ファクタリングの審査基準にはどんな項目がある?

2023年11月15日

ファクタリングとは、売掛債権(売掛金)をファクタリング会社に売却し、予定より早い段階で資金調達ができるサービスです。取引先から支払われる売掛金の債権(未収金)を売却すると、入金期日前に資金を調達できるため、資金繰りを改善したい企業に有効な資金調達方法といえるでしょう。

ただし、ファクタリングを利用するには、審査をクリアする必要があります。審査は銀行融資に比べると、ハードルが低いといえますが、ファクタリング会社によって審査の基準が異なり、通過率や審査に要する時間も変わってきます。審査通過率を上げるためにはどのような方法があるのでしょうか。

本記事ではファクタリングの審査のポイントや審査基準、審査の通過率を上げるコツや審査にかかる時間を短縮する方法などを紹介します。キャッシュフローを改善したい経営者の方や、融資や借り入れ以外の方法でスピーディに資金を調達したい方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。

ファクタリングで審査されるポイント

ファクタリングで審査されるポイントは、次の3つに大別できます。

売掛債権

売掛債権の健全性も、ファクタリング会社が審査でチェックするポイントです。

例えば経営が破綻していたり、業績不振で破綻の危険性があったりする企業の売掛債権は、資産価値を失った不良債権と見なされて断られる可能性が高いでしょう。

反対に信頼性の高い売掛債権であると認められると、手数料が下がるなどファクタリング契約の条件も良好なものとなる傾向があります。売掛債権の健全性は、審査で必ずチェックされるポイントです。

売掛先

ファクタリング審査の重要なポイントが、売掛先の信用度です。

ファクタリング会社は利用者から買取った売掛金を、売掛先企業の決済によって回収します。もし売掛先から回収できなければ負債となってしまうため、未回収となるリスクを考慮して、与信においては売掛先企業の信用度を重要視する傾向があります。

そのため信用度の低い売掛先は、審査が厳しくなるのが一般的です。

利用者

ファクタリングでは一般的に申し込みをする利用者の信用度は、売掛先の信用度ほどは重視されません。お金の貸し借りをする与信取引ではないため、審査では利用者より売掛先の信用力が重視されます。

ただし、ファクタリング会社は利用者の信用度もチェックします。中には架空の売掛金で不正に資金を引き出そうとする悪質なケースもあるためです。そうした犯罪を未然に防止するためにも、利用者にもある程度の信用力が求められます。

もし売掛先が倒産して債権の回収が困難になった場合、売掛金を利用者に請求する契約も中にはあります。取引ではファクタリング会社が、回収の責任をもつのが原則です。しかし、そうした契約の場合には、利用者の信用度がチェックされる可能性もあるでしょう。

ファクタリングの審査基準7つ

ファクタリングの審査基準は、主に以下の7つです。

売掛先との取引実績

利用者と売掛先との間に継続的な取引があるか、取引実績や履歴も審査の対象となります。取引の実績や履歴を確認するのは、悪質な利用者が売掛先と結託して、共犯で架空の売掛金をつくり出し、資金を騙し取ろうとするケースもあるためです。

架空債権はファクタリング会社に多大な損害をもたらします。そのため利用者と売掛先に継続的な取引があるかどうかを、銀行の預金通帳に明記された取引履歴を見てチェックするのが一般的です。

売掛先と取引があったとしても、一度きりの実績しかない場合、架空取引などの可能性が疑われる場合もあります。審査を受ける場合は、売掛先との継続的な取引実績があることを証明する預金通帳や、請求書・発注書・納品書・個別契約書などのエビデンス書類を用意しておきましょう。

売掛金の支払期日

審査では売掛先による支払期間が短い債権の方が、より審査を通りやすい傾向があります。売掛金の支払期日が長ければ長いほど、ファクタリング会社が債権の肩代わりする期間が伸びることとなり、資金的な負担が大きくなるためです。

支払期間が長いと、期日までに売掛先の経営状況が悪化して、貸し倒れになるリスクも高くなります。ファクタリング会社によっては、あまりに支払期日が長い債権は買い取らないケースもあります。

審査を通過しやすくするためには、売掛金の支払期日が短い債権の方が有利です。審査を通過しやすいのは、長くても2カ月程度が目安です。支払期日までの期間が2カ月を超える場合は、審査を通過しない可能性があるため、注意してください。

売掛先の信頼度

審査で最重要視されるのが、売掛先の信頼度です。売掛先が上場企業や公的機関のような信頼度の高い相手なら、支払い能力が高い=債権を回収しやすいと判断され、審査も通りやすくなるでしょう。

反対に売掛先の信頼度が低く、未回収になるリスクが高いと判断されると、審査に落ちてしまう可能性が高くなります。例えば経営状態や財務状況が悪化している売掛先などは、信用度が低くなるのが一般的です。

売掛先の信頼度が高いと、ファクタリング会社に支払う手数料も安くなります。一方、売掛先の信用力が低いと、手数料が高くなってしまうのが基本です。

複数会社の売掛金がある場合は、上場企業や国・地方公共団体などの公的機関など、信用度の高い売掛債権を優先的に売却するとよいでしょう。

利用者の企業規模と利用金額とのバランス

利用する企業の経営規模と利用金額のバランスも重要なポイントです。利用する企業の売上規模と利用金額が釣り合っていないと、審査は通りにくくなるでしょう。

例えば年間の売上が5,000万円に満たない会社が、1億円のファクタリングを申請しても相手にはされません。売上規模に対してあまりにも金額が大きすぎるため、資料を偽造した上で架空の債権を売りつけようとしていると疑われてしまう可能性があるからです。

審査では利用者の売上規模と利用金額のバランスも重要な審査項目になります。売上規模に対して過大な金額を申請しても、審査はまず通りません。

ファクタリング利用者の信頼度

利用者の信頼度も審査のチェックポイントです。利用者があまりに信頼できない場合には、売掛債権の買い取りを拒否されることもあります。

身分の証明が不確かであったり、過去に大きな過失などがある場合は、審査に落ちる可能性もあります。他にも利用者の態度が横柄、悪い噂がある、遵法意識が低い、公私混同が甚だしいなどの場合にもファクタリング会社の担当者に不信感を抱かせてしまうかもしれません。

また個人事業主の場合、法人に比べて信用度が低いなどの理由から、利用を制限されてしまうこともあります。ファクタリング会社の中には、個人事業主の利用自体は可能としているものの、審査に時間がかかったり、手数料が高くなったりするケースもあるようです。

利用者の信頼度をチェックするのは、詐欺的犯罪を防止するためでもあります。中には二重譲渡しようとする悪質な利用者もいます。

二重譲渡とは、一つのファクタリング会社へ債権譲渡した後、別のファクタリング会社へ同じ債権を持ち込んで資金調達しようとすることです。二重譲渡は故意かどうかに関係なく詐欺罪に問われるため注意してください。

架空の売掛金を偽造する犯罪者もいます。ファクタリング会社は犯罪被害に遭わないよう、本物と証明できない売掛金を厳しくチェックします。本物と証明するには請求書・発注書・納品書・契約書など、売掛債権の存在が確認できる書類を提出するのが一般的です。

売掛債権への信頼度

売掛債権が信頼できるかどうかも審査の重要な基準です。信頼性が高いと判断されるのは、回収の確実性が高い売掛債権です。回収できると判断できるなら、多少条件が厳しくなっても、買い取りたいと考えるファクタリング会社もあります。

回収の見込みがゼロである不良債権や、民事再生中や事業譲渡計画が進んでいるような売掛先の売掛金は、未回収リスクが高いため、審査を通過する可能性は低いでしょう。事業とは関係のない個人間の債権なども買い取ってもらえません。

また売掛債権と同時に買掛債権もある、いわゆる反対債権の場合、相殺により売掛金が0円以下になる可能性があるため、原則として売買不可です。

資産の差し押さえが発生する可能性の有無

売掛先が税金の滞納や借入金の返済を延滞していないかどうかも審査の大切なポイントです。延滞した税金や負債のある会社が、倒産して財産が差し押さえられた場合、預金や不動産と同様に売掛債権も差し押さえ対象となるためです。

売掛債権が差し押さえられてしまうと、ファクタリング会社は資金を回収できません。そのため、売掛先に税金の滞納や借入金の返済に遅延がないかをしっかりと審査します。

ファクタリングの審査で重視されないポイント

ファクタリングは銀行の融資や、ビジネスローン会社の借り入れとは審査基準が異なります。ここではファクタリングの審査では重視されない2つのポイントについて解説します。

利用者による消費者金融からの借り入れ

ファクタリングの審査では、利用者の消費者金融からの借り入れや、ビジネスローン残高の有無もあまり重視されません。

銀行融資やビジネスローンの利用などの他の資金調達手段では、利用者に消費者金融から借り入れがあると、審査で不利になるのが一般的でしょう。比較的金利の高い方法で借り入れするほど、「財務内容が悪化している」と金融機関に判断されてしまうためです。

その点、利用者の経営状況を重視しないファクタリングでは、消費者金融やビジネスローンからの借り入れがあっても問題視されません。審査対象のメインはあくまで売掛先だからです。

またローンの支払い情報などをまとめた信用情報に利用の記録が記載されることもないため、利用後の融資にも影響はありません。

利用者の経営状況

ファクタリングの審査では、売掛先の経営状況に比べると、利用者の経営状況はそれほど重要視されません。ファクタリング会社の資金回収先は、あくまで売掛先のためです。優先して審査されるのは、売掛先の財務状況や信用度で、利用者の経営状況は銀行融資のように厳密にはチェックされません。

ただし、売掛先が突然倒産したり廃業したりして、資金の回収ができなくなった場合、ファクタリング会社が利用者に売掛金の支払いを求める契約も中にはあります。そのような契約をしている場合、利用者の財務状況があまりに悪化しているような状況だと、審査に通らない可能性が高いでしょう。

基準を理解してファクタリングの審査をスムーズに進めよう

ファクタリングを利用するなら、なるべく審査に通る可能性を高めたいものです。審査通過率を高めたいのであれば、本記事で紹介した7つの審査基準を理解してスムーズに審査を進めましょう。