オルタナティブ・ファイナンスとは?

2023年11月21日

オルタナティブ・ファイナンスという言葉を知っていますか?人工知能(AI)やブロックチェーン技術などのデジタル技術の発展と規制緩和の進展により、売掛債権を現金化するファクタリングや個人投資家などから直接資金を調達するクラウドファンディングなどの「オルタナティブ・ファイナンス(代替資金調達)」が多様化しています。オルタナティブ・ファイナンス市場は世界的に拡大を続けており、2020年は2015年比で倍以上に増えているという試算もあります。企業や個人の資金調達で何が起きているのか、解説していきます。

オルタナティブ・ファイナンスとは何か

いままで「オルタナティブ○○」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。金融業界の方であれば「オルタナティブ投資」や「オルタナティブ・コイン(オルトコイン)」、最近であれば「オルタナティブ・データ」などという言葉を聞いたことがあるかもしれません。もしくは音楽の世界であれば「オルタナティブ・ロック」も有名なオルタナティブ○○でしょう。

ここで言うオルタナティブ(Alternative)とは「代替の」という意味であり、オルタナティブ○○とは、伝統的な○○の代わりとなる代替手段のことを言います。PCのキーボードで「Alt」と刻印されたキーがあるが、このオルトキーを押すとさまざまな代わりの機能を実行できるはずです。

このようなオルタナティブ○○のなかでも、最近では「オルタナティブ・ファイナンス」と呼ばれる領域が注目を浴びています。

これは銀行からの融資や株式・債券の発行と言った従来の伝統的なファイナンス(資金調達)手段ではなく、売掛債権を現金化するファクタリングや個人投資家などから直接資金を調達するクラウドファンディングなどの代替的な資金調達の仕組みのことを指します。日本語では、代替的資金調達や補完金融などと呼ばれることが多いです。

特に既存の金融システムを補完するという意味においては、従来のような銀行融資に過度に依存することなく、必要な資金はクラウドファンディングのように直接的に個人から調達できるようになりつつあります。

これは個人の資産形成という観点から見ても、従来のように個人金融資産が年金や保険などの機関投資家へ機関化され、それが運用会社を介してさまざまな投資対象に振り向けられていたものが、自らの意志によって直接、最終的な投資対象を選択できるようになってきたとも言えます。

まさに資産運用の「民主化」のような動きがオルタナティブ・ファイナンスの進展に伴って実現されようとしています。

拡大するオルタナティブ・ファイナンス市場

このようなオルタナティブ・ファイナンス市場は、世界的に拡大を続けています。特にデジタル技術の発展に伴い、インターネット上のオンラインのプラットフォームなどを通じて、資金の提供者と資金の需要者を直接マッチングさせるような仕組みが数多く登場しています。

具体的には、売掛債権を現金化するファクタリングをオンライン上でAIなどに基づいて審査を迅速化するプラットフォームや、スマホアプリなどを通じて少額の資金を投融資する金融型クラウドファンディングなどが登場しています。

2015年から見てみると、欧州及び米国において市場規模は拡大を続けており、5年間で欧州は約4倍に、米国は約2.5倍に増えています。

2019年から2020年にかけては世界的に流行した新型コロナウイルス感染症の影響から資金繰りに逼迫した企業が増加し、このような新しいオルタナティブ・ファイナンスへの需要が高まったとも言われています。

さらに世界のオルタナティブファイナンス市場は、2023~2030年にかけて年平均成長率(CAGR)20.2%で成長すると予想されています。