支払われますね。

ところが企業間取引の場合、売上と同時にすぐ支払われるわけではなく、大抵は代金が入金されるのに1か月~2か月かかります。

その売掛金をファクタリング会社に売ると手数料を引いた買取代金を受け取ることができ、これにより本来なら数か月かかる入金を待たずとも資金を獲得することができるのです。

そして本来の入金日に売掛先から代金を回収できたらそれをファクタリング会社に支払う流れとなります(2者間取引の場合)。

つまり、ファクタリングは売掛金を買い取る売買契約であるため、金銭を貸し付ける貸金業には該当しません。

ファクタリングが法的に債権の売買(債権譲渡)契約であることは金融庁HPにも記載があります。

そして売買については民法で次のように定義されています。

”売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。”
(民法第555条)

売掛債権の取引は一般法である民法等に基づいて行われているため、ファクタリングを行うために貸金業に登録する必要はありません。

貸金業登録なしのファクタリング業者が貸付を行うのは違法

ファクタリングは貸金業ではなく、ファクタリング自体に違法性がないことはお分かりいただけたでしょうか。

一方でファクタリングが貸金業法違反だとよく誤解を受けやすいのも事実です。

それは下記のような注意喚起が金融庁や消費者庁を始めあちこちで呼びかけられているためでしょう。

「偽ファクタリング業者は貸金業法違反」
「給与ファクタリングは貸金業法違反」
「ファクタリング業者のサービス内容が貸金業法に触れている」

繰り返しますが、ファクタリング業者が行うのは貸付ではなく売掛債権の売買のため、貸金業の登録は不要です。

しかしサービスの内容が真正なファクタリングではなく、実質貸付のようなことを行うとそれは貸金業法違反になります。

問題なのは貸金業の登録を受けていない業者が貸付を行うことにあるのです。

そのような業者と契約してしまうとトラブルに巻き込まれやすいので注意しなければなりません。詳しくは次の章で解説しますね。

ただ、ファクタリング業者の中には貸金業の登録を受けているところも少数ですが存在します。登録を受けているなら当然貸金業を行っても問題はありません。

偽装ファクタリング業者に注意!

真正なファクタリングを行う業者なら違法性はないため安心して利用できますが、中には貸金業法に触れる悪質な業者が存在するので注意しなければなりません。

前の章でファクタリング業者は貸金業の登録を受ける必要がないことを述べてきましたが、それを利用して無登録の業者がファクタリングだと偽って貸付を行うという偽装ファクタリングの手口が横行しています。

この章ではそのような悪質業者に関わってしまった場合のリスクや被害例を確認して、偽装ファクタリング業者は絶対に利用しないよう認識を高めましょう。

偽装ファクタリング業者を利用するリスク

偽装ファクタリングを行う悪質業者を利用してしまうと次のようなリスクに遭う恐れが高まります。

■偽装ファクタリング業者のリスク

・売掛先からの代金を入金する際に利息を要求される
・高額な手数料を要求される
・悪質な取り立てに遭う
・売掛先から入金がなかった場合違約金を請求される

偽装ファクタリングがこのように非常にリスキーなのは、偽装ファクタリングは貸金業の登録を受けていないor受けられない悪質業者が法律を潜脱して貸付で儲けるための手口だからです。

貸金業の登録を受けている業者は厳しい基準を満たして審査を通過し、金融庁監督下で法律を遵守して業務を行っているので、利用者からすれば安心して利用することができます。

一方、悪質業者は貸金業法に従わず自身の儲けを追求するために利用者を陥れる危険性が非常に高いです。

最悪な場合、利用者は多重債務に追い込まれてしまったり、社会的な信用を失ってしまったりする事態になりかねません。

偽装ファクタリング業者の被害例

偽装ファクタリングのリスクを理解したところで、実際に起こった被害例でその手口を確認していきましょう。

ケース1.売掛先から代金を回収できない場合、利用者に代わりに支払うよう要求

1.ファクタリング契約を締結して買取代金を利用者に振り込む
2.売掛先が倒産してしまい、売上代金が支払い不能になる
3.売掛先の代わりに利用者に代金を支払うよう要求、さらに違約金まで請求してきた

ファクタリングは売買であるため、売掛金(売掛債権)は買取代金と引き換えにファクタリング会社に移ります。

同時に、債権を売ったわけですから、売掛先から何らかの理由で回収できないリスクもファクタリング会社が請け負うはずです。

しかしこのケースではリスクの部分は利用者が請け負う形になっており、これでは公平な売買とは呼べません。

売掛先の肩代わりと同じような手口だと売掛債権の買戻しを強要、または償還請求権(次章で解説)を行使するケースもあります。

ケース2.安い手数料で勧誘し、法外な金利を要求

1.他のファクタリング業者より安い手数料で利用客を勧誘
2.ファクタリング契約(売買)に見せかけて金銭消費貸借契約(貸付)を結ばせ、代金を利用者に振り込む
3.利用者が売掛先企業から入金された代金を偽装ファクタリング業者に振り込む時、代金だけでなく利息も要求してきた

ファクタリングで発生するのは「利息」ではなく「手数料」です。

ファクタリングは売掛金を譲渡するときに買取金額から手数料を差し引く仕組みになっています。

利息とは貸借した金銭に対して支払われる対価なので、利息を求めるのは貸金業に該当します。

ケース①、②どちらの場合でも要求に応じないと悪質な取り立てを行ったり、「売掛先に知らせる」と言って脅してきたりと支払いに応じるまで手段を選びません。

このような悪質なトラブルに巻き込まれないためにも、偽装ファクタリング業者は絶対に利用しないようにしましょう。

偽装ファクタリング業者を見抜く3つのポイント

ではどうすれば偽装ファクタリング業者を見抜くことができるのでしょうか。

この章では偽装ファクタリング業者である可能性が高いポイントを3つ紹介していきます。

あてはまると偽装ファクタリング業者の可能性が高い

・償還請求権がある
・契約書が債権譲渡契約(売買契約)ではない
・手数料が高すぎる

これらの項目の危険性や見抜き方をひとつずつ見ていきましょう。

償還請求権がある

償還請求権とは聞き慣れない言葉だと思いますが、ファクタリング契約において非常に重要な項目なので是非覚えてくださいね。

<償還請求権>
売掛先の倒産など売掛先の都合により回収できなかった売掛金をファクタリング業者が利用者に請求できる権利。遡求権。
償還請求権がある場合をウィズリコース、償還請求権がない場合をノンリコースと呼ぶ。

前章でも触れましたが、ファクタリングは売掛金(売掛債権)を売買する取引なので、債権に付随するリスクごとファクタリング業者に引き渡すのが筋でしょう。

売掛金を回収する権利だけをファクタリング業者が保有し、回収できなかった場合のリスクは利用者が負うのは利用者側の負担が重すぎます。

償還請求権がある場合は、債権譲渡契約であっても実質売掛債権を担保として貸付を行っているのと同じではという見方が強まっています。

償還請求権の有無についても、契約前に必ず確認するようにしましょう。

契約書が債権譲渡契約(売買契約)ではない

繰り返し述べますが、ファクタリングは売掛金の売買なので契約書の内容は「債権譲渡契約」でなければいけません。

タイトルが「債権譲渡契約」となっていても、内容が貸金になってないか隈なくチェックしましょう。

金銭消費貸借契約になっていると後から利息を要求される可能性が高まります。

前章でも紹介したように、ファクタリングは売掛金買取時の1回のみ手数料を支払う(差し引く)仕組みなので、本来なら利息が発生するはずがありません。

契約書はこのような後々のトラブルを防ぐために大事な書類なので、

下記の項目にも注意しながら慎重に進めてくださいね。

●契約書の注意点

・必ずしっかり目を通してから記入
・分からない点は納得いくまで担当者に説明してもらう
・口約束は絶対にしない
・契約書の控えは大切に保管する

手数料が高すぎる

手数料を高く設定するのも偽装ファクタリング業者が行う手口のひとつです。

手数料はファクタリング業者や売掛先の信用度によって大きく異なりますが、一般的には下記の金額が相場となっています。

・3者間ファクタリング —2%~9%
・2者間ファクタリング —8%~18%

上記よりもはるかに高い手数料を提示された場合は不当な金額ではないか疑ったほうがいいでしょう。

手数料は振込手数料や事務的経費なども込みで提示されるのが一般的ですが、それらの項目が別請求になっていないか、不透明な項目はないかどうかも確認すべきです。

不審点に気づくためには複数の会社に見積もりを依頼するのが有効です。

特に初めてファクタリングを利用する場合は何社か見積もりを出してもらって相場を把握しましょう。

まとめ

本記事を読んでファクタリングと貸金業の違いについて正しく理解できたでしょうか。

あらためてもう一度本文で紹介した内容をおさらいしましょう。

●ファクタリングは貸金業ではない

・ファクタリングは売買なので貸金業の登録を受ける必要がない
・貸金業登録なしのファクタリング業者が貸付を行うのは違法

真正なファクタリングを行っている限りは全く違法性がありません。

ただし中にはファクタリングを装ったヤミ金融業者も紛れているので注意が必要です。

そのような悪質業者のリスクや手口を学び、トラブルに巻き込まれないよう見抜き方をおさえておきましょう。

●偽装ファクタリング業者に注意

・偽装ファクタリング業者は悪質業者であるため絶対に利用しない
・偽装ファクタリング業者の特徴を知って見抜く  
→契約書が債権譲渡契約(売買契約)ではない  
→手数料が高すぎる  
→償還請求権がある

この記事を基に、ファクタリングが貸金業とは別であり違法性もないことが分かり、安心して利用を検討できることを願っております。