ファクタリングは医療事業者にも向いている?仕組みや利用する際の注意点を解説

2023年9月6日

近年、資金調達として流行しているファクタリングですが、医療ファクタリングは診療報酬債権を使ったファクタリングです。しかし、どのようなものかわからない方も多いのが実情だと思います。

そこでこの記事では、診療報酬を使ったファクタリングを利用してみようかとお考えの方のために、医療ファクタリングについて説明します。

医療ファクタリングの仕組み

「医療ファクタリング」とは「診療報酬債権」を現金化する資金調達の方法です。

医療機関は、社会保険診療基金(社保)や国民健康保険団体連合会(国保連)に対し「レセプト報酬」と呼ばれる「診療報酬」を請求しますが、入金前にファクタリング会社へ譲渡することにより先に現金を受け取ることができます。

通常であれば、診療報酬を受け取るまでの期間は2~3か月程度かかります。

しかしファクタリングを利用することにより、前倒しで報酬を受け取ることができるため、その間の様々な支払いに充てる資金を確保することができるでしょう。

なお、ファクタリングには、利用者とファクタリング会社のみが契約する「2社間ファクタリング」と、売掛先も契約に加わる「3社間ファクタリング」があります。

医療ファクタリングの場合、この2つのファクタリングのうち「3社間ファクタリング」で契約することが一般的です。

医療ファクタリンリングの流れ

医療ファクタリングを利用した場合、主に次の つの流れで資金を調達することになります。

1ファクタリング会社に申し込む
2診療報酬債権をファクタリング会社に譲渡する
3医療機関から売掛先(国保または社保)に対し、診療報酬債権をファクタリング会社に譲渡したことを通知する
4ファクタリング会社と医療機関がファクタリングの契約を締結する
5ファクタリング会社から医療機関に診療報酬債権額面の80%程度を支払う
6医療機関は売掛先(国保・社保)にレセプトを送付し報酬を請求する
7国保や社保から決定した支払額がファクタリング会社に支払われる
8ファクタリング会社から医療機関に対し、手数料を差し引いた残りが支払われる

ここで注意したいのは、契約段階では診療報酬債権額面の80%程度の支払いになることです。

これは、医療機関が国保や社保に提出するレセプトが100%認められるとは限らないことが関係します。

診療報酬額は国保や社保の審査で削減される可能性があるため、契約段階では一定額の支払いにとどめ、実際に国保や社保から支払いがあったあとに残りが支払われます。

医療ファクタリングの種類

医療ファクタリングは「医療」が関連する事業のファクタリングですが、次の3つの種類に分けることができます。

介護報酬ファクタリング

契約者が介護施設など介護サービス事業者であり、譲渡の対象が「介護報酬債権」であるファクタリングが「介護報酬ファクタリング」です。

診療報酬ファクタリング

契約者が病院や診療所など医療関連施設であり、譲渡の対象が「診療報酬債権」であるファクタリングが「診療報酬ファクタリング」です。

調剤報酬ファクタリング

契約者が調剤薬局であり、譲渡の対象が「調剤報酬債権」であるファクタリングが「調剤報酬ファクタリング」です。

医療ファクタリングを利用するメリット

医療ファクタリングで資金調達するメリットとして、主に次の5つが挙げられます。

有利な条件で契約できる

売掛先が国であることは、ファクタリング契約にもよい影響を与えます。

ファクタリング会社が安心して買い取りできる債権である以上、利用者である医療機関に側に有利な条件で契約しやすくなります。

3社間ファクタリングの手数料相場1~9%の中でも、低い割合が適用されることがほとんどです。

ファクタリング審査の難易度が低い

医療ファクタリングの特徴として、一般的なファクタリングよりも審査の難易度が低いことが挙げられます。

そもそもファクタリングは、銀行から融資を受けるときのように厳しい審査は行われません。

利用者ではなく、売掛先の信用力を重視した審査となるため、財務状況が悪化している場合でも信頼性の高い売掛金であれば買取可能となるケースもあります。

さらに医療ファクタリングの場合、売掛先は社会保険診療基金(社保)や国民健康保険団体連合会(国保連)など「国」のため、倒産するリスクはほぼありません。

ファクタリング会社は売掛金の貸し倒れリスクを懸念した上で審査を行うため、未回収となるリスクがほとんどない医療ファクタリングは、通常のファクタリングよりもさらに審査の難易度が低くなるといえます。

財務状況が改善される

医療ファクタリングでは医療報酬債権を前倒しで現金化できるため、調達した資金を負債の支払いに充てることにより、バランスシートを健全化させ財務状況を改善できます。

売掛先に対する通知を気にする必要がない

通常の3社間ファクタリングで契約を結ぶ場合、売掛先に対する通知や承諾を得る流れによって、その後の取引に影響が及ばないか不安になるものです。

しかし医療ファクタリングの売掛先は国のため、風評被害や信用を疑われる心配がなく、安心して利用できます。

最大2か月分の債権を現金化できる

医療ファクタリングの場合、初回のみ2か月分の診療報酬債権を使った資金調達が可能です。

医療報酬は、前月分を当月10日までに請求すると、翌月25日に入金される流れです。

たとえば1月分の医療報酬を2月10日に請求すると3月25日に入金されますが、同様に2月分は3月10日に請求し4月25日に受け取るという流れになります。

3月に医療ファクタリングを初めて利用する場合、2月分の医療報酬が譲渡対象となりますが、申し込みから1週間前後で入金されることでしょう。

1月分として2月に請求した医療報酬はもともとのスケジュールで国保または社保から3月25日に入金され、医療ファクタリングで現金化した2月分の医療報酬はファクタリング契約一週間前後で3月に入金されます。

このことから、医療ファクタリングを利用した月は2か月分が同月に入金されることになるといえます。

たとえば新たな医療機器を導入するときや、施設の建て替えなどではまとまった資金が必要です。

このような場合、一定額のまとまったお金を調達することができるのは大きなメリットといえるでしょう。

医療ファクタリングを利用する際の注意点

診療所やクリニックを設立・運営するためには、一定の資産・資金を有することが必要となります。

必要最低限そろえなければならない設備などもあるため、投入しなければならない資金も大きくなりがちです。

初期費用を回収できるようになるまで一定の期間がかかるでしょうし、中長期的に見たときにも日々の運転資金以外の施設建て替えや医療機器購入など様々なお金が必要となります。

経営難に陥っている場合、銀行からの融資を受けることができず悩むことになりますが、医療ファクタリングなら債務超過や税金滞納があっても利用できる可能は十分あるといえます。

ただし医療ファクタリングを利用するときには、次の2つのデメリットについては理解しておく必要があります。

利用しすぎてしまう可能性がある

医療ファクタリングのデメリットとして押さえておきたいのは、ファクタリングを一度利用してしまうと再度利用する可能性があり、つい何度も利用しすぎてしまうことです。

2か月待てば入金される報酬が、前倒し受け取ることができるのは大変喜ばしいことでしょう。

ただ、毎月のように繰り返して利用すれば、先に述べた通り本来受け取る金額が減ってしまうため資産を目減りさせます。

さらに医療ファクタリングをストップする月に受け取ることのできる医療報酬はゼロになるため、計画的に利用することが重要といえます。

資金繰りを改善する目的で利用するときには、事前にどのくらいの期間で使うのか決めておくことが必要といえるでしょう。

本来の報酬額を目減りさせる

医療ファクタリングを利用するとき、注意しておきたいのは本来受け取ることのできる報酬の金額は少なくなることです。

ファクタリングで資金調達した場合、3社間ファクタリングの相場は1~9%となっています。

ただ、医療ファクタリングの手数料の相場は1%をきることもあるなど大変低めですが、実費で諸費用がかかる場合がるため、その上で利用を検討したほうがよいでしょう。

まとめ

医療ファクタリングは、通常のファクタリングよりも柔軟な審査の上、手数料を安く抑えて利用することができます。

もちろん、一般的なファクタリングでも、銀行から融資を受けるときのような厳しい審査は行われず、スムーズな資金調達は可能です。

ただ、医療ファクタリングはより審査のハードルが下がるため、利用しやすい資金調達の方法といえるでしょう。

診療報酬が入金されるまでの期間は最大で2か月ですが、その間に資金不足に陥ったときやまとまったお金が必要なときでも、医療ファクタリングなら安心です。

便利な資金調達の方法であるだけに、繰り返し利用したくなるものですが、手数料が発生するためその分本来受け取るはずだった金額を減少させることになります。

数か月に渡り利用するときには、いつからいつまでなど、どのくらいの期間使うのか計画を立てた上で活用するようにしましょう。