ファクタリングの買戻請求権って何?償還請求権との違いを解説

2023年10月5日

今回はファクタリングの「買戻請求権」とは何なのか、そして似ている言葉でよく見かける「償還請求権」との違いはあるのか、について解説していきます。

ファクタリング

ファクタリングとは、会社が有する売掛債権(手形支払の対象となる売上債権)をファクタリング会社に譲渡し、所定の期日にその譲渡代金を貴社の口座に振り込む制度で、売掛債権の早期資金化と手形廃止が可能な制度です。
ファクタリングは買戻請求権の有無によって二種類に分類されます。
買戻請求権のあるタイプは、状況によってはファクタリングしたはずの売掛債権を買い戻さなくてはならないおそれがあります。

買戻請求権のないタイプの場合、ファクタリング会社に売掛債権を売却することで資金化がなされると同時に、企業のバランスシートをスリム化することができます。

買戻請求権と償還請求権について

買戻請求権とは?

ファクタリングの買戻請求権とは、あなたが売却した売掛金を回収できなくなった場合に、ファクタリングの会社から売掛金を買い戻さなければならない義務です(ファクタリング会社から見れば権利)。買戻特約が設定されたファクタリング契約だった場合、せっかく、売掛金を譲渡して早期に現金化できたとしても、後で買い戻さなければならない可能性があるということです。

償還請求権とは

「償還請求権」とは、金銭債権などが債務者から支払われないとき、金銭債権をさかのぼり直接請求できる権利のことで、「リコース」ともいいます。

ファクタリング契約が償還請求権ありのリコース契約だった場合、売掛先から売掛金が支払われず回収できなくなったときには、弁済するようにファクタリング会社から請求されることになります。

売掛先から売掛金の入金があるまでは1か月や2か月という期間があり、この間に売掛先が経営難に陥り倒産しないとは限りません。

すでに売掛金はファクタリング会社に譲渡されているため、本来であれば未回収リスクも移転されるはずですが、償還請求権の有無によって弁済義務は変わってしまうため注意が必要です。

あなたの売掛金を、あなたが代わりに支払うというのは不思議な感じがするかもしれませんね。償還請求権は、手形の取引の用語です。手形割引を利用した後、その手形が不渡りになった場合に、手形割引を利用した人(手形割引人)が、手形振出人の代わりに、手形の譲受人へ支払わなければなりません。

買戻請求権と償還請求権は基本的に同じ

ファクタリングの償還請求権と買戻請求権について、簡単に解説しました。両者について、あなた(ファクタリング利用者)が負うことになる義務の内容は異なります。

償還請求権では、あなたが得意先の代わりに売掛金を支払うことになり、買戻請求権では、あなたが売掛金を買い戻すことになります。

しかし、この2つの本質は同じです。本質的な意味は、売却した売掛金が実際に支払われるまで、売掛先の貸倒リスクをあなたが背負うことになることです。
手数料や諸経費を支払って資金調達したのに、後で売掛金の全額を負担することになっては資金繰り上で大変です。契約を交わす前に、契約書の内容をよく確認しましょう。

契約書に記載があったらNG

通常であれば、ファクタリング契約には償還請求権はありません。いわゆる「ノンリコース」が一般的です。また、買戻請求権や買戻特約もない契約が主流です。
厳密に言うと、償還請求権や買戻請求権が付いている場合には、売掛金の売買契約ではなく「金銭消費貸借契約(つまりは借金)」になってしまう可能性があります。

売掛金の売買契約としては無効になりますが、契約書の内容に同意していた場合で、相手が貸金業法の貸金業者の登録を受けていた場合には、対抗するのが困難かもしれません。
そんな時は金融関係に強い弁護士に相談しましょう。

買戻請求権」の違法性

ファクタリングとは賃金業ではありません。
賃金業とは、お金を貸す業務を行っており、財務局又は都道府県に登録をしている業種の事を言います。 ファクタリングは先程説明したように売掛債権(代金を支払われる権利)の売買を行います。
その為、賃金業とファクタリングは明確に分けられます。

買戻請求権は賃金業許可が必要

買戻請求権は賃金業の登録がある場合には許されており、その代表的な例が銀行です。
銀行では融資を受けたり手形割引を利用する事ができます。 これには利息が付きますし、あくまでも「融資」つまり貸している状況なので返さなければなりません。
その為、実質的に買戻請求権が付いています。

一方でファクタリングは賃金業ではない事が以下の金融庁の見解から見ても一目瞭然です。

その為ファクタリング契約に買戻請求権を付ける事は、売掛債権(代金を支払われる権利)の「売買」ではなく「貸付」となってしまう事から「賃金業」となり賃金業登録をしていないファクタリング会社がそれを行う事は賃金業法違反となります。

ちなみに賃金業登録をしている場合には「○○財務局長(1)第00000号」や「○○県知事(1)第00000号」といった表記が見られます。
またこの表記が本当かどうかは金融庁のホームページの「登録賃金業情報検索入力ページ」から検索できますので参照してみて下さい。

償還請求権ありのファクタリングは違法業者の可能性に注意

通常、売掛金の売買契約によるファクタリングは償還請求権なしのノンリコース契約です。

リコース契約によるファクタリングは銀行や貸金業者でなければ扱うことができませんが、貸金業登録をしていない業者が償還請求権ありの契約を結ぼうとする場合、その業者は違法業者です。

償還請求権ありでファクタリングを利用するときには、相手業者が貸金業登録をしている正規の業者か確認することが大切であり、違法業者の場合には絶対に契約しないようにしてください。

まとめ

ファクタリングで資金調達するときには、「償還請求権」の有無には十分に注意してください。

償還請求権ありのファクタリングは、売掛債権の譲渡ではなく担保にした借入れであり、融資という扱いです。

もしリコースファクタリングを選ぶときには、売掛先から売掛金の回収ができなければ、その責任は利用者が負うことは十分に認識した上で契約を結ぶようにしてください。

ファクタリング以外にも返済不要な資金調達方法が存在します。自身にあった資金調達で健全な会社経営をしましょう。